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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
473/856

469階 ロウニールの案

後で聞いた話だがこの目の前で巨大な斧を持ちぷるぷるしているオッサンはかなり有名らしい


つい最近聞いたのは人々の中で話題になっている・・・と思われる十二傑の一人として数えられ、他には『常勝無敗』とか『親子殺し』とか・・・そしてついた二つ名が『猛獅子』・・・うん?待てよ・・・


「手足を斬り落としたはずなのに・・・生えてきた?もしかして二つ名って『猛獅子』じゃなくて『もう四肢』がってこと?」


「~~~!!ロウニール!!!」


冗談だったのに怒るなよ


雄叫びを上げ向かって来るオルシア


さすがにこの場で殺すのは・・・いや、殺した方が今後の話がスムーズになるか・・・なら今度は四肢だけじゃなく頭を削ぎ落としてやる・・・四肢を斬り落とした後で


「失礼する」


迎え討とうと気合いを入れた矢先に何かが僕の横を通り過ぎた


オルシアに気を取られていたとはいえ近付く気配すら感じなかった・・・しかも速い


もし彼がオルシアではなく僕を狙っていたらどうなっていたか・・・殺気を放っていればさすがに気付くか?けどもし殺気をコントロール出来たとしたら?


王様の隣にいて感情を表に出さずただ僕を見つめていた男・・・近衛騎士?それとも・・・あれが十二傑の一人『不死者』ダンテ?


「どけぇ!!アルオン!!!」


うん、違った


そう言えば『不死者』ダンテは冒険者と言ってたな・・・さすがに急な訪問なのに冒険者であるダンテを呼び出して護衛させるってのは無理がある。常に城にいるならともかく王都に住んでたとしても時間は掛かるだろう


って考えている内に2人は鍔迫り合いをしていた


オルシアは斧・・・アルオンと呼ばれた男は剣で互いに力と力でぶつかり合う


魔力を使った吸収で受け止める事は出来たけどかなり威力があったのを覚えている・・・本気じゃないのかもしれないけどその強力な斧の一撃を太さが半分も満たない剣で受け止めただと?しかも力も拮抗してる?・・・十二傑に相応しいのってオルシアじゃなくてアルオンなんじゃ・・・


「アルオン・・・そこを退け・・・俺は・・・」


「陛下の御前です・・・お控え下さいオルシア将軍」


「貴様も既に知ってるはずだ・・・我が四肢をもぎ取り・・・敗北という名の屈辱を味あわせてくれた奴が目の前にいる・・・それでも引けと言うのか・・・」


「同じ事を陛下の前で繰り返すつもりですか?それとも・・・運ばれている間に強くなったとでも?」


「・・・小僧ォ・・・」


アルオン君・・・それって逆に煽ってないかい?


まあこのままオルシアとアルオンが戦ってくれれば楽だしいっか・・・勝った方と戦えばよくなるし上手くいけば僕が新たな十二傑に・・・あ、各国2人ずつだからここでオルシアに勝ったとしてもダメか・・・残念


「オルシア将軍!いい加減にせぬか!!」


「くっ!・・・」


止めるのが遅いぞチン王・・・それともわざとか?


王様に窘められたオルシアは斧を引くと僕をひと睨みした後で踵を返しこの場から立ち去った


あの目は言わずとも語っていた・・・『絶対に復讐してやる』と


生かさず殺しとけば良かったか・・・指揮官を失い自暴自棄になって収拾がつかなくなると思ったから生かしてやったのに


それとも・・・今から追いかけて殺すか?


「もう将軍は去りました・・・なのでその殺気を収めて頂けると助かります」


オルシアが完全に出て行ったのを確かめた後、アルオンは剣を納め僕の元へ


丁寧な口調にイケメンで実力も兼ね備えているか・・・ディーンみたいなやつだなコイツ


「収めなかったらどうするつもりだ?」


「謁見の間の絨毯がなぜ赤いか理由を知る羽目になるかと」


「へぇ・・・そいつは気になるな」


「オルシア将軍に勝てたからと言って私に勝てると思わない方がよろしいかと・・・」


小馬鹿にしたように鼻で笑い歩き去るアルオン・・・うーん前言撤回・・・ディーンに似ても似つかないわ


周りに聞こえないようにボソリと言うあたりが腹黒さを加速させているな・・・もしかして召喚士と言ったから召喚してなんぼだと思っているのか?


・・・いかんいかん・・・何やろうとしているんだ僕は・・・別に侮られたっていいじゃないか・・・うん



オルシアの乱入で場の雰囲気がガラリと変わり静かだった周りがざわつき始める


詳細を知らされていない人達は不思議で仕方ないのだろう・・・将軍であるオルシアがなぜ王様がいる謁見の間に武器を持って殴り込みに来たのか


そして僕とオルシア・・・それにアルオンの会話から察する・・・常勝無敗の将軍が負けたのだと


てか戦争もないのに常勝無敗って言われているのがちゃんちゃらおかしいって話ですよ・・・国内でどれだけ無敗を誇っていても彼の戦績は一戦一敗・・・おー、なんか語呂がいいから今度会った時はこう呼ぼう『一戦一敗』と


「・・・朕の臣下が大変迷惑を掛けた・・・謝罪しよう」


「いえ、お気になさらずに・・・そこのアルオン殿が止めてくださいましたし止めて下さらなくとも大した事にはならなかったでしょうし」


「・・・」


「・・・」


いや嫌味で言ったわけじゃないよ?本当の事を言ったまで・・・だからそう悔しげな表情するなよ王様


「・・・仕切り直すとしよう・・・はて、どこまで話していたか・・・」


「途中でしたが魔物とダンジョンの話はここまでにしましょう。私も提示出来る証拠もありませんしメバス殿も同じかと・・・」


「私は文献に則り申し上げて・・・」


「誰が書いたか知らないが書いてある事が真実という証拠はどこに?私に証拠証拠と言うなら提示してもらいたいものです。書かれている事が真実であるという証拠を」


「うっ・・・それは・・・」


「互いに証明出来なければ不毛な話し合いとなります・・・なのでこの場ではこの話は終わりにしてもう少し建設的な話をしましょう」


「・・・建設的な話とは?」


「先の戦争の事です」


王様は眉をピクリと動かし周りの騎士達は隣同士で顔を見合わせる


アルオンは反応せずもう片方の騎士は顔を歪ませ文官達はヒソヒソと話し始めた


「・・・はて?戦争とはなんの事か・・・」


「国境にある壁を破壊し大軍で他国の領地に侵入するのが戦争ではないとすれば一体何が戦争なのでしょうか?それとも10万人でダンスの練習をしていてうっかり壁を破壊してしまいその勢いで我が国に足を踏み入れてしまったとでも?」


「・・・そうだ」


んな訳あるかい!


危うく王様に全力でツッコミそうになるが辛うじて踏みとどまった


意外とこの爺さんノリがいいのか?侮れん


「冗談はさておき先に弁明しておこう。此度の件は共に被害者である」


おいおい・・・どの口が・・・


「確かに彼の者に唆された我が国にも非がある・・・がそもそもの発端は貴公の国ではないか?」


「・・・どういう事でしょうか?」


「貴公も公爵ならば知っているはず・・・フーリシアが我が国だけではなく各国に行っている所業を」


・・・聖者聖女の事か・・・


「存じていますがそれが何か?」


「此度の件と直接関係ないとしても起因している事を理解してもらいたい。常に追い詰められ張り詰めた状態の中で唆され行動に移してしまったのだ・・・それにまだ我々は間違った行動をしたとは考えていない」


「戦争を正当化するおつもりで?」


「そうではない。彼の者の言葉をよく調べもせず信じてしまったのはこちらに非があるのは先にも述べた通りだ。だが彼の者の言葉が真実であったか偽りであったかは謎のまま・・・動いたのは早計ではあったが真実ならば動かざるを得なかったと今でも思っている」


「彼の者・・・レオンは何と?」


「『フーリシア王国は腐っている』と・・・『腐った部分を取り除いた程度では元に戻らない程に』とも言っていた」


「・・・それを鵜呑みに?」


「仕方なかったのだ・・・我が国も追い詰められていた・・・魔蝕を患う者が増え始めると共に不安に押し潰されそうになっていた・・・いつフーリシアが手のひらを返し聖者を返せと言ってきたら?それは我が国にとっては死刑宣告に近いものがある・・・いや、他の国もそうであろう。命を握られるこの気持ち・・・貴公も分かるはずだ」


分かるから困る


実際にフーリシア王国は各国に派遣した聖者聖女達を『毒』と呼んでいた


傍から見れば『毒』とは正反対の立場・・・けど魔蝕のせいで各国にとって必要不可欠な存在が故に『毒』と呼び利用していた事実がある


もしフーリシア王国がセシーヌを失えば・・・魔蝕にかかった者は死に至るか魔人と化すか・・・フーリシア王国は他の国にそのような状態に陥らせるぞと脅していたに等しい


それでも・・・


「だからといって大軍を率いて攻め込むのは違うのでは?」


「判断する時間がなかった・・・彼の者は実行する日を変える気はないと言っておった。聞けば成就するにはかなり難しい策・・・我が国が動かなければ問答無用で失敗するであろう策であった。朕も悩んだのだ・・・この千載一遇の好機を逃せばまた不安を募らせる日々が続く・・・しかしもし彼の者の言葉が偽りであれば責められるのは我が国だ・・・どっちを取るか・・・悩んだ末に朕は立ち上がった・・・たと騙され各国から後ろ指さされようともこの苦痛の日々から解放される僅かな希望があるのであれば、と」


自分の国の為でもあるけど各国の為にもってか・・・大義名分としてはギリギリセーフかな?まあ苦しいっちゃ苦しいけど・・・まあ



合格、とするか



「そうでしたか・・・まだ私も公爵どころか貴族になったのも間もないのでそこまで苦しんでおられるとは知りませんでした。ですが安心して下さい・・・聖者聖女の件につきましては解決案を持って来ましたので」


「・・・なに?」


「私は各国を回り他国にいる聖者聖女とも交流致しました。そこで帰りたいと願う者もいればその場に残ってもいいと思う者と様々な反応があり色々と考えさせられたのです」


まあ実際はこの国とアーキド王国の聖者聖女には会っていないし不満を持っていたのはラズン王国のゼガーくらいだけどね


「・・・それで?」


簡単簡潔・・・『毒』と言うなら出しちゃえばいい


だから方法はただ一つ


「フーリシア王国より派遣されていた聖者聖女を国に戻します──────」

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