表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
431/856

427階 邂逅

「御報告申し上げます!国境近くに駐留していたリガルデル王国の軍が・・・国境を越え我が国に進入!既に門と壁が破壊されているとの事!騎士団及び貴族私兵が応戦しております!」


「伝令!コロッセオにおいて多数の剣奴と思わしき者達が街の中で暴れているとの報告!王国騎士団が対応に当たっております!」


「伝令!王都近郊に魔物が多数出現!冒険者ギルド長セデス様に緊急報告し冒険者達に対応を依頼・・・近隣の街にも救援要請をしている状況です!」


矢継ぎ早に耳を疑う報告を受けフーリシア王国国王ウォーグ・フォーレンス・フリーシアと同国宰相クルス・アード・ノシャスは顔を青ざめさせる


緊急対応としてはマニュアル通り・・・外敵には騎士団を、王都内での出来事は王国騎士団を、魔物に関しては冒険者を当てるのが正しい。緊急時の対応としては百点満点だ・・・これが訓練ならば


だが今起きているのは訓練ではない・・・現実に起きている事


一つだけ起きても国の存亡に関わる事が同時に三つの場所で起きている・・・そのような事態が起こるなど想定しておらずマニュアル通りに進めるの事が正しいとは限らなかった


「クルス!!」


「はっ!至急各国に連絡!五国同盟を揺るがす事態・・・各国の王を叩き起し現状を伝えよ!」


「はっ!」


ウォーグに応えクルスは最善を模索し最も迅速に行わなければならない事を兵士に伝える


しかしそれは現状を打開するのは難しい一手だった


「・・・各国が動いた頃には我が国は焼け野原ぞ?」


「それでも抑止力にはなります。各国が動かないと高を括っていた場合、動き出したと知り慌てて戻る可能性も・・・。なので騎士団には出来る限りその場で耐えてもらい・・・」


「・・・剣奴達は?魔物はどうする?・・・くっ、何が起きている・・・一体何が・・・」


「剣奴達は王国騎士団と・・・剣闘士達に任せましょう。剣奴を放った犯人探しは収まった後・・・今は王都の沈静化が先です。魔物に関しては種類や数も不明な為に冒険者に頼るしか・・・門を閉ざし王都への侵入を防ぐのが先決かと」


「剣闘士・・・奴らは強制されている訳でもない・・・ただの力自慢の連中・・・報酬を出すと言えば動くか・・・うむ!剣闘士達に剣奴達を討伐すれば報酬はいくらでも出すと伝えよ!それと門を閉ざし魔物に備えよ!一匹足りとも王都への侵入を許すな!」


「はっ!」


クルスの案をそのまま取り入れウォーグは部屋にいた兵士に命令を出す


報告に来た兵士達はそれぞれ命令を遂行する為に部屋を出て執務室に残ったのはウォーグとクルスだけとなった


「・・・凌げると思うか?」


「今はまだ何とも・・・リガルデル王国の侵攻と同時に起きた二つの難・・・もしこれが意図的であるとするならばそれを画策した者がいると考えるべきです」


「それが彼奴だったのではないのか?ゼンはまだ聞き出せてないのか?」


「報告には『何かが邪魔して真実を見抜けない』とありましたが果たして本当かどうか・・・彼は聖女が絡むと正常な判断が出来ないと認識しております。私怨が絡めば虚偽報告もありえるかと・・・」


「つまり彼奴・・・ロウニールは今回の件に全く関係ない可能性も?」


「はい・・・ただ他に『真実の眼』を使える者はおらず彼に頼るしか他ない状況でして・・・」


「くっ・・・だがこうなってくるとその可能性は高いな・・・もし全ての事が偶然ではなく必然ならば首謀者不在のまま始めるとは思えん・・・誰か他に・・・リガルデル王国を動かし剣奴を解放し魔物を王都へ引き寄せた者が・・・」


「法務大臣を呼び出し真偽を問いますか?」


「その暇はなかろう・・・先ずはこの混乱を収め・・・」


「御報告申し上げます!通信の結果応答ありません!」


本来ならば執務室のドアは勝手に開けることは許されない。だが兵士は許可を得ることなくドアを開け放ち入るなり叫んだ


「バカな・・・どこの国だ・・・五国同盟を軽んじる国は・・・どこの国だ!」


「全部です!」


「・・・な・・・に?」


「全ての国に通信道具を用い連絡を取るも繋がりません!何度も試しているのですが・・・」


「・・・ふざけるな・・・ふざけるな!!繋がるまで何度でも試せ!何度でも・・・何度でもだ!!」


「は、はっ!」


再び兵士は部屋を去り王と宰相の2人きりとなる


ウォーグは机にうつ伏し状況を理解しようと思考を巡らせる


「・・・・・・裏切った・・・か・・・」


「可能性は・・・ですが」


「『ですが』なんだ!?10万の兵が押し寄せて来ているのだぞ!?このまま各国が動かなければ我が国は・・・」


「落ち着いて下さい」


「落ち着けだと?これが落ち着いてられるか!これが・・・」


「伝令!リガルデル王国軍を率いる人物が判明致しました!『猛獅子』オルシア・ブークド・ダナトル!現在交戦中です!」


「伝令!王国騎士団より救援要請あり!剣奴と共に剣闘士も街を襲撃しているとの事!街は混乱を極めており王国騎士団のみでは対応出来ないと・・・」


「伝令!魔物の数おおよそ1万!ゴブリンやコボルトなど下級の魔物ですが数が数だけに冒険者のみでの対応は不可能・・・騎士団への協力要請が来ております!」


「伝令!王都内で火事が発生!至急魔法使いの派遣要請が・・・」


雪崩込む兵士達の報告にウォーグは耳を傾ける。そして椅子に腰かけ天を仰ぐと深く息を吐くと近くに立つクルスに命令を出す


「余の判断を仰ぐ必要はない・・・全てそちの判断で対応せよ・・・」


「・・・はっ!」


思考を停止させそう呟くとウォーグはゆっくりと頭を動かし窓の外を見た


夜も更けたはずなのに赤く揺れる夜空を見てこの国の終焉を予感した──────





準備して外に出ると街の中が妙にザワついていた


最初はあの音のせいだと思っていたがどうやら違うみたい・・・人々は闇夜を赤く染める方向を見ていた


「なんだろう・・・あそこだけ明るくなっているのは」


「さあ・・・パチパチと音も聞こえるけど・・・」


明るく・・・そしてパチパチと音がする・・・もしかして・・・


「火事!?」


私とファーネは顔を見合せ急いで現場に向かうととある屋敷が燃えていた


この屋敷の主は知っている・・・確かここは・・・


「ゴーン・・・伯爵の屋敷だ・・・」


「消さないと・・・私が・・・」


「っ!ちょっと待って!」


ファーネが燃え盛る炎を消そうと駆け出そうとした時、屋敷の火事で集まった野次馬の中で見知った顔を見かけた


「何よ・・・早く消さないと・・・」


「うん・・・でも・・・」


私が言いかけた時、人混みを掻き分け魔法使いらしき人達が数人姿を現した


「全員離れよ!これから魔法を使う!」


魔法使い・・・これなら・・・


「ファーネ、屋敷の鎮火は彼らに任せて私達は行きましょう」


「え、ええ・・・けど1人でも多い方が・・・」


「そうね・・・でも私達は私達に出来る事をした方がいいと思うの・・・ゴーン伯爵も心配だけど・・・」


「・・・どうしたの?」


「とにかく急いで!見失う前に!」


「ちょ、ちょっと・・・サラ!?」


このまま彼らを野放しには出来ない・・・人混みから消えた彼らが向かう先は恐らく・・・


ファーネを強引に引っ張り人混みから抜け出すと走って彼らを追いかける


そしてフードを深くかぶり火事現場に背を向け王城の方角に歩く5人組を見つけた


「止まりなさい!」


見間違いなんかじゃない・・・屋敷を燃やす炎の明かりで照らし出されたその顔を忘れもしない顔だった


私に屈辱を味合わせた者・・・あの時の屈辱は片時も忘れた事はない!


「・・・ほう・・・サラ・セームンにファーネ・ノークか・・・」


「それが貴方の本来の顔?なんて呼べばいい?セシス・フェイ?それとも・・・レオン・ジャクス?」


振り返り見えた顔は見覚えのない顔だった。でも間違いない・・・他の4人は見た事がある顔だったから・・・元『ブラックパンサー』の4人・・・私を地下に閉じ込め襲わせようとしたオードに『ブラックパンサー』の組合長ニーニャ、それに幹部のヘガンとブル・・・その4人と居るって事はコイツが・・・レオン!


「レ・・・えぇ!?」


「懐かしい名だな・・・セシス・フェイか・・・お察しの通り私がレオン・ジャクス・・・『タートル』の長だ」


フードを外し彼は名乗る・・・これが闇組合『タートル』のレオン・・・歳の頃なら30代後半くらいか・・・綺麗な顔立ちに長い髪・・・一見すると女性にも見える風貌からはその外見とは掛け離れた風格を感じる


キースさんと共にSランク冒険者となったレオン・・・果たして私が止められるかどうか・・・


「Sランクになったと聞いた・・・おめでとう。それで何の用かな?」


「・・・どこに向かうつもり?」


「夜の散歩だよ。日課となっていてね・・・何か問題があるかな?」


「ゴーン伯爵の屋敷を燃やしたのは・・・貴方達ね」


「何の事やら・・・何かしたか?」


そう言ってレオンは他のメンバーに聞くも4人は一斉に首を振った


「どうやら知らないらしいが・・・まだ何か?」


「しらばっくれないで!ゴーン伯爵とどんな関係があるか知らないけど・・・あれだけの・・・王都全体を揺らす程の爆発を起こせるとしたら貴方達くらい・・・何を企んでいる・・・何をする気なの・・・レオン!」


「心外だな・・・確かに私達は闇組合と呼ばれる非合法の組合だが意味もなく暴れるなどした事がないつもりだが・・・話は変わるが彼氏は元気にしているかな?」


「っ!・・・まさかロウニールが捕まったのも・・・」


「それこそ誤解だ。勝手に自らの首を絞めた愚か者がいただけ・・・疑心暗鬼となり唯一この国を救える道を自ら閉ざしたのだ・・・まあそんな愚か者だからこそ粛清されるのだけどね」


「・・・レオン・ジャクス・・・」


「君との会話を続けたい気持ちもあるが時間が無い・・・ここらで失礼するとするよ。だがまあ・・・君達はすんなりと行かせてくれないのは分かっている。ニーニャ、オード・・・2人で相手してやってくれ」


「はい!」「了解!」


ニーニャとオード・・・近接アタッカーに確か奇術師とかいう魔法使いか・・・私にニーニャをファーネにオードを当てて来たか


「サラちゃんごめんねぇ・・・暇じゃないからチャチャッと終わらせてあげるぅ」


「確かAランク冒険者ソニアの弟子だったか・・・どうせならソニアと戦いたかったけど仕方ねえ・・・その弟子で我慢してやる」


2人が私達の前に立ちはだかるとレオンは残りの2人を連れて再び歩き出す


奴の行先は間違いなく王城だ・・・そして王城には・・・彼がいる


「私も貴女達程度で足止めされている訳にはいかない・・・すぐに倒してレオンの歩みを止めてみせる!──────」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ