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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
436/856

432階 襲来

城へと続く道


そこで出会ったのは『タートル』レオンとその組合員


何をしでかすつもりか知らないけど恐らく愉快な事じゃないのだけは確か・・・


「・・・ゴーン伯爵は?」


「さあねぇ・・・自分の目で確かめに行けばぁ?」


「なぜゴーン伯爵を・・・」


「ねぇお話したいの?それとも戦いたいの?お話なら終わったらゆっくりしてあげる・・・戦いたいなら四の五の言わずにかかって来なよぉ・・・ねぇサラちゃん」


「そうか・・・ならばお前を倒し直接レオンに聞くか・・・」


「へぇ凄い自信だねぇ・・・ニーニャを倒す?おヘソでお茶が・・・沸くって話だねっ!」


短剣と言えば長く普通の剣と言えば短い・・・そんな長さの剣を2本両手で持つとニーニャは真っ直ぐに向かって来る


「面白い特技だな・・・今度見させてもらおうか」


「今度があったらねっ!」


1本目の剣を後ろに下がり躱すと2本目の剣が迫り来る


倒れるようにして2本目の剣を躱すと足を上げニーニャに蹴りを放った


「まずは・・・足っ!」


「くっ!」


放った蹴りの軌道上に剣先を向けられ体を回転させ蹴りの軌道を強引に変える


あのまま蹴りを放っていたら自ら串刺しになりに行くところだった


「あれ?少しは強くなったぁ?サラちゃん」


「これでもSランク冒険者なのだが」


「それはそれは・・・Sランク冒険者の肩書きも地に落ちたねぇ」


「それに関しては同感だ・・・まだまだ胸を張って言えるレベルではないからな」


「・・・何それ・・・」


バカにされたからSランク冒険者と言ってみたがやはり私にはまだその肩書きは重過ぎる・・・それでもレオンならともかく『タートル』の組合員であるニーニャに負けてられない


「あなたがなぜレオンに従っているか知らないけど・・・ただ従うだけじゃなくバカな真似を止めるのも配下の役目では?」


「従う?バカな真似?知らないって怖いねぇサラちゃん・・・そうやって何も知らずにぬくぬくと暮らしていればいいよ・・・ニーニャ達の邪魔をしないで、ね」


「そちらから話さぬなのだから知る由もないだろう?涙涙の話なら聞くから剣を下ろせ」


「聞いてもその場では胸に響くかもね・・・でも実際に痛みを受けないとすぐに忘れ去る・・・もし本当に知りたいのなら・・・サラちゃんもニーニャ達の所まで堕ちればいい」


様子が変わった?


痛い所を突かれたのかニーニャは表情を変えると引く引く地面スレスレまで沈むような形で構え獣のような目で私を睨む


そう言えばニーニャが率いていた組合は『ブラックパンサー』だったか・・・褐色の肌に獣のような構え・・・なるほど・・・それが由来か


「殺さないであげるよぉ!死んじゃうと堕ちれないしねっ!」


地面スレスレの構えのまま足を踏み出すニーニャ


的が小さく狙いづらい・・・しかも動きが読めないし・・・速い!


どこかで飛び上がるはず・・・そう思っていたが彼女はそのまま私の元へと突っ込んで来て剣を繰り出す


足を上げ剣を躱すが残った足にもう1本の剣が・・・大地を蹴り飛び上がり躱した瞬間、それがニーニャの狙いだと分かった


「隙だらけっ」


「そうかな?」


空中で風牙龍扇を取り出し風牙を放つ


ニーニャはそれを躱すと一旦離れて再び低く構えた


「卑怯者ぉ武器なら最初っから出しといてよぉ」


「奥の手とは最初から出すものではないだろう?」


「え?奥の手だったのぉ?だったらもうお終い?・・・なんだぁガッカリィ」


「それは悪い事をしたな・・・出来るだけ期待に添えるよう頑張るよ」


速さは私以上・・・それに加えてあの低い位置からの攻撃はかなり厄介だ


下からの攻撃に対処出来る術はあまりない・・・潜り込まれて1本の爪を鉄扇で受け止めたとしても2本目の爪が襲って来る・・・本当に獣を相手にしている感覚に陥る・・・獣か・・・


「クスッ」


「・・・何がおかしいのぉ?」


「なんか人間相手だと組手みたいに考えちゃって・・・でも獣相手ならそんな必要はないかなって」


「?何を・・・」


「三式・千牙」


「んなっ!ちょ・・・」


相手の攻撃をあえて受けて返す・・・もちろん受けれなければ躱したり受け流したりする・・・けど基本的にはお互いに攻撃し合うのが組手・・・一方的に攻撃したら訓練にならないしね


けど獣相手にそんな事はしてられない・・・訓練ではなく生きるか死ぬかなら・・・攻撃されずに勝つのがセオリー


「なぁぁ!!ちょっと!・・・多過ぎぃ!!」


千牙を必死に躱すニーニャ・・・それにしても上手く躱す・・・小柄で的も小さいからっていうのもあるけどちょこまか動いてギリギリで躱し続ける


「もう一度・・・三式・千牙」


「お、鬼ぃ!!」


追加で千牙を放ち様子を見る・・・と、そう言えばファーネは・・・っ!


オードと相対していたファーネの方を見ると彼女はうつ伏せに倒れオードに髪を掴まれ強引に顔を上げさせられていた


そしてオードは彼女の頬に手をやると口を開けさせる


「ファーネ!!」


「おっと動くなよ?」


駆け寄ろうとする私を制しオードは何か小さな塊をファーネの口の中に放り込んだ


あれは何?何を入れたの?


「不思議そうだな・・・特別に種明かしをしてやるよ」


オードがそう言った後、私の前に同じものが・・・遠くからでは分からなかったけどこれは・・・マナと魔力の塊!?


ほんの小さな塊だが近くで見てゾッとする


かなりの力を含んだ塊・・・これがもし破裂したら・・・


咄嗟に飛び退くと次の瞬間その塊は爆発した


小さいくせにかなりの威力・・・オードはファーネの口の中に・・・これを入れたのかっ!


「貴様!!」


「だから動くなよサラ・セームン・・・お友達が風船のように破裂してもいいのか?」


「くっ!」


まずいまずいまずい・・・今の口ぶりから時限的なものではないはず・・・だが彼女の命はオードに握られている


「理解したようだな・・・さて、まずはその厄介な鉄扇を地面に置こうか」


「・・・」


言われるがまま私は風牙龍扇を地面に置く


すると千牙を全て躱したニーニャがにじり寄りオードが下卑た笑みを浮かべた


「ニーニャ!・・・貸しだ」


「・・・別にいらなかったのにぃ!・・・まあでも早く追い付きたかったから・・・借りといてあげるよ」


どうする・・・口には出さないが抵抗すればオードはあの塊を・・・けど抵抗しなければ・・・どうすれば・・・どう・・・


「サラ!シャリファ王国の女王は10年前に何をした!」


ファーネ?


フレシアが10年前に?


・・・まさか・・・


「ごちゃごちゃ何を・・・下手に動くとショーが始まるぞ?ニーニャ!さっさとやれ!」


「分かって・・・るぅ!?」


近付くニーニャに対して風牙龍扇を拾いながら蹴りを繰り出す


思いもよらない攻撃だったのかニーニャは躱すことが出来ずにまともに蹴りを食らい吹き飛んだ


さすがに腕で防御はされたけどそれなりのダメージは与えたはずだ


「このっ!やらねえと思ったら大間違いだ!!お友達の破裂する姿を見て後悔しやがれ!」


叫び指を鳴らすオード


その指鳴らしがきっかけでファーネの中に入った塊が爆発する・・・はずだった


「・・・」


爆発は起きない・・・いくらオードが指を鳴らしても・・・


良かった・・・さすがファーネ


「なんでだ!?なんで・・・」


「・・・私は爆炎の魔法使いソニアの弟子・・・師匠に憧れて火魔法を使うようになったけど・・・私ってば元々得意属性が水なのよね」


「はあ!?んなアホな!!・・・ってだからって・・・」


そう・・・ファーネは前に話してくれた・・・ごく身近な人しか知らない話・・・ソニアさんに憧れて憧れて・・・自分の得意属性を捨ててまで弟子入りした。けど弟子入りする前は火属性は全く使わず水魔法使いとして確固たる地位を築く。そして弟子になってから火属性魔法を使い始めてもその地位を守り抜く・・・私の知る中では郡を抜く天才魔法使い・・・それがファーネだ


そのファーネが私の話したシャリファ王国での話・・・女王フレシアが10年前から自らの体の一部を凍結させ子を守った話を真似た・・・あの塊を・・・自分の体内で凍らせたんだ


彼女なら出来ると思ったからこそ私は動けた・・・きっと彼女なら・・・爆炎のソニア弟子であり水魔法使いの彼女ならきっとやり遂げると信じていたから!


「そろそろどいてくれる?あなた趣味じゃないのよ」


そう言うと彼女の周りに氷の粒が舞い始める。その粒は礫となって回転し始めオードを穿つ


「チッ!」


一つ一つの威力は大した事はなかったがあまりの数に堪らずオードはファーネから離れた


その隙にファーネは立ち上がると私の元へ


「大丈夫なの?」


「さあ?お腹の中にまだ爆弾抱えている感じ?まあいずれ捻り出るでしょ」


「捻り・・・あの塊を更に氷で覆ったんでしょ?って事は・・・」


「ふっ・・・鍛えているのはアソコだけと思わない事ね」


どういう事!?


ま、まあ大丈夫ならそれでいいんだけど・・・とにかくこれで振り出しに・・・


「ガッハッハッ!何やら楽しそうな事してるじゃねえか!」


突然何者かが石畳の地面を破壊する勢いで降って湧いてきた


土煙で姿こそ見えないが煙の中の巨大な影が只者ではないと警鐘を鳴らす


煙が晴れその姿が現れた時、声を発したのはニーニャだった


「・・・剣奴王ジルバ・・・なんでここに・・・」


剣奴王ジルバ?・・・それって確かロウが剣奴の時次に戦う予定だった・・・


「二軍・・・しくじりやがったな・・・ジルバは王国騎士団に当てるはずだったのに・・・」


「今はそんな事はどうでもいい・・・問題は彼がなぜニーニャ達の前に姿を現したか・・・あまり好意的には見えないんだよねぇ・・・」


今の2人の話からジルバを解放したのは『タートル』だと分かった


剣奴であるジルバを解放して王国騎士団相手に暴れさせようとしていたけど失敗した・・・ではなぜここに?


「おいどうした?遊ぼうぜ・・・まとめてかかって来て俺を楽しませろ」


「ジルバ!ニーニャはアンタを解放した『タートル』の1人!私達は味方だよ!」


「・・・解放した?・・・勝手に抜け出して来ただけだが?」


「う、嘘をつけ!剣奴としてコロッセオで繋がれて・・・首輪を外さないと逃げ出せないはず!」


「ああ、マナ封じの首輪だっけか・・・あんなもの引きちぎってやったわ。そう言えばその時に俺の事を邪魔しようとしてた奴らがいたな・・・そいつらの一味か」


「・・・邪魔・・・」


「剣奴としての暮らしは気に入ってたんだがな・・・奴らは俺以外の他の剣奴を解放するとぬかしやがった。となると俺の剣奴としての暮らしは終わる・・・邪魔以外の何ものでもねえ。まっ、面白そうな事をするって言うから見逃してやったが・・・俺は俺で楽しもうと思ってな。城に行きゃ面白ぇ奴がいるだろうと思ってたら途中でお前達を見つけたって訳だ。俺の邪魔をした一味だ・・・その責任を取って俺を楽しませろ」


「理解不能・・・オード、言ってる意味分かる?」


「・・・分からねえが触れちゃいけねえものってのは分かった」


聞いてて私も理解は出来なかった・・・けど今の話なら私達は無関係・・・ニーニャ達がジルバと戦ってる隙にレオン達を・・・


「さあ楽しませろ!お前達4()()・・・全力で来れば少しは楽しめそうだ!」


・・・4人?


「あの・・・ジルバさん?私とこの子は『タートル』じゃ・・・」


「四の五の言わずにかかって来い!次に手じゃなく口を出しやがったらぶっ飛ばすぞ!」


おおう・・・話が全く通じない・・・


突如現れたジルバ・・・何故か私達とニーニャ達を敵扱いする理解不能の人物を前に時は容赦なく過ぎていく──────

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