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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
479/856

475階 どっちも嫌い

それは悪魔の囁きだった


サラと居る時にこの時間が永遠に続けばいいのにと何度も思った・・・それが今少女の手を取れば叶うのだ


「どうした?臆したか?それとも・・・所詮お主の愛は偽りだったか?」


「・・・その言葉をそのまんま返す・・・お前の二度の愛は偽りだったのか?」


「・・・」


「て言うかなぜそこまでしてくれる?お前にはメリットがないように思えるが?まさか彼女を使って僕を操ろう・・・なんて考えちゃいないよな?」


「な、何を言う!ワシはそんな邪な考えではなく純粋にじゃな・・・」


この狼狽え方は当たりだな。サラを不老不死にする代わりに僕を上手く使う気か・・・定期的に摂取が必要になるみたいだし隷属化すればいざと言う時に命令出来る・・・『言う事を聞かなかったらサラを殺す』と言われれば僕も言う事を聞かざるを得ないし・・・危なく釣られるところだった


「何を企む?それともゲンコツ以上の躾が必要かな?」


「ま、待て!この身体ではさすがに無理・・・」


「何を想像してんだ何を!」


「男なんぞそんなもんじゃろ?」


スレてるな・・・さすが200歳児


「僕はサラ以外とはしないと心に決めているんだ・・・てか、もしサラがいなかったとしても少女に興味は無い!」


「声を大きくするのは動揺している証じゃ。そこまでしなければならないとは・・・やはり男は変態ばかりよのう」


「・・・不老不死と言ったな?首を飛ばしても生きてられるか確認していいか?」


「待て待て!なんじゃその凶悪な刀は!」


「カミキリマル」


「刀の名前など聞いてはおらぬわ!てか首を飛ばされても生きてられるかなんて知るか!試した事などないわ!」


「そうか・・・死んだらごめんな」


「謝るな!て言うかすなー!うおっ!」


チッ・・・躱しやがったか


「・・・お主今・・・ワシがしゃがまなかったら・・・本当に・・・」


「冗談に見えるか?悪い芽は早目に摘むに越したことがないと思う派なんでね・・・」


「お、お主とワシの仲ではないか」


「ああ・・・そう言えばそうだな・・・数分前に騙されて奴隷にさせられそうになった仲だったな」


「・・・幼気な少女ぞ?」


「中身は200歳だけどな」


「心が痛まぬのか?一生モノのトラウマになること必至じゃぞ?」


「逆に心が軽くなりそうな予感がする・・・今見逃すと後で後悔しそうだし」


「・・・くっ・・・こうなったら・・・これでどうじゃ!」


何をするかと思ったら頭から被ったボロ布をたくし上げた


一瞬チラリと見えたのは下着も付けていない剥き出しの状態・・・首が折れるかと思うくらいの勢いで顔を背けたお陰で見なくて済んだ・・・いや、ちょっと見えてしまった・・・


「くっくっくっ・・・どう聖人君子ぶろうがワシのを見て昂っておろう?その昂りを受け入れてやらぬ事もないぞ?少々痛むであろうが背に腹はかえられ・・・」


「そうか・・・受け入れてくれるか・・・コレを」


「ちょ!・・・そっちじゃない!股間にそそり立つ・・・って刀を股間の前で立てるな!それじゃない!」


首を飛ばすだけじゃダメだ。縦に三枚に下ろそう。そうだそうするしか・・・ない──────




「ひぃ・・・ひぃ・・・」


チッ、逃げ切られたか


小さく無駄にすばしっこいからタチが悪い・・・逃げに徹しられたら結構厄介だな


「お、お主は鬼か!局部を晒した少女を追い回すとは・・・」


「ん?何を晒したって?200年生誕祭にお前の手足をテーブルに並べられたいのか?」


「怖いわそんな生誕祭!祝う気ゼロどころかマイナスに振り切れとるじゃろ!」


「・・・それで?本当は何を企んでる?なぜそこまで必死になって僕を味方にしようとしているんだ?」


どうにもおかしい


さっきまでは血を吸える時に吸いたいから演技してまで冒険者に買われて悪い奴だったら吸ってやろうとしてたと単純に思っていたしそう言っていた


けど僕を隷属化しようとしたりサラを隷属化して僕を操ろうとしたり・・・まるでそうしないとダメな状況にあるような・・・


「・・・つい先日の事じゃ・・・」


「ん?先日?」


「ある男がワシを訪ねて来た・・・最初は何者か分からなかったが少し見せつけてきた奴の片鱗は到底ワシの敵うものではなかった・・・」


「ヴァンパイアハーフのお前が?もしかしてそいつは・・・」


「そやつは自らをベルフェゴールと名乗りおった」


「ベルフェゴール?」


〘魔族ベルフェゴール・・・厄介ね・・・〙


やっぱり魔族か・・・シアにそこまで言わせる奴なんてそうそういないだろうし魔族だとは思ったけどダンコが厄介って言うほどの魔族とは・・・


「それでそのベルフェゴールはシアに何て?」


「仲間になれと・・・いやあの言い方は仲間と言うより下僕になれと言っているようなものじゃった・・・ワシを見下ろし嫌悪するような目で・・・その場はすぐに去ったがまた来ると言っておった。いつ来るか分からぬからな・・・その間に戦力を整えようと思った矢先にお主に会った・・・それが事の顛末じゃ」


「なるほどね・・・じゃあコイツらは隷属化しようと?」


「うむ・・・まあ使えそうもないがそれなりに役には立つじゃろうと・・・盾くらい・・・いや、数秒稼げればいい方か・・・けどそこにお主が現れた。お主となら対抗出来るやもしれん・・・あの恐ろしい男に・・・お主となら・・・」


〘・・・そんなに強いのか?そのベルフェゴールは〙


〘まあまあね・・・でもおかしいわね。彼は・・・いえ心変わりでもしたのかしら?〙


〘何がおかしいんだ?〙


〘彼はね・・・『女嫌い』なの。だから女性を仲間に誘うなんて・・・サキュバスも女という理由で下に見られてたからね〙


〘ベルフェゴールの事は詳しいな・・・他の魔族はそうでもなかったけど〙


〘ええ、だって・・・ベルフェゴールは魔王の忠臣と呼ばれる存在だったからね──────〙




ベルフェゴール・・・『探求』と言う能力を持ち相手を識る事に特化した魔族


知識欲が強く、気になればとことん追求する魔族一の・・・面倒くさい奴らしい


元々魔王の配下で忠義に厚く魔王も信頼を寄せていたらしいのだが女嫌いが災いして魔王の創ったサキュバスには冷たくし彼女達からは不評だったらしい


人間を知り尽くし溶け込む事が出来る為にほとんどの場合が他の魔族のようにダンジョン内で待つのではなく人間社会にて魔王の復活を待ち望んでいるのだとか


そのベルフェゴールが動き出した


仲間を集めて一体何をするつもりだ?


〘まあまあ強いと言ったり厄介と言ったり・・・結局どっちなんだ?〙


〘強さは言った通りまあまあよ。ベルゼブブやパズズよりはって感じね。ただ・・・〙


〘ただ?〙


〘アナタが魔王を倒したと知ったらどう出るか・・・いや、もう既に知っているのかも・・・彼の忠義は執着に近い・・・毎回魔王が復活すればいの一番で駆け付け手足のように動く・・・彼が人間社会に溶け込んでいるのも魔王にその得た知識を使ってもらう為とも言われているわ〙


〘尽くすなぁ・・・確かにそいつに知られたらただじゃ済まないかも・・・〙


〘魔王が人間に恐れられている大半の理由は彼の仕業よ。狡猾で残忍で・・・人間が苦しむ方法を知っているからね。人間を生かさず殺さず如何に魔力を集め魔王の力を高めて勇者を倒すか・・・それだけを考えているサディスト変態魔族・・・それがベルフェゴール〙


〘・・・ヴァンパイアとベルフェゴール・・・どっちが嫌い?〙


〘甲乙つけ難い感じ〙


やっぱりヴァンパイア嫌いなんじゃないかよ


でもそっか・・・魔王の腹心みたいな存在で魔王の為に!みたいな奴が動き出したとなると不味いな・・・僕を殺す為に戦力を集め人間社会に溶け込んでいるとしたらそれを利用する手で来るかも・・・


「なんじゃ?さっきから黙りこくって・・・もしやベルフェゴールと聞いて芋を引いたか?」


「いや・・・てか、なんでお前がヴァンパイアハーフってベルフェゴールは気付いたんだ?血でも吸ってるところを見られたのか?」


「そんなドジする訳なかろう。何故かは分からぬ・・・突然やって来て仲間になれと言って帰っただけじゃ。いつ次来るかも分からん」


何故シアがヴァンパイアハーフだと分かったのか・・・仲間を集めている理由も不明だし次いつ来るかも分からない・・・分からない尽くしで手の打ちようがないな


いや待てよ


「シア、先日っていつの話だ?」


「えっと・・・4日前じゃのう確か」


4日前か・・・魔族の日にちの感覚はどうなっているのか知らないけどそろそろ来てもおかしくないかも・・・なら・・・


「スラム街の住み心地はどうだ?」


「いきなりなんじゃ・・・飯は不味くて空気は汚れておる・・・それに所々痒くなるし怪しい目付きで見られる事が多いが・・・それ以外は特に何ともない」


「・・・」


「なんじゃ!憐れみの目で見るでない!何の意図があってそのような事を聞いたのじゃ」


「また来るんだろ?なら僕が相手してやる・・・そのベルフェゴールと」


「・・・今更になってワシの身体が惜しく・・・」


「それ以上戯言を言うならこの冒険者達と同じ事をしてやる」


「?同じ目に合わせてやるではなくて?」


「コイツらはお前が襲われるのを見て楽しんだ後にゴブリンを討伐しようと企んでいたらしい」


「ほう・・・それは稀に見るクズじゃな。うん?という事は・・・」


「ベルフェゴールにやられるのを見た後で討伐する」


「・・・お主には良心というものがないのか・・・」


「人を少女趣味と言う奴を助ける方が異常だろ」


「器が小さいのう」


「何か言ったか?」


「空耳じゃろ・・・しかしお主が魔王を倒すくらい強いと分かったが勝てるのか?ベルフェゴールに」


「・・・多分」


ダンコのまあまあ強いがどれほどなのか・・・けどいずれ僕が魔王を倒した事に辿り着き後手を踏むのは避けたいしどうにかしてここで決着をつけたい


「ふむ・・・身体目立てではないとしたら逆に気になるのう・・・『多分』と言うという事は勝てる確信がないのじゃろ?それなのに突然相手してやると言い出すとは・・・」


「善意だよ善意・・・変に勘繰るなよ鬱陶しいから」


「鬱陶しい・・・別にワシは逃げてもいいのじゃぞ?住む場所を転々としてきたワシにとって長年住んだ場所だろうと移る事は苦でもないからのう」


「・・・そう言えばなんで逃げなかったんだ?」


「ど、どうでもいいじゃろ!そんな事!そ、それよりどうじゃ!逃げてしまうぞ?いいのか?」


「逃げるかそうか。ならスラム街のどこかの建物に括り付けて・・・いや、磔にするか・・・杭でも作って壁に・・・」


「・・・お主なら本当にやりそうな気がする・・・まあいい!しかし乗り掛かった船から簡単に降りる事は許さぬぞ!」


「偉そうに・・・助けて下さいだろ?そこは」


「なっ!?だからワシは逃げればいいだけで・・・」


「なら磔に・・・」


「無限ループやめんか!」



という訳で何故か魔物の調査に来て魔族退治の流れに・・・


ベルフェゴールか・・・魔族と戦うのは魔王以来か?ちょっと緊張するな──────

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