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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
455/856

451階 ロウニールの要望

今この場にいるのは王族だけ・・・王様に4人の子供達・・・駆け引きをするにはいい環境かもしれない


「・・・それで・・・その人払いが必要な内容とは?」


興味津々といった感じで王様が聞いてきたので僕は頷き話し始める


「召喚士・・・魔物を召喚する事の出来る能力を持つ者を言います。仰られた通り私は召喚士で魔物を召喚し戦わせる事が出来るですがいくつか欠点があります」


「まあ万能な力なら廃れる理由はないしね。本を読む限りではそこまで万能な力とは思えなかった・・・5万の兵士を相手に出来るなどとても・・・多くて100・・・いやそれ以下だろうね」


「うむ。フォースの言う通りだ。もし5万もの兵士を相手に出来ると言うなら廃れる理由はない。余程その欠点とやらが致命的でない限りだが・・・」


「致命的かもしれません。何せ召喚士自体が魔物に食われるかもしれないのですから」


「なに?それは自ら召喚した魔物にという事か?」


「はい・・・では今から召喚士についてお話します」



ダンコから聞いた話・・・それをこの部屋にいる人達に伝えた


リスクはどんな魔物が召喚されるか召喚するまで分からないって事と自分の能力以上の魔物を喚び出してしまった場合は制御出来ずその魔物に殺されてしまう可能性があるって事


瀕死の状態で喚び出した魔物が下級の魔物で話にならなかったり逆に強い魔物を喚び出してしまって殺されてしまう・・・そんなリスクの高い召喚を好んで学ぶ人は少ないだろう


「・・・つまり自分自身を鍛えないと話にならねえって訳だ・・・それって本末転倒ってやつじゃねえか?」


「ですから廃れたのかと・・・自分より弱い魔物しか制御出来ないのであればわざわざ召喚する必要はありませんからね」


「・・・だが貴公は有用性を示した・・・もし魔物を召喚出来なければ今頃・・・」


「それも私のマナ量があってこそです。フォース様が言うように普通の召喚士なら数体が限度でしょう・・・私が喚び出せるのは・・・1000体以上」


「1000体!?・・・そこまで・・・」


「しかもローグ卿は魔王討伐者・・・となるとどんな魔物も制御出来る・・・」


「魔王討伐に関しては皆の協力あってこそです。決して個人の実力ではありません。それにまだ見ぬ魔物もいるでしょうし必ずとは言えませんが・・・ただもし制御出来ずともあの場ではあまり問題ではなかったでしょう・・・標的となる人間は私以外にも多くいましたから」


別に必ず喚び出した本人を狙うって訳でもない。本来の魔物としての行動・・・『人間を狩る』をするだけ


「そうだな・・・そう考えると戦場ではかなり有用なのかもしれないが対魔物になると途端にリスクのみが高くなる・・・召喚士が廃れたのも永き平和が所以なのかもしれぬな」


「・・・1000体といえば軍隊に等しい・・・いや、魔物となればそれ以上か・・・辺境伯にとっちゃリスクもあってねえようなもの・・・堪らないな・・・ぶっちゃけ1人で国を落とせるんじゃないか?」


「落とせますね」


マルスは冗談で言ったつもりだろうけど僕は平然と『落とせる』と答えた為に全員が驚きの表情を浮かべて僕を見た


「へぇ・・・言うじゃねえか・・・だが魔物を1000体出せたとしても厳しいと思うがな。俺なら召喚された魔物じゃなくて召喚した辺境伯を狙う・・・そうすりゃもう増やすことは出来ねえだろ?」


「どうやってですか?」


「あん?」


「剣や槍・・・弓や魔法ですら届かない場所にいたら?」


「?何言って・・・」


「・・・ゲート・・・」


マルスは知らなかったのかもしれない・・・が、その存在を知っていた王様が立ち上がり呟いた


「ゲート?」


「彼は行ったことのある場所に瞬時に移動出来る手段を持っている・・・ダンジョンにあるという移動手段『ゲート』・・・それと同じ事を地上で出来るのだ・・・もし他国の城に入った事があるとすれば・・・この国にいながらその国の城内に魔物を溢れさせる事も可能だ・・・」


「・・・おいおい・・・洒落にならないぞ・・・」


「この世に万能な力はないと思ってる・・・他にもリスクがあるのでは?」


「ありません」


「・・・そうか・・・ならローグ卿はやろうと思えばこの大陸を支配出来る・・・そういう事だね」


しないけどね


今回この話をしたのは駆け引きがしたかったから・・・大陸を支配出来る力・・・その力をどう使うのかは僕次第・・・それを伝えて交渉する


「・・・望むのか?」


「まさか・・・私はただの平民出身の平和主義者ですよ?攻められたら仕方なく牙を剥きますが攻められなければ牙は隠したままにするつもりです」


「もったいねえな・・・望めば手に入るんだぞ?全てが」


「欲しいとは思いませんので」


「欲がねえ奴だな・・・その力・・・俺に貸さねえか?いい夢見させてやるぜ?」


アホか・・・やるならお前主導じゃなく自分でやるわ


「この国だけでは満足出来ませんか?」


「いつ攻めて来るかも分からねえ国が隣りにいるんだぜ?それとも何か?小国は息を潜めて大国の顔色を伺って生きろってか?」


「そうは言いません・・・が、大国・・・リガルデル王国をこの国が攻め落としたとして次はこの国がリガルデル王国に成り代わるだけでは?」


「だからこその統一よ!大陸をひとつにまとめりゃそんな事は気にしないで済む!」


「他の国を回って見て来ましたがその国にはその国の文化や生活があります。その提案に全ての人が納得しなければやはり戦争は起きるかと」


「そんなの黙らせりゃいい!それだけのちからがありゃ・・・」


「実は私も・・・ひとつにまとめた方がいいかもしれないとは思ってます」


「・・・あん?」


「陛下にはお伝えしましたが領地にあるふたつの街とひとつの村をひとつの大都市として作り変えようと考えてます・・・まだ住民にも話していない草案程度のものですが」


「お、おう・・・そう、それだよ・・・そうすりゃ・・・」


「しかしそれは私の領地である事が前提です。これがもし他の貴族の領地を巻き込んでの考えだったらどうなると思いますか?」


「なるほどね・・・当然反発が起きるだろう・・・領地内でも起きうるのに他の領地と合併となると誰が上に立つかで揉めるのは目に見えている・・・同じ国でそうなるのだから兄さんの言う大陸統一なんて呼び掛けも当然揉める・・・つまり戦争になる、と」


「だからそれを力でねじ伏せりゃいいだろ!確かに犠牲は出るかもしれねえが・・・」


「その犠牲になるのがマルス様だったとしても?」


「・・・なんだと?」


「死ぬのが自分じゃないから・・・顔も知らない名前も知らない人だから言えるのでは?その犠牲になるのが近しい者や自分自身だったら言えますか?『平和な未来の為に犠牲になれ』と」


「・・・」


ここで言えると言ったら首を刎ねてやろうかと思ったがさすがに言わなかったな


「・・・ならどうすんだって話だ・・・このまま泣き寝入りして怯えて暮らせってか?」


「そうならない為の『毒』なのでは?」


「ローグ卿!!」


「まさか知らないとか?いや知らなくても関係ありません。むしろ知っておくべきかと・・・この国が聖者聖女を使って他国に何をしているのかを」


この中で知らないのは・・・おそらくスウだけか・・・『毒』と聞き首を傾げるスウに対して他の3人は表情を取り繕うのに必死になっていた


「魔蝕を治すには聖者聖女の力がいる・・・その聖者聖女を各国に送り込んでいるのは果たして各国の為か自国の為か・・・その両方だとしても犠牲になっているその人達はあまりにも不憫・・・」


「くっ!貴公には分からないのだ・・・小国として生き残るにはそれくらいの保険がなければ大国の言われるがまま・・・」


「ですがその者達に仕込むのはやり過ぎでは?」


「ちょっと・・・仕込むって何?」


「万が一・・・例えば今回みたいにリガルデル王国が攻め込んで来たりフーリシア王国に不都合が生じた場合、聖者聖女は自らの意思とは関係なく死を与えられる・・・この国の都合によって・・・そうですよね?陛下」


「・・・」


スウの質問に答えると王様は下を向き黙ってしまった


その態度から僕の言ったことを肯定したも同じ・・・みるみる内にスウの顔は真っ赤になり王様を睨みつける


「それは本当ですかお父様!そんな非人道的な事を我が国は・・・」


「非人道的?なら大軍で攻めて来るのは人道的なのか?スウ」


「お兄様まで!・・・まさか全員知って・・・私だけ・・・」


「おう知ってたさ・・・で、答えろスウ・・・それとも代わりに答えてくれるか?辺境伯」


「他の誰かと比べるのは意味ないかと」


「はぁ?じゃあやられたらやられっぱなしでいろってか!?」


「そうは言ってませんよ。それに私は『やり過ぎ』と言ったまでです」


「だったらどうしろってんだ?こっちの手の届かないところにいるんだ・・・死んだってことにされて拉致られたら抑止力にもなりゃしねえ!仕込むのは聖者達の命を守る意味も含まれてんだ!ど素人が口を挟む問題じゃねえ!」


命を守る・・・ねえ。それは聖者聖女の命ではなくて自分達の命だろうよ・・・白々しくて聞いてられん


「・・・私は今日、陛下にある提案をしました」


「あん?何だ急に・・・」


「兄さんハウス!」


「おいコラフォース・・・てめぇ・・・」


「領地の事と聖者聖女の事に関する事です。領地の事は皆さんに直接関係ないので割愛して・・・聖者聖女に関してはこの場を借りて聞いてもらいたいのです」


「ローグ卿・・・その話は追って答えると・・・」


「すみません、あの時は要望だけ言ってしまいまして・・・功績の報奨として『聖者聖女を希望する場合各国から引き上げる・・・そして仕込んでいるものを撤去する』とだけ申し上げましたが実は続きがあるのです」


「おいおいそりゃあ無理って話だ・・・魔蝕で魔人が増えても知らねえってか?」


「兄さん!」


「魔蝕に関してはゲートを使い魔蝕にかかった人だけを聖者聖女の元に来れるようにすれば解決するはずです。大陸中でも魔蝕だけならそんなに人数はいないはず・・・なので各地にいる聖者聖女達がフーリシア王国に戻って来て対応すれば負担はそんなに大きくないかと・・・もちろん赴任先の国に残りたい人もいるでしょうからその人達はそのままで治療を続ければ問題ないかと」


「それを行えば我が国には何も残らぬぞ?抑止力も失い各国は聖者達を囲み始めるだろう・・・そうなれば我が国は衰退の一途・・・聖者達は我が国の唯一の強みであり切り札なのだ」


「その代わりを私がすると言ったら?」


「・・・ローグ卿が?」


「つまり・・・聖者聖女達の代わりに抑止力となります・・・召喚士としての力を使って──────」




ロウニールとの食事会も終わり残った者達は無言のままそれぞれ頭を悩ませていた


「・・・彼はなぜ小出しに?さっきの提案を初めからしてたら父上とクルスはすんなり受け入れてたのでは?」


「恐らくな・・・願ってもない事ではあるから・・・」


「白々しい嘘を・・・大陸を整地する農具にでもするつもりだったのでは?父上」


「まあそうよね・・・盾に私を贈るなんてする訳ないし・・・盾如きならスウで充分」


「若さはいくらお金があっても買えませんよ?大お姉様」


「・・・スウ・・・」


「なによ」


「やめんか2人共・・・何を考えているか分からぬが今のところ矛にはならず盾にならなってくれると言ってるのだ・・・ここは素直に聞き彼の言う通りにするしか他あるまい・・・でなければ彼は矛となりこちらに向かぬとも言い切れん」


「我が国が屈服するって言うのか!?たった1人の平民に!?」


「彼は貴族だよ兄さん。辺境伯・・・ゆくゆくは公爵にもなり得る存在・・・それに屈服ではないよ」


「へぇどこが屈服じゃないと?奴の言い分を全部聞いて屈服じゃないってのはどういう事か俺に分かるように説明してみろ!」


「道具は使い手次第だろ?盾でもあり矛でもある彼を・・・誰が使うのかまだ決まっていない」


「・・・どういうこった?」


「私次第ってところかしら・・・彼を籠絡すればいいだけの話・・・スウのお子ちゃまボディでは到底不可能だけどね」


「・・・フン、成長過程ボディよ!」


「それで・・・出来そうなのか?もしくはもう・・・」


「まだですわお父様・・・時間の問題・・・いえもう少し強力な武器がいるかしらね・・・」


「頼もしくも怖い妹を持ったもんだ」


「そんな軽口叩けるのも今のうち・・・私の夫が大陸を支配したら果たしてそんな口が聞けるかしら・・・ね──────」

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