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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
461/856

457階 改良

追い回すのをやめて3人で屋敷の中へ


するとさすが出来る執事と言うべきかタイミング良くサーテンが温かいコーヒーを運んで来ていたのでそのまま広間のテーブルについた


キースは温かい飲み物ではなく冷たい飲み物が欲しいと駄々をこねたが無視だ無視・・・屋敷に入れてもらえただけでも感謝しろと言いたい


「それで?待ち伏せしてまで済ませたかった用事とは?」


「私・・・か。僕に俺に私・・・お前は一体何なんだ?」


「辺境伯様だ」


「聞いてんのは爵位じゃねえ・・・つーか人払いしなくていいのか?」


「別に。この屋敷の者に聞かれてまずいことなどないし」


「よく言うぜ・・・俺から情報が筒抜けだった事を忘れたのか?この屋敷の連中だって・・・」


「キースにはバレても構わない情報しか見せていないし全然平気。むしろ情報を流してくれたお陰で各国を見て回れたしありがとうと言いたいくらいだ」


「のやろう・・・うぶな少年が随分成長したじゃねえか」


「お陰様でね」


「ケッ!可愛げのねえ野郎だ」


本当はかなりビックリしたけどね。まさかキースから情報が漏れているとは思わなかった



それから他愛もない話が続きなかなか本題に入らずにいた


あのキースが知るのを恐れている・・・あの時の事を


僕に強制的に移動させられて見届ける事が出来なかった結末を


「あーなんだほら・・・ありがとな」


「え?」


「なんかあれだろ?ほら猫!喋る猫を送ってくれたお陰でソニアと婆さん・・・それにシシリアが無事だった・・・ありがとよ」


そっちかよ


「あれは僕が命令した訳じゃなくてサキ・・・その猫が勝手に匂いを嗅ぎ付けて行っただけ・・・しかも助けるつもりとかじゃなくて縄張り争いみたいなもんだから気にしなくても・・・」


「・・・って事はやっぱりその猫も・・・魔族なんだな?」


「ああ・・・魔王の城に入ったみんなは知っている・・・サキュバスという魔族だ」


魔王と戦っている時、最初は敵として僕らの前に立ちはだかった・・・広場で戦ってたキース達は間接的にサキと戦ってたみたいなもんだよな・・・サキが魔物や魔獣を広場に送り込んでたし


「そうか・・・感謝していると伝えてくれ。それと・・・クソ魔族の居場所を知ってたら教えろ」


「魔族の居場所?そう言えば逃げたんだっけ・・・残念ながら知らないな」


「本当か?」


「隠しても意味は無いだろ?」


「・・・そうか・・・」


いやそっちじゃないだろ?本当に聞きたいのは・・・確かに屋敷を襲った魔族に復讐したい気持ちは分からなくもないけど全員無事だったって話だし・・・


「チッ・・・こっちから探すのが無理なら待つしかねえか・・・」


「別にまた来ると決まった訳じゃ・・・」


「来る・・・そう奴が言ってたらしい・・・シシリアを自分のモノにする為に」


「っ!?シシリアちゃんを!?なんで・・・」


「・・・よく分からねえが覚醒の胃伝とか何とか・・・で、シシリアが家族とか何とか・・・まあとにかく奴は来る!」


・・・なんだそりゃ


〘隔世遺伝・・・そう・・・なるほどね〙


〘1人で納得してないで教えてくれ〙


〘隔世遺伝は自分の子供じゃなくて孫とか曾孫とか世代を飛ばして能力を受け継ぐ事を言うの。つまりソニアではなくその子供であるシシリアが受け継いだって事〙


〘??・・・えっとつまり?〙


〘ソニアはラディルと魔族シュルガットの子供。で、ソニアはシュルガットの力を受け継がずソニアの子であるシシリアが受け継いだ・・・少しでも戦力が欲しいシュルガットは自分の力を受け継いだ生まれながれにして眷族であるシシリアを迎えに来たってわけ〙


〘ふーん・・・はぁ!?〙


ちょっと待て・・・ラディルさんとシュルガットが?でソニアさんが生まれてそのソニアさんの子供であるシシリアちゃんが魔族の力を受け継いだ??


「ご主人様?」


「あ、いやすまん・・・えっとキース・・・もう少し詳しく聞かせてくれないか?」




たどたどしい説明をダンコに補完してもらってようやく内容を理解した


ダンコの補完がないサラも何度か説明される内にようやく少し理解したのか顔を曇らせる


「じゃあその魔族はまたシシリアちゃんを狙って・・・」


「来るんだろうな・・・いや、こっちから見つけられないなら来てもらわなきゃ困る・・・そうしないと安心して眠れやしねえ」


来ないなら来ないで欲しいけどどっちか分からないならさっさと来いって感じか・・・居場所が分かれば乗り込んで行きそうな勢いだけど・・・


〘ダンコ、シュルガットは変化に強いって言ってたけどキースならどう?〙


〘微妙なところね。魔力が濃い場所なら人間に対して鉄壁とも言えるわ。魔力が薄い場所なら破れなくもないかもだけど・・・〙


さっき大剣を受けた時はペチャンコになるかと思った・・・かなり魔力を纏い吸収したはずなのに・・・かなりの威力だったはず・・・それはダンコも分かってて『微妙』か


今の王都やその周辺は魔力が濃くなっている。となると攻めて来たりこの近くで見つけたとしても勝ち目は薄いか・・・魔力を使う僕やサキなら何とかなりそうだけど・・・


シュルガットがキースの屋敷に訪れた理由は分かったけど分かったところでどうしようもない・・・もしかしたら王都に潜んでいるかもしれないし遠くまで逃げたかもしれない


見つける術はない・・・たとえ同じ魔族のサキだとしても


キースはともかくソニアさんとシシリアちゃんは心配だ。サキに現れるまで護衛させるか・・・いやシュルガットもバカじゃないだろう・・・サキが居なくなった途端に襲って来るはず・・・ずっと護衛させるのはダンジョンの事もあるから現実的じゃないし一体どうしたら・・・


「ロウ・・・何とかならない?」


「・・・うーん・・・」


「おいおい俺は別に居場所を知ってるか聞いただけでどうにかしてくれとは言ってねえぞ?」


「キースがどうなろうと知ったこっちゃない・・・問題はキースがやられたらシシリアちゃん達が危ないって事だ」


「ハッキリ言うじゃねえか・・・もう一回庭で勝負してやろうか?」


「・・・その大剣で?」


「あ・・・くそっ・・・そういや今来られたらまともに戦えねえじゃねえか!どうしてくれるんだ!」


「自業自得だろ。何なら僕が・・・あれ?」


「なんだ?」


「ちょっと待って」


〘ダンコ〙


〘なによ〙


〘あのカミキリマルみたいに魔力を纏った剣ならシュルガットに通じる?〙


〘多分ね。確証はないけど・・・アナタまさか・・・〙


〘試してみる価値はあるかなと思って〙


出来るかもしれないし出来ないかもしれない・・・ただ出来たとしても扱えなきゃ意味がない


「キース、この刀を鞘から抜いてみて」


そう言ってゲートを開きカミキリマルを取り出すとキースに向かって放り投げた


「あん?っと・・・なんだこりゃ・・・貧相な剣だな」


「貧相って・・・いいから鞘から抜いて」


「・・・抜くだけでいいのか?一体何がしたい・・・っ!おいこれ・・・」


ダメか・・・


「何かピリピリするぞ!?」


「ピ、ピリピリ?他には?」


「いや別に・・・なんだ?パーティーグッズか?」


なんだよパーティーグッズって・・・そっか・・・それくらいなら短時間なら・・・


「キース、カミキリマルを返してくれ。ついでに大剣を貸してくれ」


「・・・は?ざっけんな渡す訳ねえだろ?」


「いいから早く・・・入ったヒビを直してやる」


「うそこけ!そう言って折る気だろ?」


「折らないから・・・シシリアちゃんを守りたいなら貸せ」


「っ!・・・・・・・・・絶対だぞ!?絶対折るなよ?」


疑い深いな・・・本当に折ってやろうか


カミキリマルを渡して来てその後渋々ながら小さくなった大剣を僕に預ける


結構ヒビ入ってるな・・・少しでも力を入れたら折れそうだ


「おい!何をする気なんだ?」


「ちょっと待ってて・・・すぐ戻る」


「おい!どこに行く気だ!待てロウニール!!」


焦るキースを尻目に僕はゲートを開きエモーンズのダンジョン司令室にやって来た


さて・・・久しぶりに魔道具技師としての実力を発揮してみようか──────




作業を終えた僕が屋敷に戻ると信じられない光景が・・・人が汗水流している間に茶菓子を食ってやがる・・・めっちゃ寛ぎながら


「おう!帰ったか・・・早く返せ」


「・・・」


なんて奴だ・・・人の苦労も知らずに


無言で大剣を渡すと隅々まで見やがる・・・僕が何もしてないか疑ってる目だ


「ヒビが・・・何をした?あのヒビはこんな短時間で直るものじゃ・・・」


「ヒビはついでだ。持って行った目的は別にある」


「別?」


「実際に試してみた方が早い・・・マナを・・・いや大剣を片手で持って腕を交差して中腰になり唱えるんだ『キースマジックパワー!!』と」


僕が実際に手本を見せるとキースどころか広間にいるみんなの冷たい視線を感じた・・・我慢我慢


「・・・おいふざけてんのか?」


「シシリアちゃんを救いたくないのか!」


「・・・なに?それとどう関係が・・・」


「シュルガットにマナは通じない・・・だからその大剣から魔力が出るよう細工した」


「マナが通じない・・・だと?」


「実際に戦ったソニアさんとラディルさんに聞いてみろ。てかあれだけの魔法使いの2人が揃っているにも関わらず敵わなかった時点で察しろ・・・シュルガットは強い・・・で、その強さは単にマナが通じないからなんだ。もしキースが魔力を使えれば・・・必ずシュルガットに勝てる!けど逆に魔力が使えなければ必ず負ける」


「・・・」


「キースが負けるのは仕方ない・・・それが勝負ってやつだからな。でも負けた先に待ってるのは・・・」


「・・・もう一度教えろ」


「やり方はさっき見たろ?あの格好をして『キースマジックパワー!』だ」


「・・・マナが通じない・・・か・・・確かに魔法が跳ね返されたとか言ってたな・・・くそっ・・・やってやるよ!」


そう言うとキースは中腰になると腕を交差させて叫んだ


「キースマジックパワー!!」


・・・


・・



「おい・・・何も起きねえじゃねえか・・・」


「いや、確実に効いてる・・・その証拠に僕は今笑い死にそうなのを必死に堪えている」


「・・・なに?笑い・・・まさかてめえ・・・」


「何が『キースマジックパワー』だ・・・んなもんで魔力が発動したら僕がビビるわ」


「て・・・て・・・」


「そう怒るな・・・さもないと僕の『キースマジックパワー』が炸裂するぞ?」


どうやら我慢の限界が来たらしい・・・顔を伏せプルプルと肩を震わせていたサラが笑い出すと広間にいたみんなが一斉に笑い出す


こっちも限界のようだな・・・キースの顔が真っ赤っかだ・・・屋敷壊れるかも


「ロウニールてめえ!!」


大剣を元の大きさに戻し振り下ろしてきやがった


それを魔力で吸収し受け止めると顔を近付ける


「大きくする時にマナを流すはず・・・それとは別にマナを流す場所が感じられたはずだ。そこにマナを流せばそのマナは魔力に変わり大剣に纏わる」


「ぐっ!このっ・・・」


「今度のは本当だ・・・そしてシュルガットにマナが通じないのも・・・試しにやってもさっきみたいな赤っ恥はかかないと思うけど?」


「・・・嘘だったらこのまま押し切って真っ二つにしてやる・・・本当だったら試し斬りしてやるよ」


それだとどっちにしろ切られるのでは?


そう思った矢先に大剣から魔力が迸る


銀色だった大剣が真っ黒に染まりより重厚感を増したような・・・そして威力も


「ぐっ!・・・キースさん・・・ちょいと力を抜いてくれませんか?」


「さっき言ったろ?試し斬りしてやるって・・・人の武器に勝手に変な機能付けやがって・・・それがどれ程のものか試してやるよ!」


「・・・って言ってたださっきの事で怒ってるだけじゃ・・・」


「・・・・・・・・・死ね!!」


やっぱり怒ってるだけだ!


シシリアちゃんの為とはいえこんな機能付けるんじゃなかった──────

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