452階 長風呂
長い一日を終えてようやく屋敷に辿り着く
本当あの城の中だけ時間の流れがおかしいんじゃないかって思うくらい長くそして辛い一日だった
「お帰りなさいませご主人様。・・・だいぶお疲れのようですがお風呂に致しますか?」
「ああ、そうしてくれ」
「畏まりました。ただお湯の準備は終わっているのですがサラ様が入浴中です」
「・・・ふむ、それのどこに問題が?」
「いえ、随分前に入られたのでお急ぎになった方がよろしいかと」
「気の利く執事だこと・・・食事は城で済ませて来たから必要ない。みんな食事は?」
「皆済ませております」
「良かった・・・じゃあ、もう寝ていいから」
「心得ております・・・部屋の前はなるべく通らないように・・・お風呂場の前も」
「・・・んにゃろ・・・忘れてたよその事を」
部屋では禁止と言われたが風呂場では?そんな期待を胸に風呂場に直行しはやる気持ちを抑えながら服を脱ぎ去るといざ風呂場へ
すると長い髪を巻き上げて湯船に浸かる美女が・・・僕は気付かれないようそろりそろりと近付く
「・・・お城で美味しいもの食べて来た?」
「っ!・・・はい」
完全に気配を消していたつもりがバレていたか
身体を流し僕も湯船に浸かり見るとサラは気持ち良さそうに目を閉じ風呂を満喫していた
「で?何の話だった?」
「うーん・・・褒美、おっぱい、食事・・・かな?」
「・・・ごめん、途中で上手く聞き取れなかったのだけど・・・」
「まあ順を追って話すよ・・・長くなるけど大丈夫?」
「のぼせない程度にお願いするわ・・・けど真ん中の件は詳しくね」
「了解・・・じゃあ先ずは呼ばれて謁見の間で王様と宰相と話したところから──────」
「・・・そう、やっぱり」
「やっぱり?」
全て話し終えるとサラは動揺した様子もなく呟いた
「ファーネが今朝言ってたのよ・・・国はあなたを抱え込むのに必死になるって。で、その手段は王女をあてがって来るんじゃないかって」
「なるほど・・・それで『やっぱり』か」
「で、どうするの?」
「無論断るつもり」
「となるとエーラ王女は他国にってなるわね」
「たとえそうだとしても結婚しなきゃいけない義理はないし・・・」
「揉んだのに?」
「揉んでないし!いやまあ触れた感触はあったけど・・・」
「・・・でも同じ女性として同情はするわね。見知らぬ土地に見知らぬ相手と結婚なんてゾッとする・・・」
「じゃあ僕が王女と結婚して第二夫人になる?」
「第三夫人よ・・・カレンさんもいるでしょ?」
「忘れてた・・・どうしてこう・・・」
「貴族になったからには色々とあるのよ。責任が大きい分ね。何人も子供を作りその中から後継者を・・・その中に女の子がいれば家に都合のいい相手を見つけて送り出す・・・」
「そこまでして権力に執着するかねぇ」
「同感・・・でも執着する人には執着するなりの理由があるのかもね・・・私達が理解出来ないだけで」
「どうせ贅沢したいとかそんなくだらない内容だろ?」
「贅沢したいっていうのはくだらなくないと思うわ。あなただって美味しいものを食べたいとか綺麗な服を着たいとか思うでしょ?」
「・・・まあ、不味い飯よりは美味しい方が・・・服もまあ・・・」
「今のあなたは・・・もちろん私もだけど手に入れようと思えば手に入る・・・爵位がなくなってもダンジョンに入って魔核を売ればすぐに稼げるしね。でも貴族はその地位を一度手放せばほとんどのものが手に入らなくなる・・・楽して手に入れていた分努力もしてないように見えるしね」
「自分の身を護るのは護衛だし掃除はメイドが・・・予定を組むのは執事だし料理をするのは料理人・・・金がなくなりゃ当然みんな去って行くし着のみ着のまま放り出されたら何も出来ずに死んでいく貴族がほとんどだろうな」
「だからこそしがみつく・・・たとえ自分の子を犠牲にしてでも」
「・・・知らない世界は残酷だった・・・知らなければこんな気持ちにならなかったかな?」
「そうね・・・でも知らなくても起きていた・・・そして起き続ける・・・今後もずっとね」
「だろうね」
こうして風呂に入る事が当たり前になってるけど世の中には満足に風呂に入れない・・・食事も取れない人が大勢いるのだろう。けどそれを僕1人がどうにか出来るかって言われたら無理な話だ・・・でもだったら身近に起きた事だけでも解決するべきなのか?それが偽善だったとしても・・・
「・・・なんで近寄って来るのよ」
「いやなんか人肌が恋しいと思いまして・・・」
「あのねえ・・・言っとくけどお風呂場でもやらないわよ?」
『でも』・・・今『でも』って言った・・・やっぱり朝の宣言は本気・・・これはいよいよ本格的に考えないとまずいな・・・
「ちょ、落ち込み方!どんだけなのよ・・・そんなにしたいの?」
そりゃあ当然と高速で頷くとサラは何故か悪戯っぽく笑う
「そう言えば私が今日何していたか気にならないの?」
「え?・・・ファーネと用事があるとか・・・」
「あるAランク冒険者パーティーに会ってたの・・・全員男の3人組のパーティーよ」
「・・・へぇ・・・それで?」
「えっと・・・お湯の温度が何度か上昇した気がするのは気の所為?」
「サラ」
「はい・・・冗談よ・・・まあ冗談というかちょっとした仕返しよ」
「・・・仕返し?」
「自分は王女様の胸を揉んだって白状してスッキリしちゃって・・・言わなきゃこんなにモヤモヤしないのに・・・だから仕返ししたのよ。どう?モヤモヤするでしょ?」
「モヤモヤと言うよりフツフツと言うか・・・そっか・・・これは確かにキツイな」
「そうでしょ?まあ言ってくれない方が後で他の人・・・例えば王女様の口から『ロウニールに胸を揉まれた』なんて聞いたらもっとショックだけど・・・あなたの口から聞いてもモヤモヤしちゃうの・・・たとえ信用していたとしてもね」
うんそうだな
まだサラの方は太ももを触られただけだけど僕の方はベッドに裸で寝ているわ2人っきりだわ胸を・・・
「いや揉んでないからね!しれっと揉んだ揉んだ言ってるけど!」
「・・・そう」
くっ!信用しているって言ったくせにめっちゃ疑ってる感じ!いやそれよりも・・・
「ちなみにサラの太ももに手を置いた奴は生きてるの?」
「なんでいきなり生きてるかどうかを聞いてくるのよ・・・まあ辛うじて生きてるけど・・・それがどうしたの?」
「いや死んでたら殺せないだろ?」
「あのねえ・・・そんなんで殺しちゃダメでしょ?そんなんじゃあなたに会わせられない」
「うん?なぜ僕がそのクソ野郎と会う必要が?」
「クソ野郎って・・・まあちょっとね・・・頼まれたって言うか何と言うか・・・ロウにその3人組を紹介して欲しいの・・・第三騎士団のディーン様に」
「僕が?ディーンに?・・・なんでまた・・・」
「その3人は騎士団に憧れてたけど・・・どうやら以前に貴族を間違って殴っちゃったらしくてね・・・その貴族に騎士団に入るのを阻まれて冒険者になったらしいの。で、私達は私達で『タートル』の事を調べる為に偽名を使って冒険者をしてたんだけど3人はファーネの事は知ってたみたいで・・・ほら、ファーネって元第三騎士団じゃない?だから近付いて騎士団に入れてもらおうとしてたみたいなの」
「ああ、そういう事か。ファーネを頼りにしてたけど辞めてたのは知らなくて・・・」
「うん・・・昨日の夜は街の外で魔物相手に結構頑張ったらしくて・・・それで今日冒険者ギルドに行った時にお願いされたの・・・『どうか第三騎士団に入れてくれ』って。まあ本人達もかなり頑張ったみたいだからそうしてあげたいのは山々なんだけどね。さすがに辞めたファーネが紹介するのはちょっとってなって・・・」
「別に喧嘩別れした訳でもないし今でもちょくちょく第三騎士団に顔出したりしてるんだろ?なら・・・」
「まあね。でもほら辞めた手前頼みづらいと言うか・・・顔出すのと頼み事するのは違うじゃない?それで・・・」
「・・・まあ頼むのはいいけど受け入れるかどうかはディーン次第だと思うよ?」
「うん、本人達もディーン様に断られたら納得すると思うしそれでいいと思う・・・でね、あとひとつ・・・」
「何?」
「実はね・・・3人の内の1人がある人に会いたいって・・・お礼を言いたいって言ってたけどあれは完全に惚れて・・・ちょ、ロウ!?私じゃないから!」
「・・・誰に会いたいって言ってるの?」
「んとね・・・多分サキの事だと思うのだけど・・・」
「サキ?なんでまた・・・人違いじゃないのか?いや魔族違いと言うべきか」
「・・・語尾に『にゃ』と付ける女性って・・・」
サキだわ・・・紛うことなきサキだわ
「その男はなんでサキに?愛猫家だとでも言うの?」
「いやなんか・・・死にそうになった時に助けてもらったんだって。魔物が押し寄せる中颯爽と現れて魔物を追い払ったって・・・」
ああ、そう言えばそんな事をするよう指示したような・・・
「それで助けてくれたサキにお礼が言いたいってわけか・・・けどあのサキにねえ・・・」
「あら?女の私から見てもサキは魅力的よ?サキュバスっていうのは昔の人が結構な誤解をしてたみたいだけどサキを見ると誤解したのも納得出来るし」
なんだかな・・・まあ好みは人それぞれだし・・・
「って事で明日空いてる?」
「予定はないからいいけど・・・」
「なら決まりね。冒険者ギルドに行ってその3人に会って一緒に第三騎士団の所へ・・・フゥ結構長風呂しちゃったからのぼせそう・・・先に出るね」
そう言って彼女は大事な部分を手で隠して立ち上がり振り返る
前は隠せど後ろは隠れず・・・後ろから丸見えなのは分かっているのかいないのか・・・
「・・・ロウ?怒るわよ?」
「見せられたらさすがに・・・」
「見せっ・・・勝手に見ただけでしょ!別に見せた訳じゃ・・・ちょ・・・ロウ・・・ダメってば・・・」
そう言いながらも抵抗する力はそんなに強くない
僕は手でサラの腰を押さえ自分のモノをサラにあてがった
「ロウ・・・ダメだからね・・・ダメ・・・ダ・・・」
すみません・・・もう止まれません
この後なし崩し的に受け入れてくれたけど終わった後に結構怒られました──────




