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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
441/856

437階 ようこそ

「ロウハーが・・・ローグ辺境伯?」


騙すつもりじゃなかったけど結果騙したような形になってしまったな・・・3人には謝らないと・・・全てが片付いた後にな


「さてと・・・ディーンの行方も気になるが・・・まずはパーティーメンバーに手を出した奴にお仕置きしないとな」


一時とはいえ共に冒険者パーティーとしてダンジョンに潜った仲だ・・・その3人を殺そうとした目の前のこの男を始末する・・・ディーン探しはそっからだ


「一騎打ちに割り込むのはフーリシアの伝統なのか?貴様といい『剣聖』といい・・・」


「剣聖?」


「ああ、本人は否定していたが奴こそ剣聖の名に相応しい・・・まあ少し実直過ぎるのが玉に瑕だが」


「・・・ディーンの事か?」


「それ以外にいるのか?剣聖の名に相応しい奴が。それなら連れて来い・・・俺が相手して見定めてやるからよ・・・ディーンみたいにな」


コイツ・・・ディーンと戦った?


でも・・・それでなんでコイツは無事なんだ?


「・・・ディーンはどうした?」


「さあな・・・勝負の途中で邪魔されたからキッチリトドメは刺せてないから分からんな・・・死んでもおかしくないくらいには痛め付けたつもりだが・・・」


「・・・そうか。ちなみにお前の名は?」


「お前・・・ふん、まあいい。オルシア・ブークド・ダナトル・・・この国を破壊し尽くす男の名だ覚えておけ」


オルシア・・・コイツがディーンを?あの至高の騎士であるディーンを?


「カレン・・・本当なのか?」


「え、ええ・・・本当ですわ。ディーン騎士団長はこの猛獅子オルシア将軍に敗れ・・・」


「そして今は軍も敗走し始め我が軍の勝ちが決まったところだ。辺境伯だったか?貴様がどうやってここに来たのか知らないが息巻いてももうお終いだ・・・それとも何か?貴様はこの10万の軍相手に1人で戦うつもりか?仮に貴様が俺を倒したとしても10万の軍は止まらんぞ!全てを・・・喰らい尽くすまで、な」


オルシアはカレンに続けると斧を持つ手を上げた


すると背後で待機していた何万もの兵士が一斉に動き出す


「一騎打ちを望むなら受けてやろう・・・だがその結果はどうあれ結末は変わらん!フーリシア王国はあと数日をもって終わるのだ!」


「く・・・くっ・・・どうして・・・どうしてこの国なのです!いえ・・・この国ではなくとも・・・せっかく平和だったのに・・・なぜ・・・」


「ハッハッハッ!無知は罪だぞお嬢さん・・・フーリシア王国が聖女を盾に好き勝手やって来たからであろう!」


「好き勝手?この国が何をしたと言うのです!」


「ずっと・・・ずっとだ・・・お嬢さんは平気なのか?ナイフを首に当てられたまま平気で過ごせるのか?この国はずっと・・・遥か昔からそうやって来たのだ!我慢の限界などとうに超えていた・・・チャンスがあればすぐにでもその喉元を食いちぎってやろうと牙を研ぎ待っていた・・・そのチャンスがとうとう来た・・・それだけだ」


「そんな・・・そんな事はありませんわ!聖女様を派遣し各国をお救いになっていただけ・・・」


「無知は罪と言ったであろう・・・もういい・・・論ずるに値しない者と語る気は無い・・・興醒めだ・・・逃がしてやろうと思ったが・・・ここで朽ち果てるがいい!」


もしかしたら聖者聖女を一番初めに派遣した時はカレンの言ったように助けたい一心だったかもしれない


だけど今は・・・オルシアが言うように聖者聖女を使って戦争への抑止力・・・いやそれ以上の力として使おうとしているのは確かだ。何せ聖者聖女を『毒』と表現するくらいだからな


どの国も口に出さないだけで不満に思っていることだろう・・・常に脅されているのと一緒だからな


けど・・・だからといってこのまま蹂躙される訳にはいかない!


〘ダンコ・・・まだ怒ってる?〙


〘・・・当たり前よ・・・〙


〘だよな・・・けど今は助けてくれないか?フーリシア王国を助けるのではなく僕を・・・僕の知り合いを助けて欲しい〙


〘・・・どうやって?まさか本気で10万の人間と戦うつもり?〙


〘ああ・・・ひとつ考えがある・・・出来るかどうか分からないけど・・・〙


〘・・・なに?〙


〘この場所を・・・ダンジョンにする〙


〘・・・は?何言って・・・まさかエモーンズのダンジョンを廃棄するつもり?確かに廃棄すればこの場所をダンジョンにする事は可能よ・・・ダンジョンはサキュバス一体につきひとつだから・・・でもあれだけ苦労して育てたダンジョンを廃棄する価値が?〙


〘エモーンズのダンジョンは廃棄しない〙


〘なら無理よ・・・さっきも言ったけど・・・〙


〘ダンコとサキ・・・元は1人のサキュバスだけど今は完全に別々だよな?〙


〘・・・え、ええ・・・〙


〘サキは魔王が復活した時・・・僕と同じように色々とやってたよな?城を作ったり魔獣を創ったり・・・〙


〘・・・そうね・・・ロウがやってたからつい私がダンジョンコアの役割を果たしていると思ってたけど・・・エモーンズのダンジョンは私から離れたサキュバス・・・つまりサキがダンジョンコア・・・という事は・・・〙


〘ダンコ・・・まだお前はダンジョンを作っていない〙


〘・・・〙


〘一時的でいい・・・ここをダンジョンにする。地面に穴を掘るのではなくこの場所自体をダンジョンに〙


〘出来る・・・かもしれない・・・〙


〘出来るさ・・・僕とダンコなら・・・〙


〘ええそうね・・・出来るわ・・・そしてダンジョンなら・・・〙


〘ああ・・・たとえ10万の兵士相手でも・・・僕達は負けない!〙


「ロウハー・・・じゃなくてローグ辺境伯!何をボーッとしてますの?大軍がすぐ目の前に・・・早く逃げなくては!」


ダンコと話している間にもオルシアの背後にズラリと並んだ兵士達が迫って来ていた


「カレンお嬢様!左右のリガルデル王国軍が我が軍を再び攻撃し始めました!」


「え?もうとっくに逃げたものかと・・・」


「どうやら私達のせいのようです・・・私達の行動が撤退を・・・遅らせてしまっていた・・・」


「そんな・・・御父様!」


どうやら逃げ損なったみたいだな・・・まあ細かい話は後で聞こう・・・今は・・・リガルデル王国の兵士達を自分の国に帰らすのが先決だ


地面に手をつく


懐かしいな・・・エモーンズの広場でダンジョンを作ったあの日の事を思い出す


ダンジョンを作る為にマナを使わず必死に溜めて・・・ようやく僕の物語が始まった日の事を・・・


「どうした?地面に手を当てて・・・まさか抗うつもりか?」


「抗う・・・か。その言葉そっくりそのままお返しするよ。抗うつもりなら抗え・・・ただ今から作るダンジョンは・・・エモーンズに比べて優しくないぞ?」


「なに?」


〘ダンコ〙


〘ええ〙


イメージする


ここは僕のダンジョン


地下に広がる普通のダンジョンではなくただ広い空間があるだけの・・・


頭痛がする・・・だが耐え切れないほどではない


身体が軋む・・・けど気絶するほどではない


眩い光が手のひらから地面に伝わりオルシアのカレン達の足元へと広がっていく


ああ・・・そうだ・・・思い出した


この感覚・・・僕はこの場所の・・・創造主となる・・・


「なんだこの光は!・・・貴様何をした!!」


「・・・これは一体・・・」


自分達の意思で入ったわけではないにしろ歓迎しないとね・・・ここにいる全員が・・・お客様だ


「・・・僕達のダンジョンへようこそ──────」





フーリシア王国王城内


普段なら入る事さえ許されない怪しげな3人が1階広場を闊歩する


そんな3人を2階から見下ろす人物がいた


「招待状は持っているのか?」


「・・・生憎無くしてしまったようだ」


「そうか・・・なら身体検査が必要だな」


そう言うと2階にいた男・・・キース・ヒョークは手すりを越えて飛び降り3人の前に立ちはだかる


「もはや番犬を通り越して忠犬だな・・・上手く手綱を握ったものだ・・・それに関してはこの国の王を認めてやろう」


「別に国王に忠誠を誓った訳じゃねえ」


「ならなぜ私の前に立ちはだかる?多大な恩でも受けたか?」


「恩・・・ねえ。そうだな・・・屋敷を貰っていい金も貰ってる・・・俺なんかが王都で暮らせるのも国王のお陰かもな」


「金銭で飼い慣らせるとはとても思えなかったが・・・変わったなキース」


「優等生だったお前に言われたくないな・・・レオン」


名を呼ばれ深く被ったローブを剥ぎ取り顔を晒すレオン・ジャクス。それに合わせて他の2人も顔を顕にした


「・・・分からねえな」


「何がだ?」


「変装名人のお前の事だ・・・国王を殺すくらい朝飯前だったんじゃねえか?警戒されない・・・加えて国王に気軽に会う事が出来る奴に変装すりゃ近付くなんて簡単だろ?」


「国王を殺せば終わるならそれもいいかもな」


「違うのか?」


「・・・どうやらその様子だと知っているようだな。私が生まれ故郷である村の復讐を企てていると思ったか?違うな・・・ありのまま生きるだけだ・・・カメのように耐え・・・カメレオンのように姿を変え・・・生きる・・・のをやめただけだ!」


「だから()()()()か・・・」


「そうだ!カメやカメレオンを救うべく・・・要らないものを処分する!・・・その為ならたとえ悪魔であろうと手を組もう・・・たとえ魔族であろうと、な」


「てめえ!まさか・・・」


「私と共に来い!キース!()()()()()が導こう・・・耐え忍ぶ者達を!!」



レオンは手を差し出す


かつての友に


だが、キースは大剣を抜く


かつての友に



「・・・交渉決裂・・・か」


「ああ・・・お前やお前の仲間の細かい事情なんて知らねえし興味もねえ・・・俺がお前の立場ならとか考えたが・・・面倒くせぇ・・・俺は俺のやりたい事をやる・・・俺の唯一のダチを・・・救う為に!」


「・・・なるほど・・・君らしいな・・・だからかもしれないな・・・」


「あん?何が『だから』だ?」


「・・・気にするな・・・ヘガン!ブル!手を出すな!・・・キースは私がやる!」


「上等だこら!かかって来い!!」


静まり返る城の中でかつてのSランク冒険者であり現闇組合『タートル』のレオンとSランク冒険者キースの戦いが今始まる──────

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