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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
493/856

489階 メテオ

「ディーンが消えた?」


パーティーの次の日、サーテンより思いもよらない言葉を聞く事になった


パーティーが終わった後、最後まで貴族達を警護する為に残っていたディーンとジャンヌは第三騎士団の駐屯所まで歩いて帰っていた・・・が、その途中で忽然と姿を消してしまったらしい


「じゃあジャンヌも?」


「いえ・・・ジャンヌ様は無事のようです」


「?・・・ならディーンだけ?ジャンヌに行先も告げずに居なくなったって事か?」


「詳細までは・・・」


んな事ありえるのか?パーティーの時は普段通りのディーンだった・・・おかしなところはなかった・・・よな?それにジャンヌ・・・副団長であるジャンヌに何も告げずにどこかに行ってしまうとは思えないけど・・・



「ディーン様が行方不明?」


サーテンが部屋から出て行ったのを確認するとサラが布団から顔を出し聞こえてきた話の内容に首を傾げる


「らしいね。今日はリガルデル王国に行こうかと思ったけどその前に第三騎士団に顔を出そう・・・パーティーの帰り道での出来事なら無関係ではないしね」


「そうね。けど何があったのかしら・・・攫われたって事はないだろうから自ら?でもあのディーン様に限ってそんな事ある?」


「ない・・・よね。一緒に帰ったジャンヌさんなら何か知ってるかもしれないけど・・・」


正義感に溢れ責任感が強そうなディーンに限って騎士団を放っておいてどこかに行ってしまうなんてありえない・・・サラの言うように攫われるってのも無理がある話だしとなると自らやむを得ない理由があって・・・でもやむを得ない理由ってなんだ?騎士団より・・・いやスウ王女より優先する理由なんてあるのか?


昨日のマルスの様子だと次期国王はマルスでほぼ決まりっぽい。そうなると第二王子フォースに第一王女のエーラ、それに第二王女のスウは公爵となるかどこかに嫁ぐか・・・ぶっちゃけ公爵になるよりどこかに嫁いだ方がマシだろうな。公爵になったとしても没落するのが目に見えているから


マルスが国王になるのが決定的なら3人はもう既に身の振り方を考えているはず・・・という事はスウにとって今が一番大変な時のはずだ


これまでスウを支持してきた第三騎士団もそれは同じなはずなのに・・・あのディーンがスウが国王になれなかったといって放置するとは思えないんだよな・・・


こんな事ならスウ王女も自由にしてくれと言っておけば良かった・・・妹と同い歳らしいしどうもスウと結婚という単語が結びつかなかったからすっかり忘れてた・・・今の王様ならともかくあの王子なら喜んで押さない妹を自分の利益の為に差し出しそうだ


「ん?」


ベッドに腰掛け考え事をしていると部屋の前に人の気配が・・・


「ちょっと!お腹空いたからサッサと起きて来てよね!」


「・・・なぜパーティーで調子に乗って飲み食いしまくって帰れなくなった妹の為に早起きしないといけないんだ?」


ノックもせず突然ドアを開けて叫ぶ妹・・・お前の昨日のだらしない姿を見せてやりたい


「くっ!仕方ないでしょ!複合魔法の研究に行き詰まって最近は徹夜続きだったのよ!そんな時に呑気にお披露目パーティーなんて・・・また勝手に爵位も上げてるし・・・その度に周りの目からビクビクされるこっちの身にもなってよね!」


「知らんがな・・・もしかしてまたいじめられているのか?」


「その逆よ!怖がられて誰も近寄って来ないし話す時もまともに目を合わせてきやしない・・・優秀なバカ兄貴を持った妹の事も少しは考えてよね!」


「優秀なバカ兄貴ってどっちだよ!?」


「とにかく!お腹が空いたから早く下に降りて来てよ。朝食は?って聞いたらバカ兄貴が降りて来ないとって言われたからこうしてわざわざ呼びに来てあげたのよ?」


あー食事は出来る限りみんなでって話しているからか・・・別に早く食べたい人には食べさせてもいいのに・・・


「分かった分かった・・・すぐ降りるから下で待ってろ。・・・それより複合魔法ってなんだ?」


「はあ?そんなのも知らないで公爵してんの?」


「いや公爵関係ないだろ」


「2つ以上の属性を掛け合わせた魔法の事よ。ひとつの属性じゃ限度があるからね・・・異なる属性の魔法を掛け合わせて相乗効果を生み出し少ないマナで強力な魔法を放つ・・・賢者と呼ばれる魔法使いは四属性全て使えるけどマナには限りがあるからそうやって工夫して魔物を倒して来たの。普通の魔法使いでも大体二属性くらいは使えるから複合魔法を研究して普及させればマナが少なく下級魔法しか使えない魔法使いでも戦力になると思って・・・」


めっちゃ丁寧に教えてくれるな・・・それなら最初から嫌味を言わずに教えてくれればいいのに・・・


「ふーんそれが複合魔法か・・・」


〘ダンコは知ってた?複合魔法〙


〘知ってるわよ。私は使わないけどベルフェゴールが好んで使ってたわね〙


〘ベルが?魔法を?〙


〘ベルフェゴールは人間社会に溶け込む為に魔法を使ってたのよ。もちろん魔力でね〙


〘?なんで魔法を使うと人間社会に溶け込む事が出来るんだ?〙


〘肉弾戦で興奮すると角が生えちゃうのよアイツ・・・そうなると魔族ってバレちゃうでしょ?でも魔力を魔法っぽく放ってれば角も生えないし人間っぽく見えるから・・・らしいわよ〙


なるほど・・・確かに角生えてたな


〘けど魔力って変化しないんじゃなかったっけ?それなのにどうやって・・・〙


〘うーん・・・基本的には変化しない・・・と言うか変化する必要がないのよ。何せ魔力を強引に変化させると威力は半減しちゃうからね〙


〘え?〙


〘大木から木の剣を作るようなものよ。魔力を強引に変化させるのは〙


大木を木の剣に?・・・確かにそう言われると納得だ。木の剣で殴るより大木のまま殴った方が遥かに威力は出るだろうし・・・まあその大木を振り回せたらの話だが


〘まあだからベルフェゴールは色々工夫してたのよ・・・普通に魔力を魔法っぽくしただけだと威力は出ないからね・・・威力を出すにはどうすればいいか工夫して・・・そこまでして人間社会に溶け込もうとする意味が私には分からなかったけどね〙


確か魔王の為に・・・だっけか?よくやるよなアイツも


〘そうなんだ・・・でもそれだと人間の考えている複合魔法とは違うよな・・・使っているのは魔力だし〙


〘そうとは言えないわよ?変化させた場合マナは威力が上がって魔力は威力が下がるけどマナと魔力は変化させるやり方は一緒よ〙


〘へぇ・・・じゃあベルに複合魔法のやり方を聞けば教えてくれるかな?〙


〘別に私でも教えられるわよ?〙


〘え?それを早く言ってくれ。どうやってやるんだ?〙


〘そんなの簡単よ・・・〙



「ねえちょっと!何さっきから黙りこくってるのよ!そろそろお腹と背中がくっつきそうなんだけど」


「なあシーリス」


「なによ」


「複合魔法ってどうやって出すんだ?」


「なるほど分かったわ。アタシに喧嘩売ってるのね?」


「違う違う!聞き方が悪かった・・・どう出そうとしていてどこが難しいと思っているか教えてくれ」


「なんでバカ兄貴に・・・まあいいわ。例えば泥を作るとしたら左手に水、右手に土を作り出すの。そして合わせると・・・ほら泥団子」


「・・・それが何の役に立つんだ?」


「今のは例え!バカ兄貴にも分かるように作っただ・・・け・・・」


「はい泥団子」


シーリスの真似をした訳じゃない。ダンコに教わった通り作っただけだ。シーリスのように両手で作るのではなく片手で作った泥団子をそっと差し出すとシーリスの眉間に皺が寄る


「・・・どういう事?なんで片手で・・・」


「泥団子をイメージしただけだよ。水と土を混ぜるのではなくそのままの泥団子を。こっちの方が簡単だろ?」


「いやまあそうだけど・・・えっ?どういう事?」


「小難しく考え過ぎなんだよ・・・魔法はマナを変化させたもの・・・で、なぜ四つの属性に分かれているのかと言ったら()()()()()()()()()()()()()()()()だ。実際に見たり感じたり出来る身近なもので相手にダメージを与えられそうなものがたまたま四つの属性・・・火、水、土、風だったわけだ。人間はマナをその四つに変化させて『魔法』と呼んでるだけ。ちなみに魔法は『魔物を倒す方法』から来ているらしい」


「・・・じゃあ今のは・・・泥団子をイメージしただけ?」


「そういう事。まあ簡単に出来たのは目の前にお前が作った泥団子があったからだけどね」


「・・・アンタ本当にバカ兄貴?中身変わってない?」


「どうだろうな・・・で、ヒントくらいにはなったか?」


「・・・・・・二つの属性を掛け合わせないと出来ないって思い込みがそもそも間違いだった?元から掛け合わせた後の『結果』をイメージ出来ればわざわざ二つの属性を出さなくて済むってこと?・・・なら・・・・・・ねえ何か他に出せないの?」


「急に言われても・・・うーん・・・あー、こんなのはどう?『砂嵐』」


土と風で思い浮かんだのが砂嵐だ。門番をやってた時に突風が吹くとよく乾いた砂が風で巻き上がりよく目に砂が入ったもんだ


「ちょっ!バカなの!?室内で試すもんじゃないでしょ!」


「どうせマナで作ったもんだし消えるから汚れる心配ないしいいかなっと・・・」


「汚れなくても目に入ったら痛いじゃない!・・・ねえこれって誰でも出来るの?」


「しっかりイメージさえ出来ればね」


「・・・もしかしたら・・・いやでも何度やっても無理だったし・・・けど・・・」


「ん?何の事だ?」


「アタシには足りないものがある」


「おっぱい?」


「そう、おっぱい・・・スウよりはマシだけどサマンサには・・・アースブレッド」


「ぬあっ!部屋の中で魔法を放つな!」


「それが遺言?公爵になった割には締まらない遺言ね」


「悪かった!悪かったって!・・・で?足りないものってなんだ?」


「・・・バカ兄貴を殺せるくらいの高火力の魔法よ。時間を掛ければ広範囲を破壊する『メテオフォール』が撃てるけどアタシのイメージするメテオとはちょっと違うのよね・・・単なる岩の塊じゃなくて・・・こう燃え盛るような・・・そして小さくても高威力で・・・」


ああ、そう言えば『地仙』バウムが使ってたなそんなような魔法。確かにあの魔法は完成までにかなり時間が掛かってたな・・・それに使う場所も限られている。ダンジョンでは当然使えないし仲間が近くにいても使えない・・・かと言って1人では準備している間は無防備になる。高威力だけど使い勝手は最悪の部類に入る


シーリスが望むのは素早く出せて高威力の魔法・・・それで属性を掛け合わせた複合魔法に目をつけたわけか


下級魔法程度ならすぐに出せるし二つの属性を掛け合わせる事で威力も上がる。問題は作り方か・・・ふむ・・・


〘ダンコ、いい魔法ない?〙


〘岩・・・燃え盛る・・・多分だけど彼女の言っている魔法・・・分かるかも〙


〘え?どうやって作るの?〙


〘炎を圧縮して岩で包むの・・・当たると破裂して・・・まあ物は試しにやってみる?〙


〘やってみる?って言われても炎の圧縮が分からないのですが・・・〙


〘そうね・・・本来の大きさから無理矢理押さえ込んで小さくするの。それが圧縮・・・で、その周りを岩で囲めば完成よ。同時に作るのは難しいからまずは炎を圧縮してみて〙


簡単に言うなよ・・・炎を出して・・・小さく小さく・・・


「ちょっと!今度は何をするつもり?」


いきなり炎を出したから驚きの声を上げるが僕はそれを無視して炎を圧縮し続け初めは人間の胴体くらいはあった炎を手のひらサイズにまで圧縮する。そして急いでそれを岩で囲み・・・これ部屋の中で試すのは止めた方がよさそうだな・・・となると・・・


チラッと中庭を見た


誰もいないしそんなに大きくもないから大した威力じゃないだろう


その岩の玉を持ったまま窓に近付くと中庭に向けてポイッと投げた


「ちょっと!自分の家の庭だからって石を捨てるなんて・・・っ!?」


おぉ!?小さいから大した事ないと思ってたのに思いの外大きい爆発が・・・しかもかなりの音がした為に門番達が集まり屋敷からもサーテンやメイド達が出て来た


サーテンは地面に空いた穴を覗き込むとこちらに振り向き僕と目が合うと色々察したのか集まった者達を解散させた


「・・・メテオ・・・あれメテオじゃない!?一体どうやって・・・」


「それは・・・」


シーリスに説明しようとした時にベッドの方から『クゥ~』という可愛い音が・・・2人してベッドを見ると顔だけ出したサラと目が合った


「・・・あは・・・お腹空いちゃって・・・」


「サラさん?なんでバカ兄貴のベッドに・・・」


そっかまだ服着てないから布団の中に隠れてたのか


互いに見つめ合い固まる2人


どうしよう・・・『義理姉だよ』っと紹介するのは少し早いかな──────

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― 新着の感想 ―
[一言] ほとんど接点がなかったシーリスとの仲が良くていいですねぇ シーリスのロウへの感情は色々ぐっちゃぐちゃしてそう
[良い点] キャラ同士の掛け合いが愉快で好きです。 応援してます!
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