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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
490/856

486階 お引越し

ファゼンの屋敷からの帰り道


不意に適当な店の前で立ち止まり痛む頬が赤くなっていないかその店の商品が並ぶガラスで確認する


赤くはなってない・・・が、一緒に映っているサラの顔は『ほら見たことか』と言わずとも告げていた


確かにあの時は単独行動してカレンと知り合ってしまった・・・もしあの時サラと共に行動していればカレンは僕の事を男として見なかったかもしれない


思わせぶりな行動はしていないと思ったがカレンにとっては思わせぶりだったのかもしれない・・・いやでも・・・まあ・・・うん


「グルニアス侯爵を潰しますか?」


「物騒な事を言うな。ただの別れの挨拶だよ」


「随分過激な挨拶ですね」


「どっちが過激だどっちが・・・ところでナージ」


「はい」


「ファゼンを褒めたつもりだったが素直に喜べないと言ってたのは何故だ?話をしたその場で解決策が浮かぶなんて凄いって本気で思って言っただけなんだが・・・」


「皮肉に聞こえたのでしょう。元々敵対関係に等しい間柄だったので閣下に『計画していたんじゃないか?』と思われたと思ったのでしょう」


あーなるほどね。元々考えていたからスラスラ出て来たと僕が思った、と・・・まあ後ろめたいからそう思ったのかも知れないな


「でもまあ結果ファゼンに委ねて良かったかも・・・ダンジョンには悪いが今のままじゃ安心して生活出来ないし・・・」


「ダンジョンに悪い・・・ですか?」


「こっちの話だ。それよりケセナはともかく国は許可してくれるかな?私の領地内とはいえダンジョンは国の管轄だろ?」


「その辺は問題ないかと。国王陛下の許可は取っておいた方がよろしいかと思いますがケセナのダンジョンの利益など微々たるもの・・・それ以上の利益を生むためと説明すれば充分理解頂け許可もすんなり下りると思われます」


「なら明日にでも城に行って許可だけもらってくるか・・・ケセナにはその後に行って説明して・・・ダンジョンはシークスにでも・・・」


「ご主人様、シークス達はまだ戻っていないかと・・・」


「あっ・・・忘れてた。ラズン王国に置いてきて行方不明のままだった・・・あそこの殿に言って捜索してもらうか・・・」


シークスとヤットは行方不明のまま・・・助っ人を頼んだのに置いていってしかも放置してしまっていたのをすっかり忘れてた


怒ってるかな・・・怒ってるだろうな・・・あの2人ならどこかで野垂れ死にとかしないだろうけど・・・次に会ったら何を言われるやら・・・


放置した事への罪悪感を感じつつ歩き屋敷に到着すると入口に門番が立っていた


門番なんて雇ったかな?と疑問に思いつつ中に入ろうとすると・・・


「お止まり下さい!現在この屋敷は国が管理しているので許可なく入る事は出来ません」


あん?どういう事?


2人の門番が持っていた槍を交差させ通せんぼ・・・いつから屋敷に入るのに許可が必要になったんだ?


「無礼者!公爵閣下の行く手を阻むとはどういう事だ!」


「公爵・・・た、大変失礼致しました!」


槍を引っ込め頭を下げる門番を更に詰め寄ろうとするナージを止めて門番に事情を聞いた


すると・・・


「引越し?・・・そう言えばサーテンがそんな事を言ってなような・・・」


「昨日全ての家屋を運び終えました。使用人達もそれに合わせて新しいお屋敷の方に・・・お聞きしてませんでしたか?」


「引越しの話は聞いていたけどいつかまでは聞いていなかった。新しい屋敷の場所への案内を頼める?」


「はっ!では至急馬車を手配致します」


「いや、歩きでいい・・・そんなに遠い?」


「王城の傍になっておりますのでそれなりには・・・」


城の近くか・・・まあそれなら歩いて行ける距離だしわざわざ馬車を待つ必要もないだろう


こうして僕達は歩いて国が用意してくれた新しい屋敷へと向かう事に


貴族は短い距離でもすぐに馬車に乗りたがるが話を聞くとどうやらそれには意味があるらしい。防犯上の意味とどのような位の人物が乗っているか傍から見ても分かるようにという意味


防犯は分かるけどなんで身分をひけらかす必要が?と疑問に思ったがさっきの出来事がその風習のせいだと分かった


僕達が屋敷に入ろうとした時に止めた門番の行動・・・それは『位の高い貴族なら馬車に乗って移動するはず。もし歩いて移動するなら護衛を何人も引き連れているはず』という先入観からかまさか僕が公爵なんて・・・って感じだったらしい


これが豪華な馬車に乗って訪れていれば門番も誰が来たかは分からないまでももう少し丁寧に対応してくれてたはずなのだとか


全くもって面倒くさい・・・少しは歩け貴族



しばらく歩くと高い壁に囲まれた城が見えてきてその壁沿いを歩く


僕の屋敷が北西の貴族の屋敷が並ぶ地区だとすると今向かっているのは北東・・・確か北東には第三騎士団以外の駐屯所があるとか聞いた事がある


なので貴族の住む屋敷よりもかなり大きい建物が並んでおり店などもない為に歩く人もまばらだ


歩いているとある建物が目に入る


この建物なんかもかなり大きい・・・中庭から建物までの距離もさることながら奥に聳え立つ建物は屋敷と言うより宮殿と呼ぶに相応しいだろう


この建物は何の施設だろう・・・と思ったら案内の門番がその建物の前で足を止めた


・・・まさか・・・


「こちらになります」


「・・・ここに住めと?」


「あ、いや・・・私は公爵様のお屋敷に案内しただけでして・・・」


「いやすまん・・・困らせるつもりはなかった。ここか・・・」


別に家はこんなに大きくなくていいのに・・・無駄に大きいと掃除も大変だろうに


「こちらはローグ公爵様のお屋敷ですが何か御用でしょうか?」


立ち止まって屋敷を眺める僕達を不審に思ったのか入口前に立つ門番の1人が話し掛けてきた


「そのローグだ・・・中に入っても?」


「え?・・・はっ!ローグ公爵様が帰られたぞ!」


一瞬何の事か理解出来なかった門番だがようやく僕の言葉を理解すると4人いた門番は左右に分かれ僕達の通る道を作る


何か入りづらいのだが・・・


やりを片手に直立不動する門番達の作った道を通り抜け建物に向けて歩くといつの間にか見た事あるメイドと見た事ないメイドが入り交じり整列し左右に並ぶ


奥にはサーテンの姿が見えたので少しホッとするがメイド達はいつの間に外に出たんだ?もしかして帰る度にこうやって出迎える気か?


「お帰りなさいませご主人様」


サーテンが言うとメイド達は一斉に頭を下げ『お帰りなさいませ』と同時に発する


「・・・何回練習した?」


「引っ越してから数え切れぬ程です。準備が出来次第ご連絡しようと思ったのですが・・・まだ引っ越して間もないので何かと不都合があると思いますがご容赦下さい」


「今度からこんな大袈裟な出迎えはいらないから・・・じゃないと寄り付かなくなるぞ?」


「畏まりました・・・このまま中をご案内しますか?」


「うーん・・・いや、その前に何か飲み物をくれ。それとメイドが増えているようだから自己紹介を」


「畏まりました。ではまずは中でご寛ぎ下さい。それから新たに増えた者達の紹介を致します」


「・・・ああ、よろしく頼む」


そりゃあこれだけ大きい建物・・・以前の屋敷の数倍はあるだろうからメイドも数が必要だろう


けどこんな広さ・・・いるか?



広々とした玄関を通りだだっ広い広間にあるテーブルにつくとすぐに目の前にカップが置かれそのカップにコーヒーが注がれる


ナージは前に座りサラは僕の後ろに立つが目で合図して隣に座ってもらうよう促すと彼女は少し悩んだ後で隣に座った


チル達は知ってるけど他のメイド達にもサラは違うんだと知ってもらわないとね


ちゃんと座ったナージとサラの分もカップが置かれコーヒーが注がれるとメイド達が勢揃いしズラリと並ぶ


端から名前を名乗り簡単な自己紹介をされるのだが・・・これは覚えるまで時間がかかりそうだな・・・


「なにぶん屋敷が広くなりましたので急遽人を増やしました。ご主人様のお部屋は最上階の三階にあり屋敷にあったものは全てこちらに運んでおります。あと必要なものが御座いましたらお申し付け下さい」


「風呂は?」


これ大事・・・特にサラにとって


「ご安心を屋敷より広いお風呂が御座います」


「それは良かった。ざっとでいいからこの屋敷に何があるか教えてくれ」


「畏まりました。では──────」



説明を受けたが概ね前の屋敷とあるものは変わらない・・・全てがスケールアップしたくらいか


部屋の数も多いし食堂も広い・・・それにパーティーを開けるようなスペースやちょっとした訓練が出来る場所まで・・・厨房も少し覗いたが2人じゃ広すぎるな・・・10人以上料理人がいてようやく様になる感じだ。2人だとスカスカ過ぎて可哀想になってくる


「広いな・・・まさかこれ程大きな建物を新しく建てた訳でもあるまい・・・誰か住んでなかったのか?」


「以前住まれてた方は分かりかねますが確かに仰る通り既存の屋敷を改修したとの事です。ただ住まれてなくても掃除などはしていたようなので少しの改修で済んだようです」


住んでなかったって事は追い出したのではないって事だよな・・・僕の為に他人を追い出していたら申し訳ないしそれは良かったけど・・・


一体誰が住んでいたのだろうか


ここまで広い屋敷ならそれ相応の身分のはず・・・侯爵であるファゼンの屋敷も広いと思ったがここは段違いだ・・・となると今の僕と同じ身分・・・公爵か?


「ご主人様」


「ん?」


「文章は私めが考えておきましたので後はご主人様の許可が出ましたら送りたいのですが・・・」


「・・・一体何の話だ?」


「もちろん引っ越しの挨拶とお披露目パーティーの案内です」


「ああそうだな・・・もちろん・・・お披露目パーティー!?」


「かなり盛大になると思います。送る相手は厳選する予定ですが先方から話を聞き付けて参加したいと申し出てくる事もあります。日取りは余裕を持って1ヶ月後くらいがよろしいかと・・・それとご主人様が個人的に呼びたい方がいらしたら前もって教えて下さい」


「・・・うん、待て。そんなパーティーをやるなんて聞いてないぞ?」


「今申し上げましたが?」


「そうだね。今聞いたよ・・・そんなもんやる必要ある?」


「はいあります」


あるのねそうなのね・・・非常に・・・面倒くさい


「お金もかかるし引っ越しの案内だけで良くない?」


「良くありません。公爵になられたのですから社交的な事も学んで下さい。もう『辺境の田舎者』という言い訳は通用しませんよ?」


「んな言い訳使った事ないが・・・てかお前がそう思ってただけじゃないのか?サーテン」


「・・・では目を通しておいて下さい」


「おい・・・・・・・・・んの野郎逃げやがった・・・」


テーブルの上にはサーテンが言っていた手紙が置かれていた


それを手に取り一応目を通すが・・・本当にやるの?お披露目パーティー・・・しかも厳選したと言ってたけどこれは・・・


手紙とは別にリストがありそこには招待する予定の人達の名前がズラリと記載されていた


伯爵と侯爵・・・それに騎士団団長やらキースの名前まで・・・ん?シーリスも!?


・・・ハア・・・これからやる事盛り沢山なのに・・・貴族なんてなるもんじゃないな──────

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぴぃぴぃのひよこレベルの領主だけど優秀な人材に恵まれて周りが支えてる点 [一言] あまりにも駆け足すぎて貴族視点や立場などがわかっていないのがよくわかる話でした。 立場上無礼うちまであり得…
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