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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
433/856

429階 王国騎士団

王都コロッセオに続く道


「エキド、救援要請は?」


「は、はっ!既に手配致しました!」


「・・・と言っても王都に残るは戦いのたの字も知らぬ魔法使い共くらいか・・・まあいないよりはマシだろう」


王国騎士団50名を率い歩く人物・・・王国騎士団団長ジュネーズ・カルバニア・アメスは通報を受けコロッセオ近くで暴れる剣奴達を捕まえる為に城よりこの場所に来ていた


途中何人かの剣奴は処理したジュネーズ達だったが暴れるその中に剣奴ではなく剣闘士の姿を発見、その旨を報告し事態の収拾に時間がかかると判断したジュネーズは城へ救援要請を送るよう副団長であるエキドに命令していた


「剣奴の正確な数は?」


「え?・・・えっと・・・分かりません・・・」


「それでどうやって事態の収拾を図ると言うのだ?身を潜めていたらどうするつもりだ!」


「は、はい!すぐに調べさせます!」


「バカめ・・・ん?」


エキドを叱責していると前方から怪しげな5人組が歩いているのを見つけた


剣奴達が暴れ混乱する最中、フードを深くかぶり平然と歩く者達を見てジュネーズは足を止め後ろを歩く団員達にも止まるよう合図を送る


「そこのお前達!歩みを止めてフードを取れ!これは命令だ!」


「・・・」


5人は立ち止まるもフードを取らない・・・ジュネーズは少し待つが諦めて片手を上げた


「矢を放て・・・射殺しても構わん」


「はっ!」


ジュネーズに命令に従い後方にいた団員が前に出て矢を番え弓を引く


すると5人の内の1人が慌ててフードを取り前に出た


「申し訳ありません・・・あまりに驚き反応が遅れました」


「・・・待て。・・・確か・・・バクアート子爵だったか。何をしている?」


「はい。騒ぎが起きているのを聞きつけ護衛の者を連れて・・・」


「射て」


ジースが説明をしている途中でジュネーズは団員達に命令した


彼らは命令通り矢を放ち5人の内の1人が慌てて両手を突き出し土を盛り上げ壁にし矢を防ぐ


「・・・何のつもりですか?王国騎士団長殿」


「言ったはずだぞフードを取れと・・・それに貴様は頻繁にコロッセオに出入りしていると聞いている・・・怪しきは罰せよ・・・危急時は当然であろう?」


平然と言い放つジュネーズは再び片手を上げた


すると団員達は一斉に剣を抜き構え5人を包囲するよう動き始めた


「おいおい・・・なかなか狂ってやがるな」


「見た目紳士で好みなのに・・・野蛮だよね」


「まあ怪しいのは否定しない」


「で?どうするの?やる?」


ハズン、レギン、シル、ジーナと続けてフードを外すと話し合いの結果臨時のリーダーとなったジースに尋ねた


「・・・本当は避けたいところだけどね・・・下手するとディーン殿より厄介かもしれない・・・」


「そりゃあいくらなんでも言い過ぎだろ?ディーンって嗜好の騎士なんだろ?」


「え?ハズンもそっちの趣味が?」


「嗜好じゃなくて至高」


「ちょっとアンタ達は黙ってて!やる気が物凄く削がれるから!」


ジーナがツッコミを入れた直後、騎士達はジュネーズの合図で動き出す


50名の連携の取れた隙のない攻めにシル達はジースを中心に輪になり応戦する


「チッ!ウザってぇ!今回は貧乏くじ引かされたな」


「いつもは当たりくじみたいな言い方だね・・・」


「うるせぇ!お前は黙ってコイツらを・・・あん?」


突然騎士達が一斉に引き何事かとジュネーズを見るとジュネーズは顎に手を当てハズンを見つめていた


「何だ何だ・・・俺を見てる?」


「まさかの相思相愛?」


「相性抜群」


「何の相性よ!・・・ってマズイわね・・・何か嫌な予感がするわ」


「その予感は正しいかもね・・・恐らくハズンの言葉で気付いたかも・・・」


「え?俺の言葉?別に何も言って・・・」


特に何も言ってないと疑問に思い抗議しようとするとジュネーズは突然振り返りある場所を見た


「そうか・・・全て陽動か・・・陣を解きエキドと共に全員城に戻れ!コイツらは囮だ・・・本命は城に向かっている!」


「はっ!」


団員達は返事をすると剣を納めすぐに囲みを解き走り出す


何が起きたのかいまいち分かってないハズンが分かっていそうなジースに目をやると彼は苦虫を噛み潰したような顔をして1人残るジュネーズを睨みつけていた


「・・・なぜ我々が囮と?」


「貴様らであろう?剣奴達を解き放ったのは。矢を放たれたとて本当に無実であれば抵抗せず弁明を続けるはず・・・だが貴様らは抵抗した・・・そうなると疑問なのは剣奴を解き放った理由だ。そんな事をしても元犯罪者である剣奴達が暴れ回るだけなのはバカでも分かる。なら何の為に解き放ったのか考えると暴れて欲しいからと考えるのが普通であろう・・・暴れて欲しい理由は・・・我々の目を引き付けたかったから・・・つまり囮にしたかったからだ」


「・・・決め付けは良くないですよ?ただの愉快犯かも知れませんよ?」


「決め付けでは無い。そこの者が言っていたではないか・・・貧乏くじ、と・・・つまり貧乏くじを引いた者がいるということは当たりくじを引いた者もいるということ・・・我々王国騎士団を相手にして貧乏くじなら当たりくじを引いた者は我々と対峙せずに済んだという事になる。我々と対峙する可能性があるとしたらそれは・・・我らが守るべきものを狙っている・・・そういう事になるであろう?」


「確かに・・・でももしそうならなぜ団長殿はここに残ったのですか?」


「囮が囮の役目を終えたら何をするか・・・本隊と合流すると相場は決まっている。となるとここで始末していた方が後顧の憂いを断つ意味でも正解だと思うが?それに・・・私なら部下に始末させるより早く済む」


ジュネーズが剣を抜き放つと5人は一斉に後退る


異様なまでの圧力・・・その時4人は思い出す


『ディーンより厄介』と言う言葉を


「マジかよ・・・単なる優男じゃねえってか」


「やる気になると強くなるタイプ?ますます好みだね」


「マズイかも・・・勝てる気がしない」


「と言っても逃がしてくれなさそうな雰囲気だしね・・・やるしかないみたい・・・」


「気を付けて下さい・・・彼はディーン殿と同じく一般市民から王国騎士団団長まで上り詰めた人・・・そしてディーン殿より甘くない・・・激辛です」


「辛いのは苦手なんだけどな・・・クソが!やってやるよ!」


『タートル』二軍と王国騎士団団長の戦いが始まる──────




シル達が王国騎士団団長と戦っているすぐ近くの酒場


そこに解放された剣奴達4人が訪れていた


ほぼ裸で鉄格子の中に入れられていた剣奴達は担当官を殺して奪った剣と服を着て好きな事をやれと言われれば欲を満たす事だ


睡眠欲は寝ることしか出来ない鉄格子の中では充分満たされていた。残るはマズイ食事しか出されなかった為の食欲、そして決して満たされることなかった性欲だ


店に入るとまず剣を抜き客の男達を殺し続けた


続けてテーブルの上にあった料理を素手で喰らいつき、飲み物を浴びるように流し込む


そして店員や女性客を集め下卑た笑いを浮かべる


「まだ足りねえぞ!!ジャンジャン持って来い!酒に美味いもの・・・店にあるもの全部だ!!」


「その間楽しませてもらおうか」


怯える女性達・・・お構い無しに近付く剣奴達・・・だが1人の剣奴が店の中であるものを見つけた


「・・・おい、1人残ってるぞ?」


「あん?・・・チッ、ビビって寝たフリしてたか・・・やってる最中に何かされてもめんどくせぇ・・・殺っとくか」


4人はズボンを下ろす手を止めて料理が並んだテーブルでうつ伏せになって寝る客を取り囲む


全員が剣を抜きその内の1人が剣先でその客の首をツンツンと軽く刺す


「おい、起きろ・・・どうせ狸寝入りだろ?今なら見逃してやってもいいぜ」


見逃すつもりなどこれっぽっちもない。助かりたくて勢いよく起きた客を刺してその絶望する顔を見たかっただけだった


4人は笑い合い起きてくるのを待つが客からの返事はなく、イビキだけが店の中に鳴り響く


「・・・おい・・・マジで寝てるのか?」


「いや、そんなはずはねえだろ・・・この騒ぎだぜ?」


他の客の断末魔や店の備品が壊れる音、遠慮なく発せられた怒鳴り声は睡眠を妨げるには十分過ぎるほど大きな音だった


「・・・チッ、しらけちまった・・・俺は女とやっとくわ。コイツを殺りたいなら勝手に殺っておけ」


「俺もいいや・・・散々殺しはやって来たからな」


「俺も」


そう言って1人また1人と女性達の元に行き、残った剣奴は3人を見送ると寝ている客を覗き込む


「・・・本当に寝てるのか?・・・まあいいや・・・俺はてめえを殺した後にゆっくりと・・・」


「1」


「・・・あん?てめえ起きて・・・」


「2」


「もしかして『12の3』で逃げ出すつもりか?そうは・・・」


1人残った剣奴が先程目の前の客の首を突っついた剣を振り上げると突然その客が頭を上げた


「んだよ・・・動くなって」


「あ?」


「ここ最近じゃ最低記録だ・・・2秒半・・・やってらんねえな」


「2秒半??・・・へ!?なんで・・・足が・・・足がぁぁぁ!!」


傾き倒れる剣奴・・・そして倒れたにも関わらず膝の下からの両足が立っているのを見て喚き散らす


()()()()()()ように我慢したから15秒越えは行けると思ったんだがな・・・」


「足・・・足が・・・足・・・」


「足足うるせぇな・・・てか王都で強盗って世も末か?やるならもっと静かにやれよ」


「ハッ・・・ハッ・・・助け・・・ペッ」


手を伸ばし他の剣奴に助けを求めたが体がバラバラに崩れドシャという音と共に絶命した


一部始終を見ていた剣奴達は再びズボンを上げると顔を見合せ頷いて剣を抜き男の元へとにじり寄る


「おいおいよせよせ・・・俺は別に正義の味方でも何でもねえ・・・言ってみりゃ真逆にいる感じだ。だから俺の邪魔さえしなけりゃ・・・うん?そういや俺の眠りを妨げたか?」


「・・・ふざけるなよ・・・これまで生き延びて来た俺らの実力を・・・舐めるな!!」


そう叫ぶと3人は同時に襲い掛かり剣を振るう・・・しかし男は難なく剣奴達の包囲を抜けると店の外へと歩き始めた


「まっ・・・」


「動くなって・・・どうやって生き延びて来たか興味はあるが・・・まあそこまでそそられる話でもなさそうだ・・・俺の記録更新に協力して死ね」


「記録更新・・・何言って・・・」


「へぶっ」「あぶっ」


剣奴は男を逃がすまいと回り込もうとするが他の2人が続けてバラバラになり崩れゆく


地面に転がる肉片は凡そ人間のそれとは思えないほど細かく刻まれていた


「・・・嘘だ・・・ひぃ!」


その光景を見て震える剣奴の前にいつの間にか男が立ち口の前に指を立てる


「しー・・・7・・・8・・・」


「嘘だ嘘だ・・・嘘・・・」


最後の1人も崩れ去り男はその様子を見て肩を落とした


「なんでこう・・・ハア・・・見た今の?」


男は記録更新ならずの場面を見たかと部屋の隅にいる女性達に尋ねるが全員口を押え見ていないと全力で首を振る


「そう・・・まあ見ても見てなくてもどっちでもいいけど・・・あー、まだ金払ってなかったな・・・いくら?」


店員らしき人物は他の女性達から視線を集めるが全力で首を振る


「あ?・・・まあいらねえって言うならいいや・・・じゃあまた来るわ」


店員は来ないでくれと心の中で叫び女性客達はこの店には二度と来ないと誓った



男は店を出るとあちらこちらから聞こえる悲鳴や喧騒に首を傾げ何が起きているのか考えるが答えが出ないと判断するとため息をつき歩き始めた



闇夜に消えるか躍り出るか・・・悩みながら・・・

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