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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
446/856

442階 レオンとキース

フーリシア王国王城内


その1階の広場では激しい戦闘が行われていた


大剣を振るうキースに対して多彩な攻撃方法で応じるレオン


「変わらないな・・・もう少し考えて行動したらどうだ?」


「そりゃあ産まれたばかりの子に宰相やれって言ってるようなもんだ」


「自覚はあったか・・・尚更タチが悪いな」


大剣がレオンの体を掠めキースの斬撃がキースの体を切り刻む・・・一見するとレオン優勢だが大剣を食らわば死の状況に油断は禁物だった


キースは刻まれようとも踏み込みレオンを狙う・・・故にレオンは皮を斬る程度にしか踏み込めない・・・肉を切ろうとすれば骨を断たれるのは目に見えていた


「本当厄介だね君は」


「そう思うなら引き返せ・・・あとは何とかしてやる」


「何とか?リガルデント王国を利用し剣奴を解き放ち魔族の甘言に乗った私を?」


「お前・・・そこまで・・・」


「先程の合図によりリガルデル王国軍は侵攻を始め剣奴は街を破壊し尽くし魔族は王都周辺に潜ませた魔物に街を襲わせる・・・そんな計画を立てた私を庇うつもりか?引き返しただけで?」


「・・・ああ・・・絶対に何とかする」


「・・・キース・・・考えてもみろ・・・何人の死者がこの数刻の間に出たと思っているんだ?それに今私が引き返したところでリガルデル王国軍は止まらない・・・剣奴達も・・・魔物も、な。その状況で私が引き返して何になる?王の寿命が数分長くなるだけだと分からないか?」


「だから・・・何とかするっていってんだろうが!」


「現実を見ろ!もう引き返せない!引き返そうとも思わない!これは復讐などチンケなものではないのだ!」


「だったらなんだ?」


「・・・解放だ」


「あん?解放だと?」


「やりたい事をやるだけ・・・それだけだ・・・ありのままに生きる・・・それだけだ。誰からも縛られず誰からも蔑まれない・・・誰かの決められたルールに従うこともない・・・」


「頭の良くねえ俺でも分かる・・・それが可能じゃないことくらいな」


「なぜ不可能だと?」


「それは・・・まあ、色々あんだろ?やりたくない事をやらなきゃならない時だってあるし・・・」


「だろうね」


「おい!」


「そういう事じゃないのだよ・・・視野を広く見ろキース・・・この国は誰の為の国だ?何の為に国が存在している?そもそも国とはなんだ?この大陸になぜ6つも国がある?」


「やめろ・・・精神攻撃のつもりか?」


「・・・そうだったな・・・私らしくもない・・・何も不満に思っていない君にはこの言葉は響かないとわかっていたのに・・・」


「ああ。きっちり左の耳から入って右の耳から出て行ったよ・・・何も刺さらずにな」


「だろうね。妻がいて子がいて大きな屋敷があり何不自由なく過ごす君には響かないだろうな」


「不自由ならあるぜ?」


「・・・それだけ得られて何が不自由なんだ?」


「友がいねえ」


「・・・」


「隣でバカを言い合う・・・俺が間違ったら止めてくれる・・・時にはムカつく事を言いながらも笑い合う友がいねえ」


「・・・君はSランク冒険者だ・・・君を慕う者など腐るほどいるだろう?」


「さあな・・・いるかもしれねえしいないかもしれねえ・・・だがはっきり言えるのは隣に並ぶような奴はこれまでもこれから先も1人しかいねえよ」


「・・・」


「そいつと再び歩めるのなら俺は忠犬にでも何でもなってやるさ・・・地べたに這いつくばって許しを乞えと言われればそうしてやる・・・リガルデル王国が来ようとも剣奴やら魔物が来ようとも全部蹴散らしてやる」


「っ!君はまさか・・・」


「足の靴を舐めろと言われりゃ舐めてやる・・・だから戻って来いレオン・・・俺が助けてやる」


「助け・・・ふざけるな・・・ふざけるなキース!!なら王の首を持って来い!王と王族と・・・全ての首を私の前に並べてみろ!」


「違うぜレオン・・・それは助けた事にならねえ・・・お前はそれで笑えるか?」


「ああ笑えるさ!」


「笑えないね。一生笑えなくなるさ・・・そしてお前は去って行く・・・そうだろ?レオン」


「君に私の何が分かるというのだ・・・私の怒りが君に分かるか!私達の苦しみが・・・理解出来るか!!」


「出来ねえな。理解したくもねえ・・・お前は俺の隣にいろ・・・そうすりゃいずれ忘れさせてやる・・・もう済んだことはな」


「済んだことだと!?忘れる?忘れるものか!絶対に忘れはしない!!」


「死んだ者は生き返らない。恨んでる相手を殺してもな」


「・・・なら君の妻と子を殺してやろうか?もしそうなっても同じ事が言えるなら耳を傾け・・・だろ?」


レオンは言いかけて途中で止めた


これまで感じられなかった殺気をキースから感じたから・・・しかも普通の人なら卒倒しそうなくらいの濃密な殺気を


「未来を奪うな!俺らの・・・お前のもだ!!」


「奪うな・・・か・・・私は既に奪われた・・・私を友と言うなら些か不公平ではないかな?私だけ奪われると言うのは」


「てめぇ・・・」


「そうだその意気だ・・・そして味わえ・・・私が味わった苦しみを!」


「レオン!!」


2人が再びぶつかり合う


激しく・・・そして切なく



だがその戦いは前触れもなく終わりを迎える



互いの実力は拮抗し、数え切れぬほど斬り合っていると突然キースの目の前にゲートが出現し飲み込まれてしまう


不意に喧嘩相手を失ったレオンはキースに集中していて気付かなかった気配に気付き見上げた


「・・・君か・・・」


2階の手摺に寄りかかり下を見つめる人物と目が合った


「選手交代・・・ここが終わらないとおちおち寝る事も出来ないしね──────」




・・・何とか間に合ったか


牢屋から国境に行き、そして城に・・・城の外はサキが何とかしているだろうしここが収まれば一件落着・・・だよな?


「なぜ君がここに?てっきり地下にいるものと・・・」


「いつの話をしているのやら・・・とっくに抜け出して風呂に入って着替えもした・・・ついでに野暮用も済ませたし・・・」


「・・・キースか・・・」


「いやキースは何も・・・キースは多分僕が出て来ると助けられないと思ったんだろう。だから会いには来たけど何もしなかった」


腕の鎖は斬ってくれたけど足の鎖は斬ってくれなかったからな・・・邪魔されたくなかったんだろう


「そうか・・・まあ誰でもいいか・・・で?君は私を止めに?それとも・・・」


「まさか手伝ってもらえるとでも?」


「君は濡れ衣を着せられて牢屋に入れられていたのだろう?こちら側につく理由は充分だと思うがな」


「着せたヤツがよく言うよ」


「私が着せた訳ではない。勝手に奴らが被害妄想をこじらせた結果だ」


「まあ・・・そうだろうね」


「・・・降りて来ないのか?少し話をしよう」


2階の手摺に寄っかかりながら話をしているとお誘いが・・・このままここで話していた方が安全そうだけど・・・


「何もしない?」


「君は乙女か・・・何もしないと約束しよう・・・どうせ君が現れた時点で私の負けだ」


「なら」


そう言って手摺を越えて1階へと降りた


後ろにいた『タートル』のメンバーが警戒するがレオンはそれを手で制して僕に微笑みかける


「正直助かった・・・あのまま決着がつかずに王国騎士団達が突入して来たら面倒な事になっていただろう」


「だろうね。2人の力量は同じくらいっぽかったし・・・互いに手を抜いて何をやってんだか・・・」


「・・・それで?君は何をしに私達の前に?」


「いやだからここが終わらないとゆっくり出来ないから・・・」


「確かに君なら私達を止めることは可能なのだろう。魔王を倒した腕は伊達ではないだろうからね。だがその後はどうする?ここで私達を止めても無意味・・・ああ、君は牢に入れられていたから知らないか・・・この国、フーリシア王国がどのような状況なのかを」


「リガルデル王国と剣奴と魔物・・・それに魔族の事か?」


「・・・リガルデル王国の事はさておきなぜ君が剣奴や魔物の事を?」


「風呂入って着替えて野暮用を済ませたって言ったろ?僕がリガルデル王国を追い払ってサキ・・・僕の眷族が魔族と魔物を追っ払った。剣奴は第三騎士団と僕の私兵とその他数人が対応に当たっている。なのでここが終われば後は寝るだけってわけだ」


「・・・言っている意味が分からないな・・・リガルデル王国軍をどうしたって?」


「追い払った」


「・・・フッ・・・嘘も休み休み言うのだな。10万の兵・・・それに猛獅子オルシア将軍にSランク冒険者も連れて来ているはずだ。その軍を追い払っただと?たとえ魔王を討伐した君でもありえない・・・もしそれが事実なら・・・人間の域を逸している」


「酷い言い方だな・・・まるでそれじゃあ・・・僕が化け物みたいじゃないか」


「・・・まさか本当に・・・君は一体・・・」


「やっと信じてくれたか・・・さて、レオン・・・お前はやり過ぎた・・・魔王復活の時の借りもあるから痛みを感じること無く消滅させてやる・・・ありがたく受け取れ」


魔力を解き放つ


これは戦いじゃない・・・やった事に対しての・・・精算だ


「くっ・・・やはり君は・・・最後のピースだったか・・・必死で穴埋めしようにも埋まらなかった最後のピース・・・」


「来世では幸せに生きろ・・・レオン──────」






フーリシア王国王城内執務室


「・・・現状を報告しろ・・・まだ繋がらぬのか・・・各国とはまだ・・・」


「・・・」


机に肘を乗せ俯きながら呟くフーリシア王国国王ウォーグ・フォーレンス・フリーシアに宰相であるクルス・アード・ノシャスは何も返せずにいた


次々と来る凶報


最後に聞いたのは魔物が王都に迫り、剣奴達が王都内で暴れ手が足りず、リガルデル王国軍が国境を破り侵攻し遂には主力である第一第二騎士団が撤退したという報だった


「・・・あとどれ位でリガルデル王国軍は王都に・・・いやその前に出られるのか?この王都から・・・」


「王都までは数日かかるかと・・・報告によれば軍馬は使用しておらず歩兵のみとの事・・・おそらく兵糧の確保が難しい為でしょう」


「兵糧・・・そうか・・・10万の兵を食わせていくにもかなりの・・・となれば第一第二騎士団を王都に入れ篭城すれば兵糧切れで奴らも撤退を余儀なく・・・」


「・・・近隣の街が・・・」


「知った事か!そうだ・・・近隣の街に食料を廃棄するよう伝えよ!そうすればたとえ奪いに来ようとも奴らは得られまい・・・そうだそうすれば・・・」


「お待ち下さい陛下!そのような事をすればたとえ凌いだとしても王家は反感を買ってしまいます!」


「ならばどうすればいいと言うのだ!騎士団に周辺の魔物を討伐させ逃げれば良いのか!」


「王都を破棄しても同じです・・・破棄すれば再興は難しいでしょう・・・」


「ならばこのまま果てよと言うのか!余はフーリシア王国国王ウォーグ・フォーレンス・フリーシアぞ!!」


「・・・」


国王ウォーグの頭の中はどう生き残るかのみ考えており宰相クルスを悩ませる


クルスは既にフーリシア王国は滅亡待ったなしと考えておりウォーグとは真逆・・・つまりどこが落とし所かを考えていたからだ


徹底抗戦し足掻くか攻められる前に白旗を上げるか・・・どちらもフーリシア王国の王であるウォーグの死は確実であった


逃げても一時凌ぎである事をいつ伝えるか・・・そのタイミングを推し量る


すると執務室のドアがノックされ1人の兵士が入って来た


次はどんな悪夢を伝えに来たかと固唾を飲んでその言葉に耳を傾けていると兵士は部屋にいる国王と宰相にゆっくりと頭を下げ声を裏返しながら声高々に報告を始めた


「ご、御報告申し上げます!王都内で暴れていた剣奴は第三騎士団等の活躍によりほぼ鎮圧!王都周辺に出現し王都を包囲していた魔物の大群は王都周辺より跡形もなくいなくなりました!そして・・・リガルデル王国軍は・・・撤退を開始!既に国境を越え自国へと戻っております!」


その報告を受けウォーグとクルスは顔を見合わせる


「・・・待て・・・第三騎士団は国境に・・・いや、リガルデル王国軍が撤退だと?」


「はっ!」


「・・・もしや各国に連絡が届き動いてくれたのか?」


「いえ!各国との連絡は未だに取れておりません」


「ならば何が・・・いや、これ以上なく喜ばしい事なのだが一体何が・・・」


「申し訳ありません!詳細はまだ・・・」


「分かった。詳細が分かり次第逐一報告せよ・・・もう一度聞く・・・危機は去ったのだな?」


「はっ!そのように報告を受けております!」


「・・・では、下がれ・・・いいか?何か分かったらすぐに報告するのだぞ?」


「はっ!それでは失礼します!」


兵士が部屋を去り再び顔を見合わせる国王と宰相


危機は去ったと言えど凶報から間もない朗報に理解が追いつかず喜んでいいのか分からないといった表情を浮かべていた


「クルス・・・どう見る?」


「分かりません・・・一体何が何やら・・・ただ今の報告で不思議なのは第三騎士団の存在です。第一第二騎士団はまだ戻っておらず数日はかかるでしょう・・・第三騎士団も同様のはず・・・なのに王都に戻って来ているとはにわかに・・・・・・まさか・・・」


「ど、どうした?何か分かったのか?」


「・・・この目で確認して来ます」


「何をだ?」


「私が知る中でこのような事を出来る者がただ1人・・・しかしその者は・・・この城の地下に居るはずです」


「地下・・・まさか・・・」


「ロウニール・ローグ・ハーベス辺境伯・・・もし彼の仕業なら・・・事態はまだ終わりを迎えてはいないのかもしれません──────」

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