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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
463/856

459階 結婚狂想曲

人の願いを叶えてあげたい・・・それは見返りを求めるのではなく単純に近しい人の笑顔が見たいからだ


別にケインの笑顔が見たい訳では断じてないが・・・まあ・・・僕が叶えられる範疇なら叶えてやりたいと思う


だが・・・公爵は無理だ


王族に関係ある者しかなれない公爵・・・僕の場合は王族と何ら繋がりがないからなるとしたら手段はひとつ・・・王女を娶る事になる


僕はサラがいる


そりゃあまだ正式に結婚した訳でもないけどゆくゆくは・・・なのでサラ以外と結婚する気など更々ない。ましてや王女なんて真っ平御免だ


理由は先に結婚してようがサラより序列が上になるからだ


サラと結婚した後で偽装で王女と結婚したとする・・・すると後から結婚した王女が第一夫人となりサラが第二夫人となってしまう・・・世間から見たら正妻は王女になるのだ


そんなのサラにしてみれば嬉しい訳がない・・・僕がもし『あなたは二番目の男よ』とか言われたら泣く自信がある・・・いや泣く


けどケインの願いを叶える方法は僕が公爵になる事だけ・・・叶えてやりたいが・・・無理だ・・・


「・・・また悩んでるの?」


眠れずに朝を迎えて頭を抱えている僕に隣で寝ていたサラが尋ねる


「問題が解決する前にまた問題が発生する・・・誰かが悩みの種に栄養をたらふく与えたみたいだ」


「それはそれは・・・見事に咲き乱れたようで。何か手伝える事は?」


「・・・あるにはある」


「へぇ・・・言ってみて」


「結婚してください」


「・・・」


あ、固まった


そうなんだよな・・・僕とサラの関係がいまいち曖昧だから悩むだけであって結婚してれば迷わず『既婚者ですから!』と答えられる。貴族が妻を何人も娶るとか関係ない・・・僕はサラだけを・・・


「・・・この流れで言うかな・・・もっとこう・・・でもこういうのも・・・でも・・・」


マクラに顔を押し付けてブツブツ何か言ってる。ハッキリ断られた以前よりはマシ・・・かな?


「・・・やっぱりまだ・・・」


「そっか・・・まあそれなら仕方な・・・」


「ちょっと待って!もしかして悩みって()()女性関係?」


「・・・いやまあ・・・そう・・・なるかな?」


「詳しく聞かせてちょうだい・・・場合によっては本気で屋敷での行為を禁止にするわ──────」




「・・・なるほどね。ケインさんは実の父親を・・・」


「ああ。まあ悩む事でもないけどつい最近公爵の話が出たからさ・・・ケインの為に王女と結婚する気はないけどケインのチャンスを摘むみたいで・・・」


「まあね。ロウが王女様と結婚すればケインさんの願いは叶う・・・しかも王女様から求婚されているとなったら尚更・・・手の届く距離にあるのに断ればケインさんの願いは一生叶わなくなる」


「ケインが聞いたら鼻で笑うだろうな。『貴様の結婚で願いが叶ったとしても嬉しくも何ともない』とか言いながら」


「ぷっ・・・言いそう。でもケインさんは願いを叶える為にこれまで頑張って来たんだよね・・・ずっと」


第三騎士団ではディーンに負けて団長の座を逃し辺境の地に行かされたと思ったら今度は騎士団ではなく貴族の私兵に成り下がり・・・それでも王国騎士団団長と肩を並べられる・・・もしくは超えられるチャンスがあるけどそれが僕の返答次第とは・・・サーテンめ余計な事を言いやがって・・・


「・・・別に私は第三夫人でもいいわよ?」


「よくない」


「私がいいって言ってるの。ロウは貴族なんだし・・・その・・・世継ぎがいないと・・・」


「世継ぎなんて・・・」


「ダメよ。せっかくあなたの領民になった人を裏切るつもり?あなたがいくら領地を良くしても領主が変われば領民を苦しめる事になるかもしれない・・・そうならない為にも世継ぎになる子にしっかりとした教育をしてあなたと同じようにしっかり領地を管理させなきゃ・・・でしょ?」


「サラが頑張れば・・・」


「そ、そりゃまあ・・・でも聞いて・・・必ずしも子供が産めるとは限らないの」


「え?」


「子供を産めない女性もいるのよ・・・貴族の世界ではそのような人の事を『出来損ない』と・・・ちょ、ちょっと!殺気がダダ漏れしてるから!」


本当貴族ってやつはどうしようもない・・・いっその事世界を滅ぼして作り直してやろうか・・・貴族のいない世界に


「ロウの怒りは分かるわ・・・でも現実に子供が産めない女性はいるのよ。それが後で分かってからでは遅いから世継ぎが必要な貴族は複数人の妻を娶る・・・ロウも貴族としての責任を全うする為には・・・」


「サラは平気なのか?」


「・・・私は・・・平気よ」


「そっか・・・でも僕が平気じゃない」


「え?」


「確かに領民の為と言われたらそうなのかもしれない・・・けどその為に相手の嫌がる事をしたくはない。僕がサラの立場だったら・・・誰かの為にサラが他の男に・・・って考えるだけで一国くらい滅ぼせそうだ」


「・・・ロウ・・・」


「子供が産めなかったらなんだってんだ。それなら養子を探せばいい・・・両親を早くに亡くしてしまった孤児なんて探せばいくらでもいそうだし・・・待てよ・・・そういう孤児ってどうやって生活しているんだ?」


「・・・ほとんどが街の施設に入れられて学校に行き職に就いているわ」


「そっか・・・ならその施設から僕達の子供になってくれる子を探せばいい・・・そっか・・・村ではそういった子は近所の親戚とかが面倒を見てたけどそういう施設があるのか・・・そういう施設も計画に練り込まないといけないな」


大都市計画を進める上でも必須だな・・・その施設がどういう環境か分からないが親を失い寂しい思いをしているはずの子供達を見守るにはそれ相応の施設と人が必要だ。金は街から出せばいい・・・赤字の分は僕が負担して・・・いやそれをするとジェファーさんに金の管理が難しくなると怒られるな・・・となると事業として魔道具を売って・・・


「ふふっ」


「・・・なに?」


「結婚の話から子供の話・・・で、孤児の話になるなんて・・・」


「話が脱線しまくってるね・・・てかひとつの悩みを解決する方法が浮かんだんだけど」


「・・・何かやな予感がするけど・・・一応聞いておくわ」


「子供が出来るかどうか・・・早めに確認した方が次の行動に移しやすいと思わない」


「それって・・・ちょ、朝だから!朝っぱらから・・・」


「善は急げと言うし朝だろうと関係・・・」


コンコン


「なんだこの野郎!」


「・・・ご主人様、お客様が来られております」


「追い返せ!今は忙し・・・」


「エーラ王女様と婚約者様ですがお伝えしても?おそらく私がお止めしても様子を見に来られると思いますが問題はないでしょうか?」


吐きそう


「・・・行ってあげたら?未来のお嫁さんに会いに」


吐いた──────





甘美な朝を邪魔したのは誰だ・・・って正体はもう分かってる


エーラ王女にカレン・・・カレンの事は後回しにしてたがもっと早く解決するべきだった


あの場に残っていたナージ達と第三騎士団・・・それと知り合いって事で特別にカレン達も王都に送ってやった。ナージ達は昨日エモーンズに送ってやったがカレン達はそのまま王都に残っているようだった


領地に送ってやる義理はないし


婚約の事はナージにやらせようと思っていたがカレン達が王都にいるなら王都で解決した方が早かったか・・・でも大変な思いをしていたし体を休める時間も必要だと思ったからな・・・失敗した



下に降りると広間に置いてあるテーブルに2人が座っているのが見えた


しかも向かい合って


テーブルを挟んでソファーがふたつ・・・互いに座られると僕はどちらに座れば・・・


「あら?ロウニール様、おはようございますこちらにかけて下さい」


「・・・辺境伯閣下、そちらは王女様がお座りの席、隣に座るのは不敬に当たりますので()()()である私の隣にお座り下さい」


座りながら自分の隣をポンポンと叩きながら微笑むエーラと立ち上がり僕の座るスペースを作るカレン・・・何これイジメ?


どっちを選んでもどっちかに恨まれるだけじゃ・・・それが分からない2人じゃないだろうし僕を困らせる為にわざとやってるだろ!


どうする?


確かにカレンの言う通り王女の隣は不敬に当たるっぽいしカレンの隣に・・・でもそうすると婚約者って言葉を認めたみたいだし王女の誘いを断った形になるし・・・どうすれば正解なんだ?一体どうすれば・・・


「椅子を御準備致しました・・・ご主人様」


サラナイス!と思い振り返ると椅子を肩に担ぐ強面のメイドが立っていた・・・うん怒ってるね確実に


サラはテーブルの傍に椅子を置くとそのまま椅子の後ろに立ち、僕は恐る恐るその椅子に座った


メキッと音が聞こえたのは気のせいじゃないはず・・・これが終わったらこの椅子は買い換えないとな・・・多分背もたれの部分が握り潰されているはずだ


「突然の訪問申し訳ありませんロウニール様。会いたくて居ても立ってもいられずに来てしまいました」


「辺境伯閣下にご挨拶申し上げます。婚約者としてすぐにお伺いしようとも思ったのですがなにぶん当家でも混乱を極めており遅くなった事をお詫び致しますわ」


僕が座ると同時に2人は立ち上がりドレスの裾を持ち上げ軽く頭を下げた


2人ともかなりめかしこんでいるご様子・・・それが更に僕へのプレッシャーになるとも知らずに


「お2人とも座って下さい。サーテンお2人に飲み物を」


「畏まりました」


帰ってくれと言いたいがそうもいかない


王女に婚約者か・・・想像する中で最も最悪な組み合わせだ


「ロウニール様」「辺境伯閣下」


同時に僕に話し掛け互いに睨み合う2人・・・実際には睨んではいないのだが目に険があるのはバレバレだ


カレンが譲るように下を向くとエーラは微笑み続けて口を開く


「あの時・・・ベッドの上でお話した時に婚約者の存在などお聞きしてませんでしたが・・・どういう事でしょうか?」


うっ・・・と言うか今『ベッドの上で』って言葉の時にまたメキメキと音がしたぞ?サラには言ってたはずなのに・・・怖いよぉ・・・


「それは・・・私もバタバタしておりまして配下より聞いてなかったものですから・・・」


聞いてた・・・バッチリ聞いてたけどエーラの視線が怖くて嘘をついた。下手に追求されるのも面倒だし


「?・・・ではロウニール様が望まれた婚約ではないと?」


「語弊があるかもしれませんが・・・そうです。望んではいません」


そう言った瞬間に顔を伏せていたカレンが唇を噛んだのが見えた


望んでいるはずもないだろう・・・僕が居ない間に決まった事だ。カレンも仕方なく婚約したはずなのに・・・


「・・・詳しくお聞かせ願いませんか?」


「ええ・・・王女様には少し血なまぐさい話となりますが喜んで──────」

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