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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
460/856

456階 Sランク

楽しかった・・・もっと続けたかった・・・でも仕方ないか・・・あの状況で続けるなどとても無理そうだし


「どうだった?ディーン様は」


駐屯所から屋敷に戻りながらディーンとの戦いの余韻に浸っているとサラが尋ねてきた


どうだったか・・・楽しかったのはもちろんだが剣を交わす度に闘争心が溢れ出して・・・この人を超えたいって気持ちになった。大きく見えた時なんて普通ならその差に絶望しているところなのに絶対に追い付いてやると意欲が湧いて・・・


「・・・サラと勝負している時と同じような感覚・・・もっと続けたい・・・もっと相手を知りもっと自分を知って欲しい・・・そんな感じだった」


「・・・へえ・・・」


「ちょ・・・自分から聞いといて反応薄くない!?」


「別に・・・残念だったわね止められて」


あれ?機嫌悪い?何か機嫌悪くなるような事あったっけ?・・・うーん・・・まさか・・・


「サラ・・・もしかしてディーンさんに嫉妬してる?」


「し・・・嫉妬なんてする訳ないでしょ!?」


「本当かな?」


もしかして『サラと勝負した時と同じ』って言ったのが癪に触ったのかな?僕としては嫉妬されるのはなんだがくすぐったくて悪い気はしないけど


「当たり前でしょ!なんでディーン様に嫉妬なんかしないと・・・」


「そう、それなら安心したよサラ・()()()()さん」


「・・・その勝負受けて立つわ」


やり過ぎた!


からかったら面白い反応するからつい・・・


てか街中で殺気を放つのはどうかと思うぞ?サラ


「おいおい痴話喧嘩なら家の中でやれ」


この声は・・・振り向くとそこには大男・・・キースが立っていた


しかも僕の屋敷の前で


「・・・そうだな。じゃあ続きは屋敷の中で」


そう言ってサラの手を握り屋敷に早足で向かうと背後に気配を感じる


「・・・なぜついてくる?」


「用があるからに決まってんだろ?ちょいとツラ貸せ」


「無理です。それじゃあごきげんよう」


そう言えばキースも来てたんだっけ・・・ディーンはお礼って言ってたけどキースは・・・まあ聞きたい事が山ほどあるのは分かる・・・面倒だから避けてたのに待ち伏せまでするとは思わなかった


無視して屋敷に入ろうとすると突然影が差す


「いいメイド従えてんじゃねえかロウニール」


「ここまですると冗談では済まされませんよ?キース様」


いつの間にか大剣を握ったキースが僕目掛けて大剣を振り下ろそうとしていた


いち早くそれに気付いたサラが勢いがつく前に風牙龍扇の先端を大剣に当ててその動きを制していた


「冗談で済まないとどうなるんだ?サラ」


「そうですね・・・庭の雑草取りでもしてもらいます!」


サラは体を回転させ蹴りを放つとキースは飛び退き中庭に


そして手のひらを上に向け手招きする・・・かかって来いと


サラはその挑発を受けて飛び上がるとキースの前に立つ・・・まさかの中庭でSランク同士の対決!?いやいや庭師が泣くわ!


「まっ・・・」


「邪魔をするなロウニール!この滾りはちょっとやそっとじゃ収まらねえ」


人の庭で滾るな


「大丈夫ですご主人様・・・躾のなってないお客様を躾けるのもメイドの務め・・・精一杯やらせて頂きます」


そんな務め聞いた事ないから!


ハア・・・こうなったら止められないか・・・もしかしたらサラは僕とディーンの勝負を見て充てられたか


「躾ねえ・・・Sランクになったからってちぃとばかり勘違いしてねえか?格の違いを見せてやるからかかって来い後輩」


「先輩面も今のうち・・・庭の雑草はその大剣を使用する事を許可致しますのでそれで大剣の使い方を学んで下さい」


「はっ!雑草どころか庭ごとひっくり返してやるよ・・・そしたら掃除の手間も省けんだろ」


「Sランクに『品格』という条件を追加するべきですね。同じSランクと思われたくないのですが」


「同じ?笑わせるな・・・お前はまだAランクに毛が生えた程度・・・本当のSランクを見せてやる」


「あまり大言を吐かない方がよろしいかと・・・恥をかくのがお好きでなければ」


「ぬかせ!」


ついに始まってしまったSランク同士の対決・・・大事には至らないと思うけど念の為に止める準備をしておかないとな・・・特にキースは一旦熱が入るとなかなか冷めないしな──────




「ご主人様これは・・・」


「庭師をしばらく増やしてくれ・・・掛かった費用はヒョーク家に送り付けてくれ」


「畏まりました」


「それと屋敷から出て来ない方がいいぞ?下手すりゃ巻き込まれる・・・サーテンが巻き込まれて死んだらそれもヒョーク家に請求しないといけなくなるしな」


「それは大変ですね。キース様がお住まいの屋敷を売り払っても足りない程の請求になりますし」


「自己評価高いなおい・・・精々庭師を増やした請求分を倍にするくらいだろ?」


「なかなかリーズナブルな執事だったのですね私は」


「居ないと困るけどな・・・しょぼい葬式が嫌なら入ってろ」


「はい。暖かい飲み物を3人分用意しておきます」


「・・・そうしてくれ」


サーテンが中に入るとまた2人の勝負に集中する


互いに一歩も引かない状態・・・それを演出しているのはサラだった


キースの力に合わせて自分の力も上げていく・・・キースがそれを超えようとするとサラもそれに合わせて力を上げる


どちらかが上がり切るまでの勝負・・・底を探りながらの胃の痛くなるようなギリギリの綱渡り


どちらか一方が底が知れればあっという間に勝負がついてしまう・・・工夫もなく単純な勝負の為キースの性分には合ってる気がする


次はどうだこれならどうだと積み上げていき相手が参りましたと言えば勝負あり・・・僕とディーンの勝負とはまた一味違った勝負の仕方だな


その分・・・勝負が長引き庭が破壊されていくのだが・・・


「チッ!しぶてぇな・・・まだついてこれるかよ」


「手加減も程々にして頂きませんと睡眠欲の方が勝りそうですが」


「ヤリまくって夜寝ねえから眠くなるんだよ!夜は寝ろ!」


「その発想はどこから・・・邪念を振り払って差し上げます」


うーん、ここでキースの言葉に対して『正解!』っていう言ったらサラに怒られるだろうか・・・めちゃくちゃ怒られるなやめておこう


それにしてもまだまだかかりそう・・・キースがこれくらいで片がつくだろうと繰り出した攻撃をことごとくサラが弾き返す・・・タイプが全く違った2人なのによくこんなに拮抗した勝負を続けられるな


キースは力任せで大剣を振るうただそれだけ


技術も何もあったもんじゃない・・・けど逆にだからこそ怖い


経験頼りに予測して先回りしようものなら簡単に真っ二つにされてしまうだろう・・・振り上げたら振り下ろしてくるなんて当たり前の事も考えてはダメだ


大剣を振り上げたまま突っ込んで来るかもしれないし間合いにも入ってないのに振り下ろし大剣を地面に叩きつけて地面を揺らして来るかもしれない・・・読みで動いた時、当たればチャンスになるが外れれば一気にピンチとなる。キース相手にピンチとは負けに等しい


だから読む事は諦め来た攻撃に対処する他ない


サラはキースのその辺を理解しているのか最初から向こうが動いてから動いていた


読むことなく難無く躱せるのは彼女のスピードがあってこそ


それと師匠の技とはまた違った捌き方・・・あの大剣を事も無げに躱せているのは単に速いからではなく大剣の軌道を触れるだけで変えているからだ


まあ触れるだけってのは語弊があるか・・・マナを適量流しているのは見て取れる・・・だがその適量を瞬時に見極めるのは神業に近いかも・・・少しでも間違えれば大剣は軌道を変えずにサラへと振り下ろされるのだし・・・見てるこっちが心臓に悪いくらいだ


大剣の軌道を自在に操るサラを見てるとどっちが『大剣』なのか分からなくなるな・・・それはキースも分かっているのか徐々に顔を真っ赤にして怒り始めているのが見て取れた


今のところは全くの五分・・・サラもさすがに上げてきたキースに攻撃をするのが難しくなってきている


躱すのが精一杯とまでは言わないが踏み込むのが戸惑われるくらいキースの回転が早くなってきた


サラが動くと汗が飛ぶ


そろそろ限界が近いのかも・・・だがそれはキースも同じだ


回転を上げるとどうしても力が入れられなくなり納得出来ない振りが多くなったのか表情が険しくなり言葉数も減ってきていた


そろそろ決着か


そう思った矢先にキースがとんでもない事をしやがった


「これでも躱せるか!サラ!!」


「ちょっと・・・難しそうですね・・・」


そりゃそうだ


キースの大剣は見る見る内に巨大化した。天をも衝くくらいに


キース自身も支えるのがやっとな感じ・・・プルプルして今にも倒れそう


サラは振り下ろされても躱せるのだろうけど庭は壊滅するだろうな・・・庭師どころじゃなく大工が必要になるレベルに


まあサラが怪我するよりは庭が破壊された方が全然いいのだがもしかしたらサラは庭の事を考えて躱さずどうにかしようとするかも・・・さすがに危険過ぎる


「死ね!!」


こら!


何が死ねだアホキース!


僕のスピードじゃ間に合わない


咄嗟にゲートを開き彼女の前に


そして魔力で強化し更に威力を吸収出来るよう準備しようとしたが瞬時に両立しない事を悟り変更・・・両手に魔力を纏い衝撃を吸収する方へと切り替えた


「うっ!・・・くっ!!」


大剣を受け止めた瞬間に足が地面に沈む・・・比喩ではなく本当に


衝撃を吸収出来たと思ったが予想よりも遥かに・・・重い!


「ロウニール!!勝負の邪魔をするな!!」


「っ!勝負だと?殺し合いがしたいなら先に言え・・・()が高値で買ってやる!!」


魔力を更に追加する


全てを破壊しても構わないと思えるほどに


「お・・・ちょ・・・」


ミシミシと音がする


それと同時に大剣に亀裂が入りキースの慌てる声がした


「待て待て待て!分かった!俺の負けだ!!」


知らん!砕いてやる!


更に力を込めようとした時、対象が突然なくなり肩透かしを食らう


見るとキースは大剣をアクセサリー程の大きさに変えてしまっていた


「キース・・・サラを傷付けようとした罪を大剣破壊で勘弁してやる・・・だからそれを寄越せ」


「待て!お前性格変わり過ぎだろ!当たりそうなら止めようと思ってたって!傷付けるつもりなんてさらさらなかっ・・・」


「前に俺と中庭で勝負した時にやってくれたよな?俺は止めたのにお前は・・・」


「あれは・・・おい、サラ!お前からも何とか言ってくれ!」


「・・・折られちゃえばいい・・・」


「~~~!この似た者夫婦が!やめろ!ヒビでもすげぇ怒られるのに破壊なんかされたらもう・・・来るな!!やめろー!!」


小さくなった大剣を持って逃げ回るキース


最初は怒りのあまり追い回していたけど段々と馬鹿らしくなり途中で足を止めた


そして改めて庭を見て・・・絶対にキースの家に請求書を送ってやろうと心に誓った──────

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