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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
497/856

493階 宿敵

フーリシア王国の公爵ロウニール・ローグ・ハーベス・・・そいつが・・・僕の倒すべき相手・・・魔王・・・


クーガははっきりとは言わなかったけど人間ではないと言うのなら魔族なのだろう。物語の中には人間に扮して悪さする魔族もたまに出てくるし


問題は強さだ


魔族と言えど人を・・・しかも鍛えられた兵士を5万人も殺せるものなどひと握りのはず・・・となると魔族の中でと最強に近いはず・・・なら魔王である可能性が高い


「そのロウニール・ローグ・ハーベスはどうやって5万人もの人を殺したと思いますか?」


「・・・強力な魔法・・・とか?」


「いえ、魔物を召喚したのですよ。そして人間を襲わせた・・・敵も味方も関係なく・・・」


「・・・なぜそれを黙って・・・」


「言ったでしょう?攻め込んだのはリガルデル王国なのです。彼はそれを返り討ちにしただけ・・・本来なら我が国が糾弾される事なので強く出れないのですよ。たとえ唆されたとはいえね」


「・・・なぜこの国は騙されたんだ?」


「ご存知か知りませんがフーリシア王国には色々と黒い噂があるのです。その中の一つに『聖女を使って各国を脅す』というものがありましてね・・・魔蝕を治せる唯一の存在である聖女・・・その聖女を引き合いに出して優位を保とうとする・・・フーリシア王国にとってはただの駆け引きの材料かも知れませんがやられる身としたらただの脅しです・・・言う事を聞かなければ魔蝕で滅べと言われているのと同じですからね。度々聖女を引き合いに出され不満が募っていた状況である事を聞いてしまった・・・フーリシア王国が人体実験をしている・・・という話をね」


「人体実験?」


「実は先程名前が上がった人物・・・ロウニール・ローグ・ハーベス公爵は元々平民だったそうです。それが貴族の最高位である公爵に上り詰めたのには理由がありまして・・・まず彼は伯爵となります・・・平民が男爵、子爵を通り越していきなり伯爵です。これが異例なことは分かりますか?」


「・・・何となく・・・」


「はっきり言って前代未聞です。恐らく後にも先にもそんな人物は現れないでしょう・・・勇者様のような特別な方以外では」


「・・・一体そいつは何をしたんだ?何をして伯爵に・・・」


「これは実は有名な話なのですが・・・彼は『ダンジョンブレイク』の原因を発見して伯爵となったのです。当時は『ダンジョンブレイク』の原因は不明でしたので確かにそれが本当なら伯爵となってもおかしくないと考えられていました。突発的に起こる『ダンジョンブレイク』に人はかなり悩まされてきましたからね・・・それが起きなくなるだけで人類にとって多大な功績であるのは間違いありませんから」


「それだけ聞くとそいつが魔族とは思えないな・・・魔族にとって得になることなんてないだろ?『ダンジョンブレイク』の原因をばらすなんて」


「私も初めはそう思いました・・・が、その後程なくして『ダンジョンブレイク』関係なく魔物が外に出始めました・・・それにより『ダンジョンブレイク』の原因が分かってもさほど人類は恩恵がなかったと言えます。爵位を得たロウニール・ローグ・ハーベス以外はね」


「・・・」


「まあそれは偶然が重なっただけと思うかもしれませんがそんな中で我が国に訪れた者が国王陛下にとんでもない事を告げたのです。『フーリシア王国は人体実験により『ダンジョンブレイク』の原因を突き止めた』と」


「それがロウニール・ローグ・ハーベスの仕業・・・」


「はい。その者が語る人体実験の内容は筆舌に尽くし難い内容だったと聞いております。ほんの触り部分だけ申し上げますと何も知らない村人をダンジョンに送り込み魔物の餌にしたとか女を裸にしてダンジョンに捨て人間と魔物の子を・・・」


「もういい!・・・だけど矛盾してないか?もしそいつが魔族なら人体実験なんかする必要もなく『ダンジョンブレイク』の原因は分かってたはずじゃ?」


「・・・私が思うにフーリシア王国とはそういう国なのではないかと・・・」


「?どういうこと?」


「先程も申し上げました通り国が優位に立つ為には聖女すら使う国柄・・・人体実験をしても咎められない国なのではないかと・・・そしてそれに目を付けたロウニール・ローグ・ハーベスはさも『ダンジョンブレイク』を究明するために人体実験を繰り返した・・・本当は別の目的があったにも関わらず」


「別の目的?」


「例えば魔物を召喚するのに人の命が必要・・・だったとしたら?」


???人の命が?だったら何になるんだ?


疑問に思っているとウルティアが何かに気付き口に手を当て震え出す


「っ!・・・魔物を召喚する為に必要だったとしたら・・・実験と称して簡単に集められ原因究明したと言えば爵位ももらえる・・・そうやって人間社会に入り込み・・・公爵ともなれば王位継承権もある・・・まさかその魔族は国ごと乗っ取ろうと?」


そこまで魔族がするかなぁ・・・物語では現れて暴れて人々を苦しめて勇者に退治されるだけの魔族・・・あーでも人間を操る魔族とかも出てくるしそういうものなのかも・・・


「ケッ・・・魔族なんて人間憎しの単細胞ばっかりだろ?んな真似してまで国盗りなんてするかぁ?」


「ありえない話ではないと思いますよ?魔王が復活した国は滅ぶと言われています。なので各国は魔王復活の気運が見られたら勇者探しに没頭するのです・・・滅びる前に倒して欲しいという願いを込めて」


「魔王?おいおい・・・その5万人を虐殺した野郎が魔王とでも言うのかよ?お出掛けする魔王なんて洒落になんねえぜ?」


「魔王は魔王城にいる・・・そんな見たこともない絵本の中だけの話を信じているのですか?意外とピュアなんですねエメンケ殿は」


「くっ・・・この天気女が・・・」


「やりますか?貴方の周りを一生曇りにしてあげますよ?」


「やれるもんならやってみな・・・すぐに雲を吹き飛ばしてやるよ」


エメンケの言う『お出掛けする魔王』は脅威以外の何物でもないけどウルティアが魔王と言ったのには理由がある


僕が直感で魔王と思ったのはその強さだ


10万の軍を相手にして5万の命を奪ったその強さ


ウルティアが魔王と言ったのは・・・


「召喚・・・魔物を召喚するのは魔王だけ・・・これも絵本の知識だけど僕もピュアかな?ウルティア」


「いえ私もそう考えました。もしロウニール・ローグ・ハーベス公爵が魔族であるならば・・・魔物を召喚しま物を総べる王・・・魔王である可能性は非常に高いと思います」


「・・・人には『ピュアピュア』言っといて・・・何が『私もそう考えてました』だ・・・ウルティアじゃなくてウルピュアに改名しろっていうん・・・だ!?」


「あら?天気予報は晴れでしたのにいきなり槍が降って来ましたね・・・通り槍かしら・・・」


「んな天気があってたまるか!槍を降らすな槍を!」


「・・・出来れば私もお願いしたいな・・・室内で槍を降らすのはやめてくれると助かる」


「あっ・・・も、申し訳ありません!」


ウルティアは怒ると見境ないからな・・・彼女がクーガに必死に謝りそれをエメンケがバカにしてまたウルティアが怒り・・・と無限ループが始まったので僕は僕で話をまとめよう


とりあえずまだ確定的な事はない・・・けどクーガもロウニール・ローグ・ハーベスの事を『根本』と言っていたから彼もそいつが魔王であると思っているのだろう。根本を断つと言うのは即ち僕が勇者としての役目を・・・魔王討伐という役目を果たすことを言っているのだろうから


僕も直感的に・・・ウルティアも魔王であると感じていた


となるとやっぱり・・・


「・・・会ってみるしかないか・・・そのロウニール・ローグ・ハーベスに」


「え?・・・き、危険です!もしその公爵が魔王だとしたら今のままでは・・・」


「そうだぜ?勇者の奇跡の力で何とかなるもんならまだしもそんな簡単なもんじゃないだろ?またバカにされるかもしれねえが勇者パーティーを組んで6人で挑むのが話の流れってやつじゃねえのか?」


6人・・・僕を入れて6人で魔王に挑むのが王道だ。仲間を集めながらその土地その土地の問題を解決しつつ力を蓄え最終的に魔王を討つ・・・それが勇者としての僕の役目・・・


「ならあと2人か・・・」


「いや、あと5人だ」


「え?」


「物語になぞらえるなら勇者のお前の出身国以外の国から5人・・・しかも職業も被らないで見つけて仲間にしなくちゃならねえ。つまりお前はファミリシア出身だから俺達は勇者パーティーではないって訳だ」


あっ・・・そっか・・・ならラナも・・・


「こればっかりは不明です。物語を面白おかしくしようと各国1人ずつにした説もありますし・・・必ずしも各国1人ずつなのかは議論が分かられるところです。しかしそれを抜きにしても今の状態ではとても魔王には・・・」


もしロウニール・ローグ・ハーベスが魔王なら・・・僕は魔王以外の魔族が戦っている姿を見て恐怖し逃げ出した事になる。ファミリシアのあの2人の魔族の戦いは・・・今思い出しても身震いするほどの恐怖を感じた


魔王ならばあの2人より強いはず・・・たとえファミリシアで最強と言われる2人を連れてたとしても・・・恐らく手も足も出ないで負けてしまうだろう


けど・・・


「けど・・・見るだけ見たい。もちろん戦えば負けるのは目に見えているのは分かってる。けど・・・見て相手が分かれば対策の立てようもあるし・・・」


「しかし危険では?見に行くだけの為に命を懸けてフーリシア王国に乗り込むなど・・・」


「・・・見るだけなら我が国でも可能かもしれません」


「え?」


「言ったはずです・・・我が国は腐ってしまった、と。私が掴んだ情報によると王都に件のロウニール・ローグ・ハーベスが現れたと・・・そして事もあろうに手を組んだともまことしかやかに囁かれています。真相は分かりませんがもしロウニール・ローグ・ハーベスが我が国の王都で大手を振って歩いているのならば・・・そういう事なのでしょう」


魔王と思わしき人物とリガルデルが?フーリシアだけではなく?


もしそれが本当なら一大事だ・・・リガルデル王国は覇王国とも言われてるくらい広大な土地に強力な軍を持つと言われている。その覇王国が魔族の軍門に下ったら・・・人類は一気に窮地に立たされることになる


「そんな・・・ジーク様!」


「うん・・・真相を確かめる為にも王都に行かなくちゃならないみたいだ・・・」


もし本当にそいつが魔王だとしたら・・・まだ戦うべきではないだろう。けどいずれ戦う事になるんだ・・・そいつの強さを知っていて損はしないはず


そしてフーリシアとリガルデルを完全に手に入れる前に・・・僕は強くなりそいつを・・・倒す──────

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