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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
476/856

472階 囮少女

僕は今リガルデル王国の王都サーテルデールの建物の上からある人物を眺めている


その人物は・・・アルオン


僕を探している最中だ


軍服から普段着に着替えてまで僕を探している理由はただ一つ・・・僕に付きまとうため!


昨日のパーティーは無事終わった・・・抜け出した後、戻ってみると王様がいて僕に気さくに話し掛けた事により他の貴族共がわらわらと押し寄せあっという間に時間が過ぎていった


夜は同じようにメイドを選んでかくれんぼ・・・もといリガルデル王国を抜け出してフーリシア王国の王都の屋敷で風呂に入り寝て朝方戻って来た


で、昨日アルオンに言った言葉をそのまま王様に伝えて街に出ると・・・あのクソアルオンが僕を追いかけて来たので逃げて今に至るってわけだ


護衛目的みたいな事を言っていたが本当の目的は監視・・・だろう


ちなみに将軍なのになぜそんなに暇なのか尋ねたら今戻って来ている10万・・・いや5万の兵士の半分はアルオンの軍に所属する兵士らしくまだ戻って来ていない為やる事がないのだとか


一瞬オルシアは自分の兵士じゃなくてアルオンの兵士を前に出させたのでは?と思い焦ったがどうやら報告を聞く限りでは全くの逆でアルオンの兵士はほぼ無傷であるらしい


まあとは言え同じ国の人を僕に殺されたのは事実であり自分の兵士じゃなかったらいいかって言ったらそうでもない・・・かと言って憂さ晴らしに付き合うつもりもないけどね


という訳でアルオンから逃げる為にゲートを使って離れた場所から見ているわけだがどうやら諦めそうにない・・・街の中も見て回ろうと思ってたけど諦めて街の外・・・魔物がどれくらい出歩いているか調べる事に


本当は冒険者ギルドに行って依頼書を見たかったけど仕方ない・・・冒険者ギルドを探している内にアルオンに見つかる可能性が高いから諦めた



ゲートを開いてまずは上空から王都を見下ろす


高い壁と東西南北にある門・・・中央には城がある巨大な都市から視線を動かし周辺を見渡した


王都の4つの門から伸びる街道・・・その間には広大に広がる平地があり更に奥には何ヶ所か森が点在する


もし魔物がいるとしたら森だろう・・・シャリファ王国の時も森に身を潜めていたし


人間に見つからないように行動しているのか住みやすさからなのか・・・どっちなんだろう?


〘どっちもよ〙


〘どっちも?〙


〘ダンジョンから出ている時点でほとんどの魔物が細かい命令を受けていないわ。大体は『外に出ろ』と命令してその後は魔物がどうするかはその魔物次第なの。人間を率先して襲う魔物もいれば人間を恐れ隠れる魔物もいる。ただ共通している点は『種の保存』よ〙


〘『種の保存』・・・そう言えばそんなような事をリザードマンの時に聞いたな・・・〙


〘思い出した?ダンジョンから出た魔物は自由を得る・・・そして道具から生物になるの。つまり立場的には人間と同じ。ダンジョンにいる時は種の保存なんて考えずに済んでいた・・・減ればマナさえあればいくらでも増やせる状態だったからね。でも外に出た時点でそうはいかなくなる。本能的にそれを悟ると魔物は種を保存する為に行動するの・・・外敵から身を守ったり個体を増やしたりひたすら逃げたり・・・〙


〘魔物によって違うのか・・・外敵ってのは人間って事だよな?〙


〘そうね。けど魔物同士が争う事もあるから一概には言えないけどね〙


〘魔物同士で?〙


〘ええ。種族同士は共に行動することがほとんどだけど別の種族となると考え方もやり方も違うしね・・・ゴブリンとオークなんて仲が悪くて互いに罵りあったりするわよ?〙


〘へ、へえ・・・そうなんだ・・・〙


魔物と一括りに考えてたけど種族によって違うのか・・・ダンジョンだとダンジョンコアの命令通りに動いているから入って来た人間を襲うだけ・・・けど一旦外に出れば自由になるから自ら考え行動する・・・ただ単純に魔物がダンジョンの外に出たって考えない方が良さそうだな


自衛の為に人間もしくは敵対する魔物を攻撃する積極派、数を増やし戦力の増強を図る慎重派、ひたすら逃げる消極派・・・そんな感じかな?


とにかく外に出た魔物はダンジョンにいる時より何倍も厄介な存在だってことだな


襲って来るのは変わらずだけど勝手に増えたり逃げたりと行動が複雑化している


ダンジョンコアが魔王を復活させる為にマナを溜めている時が人間にとっては一番安全だったってことか・・・ダンジョンブレイクさえ気を付ければ魔物に襲われる心配はしなくていいわけだし


けど遅かれ早かれ魔物は外に出ていた・・・マナが溜まれば魔王は復活しマナを溜めずに済むようになる。かと言ってマナを溜めさせないように調整しようにも人間はその事を知らないからそもそも調整なんて頭にはないし僕が教えたとしても信じてはもらえなかっただろう・・・仮に信じてもらえたとしても調整なんて出来たか?少なければダンジョンブレイクが起きるし多ければ魔王復活を早めるし・・・うん、無理だな


ただ・・・魔王復活までの期間が遅ければ遅いほどダンジョンだけに魔物が存在する期間は長くなっていたはず・・・いずれは起きる事が早まったのは僕が急激にマナを集め魔王復活を早めたからだ


そう考えるとやらかしているよな・・・魔王を討伐したくらいじゃ釣り合いが取れないくらいに


〘けどそのお陰で救われた人間もいるわ〙


〘・・・怖い・・・最近どうした?ダンコ〙


〘至って普通だけど?〙


〘嘘つけ・・・まあいいや、ダンコが何を企んでいようが結局は僕の為になる・・・だろ?〙


〘企むって失礼ね。アナタより色々深く考えているだけよ・・・それに『僕の為』じゃなくて『私達の為』になる、よ〙


〘はいはい・・・とりあえず魔物の習性は何となく理解したから今度は現地で確認してみようかね・・・大国リガルデル王国の王都周辺にはどれくらい魔物が潜んでいるのか・・・いざ調査だ──────〙




いくつかの森を探索してみたが意外と魔物の数は多かった


気配を殺して見ていたので見かけた魔物が積極派なのか慎重派なのか消極派なのか分からないけど全ての魔物に言えることは『生活』している様子だった


魔物は下級・・・二足歩行の人型だとゴブリンやコボルトが主で他にはお馴染みスライムやブラッドドッグやバウンドキャットの姿も確認出来た


一体の魔物を見かけるとその周辺はその魔物で占められており縄張りがあるように思えた。ダンコの言う通り種族同士は共に行動し他の種族を寄せ付けないようにしているようだ・・・人間にとってはその方が助かる・・・手を組まれたら厄介だしね


下級だから慎重派か消極派が大多数なのかも・・・本能的に人間には勝てないと理解し隠れ住んだり個体を増やして戦力を整えて・・・


〘なあゴブリンはなんとなく分かるけど他の魔物ってどうやって数を増やしてるの?特にスライム〙


〘スライムは分裂して増えていくわ。マナを満タンにしないといけないけど相手は要らないから放っておくと一番増えるのが早いかもね。他はダンジョンを出る際にオスとメスになりその種族同士で交配する感じ。あとは・・・ゴブリンコボルトのように異種交配する種族とリザードマンみたいに卵を産むとか様々ね〙


分裂・・・スラミも分裂するかな?


頭の中で分裂したスラミ達が大勢で僕を迎えてくれる姿を想像してやめた・・・絵面が怖くて


あくまで調査なので見かけても刺激しないよう気配を殺し引き続き色々見て回っていると冒険者に遭遇した・・・が、なんだか様子がおかしい


先頭にぼろ布を被せただけの女の子・・・そこから少し離れた場所を歩く4人の冒険者・・・何してんだ?コイツら


バレないギリギリの距離まで近付いて耳を澄ますと気分の悪くなる会話が聞こえてきた


「穴として使えねえような子供を買ったと思いきやそういう事かよ」


「妙案だろ?最近ゴブリン狩りにも飽きてきたからな・・・奴らは女と見りゃババアでもガキでも見境なしに襲う・・・囮に使えるしショーも見れるし・・・」


「お前・・・いい趣味してんな?」


「合法かつ刺激的・・・奴隷をどう扱おうが法には一切触れないしこれよりえげつない事してるって噂だぜ?貴族連中はよ」


「しっかしよく買えたな奴隷なんて・・・前に奴隷市に行ったら目が飛び出たのを覚えてっけど・・・お前俺らに内緒でどうやって溜め込んだんだよ」


「そりゃーお前・・・スラム街に行きゃ奴隷市にも並ばねえような格安奴隷が買えるって聞いてな・・・そこで・・・」


「非合法じゃねえか・・・何が『合法かつ刺激的』だよ」


「だから使い捨てにするのさ。連れてたらいずれ捕まるかもしれねえから処分は早目にってな」


頭が痛くなるな


リガルデル王国では奴隷は合法なのか・・・けど話を聞く限りではあの先頭を行く女の子は奴隷ではなくスラム街でお金に困った親が子を売ったとかその辺か・・・しかも二束三文で


食い扶持を減らしかつその日の食事にありつけるくらいの金を得る・・・か。働けない年齢の子ならそれだけで親は助かるってか・・・売った方も買った方も・・・それを放置している国も最悪だな


けど・・・僕はそんな家族を増やしてしまったかもしれないという事実・・・


〘ロウ・・・いい加減に・・・〙


〘分かってる・・・素知らぬフリをするより考えた方が楽になるんだよ・・・そして見て見ぬフリをせず考え実行する・・・その力が僕にはある・・・と思うから〙


にしてもスラム街か・・・リガルデル王国の王都にもあるんだな。ちょっと意外だ


〘っ!ロウ〙


〘ああ、分かってる・・・奴らの言うように・・・〙



ゴブリン達のお出ましだ



先を行く女の子を取り囲むように集まって来ている


慎重に様子を伺い確実にヤれる距離に入ったら一斉に襲いかかるつもりらしい


4人の男達の中のスカウトもそれに気付き会話をやめて息を潜める


奴らの作戦では少女が襲われている隙にゴブリン達を背後から襲い一網打尽にするつもりなのだろう・・・無論少女を助ける気はサラサラない、と


イヤな世の中だね・・・本当


「っ!・・・ひ、ひぃ!」


少女の視界にゴブリンが・・・少女はその場にヘタリ込みその様子を見て冒険者達が下卑た笑みを浮かべた


少女以外は生かす気はないから変装する必要もないだろう


ゲートを使い少女の隣に立つと今まさに襲いかかろうとしていたゴブリン達をひと睨み・・・するとゴブリン達は足を止め顔を引き攣らせると何故か去って行ってしまった


少女を格好良く助けて冒険者達を処分しようと思ったのに・・・ま、まあ少女は助かったし冒険者はこれから処分すればいっか


怯える少女の頭に手を乗せて安心させる為に微笑む


「もう大丈夫だ」


「邪魔しおって・・・何が『大丈夫』じゃ愚か者めが」


・・・え?──────

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