481階 繋がり
ヴァンパイアハーフのレファ・・・シアと魔族ベルフェゴールことベルが仲間になった
仲間になったのはいいけど2人に何をしてもらうか非常に困る
シアはメイドに・・・と思ったけど性格上と見た目上無理だろう。普通にお客に『お茶じゃ』とか言って出しそうだしメイドにしては幼過ぎる。ラルでギリギリと思ってたのにシアは更に下に見えるからな・・・200歳児だけど
ベルはもっと大変だ。頑なに僕の傍から離れようとしない
命令すれば離れるのだろうけどその命令がない・・・だから四六時中傍にいる状態が続いてる
一日目でウンザリして二日目でギブアップ・・・とりあえず草むしりでもしとけと言ったら素直に言う事を聞いたからようやく1人の時間を作れた
さて・・・これからリガルデル王国に戻って挨拶した後で・・・いや、それよりもフーリシア王国の王様に聖者聖女の件を各国に声明を出してもらうか
でもその前に魔蝕をどうするかだよな・・・とりあえずエモーンズに治療院を作って受け入れて・・・ゲートは魔道具として作れば何とかいけるか・・・それを各国にひとつずつ・・・いやそれじゃ足りないか・・・
全国から魔蝕の患者を受け入れるとセシーヌ1人じゃ足りないよな?けどせっかく帰って来た人達をエモーンズに閉じ込めるのも気が引けるし・・・そもそも今どれ位魔蝕にかかっている人がいるんだ?それすらも分からないし・・・うーん・・・あっ!いい事思い付いた!
「草むしり終わりました」
ナイスタイミング!
「ベル頼みがある」
草むしりを終えて部屋に入って来たベルフェゴール・・・コイツこそピッタリじゃないか
「何なりと」
「魔蝕って知ってるか?」
「はい。人間の体内にある核が何かしらの要因で傷付き魔力が漏れ人間を死もしくは魔人へと変貌させる病気ですね。各国によってその呼び方が違い・・・」
「分かってるならもういい。で、だ・・・調べてくれないか?魔蝕の事を」
「魔蝕の原因でしょうか?」
「ああ・・・それと現在の患者数とか『真実の眼』を使わずに治す方法とか・・・とにかく『魔蝕』に関する事全てだ」
「畏まりました。必ずや」
よし!これで調べ終わるまで僕から離れるし魔蝕の事も知る事が出来るし一石二鳥!
〘ロウ・・・釘を刺しといた方がいいわよ〙
〘なんて?〙
〘人間を殺すなって。ベルフェゴールならきっと無茶をする・・・調べる為に人体実験なんて平気でする男よ〙
げっ・・・それはマズイ
「ベル・・・人間を殺すのは禁止だ。もちろん襲われて返り討ちにしたとかなら構わないがそれも極力避けて欲しい」
「畏まりました。拠点はこちらの屋敷でよろしいですか?」
「あー、えっと・・・エモーンズかここか・・・そうだ通信道具を渡しておくからこれで何かあったら連絡くれ」
「ロウニール様、申し訳ありませんがワタクシは魔道具の類は使えません」
「え?」
「魔道具は人間がマナを使用し使う物・・・ワタクシはマナを使えませんので・・・」
あっそうか・・・サキュバスは使えるから忘れてたけど魔族って魔力しか使えないんだった
そうなるとベルとの連絡手段がないぞ?さすがに頼んでおいて放置は可哀想だし・・・
「もしよろしければワタクシをロウニール様の眷族にして頂けませんか?そうすれば連絡は取れるかと」
〘却下〙
「あー、眷族はもう少ししてからな・・・ほら、そんなホイホイ眷族増やすなって教わってきたし・・・な?」
「・・・はっ・・・」
めっちゃ落ち込んでるよおい
〘なんでダメなんだ?眷族にすればベルの言う通り通信道具がなくても・・・〙
〘眷族は家族みたいなものよ?ベルフェゴールと家族?冗談じゃないわ〙
ダンコがここまでハッキリと拒絶するのは珍しいな・・・本当に嫌なのだろう・・・ん?てか僕がベルって名付けたからもう眷族になっちゃったんじゃ?
〘サキやアナタの創った魔物ならまだしも名前を付けただけで眷族になる訳ないでしょ?サキと魔物は元々アナタと繋がりがあるから簡単になれるだけ・・・他の魔族と眷族になるには外部から繋げないと無理なの〙
〘外部から繋げる?〙
〘簡単に言えば魔力を注ぎ相手がそれを受け入れるって感じね。それを互いにやれば繋がりが出来て眷族化出来るわ。サラやセシーヌ、それにペギーは精神的な繋がりだけだから準眷族って感じね〙
〘サラとは肉体的にも繋がってますがそれは・・・〙
〘ぶっ殺すわよ?アナタの精子は魔力か〙
〘違うな・・・〙
なるほど・・・魔力と魔力の繋がりが眷族なのか・・・となると人間相手では本当の眷属にはなれないってことか
〘マナ同士でも出来るかもしれない・・・まあでも眷族化する必要もないでしょ?精神だけの繋がりでも相手のマナ量は増えているのだし〙
〘まあね〙
っと、話が脱線した・・・今はベルの通信手段の事だよな
うーん・・・うーん・・・・・・・・・・・・あっ
「・・・ペット・・・」
「ペット・・・ですか?」
「うん。僕が創ったペットならいけるかも。基本魔物と同じ構造だし魔力をマナに変換出来るし体内に通信道具を付与してそれにマナを注げば通信出来る・・・よし早速創って来よう。何か希望する形とかある?あとは大きさとか・・・」
「素晴らしいアイデアですロウニール様!出来ましたらロウニール様を象った小さき魔物などはどうでしょうか?それでしたらワタクシもロウニール様と離れていてもある程度は平気ですし何よりやる気が出ます。ロウニール様を肩に乗せれば仕事の効率も上がるというもの・・・出来ればそっくりにして頂けると助かります。知能を付ける事は可能でしょうか?もし可能であれば会話が出来る程度でいいので付けて頂きたいと思います。そうすれば・・・」
「却下」
コイツ・・・ヤバいな──────
ペットを作りとシアとベルを紹介する為にエモーンズへ
シアは少女の姿だからかメイド達に早速チヤホヤされ、ベルも見た目はいいから初めは良かったがメイド達に冷たい視線を送るのでゲンコツを食らわせた
まあ『女嫌い』を治せとは言わないけどとりあえずあからさまな態度はやめて欲しい・・・コイツが女性の素晴らしさに気付く未来はあるのだろうか?
そう言えばメイドも増えた・・・募集したら意外と集まったみたいだが・・・
「新しいメイド達はどうだ?シツジ」
「何とか・・・」
「うぎゃぁ!」「またお皿割って!一度に運ばなくていいって言ってるのに!」
「・・・やっております」
「賑やかで何よりだ」
ま、まあいずれ慣れるだろう
屋敷にいる人達に紹介が終わったので今度はダンジョンへと向かった
ダンジョンの司令室に行くとシアとベルは興味津々・・・200年生きていてシアはダンジョンに行ったことがないらしい。ベルもほとんどないのだとか
魔族はダンジョンにいて魔王復活と共に出て来るものかと思っていたけど別にそういう決まりはないらしい
魔族は僕がダンコに初めて出会った時みたいな玉の状態でダンジョンに入り自らの体を構築する量の魔力を溜めるのだとか・・・魔獣と同じように魔族も体内に魔核は存在しない・・・魔核みたいな玉自体が姿形を変えて魔族となるからだ
まあそもそも魔核や核は魔力をマナに変換する装置だから魔族に必要あるかって言ったらないからな・・・ないのは当たり前か
ベルは他の魔族みたいにダンジョンには行かずに普通に道端・・・と言っても人目のつかない所で魔力を溜めて今の姿になるらしい。なぜダンジョンに行かないのか・・・その理由はただひとつ『ダンジョンコアが女』だからそうだ
確かにサキュバスだけども!どんだけ嫌いなんだよ・・・
「あら?ロウ帰ってたの?・・・それと・・・」
司令室にサラと珍しく人型になっているサキが現れた
屋敷にいないと思ったらここにいたのか
「ちょっと寄り道。今後共に行動する事になった2人を紹介するよ。シアとベルだ」
「へぇ・・・サラ・セームンよ。よろしくね」
「レファレンシア・オートニークス・エムステンブルズじゃ」
《ベルフェゴ・・・グハッ》
「威嚇すな」
サラとサキに対して威圧的に名乗るベルの腹に拳をめり込ませる・・・コイツは本当に・・・
「ベルフェゴール・・・またとんでもないのを連れて来たにゃ」
「とんでもないって・・・サキはこの人の事知ってるの?」
「知るも何も・・・全女性の敵にゃ。ちなみに人ではなく魔族にゃ」
サキはそう言うと人型から猫に変身しベルを横目にトコトコ歩いてシアに近付いた
「・・・こっちもこっちで妙なニオイにゃ・・・どこか懐かしいような・・・けど魔族ではないにゃ・・・何者にゃ?」
「懐かしいとは・・・昔ワシに飼われた事でもあるか?猫よ・・・ワシはヴァンパイアハーフじゃ」
「ヴァンパイアハーフ・・・道理で・・・また濃いのを連れて来たにゃ」
そう言うとサキはシアの前を通り過ぎ僕の肩に・・・そして何故かドヤ顔でシアとベルを見ていた
「ヴァンパイアハーフ?その子も魔族なの?」
「いや、シアは魔族ヴァンパイアと人間の子だ。どちらかと言うと僕に近いかな?ちなみにこんな格好をしているけど200歳児だ」
「200!?」
「おい!格好はお主のメイド達のせいじゃろ!」
「なんだ好きでその格好しているんじゃなかったのか・・・それもそうか・・・シアは布派だもんな」
「布は好きで着ておった訳ではないわ!あれは同情を引く為に着てただけじゃ!」
「いや無理しなくてもいいぞ?いい布作ってやろうか?」
「このっ!・・・フン!それよりこの子がロウニールの想い人か?確かあの時『サラ』と言っておったはずじゃ」
「ちょ・・・あなた子供に何を吹き込んでいるのよ!」
「いやだから200歳児なんだって・・・それに別に吹き込んだりしてないから。あの時は・・・」
「うむ。あの時はワシを犯すか迷っていたが結局想い人がいると諦めた・・・じゃったかな?」
「・・・ロウ?」
「違うだろ!改変すな!一ミリも迷ってないし!そもそもお前が・・・」
「ロウ?詳しく聞かせて?」
背筋がゾクッとして振り返ると笑顔のサラがいた
顔は笑っているけど目は笑っていない・・・サラがいたんだ──────




