表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
449/856

445階 相談

執事アダムとメイド達の解雇・・・本人達には悪いと思ってるけど国にプレッシャーを与えると同時に懸念材料を消す意味でも効果的なはずだ


アダムと数人のメイドは屋敷の完成と共に王都から派遣された人達・・・つまり王様や宰相の息がかかっている可能性がある。今までは気にしてなかったしこれからも気にする事もなかったかもしれない・・・今回の件がなければ


今回僕はいわれのない嫌疑をかけられて牢に入れられた・・・今後も同じ事が起きるかもしれない。それを警戒して信用のない人達は近くに置きたくない・・・不信感を募らせている・・・と、思わせるのが狙いだ


王都から来た人達だけを解雇したと分かれば王様と宰相はそう考えるはず


まあぶっちゃけ留守にしがちだから信用のおけない人を屋敷に残しておくのが不安ってのもある


更には僕の要望を通しやすくする為っていう目的も・・・


ただその要望は実現可能か分からないから今専門家に相談している真っ最中だ


「・・・完全独立・・・ですか?」


セイムは執事とメイドのほとんどがいなくなりガランとした1階の広間で腕を組み頭を悩ます


「うん。ある程度の自治権はあるけどそれ以上だと独立になるだろ?」


「まあはい・・・ですが聞いた事がないですし国が認めるとは思えません。国にはメリットが全くなくリスクが大きいですし・・・今はフーリシア王国ローグ自治領という形ですが独立となると建国になるかと・・・」


「その手前ってのはないの?別に国を割るつもりはないのだけど・・・」


「自治権を与える以上はないかと・・・それ以上となると税免除となりますが税金も納めず自治権を行使し続ける領地を自国と言えるでしょうか?」


「他国だな」


「はい。辺境伯の特性上自治権は最大限になっておりますのでこれ以上の譲歩はなかなか・・・数年限定で税の免除は過去に例はありますがその場合は災害などで税に回さず復興に力を入れる為でしたし・・・」


辺境の地だから国にお伺いを立てなくても好き勝手やっていい・・・けど税金は払ってねって状態だ。税金免除になれば住民の暮らしはかなり楽になると思ったけど・・・難しいか・・・


「ならもう一つは?」


「もう一つの案は可能ですがさすがに許可なしでは出来ないかと・・・しかしムルタナはともかくケセナの方達は納得されるでしょうか?少なからず理由の中に税金の事もあるでしょうし・・・」


「だよな・・・そういう手間を無くす為に税金の免除だったんだけど・・・」


僕がセイムに相談している内容は二つ


一つは僕の領地限定で税金免除


もう一つは街の統合だ


エモーンズ、ムルタナ、ケセナを一つの街にする・・・かなり巨大な・・・それこそ王都よりも広大な土地に三つの街と村の住民を住ませる。その中で住みやすい環境を自分達で作り上げればいい。街とか村に拘らず一つの街・・・都市の中で作るんだ


「案自体は素晴らしいと思うのですが非現実的と申しますか・・・計画書を通すだけでも何年もかかる案件となると思います」


国の許可が必要ならそうなるわな・・・街を統合します、で終わる訳もなく具体的な計画を立てないと許可は下りないだろう・・・そうなるとそれを作成するだけで膨大な時間がかかりそうだ


「ハア・・・せめて税金免除だけでも出来れば話は早そうなのに・・・ちなみにどうやってみんな税金払ってるの?」


素朴な疑問をぶつけてみたらセイムは驚き椅子からずり落ちた


「・・・辺境伯閣下・・・お願いしますよ・・・」


「いや、すまん・・・その辺は全然疎くて・・・で?どうやって払ってるの?」


「商会や商人から徴収しています」


「個人からは?」


「個人から徴収するにはジェファーさんが100人・・・いやもっと必要になりますよ?」


「それは怖いな・・・なら住民の税金の負担ってないってこと?」


「いえ・・・商会はその場所の税率により商品やサービスの値段を決めています。例えば100ゴールドの物があったとしてその場所の税率が10%であるならば110ゴールドで売るのです。そうなると結果的には商品を買った人が税を払っている事になります。街の発展具合や状況によって税率は上下しますので村は税率が安く街や発展している場所などは税率が高くなりますね」


「そうなると商会や商人は税金を払ってない事にならないか?」


「商会や商人は別途税金を払ってもらってます。商会や固定の店には売上に対して・・・個人の商人には関税という形で」


「ああなるほど」


「なので大きい商会がほとんどの店を賄っている場合はジェファーさんは半分で済みます。処理する手間が格段に減るので」


「半分って・・・縦切りか横切りか気になるところだけど・・・なら一つの商会に牛耳らせた方が楽ってわけか」


「そうなのですが・・・そうなると商会の力が強くなり過ぎてしまう懸念がありまして・・・」


「どういうこと?」


「例えばその商会がへそを曲げて街を出て行くと言ったとします。そうなると街は次の商会が来るまで店が一切ない状態に・・・」


「それはやばいな・・・服や武器何かは別になんとでもなりそうだけど食料は・・・」


「はい。村などは自給自足を主にしている事が多いのですが街になると外部に頼る事がほとんどで・・・商会が出て行くという事は食品の流通も止まるということになり食糧不足に陥るのは間違いないでしょう。商会もそれを理解しているので競合するところがない場合は下手すれば領主より権力を持つ事もしばしば・・・」


「ちなみにこの街は?」


「クリット商会の独壇場です」


「・・・マジ?」


「ナージさんとジェファーさんと何度か他の商会を引き入れようと試みたのですがクリット商会が強くなかなか他の商会が入る隙がありません・・・今は大人しく従ってくれてますが今後はどうなるか・・・」


「クリット商会に言って規模を縮小させるか?」


「おそらく聞いてくれるでしょうが果たしてそれで他の商会が入って来るかどうか・・・クリット商会に睨まれたくないと入って来ない可能性の方が高いと思います」


「なるほど・・・既に遅かった訳だ」


「はい。エモーンズが村から街に変割った時に上手く入り込んでおります。当時の領主に話を聞くとかなり助けてもらったと仰ってました。なのでこちらもクリット商会を無下には出来ず規模の縮小も言いづらい現状です」


言えなくもないが恩を仇で返す形になる・・・か


「閣下の大都市計画は素晴らしいと思います。望む住み方を自ら構築するまたは住みたい場所に移動する・・・誰しもが裕福さを求めるものでもなく清貧を望む人もおります。その願いを叶えることが出来るやもしれませんが・・・」


「難しい・・・か。セイムが国にどんな要望でも通るとすれば何を要望する?」


今なら何でも聞いてくれそうなんだけどな。まあ税金免除は難しいにしてもせっかくだから何か要望してやりたいところだけど・・・


「何でもですか・・・そうですね・・・確か閣下は魚がお好きでしたよね?港を開く許可を得るのはどうでしょうか?」


「いや、それは以前アーキド王国の王様に聞いた事があるんだけど断られた。断られたのは港を開く事ではなくて交易をする事だけどね・・・エモーンズに寄るのは赤字になるって・・・」


「なるほど・・・赤字となる理由はやはり取引量の問題でしょうか?」


「そうそう・・・エモーンズで買い取る量ではさすがに少ないって・・・一つの街で消費する量なんて高々知れてるしね」


「量は何とかなるかもしれません・・・閣下のお力を借りる事になりますが」


「私の?」


「閣下は『ゲート』と呼ばれる移動手段をお持ちですよね?それを使って別の街・・・とりわけ海から離れた街に魚を持って行けば飛ぶように売れるかと・・・そしてそれは街の利益にもなりますし・・・」


「でもずっと私が・・・いやそうか・・・魔道具・・・持って行く先に繋がる『ゲート』を付与した魔道具を作れば可能か・・・西側にあるヤッチシという街も他の街で消費する分も購入しているって聞いてるし・・・」


「ボクも魚をいただいたのはこちらに来てからでしたが非常に美味しかったので他の街でもすぐに浸透するかと・・・販路が決まれば充分アーキド王国との交渉は可能だと思われます」


うんそうだな・・・一度デュランに相談してみるか・・・利益が出るなら良さそうな雰囲気だったし・・・


「セイムに相談して良かったよ。これからも頼むな」


「いえそんな・・・あ、あと閣下の案はとても素晴らしいものです・・・ボクの方でも実現出来るか計画してみてもよろしいでしょうか?」


「案と言うと統合の?」


「はい。色々と難しい面もありますが可能であれば実現したいと・・・出来ればナージさんのお知恵もお借りしたいのですがいつ頃お戻りになりますか?」


「あー、あいつも大変だったから少し休ませてる・・・それでも近日中には戻って来れるだろう・・・帰りは一瞬だしな」


にしてもセイムは逞しくなったと言うかなんと言うか・・・出会った頃に比べてだいぶ成長したように思える


最初はオドオドして頼りなかったけど今は頼もしい限りだ。相談したのが本当にセイムでよかった・・・ナージなら無表情で『独立し戦争を仕掛けましょう』とか言いそうだし


ぶっちゃけそれも考えた・・・フーリシア王国という枠組みを抜けて独立してやろうかと・・・けどそれは僕の気持ちであり住んでいる人の気持ちではない・・・一時の感情で領地の人達を巻き込む訳にはいかない


たとえ僕一人でフーリシア王国と渡り合えると言えども・・・


今は二つの街と一つの村の統合・・・『大都市計画』と港を開き魚を定期的に得られる事だけに集中しよう


「閣下」


「うん?」


「その・・・ジェファーさんが絶対聞いて来いと言ってたのでお聞きしたいのですが・・・」


そう言えばここでセイムと話すからジェファーさんには自分の仕事をしておいてくれと言ったような・・・


「聞きたい事があれば自分で聞けばいいのに・・・で、なんて?」


「その・・・アダムさんやメイドの方々がいなくなって・・・その・・・掃除などはどうするのか?と・・・」


「ああ・・・まだメイドはいるだろ?ラルもいるし他にもエモーンズで雇った人が・・・」


「あの・・・足りない、と・・・自分で掃除したくない、と」


・・・ジェファーさん・・・屋敷生活に慣れ過ぎだろ・・・


「分かった。すぐに手配・・・いや、セイム・・・任せていい?」


「執事とメイドの募集ですか?それはもちろんですが何人ほど・・・」


「いや、執事はこちらで手配する。メイドは好きなだけ雇えばいい・・・条件も任せる」


「は、はい!」


さて・・・執事候補に会った後で王都に戻るか・・・もう少しゆっくりしたいけどそうもいかない・・・まだまだやる事は山積みだし・・・ハア・・・ゆっくりしたいな・・・どこか遠くでサラと2人で・・・それもいつになる事やら──────

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ