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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
453/856

449階 危険な果実

「・・・嬉しかったのです」


ようやく落ち着いたエーラがシーツに包まりながらポツリポツリと語り出した


なぜ裸で待ち伏せしていたのか・・・それには訳があった


第一王女として産まれたエーラ・・・その産まれた時から彼女の運命は決まっていたのだという


大国リガルデル王国に嫁ぐ


父親である国王ウォーグは女の子が産まれたらリガルデル王国に嫁がせると決めていたらしい


そんな中で産まれたエーラの人生は酷くつまらないものだったらしい


何をするにしても嫁ぎ先の為・・・礼儀作法も勉学も・・・美を磨く事さえも


当然恋愛など以ての外・・・もし彼女に色目を使ったり触れたりすればその男は厳罰に処されるという徹底ぶり


相手に迷惑をかけると彼女は男を決して恋愛対象として見ないよう動物と思い接していたのだとか



「・・・ちなみに私は?」


「それが・・・初めて会った時から動物とは見えなくて・・・不思議に思っていたのですわ」


嘘つけ・・・よっぽど変な動物で言えないだけだろ


「そうですか。それは残念です・・・私が動物だったら何と喩えられるか興味があったのですがね」


「ふふっ、おそらく獅子か豹・・・いえ、存在しない幻獣かもしれません」


そりゃどうも


「で、そのしがらみと言うか決められていたと言うか・・・とにかく嫁ぎ先がリガルデル王国ではなくなったのは決定的・・・エーラ王女は解放され自由となった・・・それなのになぜここに?」


リガルデル王国に嫁ぐ事はもうないだろう。産まれた瞬間から決められていた結婚はなくなった。彼女は自由になり結婚も相手を選べるはずなのに・・・


「・・・王族とはそのような簡単なものではありませんわ。ここがダメなら次へ・・・恋愛など出来るはずもなくただ嫁ぎ先が変わるだけ・・・スウのように一芸に秀でていればもしかしたらもあるかもしれませんが私は特に何もないので・・・」


一芸か・・・スウ王女は魔法に秀でている・・・王女にして宮廷魔術師候補になったくらいだ・・・この国で10本の指に入る魔法使いなのかもしれない


そういう特技を持っていれば利用されずに重宝されるが特技がなければ『女』を利用される・・・本当クソみたいな話だな


「それが今朝父上が私を訪ねて来てこう言いました『事情によりリガルデル王国への件はなくなった。代わりに別の者に嫁いでもらう』と・・・どうせリガルデル王国ではなくなっただけで他国に貰われるのは変わらない・・・そう思っていましたが・・・」


「相手が私だった・・・と」


「・・・はい・・・」


それのどこが違うと言うのか・・・自国内と言うだけでほとんど会った事もない人物には変わりないはずだ


「父上はこうも言ってました・・・『お前かスウかどちらか選ぶ事になるだろう。もちろん2人ともと言われれば2人ともに・・・スウを選べば・・・』・・・その先はお察しの通りです」


他国へ嫁がせる・・・か


てか王様・・・2人ともってなんだ2人ともって


「嬉しかった反面怖くなりました・・・せっかくリガルデル王国へ行かなくて済むと思った矢先に今度は別の国に・・・」


「・・・そこまで他国に行くのがイヤですか?王女なのですから丁重に扱われるでしょうし見ず知らずの人と結婚するより遥かに幸せになれるような・・・」


「確かに王族に生まれたら恋愛など出来ないのは重々承知しておりますわ。なので私の意思で婚姻を結ぶなど出来るはずもなく・・・ただ侍女数名を連れて行けるとはいえ味方がほとんどいない場所でどのような扱いをされるかも分からないとなるとやはり恐ろしく・・・過去に嫁がれた方は何人もいます・・・ですが嫁いだ後の話は聞こえてきません・・・どう扱われているか・・・何をされているのか・・・聞こえてこないのです」


そりゃあ不安にもなるか・・・もし自国内なら王様の目もあるしぞんざいには扱われないはず・・・それに味方や知り合いもいるだろうし・・・安心という面では比べ物にならないだろうな


「スウを選ばれたら・・・そう考えると居ても立っても居られずに・・・」


僕の先回りをして裸になり色仕掛けで選んでもらおうとしたが恥ずかしくなりベッドの中へ隠れた、と


「なぜお断りに?」


「私には愛する人がいますので・・・」


「?・・・それで?」


「え?いや・・・ですから・・・」


「その者は私と添い遂げるのを拒む・・・そう仰りたいのですか?」


「拒むと言うか・・・え?」


「確かに名目上私を第一夫人にしなくてはなりません・・・けどそれが気に食わないと仰るなら第二夫人でも構いません。もちろん対外的には私が第一としていただかないといけませんが・・・」


「ちょっと待って下さい!その第一とか第二とか・・・私は1人としか結婚する気はありませんが・・・」


「え?」


「え?」


「・・・公爵は元より辺境伯であってもお世継ぎは最重要事項かと・・・血族にのみ受け継がれる爵位です・・・お子は多い方がよろしいかと・・・」


「それはそうかもしれませんけどそれなら・・・その・・・いっぱい産んでもらえば済むのでは?」


まあサラが1人がいいって言ったらそれまでだけど


「いえそうもいきません。1人では限界もありますし万が一女子しか産まれなければ断絶の可能性も・・・家督は男子が継ぐものですし1人では負担もかなりのもの・・・一般的には複数人娶り後継者をその中からお選びになられる事に」


「・・・女子がダメな理由は何ですか?別に女子でも・・・はら、シャリファ王国なんて女王ですし・・・」


「我が国の決まりですわ。家督は男子が継ぐ・・・法で定められておりますので理由までは何とも・・・」


マジか・・・いっその事法務大臣になってその法自体を変えてやるか・・・


「女性が子を産める期間も限られております・・・それに一度妊娠し出産をとなると期間も開きますし1人の女性が子を産めるのは数人程度・・・もしその数人が全て女子でしたら・・・」


「その時は婿養子とか受け入れたら?血族には変わりないし・・・」


「それは・・・難しいかと・・・」


「なるほど・・・まあその時はその時か」


「え?」


「いやまあそれが決まりなら仕方ないかなぁって・・・確かにせっかく得られた爵位だし継続させたいって気持ちはなくはないけど無理矢理続ける意味はないかな」


「いけません!」


「うわっ!・・・って前前!」


いきなり起き上がるものだからシーツで隠れていた部分が・・・見てない・・・僕は見てないぞ!


「・・・失礼しました・・・そのような事を仰ってはいけませんわ」


「・・・なぜです?」


「ローグ公爵殿・・・いえ、辺境伯殿であっても領地がありそこに住む民がおります。その民はローグ辺境伯殿にとってその領民は男子が産まれなかったからといって切り捨てられるものである・・・そう仰っているのと同じです」


「いやいや他の人が治めればそれで済む話では?」


「自治権を与えられ辺境伯殿はこれから先領地を良くしようとされるでしょう・・・ですがその行いは新たな領主の考えに沿うものかどうかは分かりません。もしかしたら全く違う考えをお持ちなのかも・・・そうなると領民はどうなるでしょう?住み慣れた街が変貌し住みにくくなるかもしれません。ローグ辺境伯殿の作り上げた街に住みたく移民して来た者もいるかもしれませんし・・・それでも辺境伯殿は男子が産まれなかったと領民を見捨てると?」


確かにエーラの言う通りかもしれない


僕の今考えている大都市計画・・・それをよく思わない領主が僕の代わりに来たらせっかくひとつにまとめたものをみっつに分けてしまう可能性もある・・・大都市計画が進むか分からないけど進んだとしたらみんな納得してくれたって事だしそんな中でまたバラバラにされたら溜まったもんじゃないよな・・・


けど・・・確かに領民の為を思えばって事は分かるけどその為に何人もと?


「それに・・・その決断はあまりにも・・・」


「え?」


「辺境伯殿は私が嫌いですか?」


「いや嫌いも何も・・・前に一度お会いしただけですし・・・そもそも嫌いとかではなく1人の女性を・・・」


「ではその女性が納得されれば・・・私を選んでくれますか?」


「そういう問題ではありません。その女性が納得したとしても私が納得出来ないのです」


もしかしたらサラは貴族だから仕方ないと言うかもしれない・・・けど逆の立場ならどう思う?サラが貴族で僕と結婚して・・・でも貴族だからと仕方なく他の男に・・・そんなもの納得出来る訳がない!


「・・・では辺境伯殿は私に他国へ嫁げと?」


「いやいやそれは・・・えぇ・・・」


ど、どうしろって言うんだ?いやそりゃ可哀想だとは思うけど・・・そうだ!


「私が陛下に掛け合ってそのような事にならないようにします・・・それならどうですか?」


今の僕なら交渉に応じてくれるはずだ・・・条件は出されるだろうけど上手くいくはず


「・・・辺境伯殿はやはり私が嫌いのようですね」


なぜそうなる!


「いえそうではなくて・・・」


「では好き・・・なのですか?」


どっちかしかないのかよ・・・


「いいですか?エーラ王女。陛下と交渉し上手くいけば王女は自由に・・・それこそ誰とでも結婚出来るようになるのです。各国との友好の為に嫁ぐ予定があれば私はそれ以上の成果を陛下に示します。より強固な関係を築きたいと言われればそれを超える関係を築いてみせます。なので他国に嫁ぐ必要はありません」


王女の政略結婚の禁止を訴えたら何を頼まれるか怖いけど・・・それでも・・・


「・・・」


「エーラ王女?」


何故か自由になると言っているのに塞ぎ込む王女・・・他国へと嫁がなくてもいいし好きでもない人と結婚しなくてもいいと言っているにも関わらず何が気に入らないんだ?


「ローグ辺境伯殿・・・いえロウニール様」


「はい・・・ちょっ!?」


今度は起きた勢いで肌けたのではなく自らシーツを肌けさせた


高速で首を90度に曲げて何とか免れるが・・・少し・・・いや大分見てしまった・・・


「自由に誰とでもと仰いましたね?これが答えです」


どれが!?


「一目見た時から・・・そうあの時から・・・もちろん他国に嫁がなくても良いと言われて嬉しかったのもあります。ですが一番嬉しかったのは・・・お相手がロウニール様・・・貴方だったからです」


ああ、外はもう暗くなってきたな


食事はまだか?


「お手を失礼・・・ほら、感じますか?この胸の高鳴りが・・・」


ヒィ柔らかいよぉ・・・助けてくれー


「・・・どうですか?」


大変柔らかく・・・じゃなくて!


待て整理しろ・・・えっと・・・エーラ王女が嬉しかったのは他国に嫁がなくてもよくなった事もあるけど・・・僕に嫁げと言われて嬉しかったと?スウ王女に負けない為に裸になって部屋で迎える程に僕と結婚したかった?・・・んなバカな・・・


「これでも信じてもらえませんか?・・・ちなみに当然ですが私は・・・その・・・処女です。他の男性に裸すら見られた事はありませんわ。もしお疑いになるのでしたら確かめていただいても・・・その・・・これから」


ヤメテ・・・もう充分ですから・・・



コンコン


「はいぃ!?」


「?・・・辺境伯様お食事の準備が整いました。お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」


「あ、は・・・い・・・いや!ちょっと待ってて下さい!その・・・すぐ準備しますんで!」


「?・・・畏まりました」


思わず入室を許可しそうになり慌てて止める


こんな場面見られてみろ・・・噂が広まりサラの耳に・・・


「さ、さっ、着替えて食事にしましょう!」


「続きはその後で・・・でしょうか?」


「んな訳・・・あ・・・すみません・・・」


振り返りまた見てしまった・・・思わず『ありがとう』と言いそうになり慌てて謝罪に変える


もう何度見てしまったことか・・・色白の肌にたわわに実ったお胸を・・・


もし見た事を脅しに使われたら・・・どうしよう──────

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