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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
447/856

443階 国境ダンジョン

走る馬車の揺れで1人の男が目を覚ます


リガルデル王国が長旅用に開発した馬車で人が数人寝転んでも充分過ぎるほどの広さがあり揺れも少ないように工夫を施されている特殊な馬車であった


行軍に合わせてゆっくりと進んでいた為に更に揺れは少なかったのだが道に転がる小石を踏みその影響で揺れた為の目覚め・・・もし小石を踏まなければそのまま目的地まで寝入っていたかもしれない


「おっ?起きたか・・・悪いが暴れると困るから()()()()にしてる。安心しろ・・・あのクソ重い戦斧は後ろの荷馬車に積んでるから」


「・・・なぜ俺は馬車に?」


「おいおいそっからかよオッサン・・・まあでもその方が気持ち的に楽か・・・うん、そうだよな・・・」


「『不死者』!答えよ!なぜ俺は・・・」


「忘れたのかオッサン・・・オレにはダンテって名前がある・・・そんな事言ってっと治してやらねえぞ?困るだろ?実際」


リガルデル王国のSランク冒険者『不死者』ダンテ・キノキスは自らの顔の前で人差し指を左右に振り男を落ち着かせる


「治す?何を治すと・・・っ!・・・なっ・・・バカな・・・」


「あーだから一緒の馬車はイヤだって言ったんだよ・・・それを何かあっては困るから・・・なんて言うからよぉ」


「俺の・・・俺の手足はどうした!?ダンテ!!」


リガルデル王国将軍『猛獅子』オルシア・ブークド・ダナトルは叫んだ


仰向けで寝かされ違和感を感じ顔を起こすと自らの四肢がない事に気付き・・・力の限り叫んだ


「騒ぐなよ・・・外ではみんな疲れてるのに歩き詰めなんだぜ?これで『猛四肢」おっと『猛獅子』が暴れていると知ったら体の疲労と心労で倒れちまうぞ?」


「貴様っ・・・っ!待て・・・歩き詰めだと?一体どこに向かって・・・」


「決まってんだろ?愛しい我が家だよ」


「・・・誰が撤退せよと言った・・・何が起こった!一体・・・何が起きていると言うのだ!」


「・・・こりゃあ頭の治療も必要か?・・・まさか本当にまるっきり・・・覚えてないのか?」


「もったいぶらず話せ!何が起きている!」


「そうギャンギャン喚くなよ・・・負けたのさ」


「・・・負けた?」


「そう・・・フーリシア王国のロウニールって貴族にリガルデル王国の『猛獅子』率いる10万の軍が・・・負けたのさ──────」




ダンテは語るオルシアがなくした記憶の部分を


ロウニールが地面に手をつけ何かを呟いた瞬間に見た事のない魔物が戦地を埋め尽くしリガルデル王国軍を襲い始めた


突然の事で兵士達は慌てふためき為す術なく蹂躙されていく


そんな中、オルシアはその魔物達を仕掛けたと思われるロウニールと対話する



「・・・貴様か・・・貴様がこの魔物を・・・」


「魔物じゃなくて魔獣だけどね。まあその違いはマナで創るか魔力で創るかの違いだけだから別にどっちの呼び方でもいいけど・・・戦争なんて仕掛けるから魔力が濃くなる・・・自業自得と思って受け止めるんだな」


「訳の分からないことを・・・貴様魔族か!!」


「人間・・・だよな?」


「聞き返すな!・・・おのれ・・・」


「将軍!指示を!このままでは・・・」


オルシアがロウニールを睨みつけていると兵士の1人がオルシアに駆け寄り指示を仰ぐ


見ると一方的に蹂躙され瞬く間に減っていく兵士達・・・既に全体の一割程は魔獣によりやられていた


「・・・チッ!後方で待機させてる奴らも出せ!こうなりゃ総力戦だ!!全ての魔物を蹴散らしてやれ!!」


「え?いいのか?」


「何がだ!!」


「そう来るなら増やすぞ?」


「・・・な・・・に?」


「そりゃあそうだろ?そっちが増やすならこっちも増やす・・・当たり前だよな?あっ、もしかして・・・まだ勝てると思っているのか?」


「・・・貴様・・・」


「なんだ覇王国とか言っててリガルデル王国も大した事ないな・・・こんな現状も理解出来ない奴を送り込むなんて・・・ここはダンジョンだ・・・客が増えれば従業員も増やすのが礼儀だろ?」


「ダンジョン・・・だと?」


「スカスカのダンジョンなんて客に失礼だ・・・そっちがその気ならきっちりお出迎えしてやるよ」


ロウニールは再び地面に手をつくと眩い光を発する


すると魔獣は更に増え、それに合わせて悲鳴は更に大きくなった


食われ、潰され、引きちぎられる・・・この世の地獄が繰り広げられ屈強な兵士達はただの魔獣のエサと化す


「やめろ・・・貴様こんな・・・こんなの・・・」


「やめろ?人のダンジョンに勝手に立ち入ってやめろはないだろやめろは・・・お前らはやめてくれたか?このまま私が現れずに侵攻しフーリシア王国の人達がやめてくれと願ったら・・・やめてくれたのか?これはお前らがやろうとしていた事の縮図だ・・・お前らはこういう事をやろうとしてたんだよ・・・それを自分らがやられたからってやめろだと?飽きれてものも言えないね」


「くっ!・・・いいのか?このままだとフーリシア王国は魔物が蔓延る国として大陸の的となるぞ?我がリガルデル王国はもちろん他の国々も・・・」


「・・・それは脅しのつもりか?逆効果だとなぜ分からないかな・・・今の言葉は私に『証拠を残さず喰い尽くせ』って言ってると同じなんだけど」


「まさかまだ・・・」


「増やせる・・・これだけ魔力が濃いとどれだけ増やせるか試してみたい気持ちもあるし・・・どうせ人間を殺しに来た人間だ・・・試すならもってこいの存在だよな」


既に戦意喪失し逃げ惑うリガルデル王国軍の兵士を見てロウニールは嗤う。その表情を見てオルシアはポツリと呟いた


「・・・悪魔・・・」


悪魔とは魔族の中でも特に人間に害を及ぼすものを指す言葉・・・それを知ってか知らずか呟いたオルシアに対してロウニールは更に笑みを深めた


「そりゃこっちのセリフだ。一体何人の人間を殺すつもりだったんだ?自分がやろうとしていた事をやられている事に気付けよ。それとも何か?1人でやれば悪魔で大人数でやれば正義だとか言うのか?」


「くっ!・・・ひとつ聞きたい・・・この魔物は貴様が死ねば消えるのか?」


「・・・消えるらしい」


「らしい?・・・まあいい・・・それを聞いて安心した」


「安心?おっと!」


「貴様を殺せば終わる・・・単純な話じゃないか・・・」


ロウニールが下がると元いた場所に巨大な戦斧が地面に突き刺さる


間一髪で躱したロウニールと地面に突き刺さった戦斧を担ぐオルシア・・・こうして2人の一騎打ちが始まった──────




「・・・それで俺は負けたのか・・・」


「・・・圧倒的だったよ」


「奴との差はそれほど・・・」


「違う・・・最初はオッサンが圧倒していた」


「なに?」


「繰り出す斧に防戦一方のロウニール・・・魔物から逃れられた兵士達は縋る思いで見つめていた・・・会話は聞いてなかったけど何となく理解したんだろうな・・・オッサンが勝てばこの地獄が終わるってな」


「・・・それでどうして俺は負けたんだ?」


「素手で戦う姿を見てオレは奴の適性が身体能力強化と思った・・・多分オッサンもそう思っていたはずだ。斧と素手・・・リーチの差もあって終始オッサンが有利に戦いを進めていた・・・が、奴はビックリすることにオッサンの斧を素手で受け止めやがったんだ・・・そしてこう呟いた・・・『やっと出来た』ってな」


「・・・出来た?」


「出来た・・・出来なかった事が出来るようになった・・・つまりオッサンと同じ事をやってたんだよ・・・奴は」


「同じ事・・・まさか・・・」


「ああ、そのまさかだ。奴はオッサンと戦う事で自分を鍛えてた・・・実践に勝る経験なしってか?オッサンが兵士達を鍛えてたように奴は・・・おいオッサン・・・息苦しいからやめてくれねえか?殺意を振りまくの」


「・・・」


「まっ、その後は一方的だった・・・オッサンの全てを破壊するような一撃を奴は難なく受け止めるんだからな・・・なかなか絶望的だったぜ?勝てると思ってたのが一転勝てる見込みがなくなったんだ・・・繰り出す攻撃全て受け止められちゃ勝てるわけないもんな」


「・・・」


「んでまたまた驚かせてくれたよ・・・奴は。どこからともなく出した剣・・・禍々しい雰囲気を放つその剣・・・いや、ありゃ刀か?まあどっちでもいいか・・・奴がそれを持った時にゃ鬼に金棒って感じだった・・・で、オッサンは為す術なく切り刻まれ()()なっちまったって訳だ」


「・・・両腕と両足を・・・持っていかれたか」


「そういうこと。止血はしたけど治してねえ理由は・・・分かるだろ?」


「俺が暴走しない為か・・・」


広い馬車に寝かされロープで括り付けられているオルシア・・・その四肢はロウニールに切り落とされ失っている


もし五体満足で今の話を聞いたのなら再びオルシアはロウニールに挑むだろう。そういう意味ではダンテの判断は正しかったと言わざるを得なかった


「・・・本国には?」


「当然連絡した」


「今の事も伝えたのか?」


「オレじゃねえけどな。副官の奴がしっかり伝えてたぜ?『将軍が負けたから撤退する』ってな」


「・・・俺が負けたなど・・・伝えなければ分かるはずもない事をなぜ伝えた!最後に勝てばいい・・・まだ勝負の途中だ!!」


「仕方ねえだろ?5万の口を塞ぎ続けるなんて土台無理な話だ。いずれ漏れるなら言っちまった方がいいって判断にはオレも賛成だ」


「待て・・・5万だと?」


「正確に数えた訳じゃねえが5万くらいだ・・・もしかしたらそれよりも少ないかもな」


「の、残りの5万はどうした?全部で10万だったはずだ!」


「分かってて聞いてんだろ?喰われたよ・・・ロウニールの奴にな。まあ正確には魔物共にだが」


「・・・我が国の・・・精鋭が5万も・・・なんということだ・・・なんという・・・・・・今すぐ治せ・・・このままおめおめと帰ることなど出来るものか・・・残りの5万とともに・・・いや俺1人でも・・・」


「まあそう言うわな・・・残念ながらそれは無理って話しだ。オレが帯同したのは王様からの依頼されたから・・・その内容が『将軍オルシアを生かせ』だ。重宝されてんな・・・まっ、それも評価はガラリと変わるかも知れねえけどな」


「このっ!」


「おお、怖っ・・・噛みつくなよ?王様も万が一って感じだったけどその万が一が起きたって訳だ・・・国は荒れるだろうな・・・軍の中でNo.2のオッサンがやられたんだ・・・言葉の通り手も足も出ずにな・・・あ、今の上手くね?」


「ダンテ!!」


「怒るなって・・・さて、これが起こったことの全てだ。オレはオッサンと会話する趣味はねえし寝とくとするよ・・・オッサンもその体じゃ何も出来ないだろうから寝とけって・・・まあ寝て見る夢は悪夢だろうが、な──────」

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