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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
444/856

440階 強くなる為に

なんだか緊張する・・・久しぶりだからか?それとも・・・


「お礼が遅れた・・・ありがとう」


「礼なんて!・・・仲間だろ?」


「親しき仲にも礼儀あり・・・それに今は仲間じゃない」



『今は仲間じゃない』



・・・はっ!危なく気を失いそうになった・・・なんと言うことを言うんだ・・・


「仲間だろ!?俺達は!」


シルは『タートル』に入った・・・けど心は・・・心は俺達と共に・・・


「・・・さっき揃ったって言ってたけどマホ達も来てるの?」


・・・その質問が怖かった


仲間達の事を話さないといけなくなるから


でも話さないといけない・・・仲間として


オッサンに弾き飛ばされた短剣に手を伸ばす


「・・・」


「質問に答えて」


「いやごめん・・・ちょっと待ってて」


なんだ?弾き飛ばされると繋がりが切れるのか?自由に操れると思ってたのに・・・


手を伸ばしてかっこよく短剣を取ろうとしたのにとんだ赤っ恥だ・・・今度ロウニールに文句言おう・・・弾き返されたくらいで使えなくなるなんて欠陥品だろ


短剣を拾い戻ると右手に杖と指輪を、左手に短剣を持ちシルに見せた


「・・・なに?」


「みんなだ」


「今は冗談を聞く気分じゃ・・・」


「これが()()の杖でこれが()()()の指輪・・・で、こっちが()()()()の短剣・・・」


「っ!まさか3人は・・・」


俺は口に出さずに頷いた


彼女は口に手当て絶句している・・・再会出来るのが当たり前と思っていた仲間達が既に死んでいると知って


「なんで・・・なんで・・・」


「ダンジョンで罠にかかって俺とマホ、スカットとヒーラの2組に分断させられた・・・マホは足を怪我して・・・俺がおぶってたんだけどアイツ・・・閉まりそうになった扉を見て俺を押して・・・」


「・・・そんな・・・」


「スカットとヒーラはボス部屋に落とされたらしくて・・・他の冒険者がスカットの短剣を拾ってくれて・・・ヒーラの指輪は・・・別の場所で腕ごと落ちていたらしい・・・」


「・・・」


「・・・俺は・・・何も出来なかった・・・ただ・・・生き延びちまっただけ・・・」


道具を持つ手に力が入る


俺に力がもっとあれば3人は・・・


「あー・・・立て込んでいるとこ悪いけどここから早く離れないと不味いかも・・・いつ騎士団が戻って来るか分からないし2人をあのままには・・・ねえ?」


2人?・・・あそこで重なって倒れている2人か・・・そうか彼らはシルの・・・


「ちなみに・・・えっとケンだっけ?手伝ってくれたら助かるんだけど・・・ほら、女2人じゃちょっと厳しいしジュネーズを倒すくらいなんだ2人くらい抱えられるでしょ?」


「いやいや!倒したって言っても道具のお陰ッスよ!?俺なんてまだまだ・・・」


「道具?そういやどうやってあのジュネーズを倒したの?見てたけどその杖を当てただけでジュネーズが倒れたような・・・」


「ああ、あれはこの杖の能力ッス。技か魔法どれでも一つ記憶出来ていつでも放てる・・・さっき使ったのはサラ姐さんの『風喰い』って技で・・・」


「・・・え?」


「能力付き?」


「そうッス。ロウニールに作ってもらって・・・」


「ロウニール!?・・・ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!作戦タイム!」


「作戦タイム???」


そう言うとシルを連れて俺から離れた


作戦タイムって・・・なんだ?


「ちょっと!何なのよアレ!そりゃあ能力付きなら色々あるけど技や魔法を記録ってやば過ぎない!?」


「うん・・・やばい」


「どうしよう・・・めっちゃ欲しい・・・ねえシル」


「なに?」


「彼アンタに惚れてるっぽいから乳のひとつでも揉ませて貰って来てよ」


「・・・無理」


「そこをなんとか!アレがあれば私一軍になれる気がするの!ねえお願い!」


「ヤダ」


・・・あのぉ・・・聞こえてますけど・・・丸聞こえなんですけど・・・


そして作戦タイムが終わり戻って来た『タートル』の女性は俺を見て手を差し出した


「それちょうだい」


「いやダメッスよ!欲しいなら作ってもらえばいいじゃないッスか」


「そんな簡単に作れるの?そう言えばロウニールって・・・あのロウニールよね?」


「珍しい名前だし『あの』ロウニールだと思うッスけど・・・」


多分同じだよな?俺の言うロウニールと彼女が言うロウニール・・・一体どこで知り合ったんだ?シルも・・・ロウニールの事知ってるのかな?


「お願いしてみようかしら・・・一緒に戦った仲だしふた揉みくらいで・・・」


「なぜすぐに揉ませようと・・・っ!うそ・・・そんな・・・」


シルが突然俺を見て・・・いや、俺の背後を見て後退る


何を見てそんなに驚いているのかと振り向くと・・・そこで信じられない光景を目の当たりにした


「油断・・・では片付けられないな・・・見事だ・・・」


騎士団団長のオッサンが立っていた・・・あの『風喰い』をまともに食らったはずなのに・・・


普通の魔物なら一撃・・・ボス級ですらかなりのダメージを与える事が出来るサラ姐さんの技なのに・・・コイツ・・・本当に人間か?


「私もまだまだだな・・・さて・・・もはや長居は無用・・・一気に片付け城に戻るとするか」


来る・・・あの見えない剣が


後ろには傷こそ回復したけどまだフラフラなシルとヒーラーの女性だけ・・・俺が何とかしないと・・・でももう『風喰い』もない・・・くそっ!


「ほう?何も無い所から剣を取り出すか・・・なかなか面白いな・・・貴様」


「うるせぇ!それ以上近付けば・・・斬るぞ!」


「バカめ・・・斬るのは私だ」


ダメだ・・・敵いっこない・・・また俺は守れないのか・・・シルさえも・・・失ってしまうのか・・・


イヤだ・・・絶対に守る・・・たとえこの命を失ったとしても!


剣を握る手が汗ばむ


震えが止まらない


それでも・・・足を・・・踏み出してやる!


「うおおおおぉぉぉ!!」


「その覚悟見事・・・では死・・・ん?」


よそ見!?今だ!!


斬り掛かるとオッサンは難なく避け俺は勢い余って地面に転がる


殺られると思いすぐに立ち上がるがオッサンはまだ別の方向を見ていた


一体何を見て・・・


「おいおい勘弁してくれよ・・・ここでも剣奴が暴れ・・・あっ」


「貴様は・・・『切り過ぎ』ジャック!!」


「げっ、王国騎士団・・・しかもジュネーズかよ!」


切り過ぎ・・・ジャック?


「まさか貴様に会えるとはな・・・此処で会ったが百年目・・・貴様もまとめてこの剣のサビにしてくれる!」


なんだなんだ?いきなりオッサンがジャックと呼ばれた男にロックオン・・・もしかしてジャックって奴も『タートル』?


「待て待て俺はまだ何もしてねえって!」


「ほざけ・・・これまで散々人を殺して来たはずだ。証拠がなく捕まえられずにいたが・・・聖女を襲った件・・・私の耳に入っていないと思ったか?」


「あ・・・くそっやっぱあの時全員殺っとくべきだったか・・・」


ジャックは奇妙に曲がった剣を背中から取り出すと構える


訳が分からない・・・何故いきなり2人は・・・


「この隙に逃げるわよ」


「え?」


いつの間にかシルと彼女が俺の後ろに回り込んでオッサン達に気付かれないように小声で話す


「アイツはジャック・・・暗殺ギルドの最低最悪の暗殺者よ。王国騎士団のジュネーズにとっては天敵・・・このまま見逃すはずはないわ。レギンとハズンには悪いけど今は逃げる事が先決・・・さあ行くわよ」


「・・・暗殺者・・・」


仲間じゃなくしかも暗殺者ならここで逃げても胸は痛まない・・・彼女の言う通りここは一旦逃げるべきかも


「おいお前ら!人に押し付けて逃げる気か!」


「なに!」


やばっ・・・見つかっ・・・え?


俺達に振り返ったオッサン・・・するとジャックはニヤリと笑い素早くオッサンに近付きその奇妙な武器で斬り掛かる


すぐに気付いたオッサンが剣で受け止め2人は顔を近付ける


「チッ・・・てめぇがいると暗殺の難易度が上がるからいつか殺ってやろうと思ってたからいい機会と思ったが・・・やっぱりめんどくせぇなてめぇは」


「黙れ・・・ここで貴様を始末して街の安寧を取り戻してくれる!」


しばらく鍔迫り合いを続けたと思ったら少し離れ剣戟の音だけを響かせる


時折2人の間に火花が散るのは剣同士がぶつかり合っているのだろう・・・俺には全く見えないが・・・


「ケン!」


「待ってくれ・・・もう少し・・・」


あのオッサンと互角に渡り合うジャック・・・それを見ていると・・・


「だ、団長!」


あれは・・・王国騎士団の?


俺達を無視してジャックと戦うオッサンに駆け寄ると空気も読まずに捲し立てる


「副団長以下ほとんどが賊の手に・・・急ぎお戻り下さい!」


「・・・この状況が見えないのか?今は『切り過ぎ』ジャックを・・・」


「その賊が向かう先は城・・・陛下の身が・・・」


団員の言葉に反応しジャックとの間合いを取るとオッサンは俺達を睨みつける


「貴様ら・・・そうか・・・剣奴を放ち街を騒乱に陥らせたのはその為か!」


その為ってどの為?


「今更気付いても遅いわよ・・・今頃とっくに・・・」


「くっ!城に戻るぞ!」


「おーい!俺との勝負は?」


「・・・次は必ず・・・決着をつけてやる」


ジャックの呼び止めに振り向きオッサンはそう言うと行ってしまった


なんだこの怒涛の展開は・・・シル達が襲われてて『風喰い』を食らっても立ってきて・・・ピンチになって暗殺者が現れて今度はオッサンが勝手にいなくなる・・・正直全く理解が追いつかない


「なんだよ先に喧嘩ふっかけといて・・・シラケたな。で?お前らか?剣奴を解放したのは・・・お前ら『タートル』か」


オッサンに向けられていた殺気が今度は俺達に


それにしても・・・なんだこれは・・・まるで心臓が握られているような感覚・・・これが暗殺者の殺気・・・


「・・・ええ、そうよ。何か問題でも?」


「剣奴達に寝てるところを邪魔された」


「・・・それは災難だったわね」


「だろ?だから責任取ってもらわねえとな・・・」


「邪魔したのは剣奴でしょ?」


「そうだ。だから解放したお前らに責任がある・・・だろ?」


なんでそうなる!?


てかそもそもシル達はなんで・・・剣奴ってロウニールがなってたっていうあれだよな・・・犯罪者が無理矢理闘わされている奴隷みたいな・・・その剣奴を解放?・・・それってめちゃめちゃやばい犯罪なんじゃ・・・


「・・・弱っている乙女を痛ぶって楽しい?」


「何が乙女だ。それに男もいるじゃねえか」


「この人は無関係よ・・・『タートル』じゃない」


「?『タートル』じゃねえのになんでジュネーズとやり合ってたんだ?」


「それは・・・色々あるのよこっちにも。とにかく今は見逃してくれない?後で礼とお詫びはするから」


「・・・まあ依頼が来ているならともかく一文にもならねえし別にいっか・・・今度から暴れるなら俺のいない所でやりやがれ・・・もっとスマートにな」


「ええ、今度からそうするわ」


助か・・・った?


ジャックが武器をしまうと同時にさっきまで感じていた凶悪な殺気も嘘みたいに消えてしまった


「さて・・・じゃあ」


ジャックが消えた・・・と、思ったらいきなり近くで金属がぶつかり合う音が響く


「・・・何をする」


「その男・・・『タートル』じゃねえんだろ?なら始末しねえとな」


「っ!ジャック!」


ジャックはいつの間にか再び武器を手に・・・その刃を俺に向けていた


それを止めてくれたのはシル・・・さっきまで人に肩を借りないと歩けない状態だったのに無理して俺の前に出て来てジャックの剣を受け止めていた


「闇組合のお前らは別にいい・・・が、さっき反省したばかりなんだ・・・口封じの大事さを身に染みて感じたよ・・・だから『タートル』じゃないなら消すべき・・・だろ?」


「彼は誰にも話さない・・・だから・・・」


「信用しろってか?そんな与太話を・・・意外としっかりした組織と思ってたがそうでもねえみたいだな。剣奴を解放してまでやるにしては『ごっこ』の域を出ちゃいねえ・・・ガッカリだぜ」


「・・・」


暗殺者ギルドも闇組合も同じように闇の組織みたいな感じでルールがあるみたいだ・・・そういやシルを探している時に全然情報が得られなかったし知られないように工夫しているのだろう


たとえば知られてしまったら知った相手を殺したりとか・・・


シルはそういう世界に足を踏み入れて・・・しかももうどっぷりと浸かっている


俺が何言ってもシルは・・・


「シル・・・これからどうするんだ?」


「ケン?それを聞いてどうするの?今はケンが・・・」


「いいから答えてくれ・・・これから・・・と言うか今からどうするかを」


「今から?」


シルはジャックを盾で押し返すと同じ『タートル』の彼女をチラリと見る


すると彼女は仲間の死体を見てからため息をついて答えた


「どうもこうも今の私達じゃ行っても足でまといだし・・・身を隠して折を見て撤退するわ」


「だって・・・それがどうしたの?」


という事は今日はもうこれ以上危険な真似はしないってことだ。それなら・・・


「分かった・・・ジャックさん!」


「あん?見逃してくれって言うんだったら・・・」


「俺を・・・ジャックさんの弟子にして下さい!」


「・・・あぁ!?」


「は?」


「ちょっと・・・アンタ正気!?」


これしか方法がない・・・闇には闇のルールがある


目撃者を消す・・・そうやって自分の身を守るのも理解出来る


なら目撃者ではなく仲間になればいい・・・それに今の俺ではシルを抜けさす事は出来ないし守れない・・・強く・・・もっと強くならないと・・・このジャックのように!


「おい・・・意味が分からねえし俺に何のメリットもねえし・・・頭おかしいのか?お前・・・」


「メリットならあります・・・それを説明するにはまず弟子にしてもらわないと・・・だからお願いします!俺を弟子にして下さい!ジャック師匠!」


ロウニールには悪いけど使わせてもらう・・・スカットの短剣・・・サラ姐さんは言ってた・・・この短剣が暗殺者の手に渡ったらかなりヤバイって・・・今の俺にはジャックのメリットになるとしたらこれしかない・・・だから・・・


「・・・」


「死にたくないから言ってる訳じゃありません!お願いします!どうか俺を弟子に!」


「ケン!」


「・・・シル・・・お前には俺を止める権利はないはずだ・・・そうだろ?」


「くっ・・・でも・・・」


俺達の事を思ってシルは俺達の元から去り『タートル』に入った・・・だから俺も勝手にやらせてもらう・・・お前を・・・救う為に!


「・・・面白ぇ・・・そのメリットがどんなのか気になるし『タートル』とのパイプも悪かねえ・・・いいだろう・・・師匠ってのはお断りだが暗殺者ギルドに入りてぇって言うなら殺すのはなしだ」


「ジャック!待って!」


「ありがとうございます・・・師匠」


俺の身を案じて止めてくれているのは分かってる・・・けど俺もお前の身を案じているからこそ飛び込む・・・闇の世界に



こうして俺は暗殺者ギルドの一員となった


全てはシルを救う為・・・そして強くなる為に──────

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