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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
47/856

44階 エモーンズダンジョン七不思議

シークス・ヤグナー・・・冒険者としては超一流であるAランクであり近接アタッカー『拳士』だとか・・・


そんな男がなぜか今・・・私の前で店員に飲み物を注文している


「あれ?もしかしてビールじゃない方が良かった?」


「・・・構わない」


「そう?良かった」


爽やかな笑顔を見せるシークス・・・苦手なタイプだ


むさい男を殴り倒し、シークスは今見せている笑顔で私に手を伸ばす・・・何の手だと疑問に思いながらもその手を掴むとシークスは突然走り出した・・・私と手を繋いだまま・・・


そしてこの店に入ると向かい合わせで座り店員にビールを2杯注文する・・・これは助けたから奢れと言うことなのか?あの程度の相手に助けなど必要なかったが・・・まあ今更言っても後の祭りか・・・


暫し注文したビールが来るまで雑談をする・・・と言ってもシークスが一方的に喋り続けるのを聞いているだけだが


シークスは今日この街を訪れたばかりらしい。着くや否やパーティーメンバーは疲れたと言って宿で休むと言い暇を持て余したシークスが街を散歩しているとか弱い女性が悪漢に襲われていると思い助けに入ったのだとか・・・一瞬か弱い女性とは誰の事かと考えたが・・・どうやら私の事のようだ


「お待たせ致しました!ビール2杯です!」


「おお・・・さっ、飲んでくれ!ボクの奢りだ」


店員が2杯のビールを私とシークスの前に置くと彼は目を輝かせ・・・ん?


「私は助けてもらったのに奢られるのか?」


「細かい事は気にしない・・・さあ、飲んで飲んで」


・・・悪い奴では無さそうだが・・・苦手だ




「まさか、か弱い女性と思った人がボクと同等の実力者なんて・・・こんな笑い話ないよね」


ウザイ


どうやら助けに入った瞬間に私の実力を見抜いたようだ。だが引っ込みつかなくてそのままむさい男を撃退・・・その後格好つけて登場したはいいものの、助ける必要がなかった事に恥ずかしさを感じて私を連れて逃走・・・で、店に逃げ込んだらしい


「同等ではない。シークスはAランクで私はBランクだ」


「え?そうなの?・・・てっきり同じAランクかと・・・名前を聞いても?」


「・・・サラ・セームン・・・」


「サラ?・・・『風鳴り』!・・・やはりボク達は同等だよ・・・ボクはパーティーで、君はソロでそのランクなんだからね」


私も有名になったものだ・・・Aランク冒険者にまで知れ渡っているとはな


「私はそうは思わないけどな・・・ランクはDまでは誰でもなれる。生きてさえいれば誰でも。だがCからはそうはいかない。かくいう私もCからBに上がるのには相当苦労した。Aなどとても・・・一体どんな功績を上げてなったんだ?」


「嬉しいね。ボクに少し興味湧いた?って言ってもガッカリされるかもな・・・ボクはただ・・・ダンジョンを壊しただけさ」


ダンジョンを・・・壊した?まさか・・・


「『ダンジョンキラー』」


「御明答・・・『風鳴り』に知っていてもらって光栄だね」


知ってて当たり前だ


『ダンジョンキラー』・・・近年ダンジョンコアを破壊してダンジョンを閉鎖させた事例は4つ・・・その内の2つは騎士団が・・・残りの2つは・・・


「・・・3つ目のダンジョンにここを選んだのか?」


「国が管理しているダンジョンは許可なしでは壊せないからね・・・その点街の中にあるダンジョンは許可が要らない」


「なぜダンジョンを・・・」


「なぜって・・・この世にダンジョンなんて必要ないからね、当然でしょ?──────」





衝撃的だった


ダンジョンは要らないと言うシークスはさも当たり前という表情・・・自身も冒険者であるのに、だ


冒険者はダンジョンだけではなくダンジョンブレイクによって外に出た魔物の討伐や野盗などの対人間、商人や旅人の護衛などの仕事もある。だがあくまでメインはダンジョン攻略になる・・・実入りも良いし自身の実力に合わせられるのも魅力だからだ


もしこの世からダンジョンが全て無くなれば・・・冒険者稼業は廃業を余儀なくされるだろう。なにせ魔物が存在しなくなるのだから・・・


店を出てシークスと別れてからも頭の中にこびりつくシークスの言葉・・・酔いなど一瞬で覚めてしまった


せっかくのオフだというのにそのままギルドに戻り自室のベッドに倒れ込む



シークスは正しい



ダンジョンなどリスクでしかない


リターンがあるから残されてるだけ・・・もしリスクに見合わなければ存在は否定され破壊されるだろう


ダンジョンのリターンはなんだ?


魔核?素材?宝?


魔核は確かに便利だ。マナポーションの素材や武具の材料、それに様々な道具にも使える。だがなくても困るものでもない・・・少し不便になるだけだ


素材も然り宝も・・・となると安全性だけを考慮すればシークスの言う通り『ダンジョンは要らない』


そしてダンジョン攻略を主な生業としている冒険者は必然的に必要とされなくなる。まるで私自身が否定されたような気分だ・・・冒険者以外から言われるならまだしも冒険者・・・しかもAランクの冒険者が口にするとはな



その日は考え過ぎたのか食事をする気にもなれずそのまま床に就いた



そして翌朝・・・


「おいサラ!たいへぶっ!?」


「ギ~ル~ド~長~」


「す、すまん!すっかり忘れてた!」


ドスドスと大きな足音が近付いて来たのでもしかしたらと思ったら・・・今日はノックもせずにドアを開けてきたので普通に殴る位の威力のある風をお見舞いしてやった。少し手加減し過ぎたか・・・今度はもう少し強く当ててやろう


「そんな事より・・・」


「そんな事?」


「あ、いや、すまん・・・今度カギを付けさせるからそれで勘弁してくれ。で、だ・・・ヤバい奴らが来やがった」


「『ダンジョンキラー』?」


「そう!『ダンジョンキラー』・・・なんで知ってんだ?・・・お前さん・・・まさか・・・」


「何を勘繰っているか知りませんが、たまたま昨日縁があって話しただけです。でもそこまで慌てる必要ありますか?」


「いやだって・・・『ダンジョンキラー』だぜ?」


「ええ」


「何を悠長に構えてんだ・・・ダンジョンが無くなったら俺は路頭に迷う事になる!カミさんと子供に何と言えば・・・」


「知りませんよ・・・それにこのダンジョンは平気だと思いますよ?」


「・・・なんで?」


「報告書を読んでないのですか?このダンジョンの最奥に何度行ってもダンジョンコアらしきものが見当たりません。たとえ『ダンジョンキラー』でもダンジョンコアの場所が分からなければ何も出来ないのでは?」


「・・・それもそうか。いやぁ焦った・・・ペギーから奴らが来た事を報告受けた時は心臓が止まるかと思ったぜ」


「まあ、あまりいい気はしませんね。ただ彼らも早々に諦めるでしょう・・・このエモーンズダンジョンでダンジョンコアを見つけるなど無理・・・エモーンズダンジョン七不思議のひとつ・・・『ダンジョンコアがない』と知れば・・・」


「なんだその『エモーンズダンジョン七不思議』ってのは」


「他のダンジョンとの違いを冒険者が見つける度に増えていき、今では七つもある事からそう言われてます。まあそう大したものではないですが・・・」



エモーンズダンジョン七不思議


ダンジョンコアがない


各階にゲートがある


訓練所がある


異様に成長が早い


異様に魔物の湧きが早い


魔物を使い回してる


・・・


「おい・・・六つじゃねえか」


「・・・最後の一つは・・・『ダンジョンナイトが出る』です・・・」


「お、おお・・・そうだな。・・・魔物を使い回してるってのは?」


「1階と6階、2階と7階など同一の魔物構成が出るダンジョンは聞いた事がありませんので・・・ダンジョンが魔物を使い回してると噂されてます」


「そういや聞いた事あるな・・・なるほど・・・確かに七不思議だ」


人の想い人を不思議にするなと断固抗議したいのは山々だが・・・広まってしまった噂話など誰が発祥かも分からないので抗議のしょうがない。何が『出る』だ、せめて『お出ましになる』にしろと・・・


「・・・ぉ・・・おい・・・聞いてるか??」


「いえ」


「『いえ』じゃねえよ・・・ったく。だから急遽俺と領主とで『ダンジョンキラー』の連中に釘刺す事になってな・・・まあ本来なら俺は口出しする立場でもねえんだが・・・」


そんな話になってたのか・・・全然聞いてなかった


この地のダンジョンの権利は街にある・・・冒険者ギルドは国営・・・確かにギルド長のフリップが口を出す立場ではないな。だが現実問題ダンジョンが無くなればフリップも職を失うので何としてもそれは避けたいのだろう


「それで?」


「悪ぃがお前さんにも立ち会ってもらいたい」


「なぜ?」


「何となくだ」


厄介だな・・・あのシークスの様子だと説得は無理そうなのに・・・放置してやりたいようにやらせておけば・・・


「・・・お前さんの考えてる事は分かる・・・コアがねえから好きにやらせろって思ってんだろ?でもよぉ・・・もしかしたら今日にでもひょこっとダンジョンコアが見つかるかも知れねえ・・・ダンジョンコアがねえダンジョンなんてありえねえのだからよ」


それは間違いないだろう


ダンジョンコアがないダンジョンなんて存在しない


なぜこのダンジョンで未だダンジョンコアが見つからないのかいずれ解明・・・


「それに『ダンジョンナイト』もやべえだろ?」


!?


「おいおい・・・お前さんらしくねえな。『ダンジョンナイト』は言ってたんだろ?『このダンジョンの守護者』だって・・・なら『ダンジョンキラー』と正反対の立場じゃ・・・」


「参加します。それでその話し合いはいつ?」


「お、おう・・・今日ダンジョンから帰って来た時に予定を組むつもりだ・・・恐らくは明日すぐにでも・・・」


「分かりました。では私は準備があるので出て行ってもらえますか?」


「あ、ああ・・・決まったら連絡する」


「はい・・・その時はノックを忘れずに・・・それか今日中に鍵付きにした方が身のためかと・・・」


少しキツめに睨むとフリップは何度も頷いてそのまま部屋を出て行った


1人部屋に残された私はすぐに思考をフル回転させる



『ダンジョンキラー』から・・・ローグ様をお守りする為に

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