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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
474/856

470階 かくれんぼ

「何を言っているのか分かっておるのか?貴公は我々に死ねと言っているのと同義・・・それが分かってて・・・」


王様の言いたい事は分かる


聖者聖女がいなくなれば魔蝕にかかった者は死か魔人・・・ぶっちゃけ死の方だったらマシ・・・魔人になれば身近な人から傷付ける事になる・・・そして最終的には同じ人間に殺されて・・・


魔物が出て来て魔族が暗躍する中、魔力の濃度は上がり魔蝕にかかる人が増える可能性が高い・・・そんな時に唯一魔蝕を回復出来る人を国から連れていくと言っているのだ『死ね』と同じと言われても仕方ないだろう


「今までフーリシア王国がやってきた事に関しては謝罪します。善意でやっているように見せかけて悪意たっぷりだったのは言い逃れ出来ませんから・・・聖者聖女を脅しの道具のように使うのは今後一切しないとお約束します。それと同時に聖者聖女を故郷であるフーリシア王国に帰してあげたいのです」


「だからそれだと我が国は・・・他の国とて・・・」


「まだ検討中ですが魔蝕を放っておく訳ではありません。・・・これもまた信じてもらえないかもしれませんが魔蝕の原因となる魔力は人間の負の感情によって濃度が変わります。怒り、恐れ、悲しみ、苦しみなどの感情が高くなればなるほど魔力は大気中に濃く蔓延しそれにより魔蝕の発生率も上がるのです」


言いながらチラリとメバスを見ると彼は首を縦に振った


「その件に関しては同意します。過去の統計から情勢が不安定な時ほど魔蝕を患う人が多いのは事実です」


「・・・原因が分かったところで対策のしようがあるまい・・・辛くても笑って過ごせと言うのか?」


「いえ・・・魔力の根絶は難しいでしょう。ですが薄くは努力すれば出来るはずです。まずは各国で協力し争いをなくし平和な世を作ること・・・それに専念すれば・・・」


「魔蝕を患う者は必然的に少なくなる・・・か。それで検討中の案とは?」


「ひとつは聖者聖女のみが治療出来た魔蝕を他の者でも治療出来るようにする事。これは出来るかどうか分かりませんが魔蝕の仕組みが分かれば対処法もあるかと・・・奇跡の治療みたいに扱われていますが単純に聖者聖女は『真実の眼』を使い魔蝕の原因となっている核の傷を塞いでいるだけです。根本の原因を治さずに回復魔法を続けても無駄なのは核の傷から魔力が漏れているから・・・傷を修復すれば平常通り魔力をマナに変換し普通の生活が送れるようになるでしょう」


「っ!・・・それは秘匿なのでは?」


「隠す必要はもうありませんから」


「・・・貴公がフーリシア王国にいるからか?」


「どうなのでしょう・・・ですが陛下の仰った不安な日々はもう来ないとお約束します。魔蝕に関しては、ですが」


「・・・その『真実の眼』がなくとも治療は可能と思うか?」


「前例がないので何とも・・・ですよね?メバス殿」


「くっ・・・」


「あまりメバスを虐めないでくれ。それで?ひとつは、と言っていたが・・・」


「はい。ふたつめは治療院を作る、です」


「治療院?今の教会のようなものか?」


「はい。そこに聖者聖女が待機し魔蝕の治療を行うのです」


「・・・魔蝕を患った者が自らフーリシア王国に赴き治療を受けよと?」


まあそうなるわな


ただでさえ具合が悪いのに長距離を移動するなんて無理な話・・・もう隠す必要もないのでサクッと言おう


「私の能力『ゲート』を使います」


「っ!!?なに・・・ゲートだと?いや貴公は召喚士であると・・・」


「召喚士は適性みたいなものです。ゲートは聖女の『真実の眼』と同じ・・・」


「ギフト・・・か」


ギフトって言い方に少し疑問を覚える


贈り物ではないからな・・・なんてたって僕の場合は違うけども能力は祖先に魔族といたした人がいたって事になる・・・それが恋愛によるものなのか強引に・・・まあほとんどが強引のような気がする・・・うん


「ダンジョンにあるゲート・・・それと同等の物を作る事が出来ます。マナを流せばゲートが開き繋がっている特定の場所への移動が瞬時に・・・ただ問題がありまして・・・」


「問題?」


「簡単な分、悪用する事も簡単に出来てしまうのです。治療院はフーリシア王国内に建設するとして他国の人が容易にフーリシア王国に来れるようになってしまいます。魔蝕にかかった人だけではなく招かざる客まで」


「管理の問題か・・・」


「はい。もし違う目的の方がゲートを使ってフーリシア王国に侵入したとしたら・・・治療院は閉鎖せざるを得なくなります。その時までにひとつめの治療の確立が出来ていれば問題ないのですが・・・」


出来てなければフーリシア王国以外の国は終わる


「では治療をする聖者に来てもらえば・・・そうすれば問題は・・・」


「もちろんそれも考えました・・・が、聖者聖女の身の安全は誰が守りますか?」


「当然訪問先の国だろう」


「その国を信用出来ますか?もし戦争を起こしたいと思っている人がいたとして簡単に戦争を起こせる方法があったとしたら?」


「・・・」


レオンみたいな思考の奴がいないとも限らない・・・いや、いるだろうな多分


どっちにしろ危険と分かったら聖者聖女達に危険が少ない方を選ぶ・・・だから治療院を作り訪問させる


まあ具合が悪くて動けないって事なら訪問する事になるだろうけど極力それは避けたい


「・・・治療院を作るとしたらやはり王都フーリシアか?」


「いえいえまだ検討中ですが王都にするつもりはありません。作るとしたらエモーンズに作ろうと思っています」


「エモーンズ?・・・はてそのような街があったか・・・」


「フーリシア王国最南端の街・・・そして私の領地でもあります」


そう・・・しかも移住を可にすれば黙ってても人が来る・・・魔蝕になっても安心でこれから発展する事間違い無しの大都市エモーンズ・・・あ、合併するから名前変えた方がいいのか?エモーンズとムルタナとケセナで・・・エムケ?


「ふむ・・・他にはないのか?」


「今のところは・・・ですが各国に通知し案を出してもらいます。私が思い付かないだけで他にも良い案があるかもしれませんので」


「各国に、か・・・本当に終わるのだな」


「・・・はい。魔蝕に怯える日々は終わります。そもそもそれも魔力を濃くする一因にもなってたはずですし・・・」


僕が言い終わる前に王様はおもむろに立ち上がりなんと・・・頭を下げた


「貴公に感謝を。それと此度の件での謝罪を」


「・・・感謝は受け取ります・・・が、謝罪は国に」


「そうしよう。今夜はよく眠れそうだ・・・時間はあるかね?ローグ公爵」


「時間と言いますと?」


「急な訪問で準備が出来ておらぬのだよ・・・明日までに準備しよう。だから時間があれば今日はこの城に泊まって欲しい」


「・・・この城に・・・ですか?その準備とは?」


「歓迎の宴の準備だよ──────」




なんだか頭を下げた後の王様は険の取れた表情をしていたな・・・よっぽどフーリシア王国の『毒』が効いていたのかそれとも演技か・・・演技で公爵とはいえ一国の王様が頭を下げられるか?しかもリガルデル王国の兵士5万人を虐殺した僕に


分からない・・・このままだとフーリシア王国が悪でリガルデル王国が正義みたいな図式になってしまう・・・本当ならフーリシア王国も悪かったけどリガルデル王国も悪かった・・・だから喧嘩両成敗みたいにして仲直り・・・ってはずだったのに・・・


用意された豪華な部屋のふかふかのベッドに顔を埋めながらリガルデル王国の悪い点を探す


さっきの夜ご飯は・・・美味かった・・・いや、そんな微々たるものではなくフーリシア王国がやってきた事と同等くらいの悪い点・・・そう・・・国境の壁を破壊した・・・まあすぐ直せそうだし・・・国境付近の戦いで何人もフーリシア王国の人達を殺した・・・まあでもその何倍・・・下手すりゃ何千倍も殺してしまったし・・・ケインを・・・まあ生きてたしたまにはやられた方がいいんだアイツは・・・ディーンを・・・ピンピンしてたなそう言えば・・・くっ、なんだかそこまで悪い事してない気がしてきた


てか今回一番人を殺しているのって僕なんだよな・・・それだけみれば僕が一番悪・・・僕に殺された兵士達にも家族や恋人・・・子供がいるかもしれないのに・・・



悩むな・・・もう覚悟した事だ・・・大事な人が殺されるくらいなら先に僕が・・・・・・ハア・・・それでも考えてしまい胸がチクッと痛むのは僕がまだ人間である証拠か・・・そう考えると少しは楽になるな・・・ほんの少しだけど


と、そんな事を考えているとドアからノック音が・・・返事をすると老齢の執事を先頭にズラズラとメイド達が入って来た


なんだ?部屋の掃除でも始める気か?


「ローグ公爵様、お風呂の準備が出来ました。ですので本日のお供をお選び頂きたく連れて参りました」


ん?お友達?


「左から順に16から26までとなっております。もしこれよりも若い者やご希望のお年などが御座いましたらお申し付け下さい。それと手付きになっている者とそうではない者もおります。この中で手付きになっていないのは・・・」


「待て・・・ちょっと待て」


「はい?好みの者がおりませんでしたか?全員でも構いませんが・・・」


「全員って!・・・手付きとかそうでないとか・・・いやそもそもお供って?」


「簡単に言えば処女か非処女かです。なにぶん城でのお務めが長いと見目がいいものはすぐに・・・なので急遽集めて来た次第です。それとお供ですが・・・そうですね・・・簡単に言うと何をしてもよい相手・・・とでも申しましょうか」


簡単に言い過ぎ!


何をしてもよい?あれもこれも?いやいや・・・ダメだろ!


「必要ない」


「なっ!?」


驚き過ぎだ!


「もしや男色家でいらっしゃいますか?それでしたらすぐにでも・・・」


「男色家?」


「簡単に言えば男好き、と」


ほほう・・・なるほどね


「そうじゃない・・・私には好きな人がいてその人以外とは・・・」


「なっ!?」


いやもうそのオーバーリアクションいいから!


「それは失礼致しました。でしたらお手伝いをさせていただく者をお選び頂けませんか?」


「手伝いも要らん。風呂は自分で入れるしその後は寝るだけし・・・」


またあのオーバーリアクションが来ると身構えるが今度は様子が違った


執事は沈痛な面持ちで顔を伏せメイド達は『絶望』の2文字が額に書かれたような顔・・・どういう事??


「そう・・・ですか・・・」


「待て待て・・・断っただけでどうしてそんな悲愴感を漂わすんだ?」


「・・・いえ、なんでもありません」


なんでもあるだろ!


くそっ・・・やっぱりアレか?


この目的は籠絡で女性で僕を釣ろうとしている・・・けど僕が選ばないイコール女性達に魅力がないと難癖つけられ女性達は処罰を受ける・・・まあ言ってみれば責任転嫁ってやつだな・・・アホの考えそうな事だ


となるとどうする?誰か1人を選ぶと風呂や寝室で2人っきりになるって事だよな?襲って来ないとは思うけど万が一がある・・・じゃあ数人選ぶか?


・・・よし!決めた!


「この中で仲のいい者同士はいるか?2人でも3人でも構わない」


その質問の意図が分からない様子だったが11人の中で一番年の若い2人がどうやら友達のようだ


「ではその2人を選ばせてもらおう。その他のみんなは帰っていい・・・それと今日はもう寝るつもりだから風呂は必要ない」


「畏まりました。それでは2人に何なりと御下命を」


そう言って執事と残り9人のメイド達は去って行った


それにしても可愛かったり美人だったり・・・どこから見つけて来たのやら・・・・・・・・・せめてお手付きかそうではないか聞いておくべきだったか?いやいや!ダメだそんなの・・・危ない危ない


「御指名ありがとうございます公爵様。精一杯御奉仕致しますのでどうか可愛がって下さい」


はは・・・『可愛がって下さい』か・・・よっぽどオルシアより強敵だな


けど僕には秘策がある・・・彼女達に絶対に負けない秘策が


「では早速始めようか・・・君達はかくれんぼという遊びを知っているか?──────」

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