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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
426/856

422階 油断

「何をされたのですか?閣下」


「・・・なんだ藪から棒に・・・私は何もしてないぞ?」


久しぶりにエモーンズの屋敷でゆっくりしているとナージが部屋を訪れて呆れ顔で呟いた


「召還令状が来ております。閣下にです」


「だからゲートを使えばどこよりも早く国境まで行けるって言ったろ?だからゆっくり準備して頃合いを見て・・・」


「違います。閣下個人を王都に召還しているのです・・・国王陛下直々の召還令・・・一体何をされたのですか?」


僕個人を?国境じゃなく王都に?何をされたって・・・まさか・・・


「どうやら思い当たる節があるようですね・・・そしてあまり芳しくない状況・・・早急に向かわれた方が宜しいかと。私達はこれからすぐに準備して向かいます。少しでも心証を良くした方が良さそうですので」


思い当たる節はもちろんある・・・きっとダンジョンの事だ


リガルデル王国が攻めて来ているから有耶無耶になるかと思いきや・・・確かにダンジョンは国にとって金の成る木みたいなもんだ。けど最近のダンジョンの状況とリガルデル王国が迫っている状況を考えると僕を呼び出して文句なんて言ってる場合じゃないと思うんだけど・・・



ナージ達を国境付近に送っても良かったがそれだと到着するのが早過ぎて食事の用意が大変だからと断られた。リガルデル王国の兵が向かっていると言ってもまだ到着もしてないし到着してもすぐに攻めて来るとは限らない


ナージの予想では国境を挟んでしばらく睨み合いが続くらしい・・・となると早く着き過ぎてはかなりの日数その場に留まる事になってしまうのだとか・・・



ってなわけで僕とサラだけで王都に向かった


「お帰りなさいませご主人様」


王都の屋敷を守る執事のサーテン、そしてメイド達が屋敷に着いた僕達に挨拶するが少し様子がおかしい事に気付いた


「・・・何かあった?」


「召還されたと聞き及んでおります。それをメイド達は心配しておりまして」


「なるほど・・・サーテンは心配してくれないのか?」


「心配し過ぎて1周回って冷静になってる次第です」


「嘘つけ・・・まあとりあえず心配するな。何とかなる・・・それよりサラは予定通り?」


「ええ。ファーネを1人置いて行ってしまったから様子を見に行って来る。恐らく北側を探索しているフレイズ達といるはず」


「Aランクパーティーだっけ?分かった気を付けてね・・・サニャ」


「その名で呼ばないで・・・ロウも何かあったらすぐに知らせるのよ?」


「ああ」


サラはそれだけ言うと屋敷から出て行ってしまった


僕の頼んだ『タートル』の調査を新人冒険者サニャに扮して行っているらしい・・・心配だけどサラなら大丈夫だろう


それにしても・・・


「サーテン、私が召還された以外は何か聞いてないか?」


「何かとはなんでしょう?」


「ほら・・・国が一大事になっているとか・・・」


「そう言えば・・・」


「何だ?」


「庭師のトムが花壇を作る許可を求めて来ました」


「ほうそれは一大事だ・・・それだけ?」


「はい。何かありましたか?」


「いや・・・部屋で休んでから城に行く。何か飲み物でも運んでくれ」


「畏まりました」


どうやらリガルデル王国の事は広まってないみたいだな


そりゃあそうか・・・もし広まれば大パニックに陥ってしまうだろうし・・・それにしてもなぜリガルデル王国は急に攻めて来たんだ?


・・・考えても分かるわけないか・・・王様に会った時に聞いてみよう


さすがに王様に謁見するのに旅で着ていた服ではまずいと思い着替えようと部屋に戻ると・・・先客がいた


「・・・サキ・・・お前なんで僕の部屋に・・・」


「べ、別にサボってた訳じゃないにゃ!」


「だったらなんでサラと一緒に行動しないで人のベッドでくつろいでいるんだ?」


「・・・内緒にゃ」


「ほう・・・主に隠し事とは偉くなったものだな」


「ち、違うにゃ!本当にたまたまにゃ!たまたま・・・」


「たまたま?」


「・・・調べ終わったからサラと合流しようかにゃーって思ってたらついウトウトと・・・本当にゃ!嘘じゃないにゃ!」


「調べ終わった?」


「そうにゃ!この周辺が妙な気配を感じたから調べてみたにゃ!」


「妙な気配?」


「そうにゃ・・・で、調べたら魔物が沢山いたにゃ!この街を取り囲むように・・・まるで誰かが誘い込んだみたいに集まって来てたにゃ!」


魔物が王都周辺に?・・・確かサラも王都周辺でゴブリンに遭遇したって言ってたな・・・でも王都周辺にはダンジョンはないはず・・・となると近隣の街から?


「どれくらい集まってるんだ?」


「ざっと1000体はいるにゃ・・・しかも今も増え続けているはずにゃ」


「1000・・・ちょっと待て!なんでそんな数の魔物が・・・」


「だから誰かが誘い込んだって言ったにゃ。調べたらこの街は4つの街に囲まれているにゃ・・・恐らくその4つの街の近くにあるダンジョンからその近くの街を襲うことなく離れたこの街を目指して来ているにゃ」


「そんな事が出来るのか?そもそもなぜ・・・」


「なぜかは分からにゃいけど出来るにゃ。ダンジョンの外に出た魔物は基本自らの意思で動くにゃ・・・人間を襲う、種族で集まり生活する、上位種に従う・・・」


「上位種・・・魔族?」


「そうとは言い切れないけどまあそうだにゃ。ダンジョンの外に出した魔物は個体数を自ら増やすよう繁殖能力を与えられるにゃ・・・それは前のリザードマンの時に知ったと思うけど繁殖能力を得るとある感情が生まれるにゃ」


「ある感情?」


「生きたいという感情・・・生存本能にゃ。生きる為にはどうするか・・・逆に死なない為にはどうするか・・・強いものに逆らわない・・・長い物には巻かれろって事にゃ」


「なるほどね・・・だから魔族や自分より強い魔物に逆らわない・・・か。ダンジョンの外の魔物が逃げたりするのもそのせいか・・・けどどうして王都に・・・まさかリガルデル王国の侵攻と関係が?」


「魔族が人間と組む事もありえなくはないにゃ。ベルゼブブのように人間を裏で操っているかもしれにゃいし・・・」


シャリファ王国では女王を媒体にする事により反乱を起こさせた。それと同じようにリガルデル王国を動かしている魔族がいる可能性もあるのか・・・厄介だな


「調べれば分かりそうか?」


「なんとも言えないにゃ。けど偶然にしては集まり過ぎだから間違いなく誰かいるはずにゃのだけど・・・」


「じゃあ引き続き調べてくれ。もしリガルデル王国も関わっているなら問題が一気に解決するかもしれないしね」


「分かったにゃ」


魔物が王都を包囲する・・・それに合わせてリガルデル王国が侵攻して来るなんてあまりにも出来過ぎているよな・・・もしかして僕が呼ばれたのもダンジョンの事じゃなくて魔物の事だったりして・・・まあ行ってみれば分かるか



この後チルが運んで来てくれたコーヒーを飲み干し着替えると城へと向かった



その時はまだあんな事になるとは思いもしなかった・・・




「辺境伯様、こちらを」


城に着き謁見の間に案内される前に兵士が腕輪を二つ僕に差し出す


「これは?」


「情勢が不安定時、国王陛下に謁見する際に必要なものでして・・・」


リガルデル王国が攻めて来ているから安全を期してってところか。つまりこれはマナ封じの首輪の代わり・・・多分そんなところだろう


僕は言われるがまま二つの腕輪を装着するとその兵士に案内され謁見の間に


ここを訪れるのは何度目だろうか・・・他の国の謁見の間も行ったりしているのでもう慣れたもんだ・・・が、少し様子がおかしい。敵意とまでは言わないけど厳しい視線を王様と隣に立つ宰相から感じられた


「久しいなローグ卿・・・息災であったか?」


「はい。国王陛下におきましても御健康そうで何よりです」


「・・・ふっ、健康そうに見えるか・・・まあよい。ここに呼んだ理由は分かるか?」


さて・・・どっちだ?・・・まあ魔物と関連しているとは思わないだろうからダンジョンの事だよな・・・


「はい」


「申開きの言葉があれば先に聞いておこう」


「・・・特にありません」


「・・・そうか・・・つまり我が国に叛意を抱いたと?」


そんな大袈裟な・・・と言いたいところだけどダンジョンは国の管理・・・そしてもたらす利益は計り知れない・・・それを破壊したのだからそう取られても仕方ないか・・・でも別に叛意をって訳じゃないしどう説明すればよいのやら・・・


「陛下、私からよろしいですか?」


「うむ」


「ローグ卿・・・なぜアジートのダンジョンを破壊したのだ?その意図を知りたい」


いやだから王様ともその話してたのに聞いてなかったのか?今考えているのだから少し黙っといて欲しい


叛意じゃなくてダンジョンを壊した理由・・・2人が聞きたいのは結局そこだ。上手く説明出来ればお咎め無しとは言わないまでも降格くらいで済むかもしれない・・・考えろ・・・うーむ・・・


正直に八つ当たりと言うか・・・いやさすがにそれはまずいよな・・・八つ当たりって丁寧に言うとなんだっけ?・・・うーん・・・


「・・・復讐・・・」


「なに?」


「その・・・知り合いがやられ・・・痛い目?を見て黙っておれずに・・・八つ当・・・復讐をした次第です」


「・・・その者達の代弁者という訳か・・・その者達はそれを望んでいた、と?」


「いえ・・・そうではないのですが・・・短絡的にと言うか衝動的にと言うか・・・」


「ダンジョン破壊もその復讐の一環という事か・・・」


??一環??


「その知り合いというのは大体察しがつく。なるほど・・・もう少し話しておくべきだったか」


何を?てか宰相はケン達の事を知ってるのか?


「確定・・・か」


「はい。各地の聖女聖者と会っていたという情報は入っております。知り合いとはその者達の事でしょう。彼らの境遇を聞き同情したローグ卿がリガルデル王国と画策した・・・といったところでしょうか」


聖女聖者?何言ってんだこいつ


「セシーヌ・アン・メリアを確保しリガルデル王国の憂いをなくす・・・そしてかの国と申し合わせ外から圧力をかけ兵を外に集中させ内側から叩く・・・各国が動く前に我が国は陥落・・・いや、もしかしたら各国には既に話を通しているやも・・・まったく・・・なかなかの策士だな」


それほどでも・・・ってまったく全然言っている意味が分からないぞ?リガルデル王国と申し合わせって・・・まさか僕が今回の侵攻を企てたと勘違いしてる?


「えっと・・・あの・・・」


「フーリシア王国という小国がリガルデル王国という大国に対抗するには犠牲を払うしかないのだ・・・今更説いても仕方ないか・・・ローグ卿を確保しろ」


ちょっえっ!?


誤解を解く暇もなく王様の命令で部屋の中で待機していた騎士達が僕を捕まえようと動き出す


冗談じゃないとゲートを開いて脱出を試みようとするもゲートが開けない・・・そこでようやく腕輪が二つであった意味を理解した


一つはマナ封じ・・・そしてもう一つは・・・魔力封じ・・・


「ご、誤解です!私は・・・」


「問答無用!見苦しいぞローグ卿!」


強い!・・・マナと魔力が封じられてもそこそこ戦えるのではと思ったけど・・・もし魔力だけ封じられマナが使える状態でも敵わないくらい強い・・・だれだコイツは・・・


その男に組み伏せられた後、顔を起こすと王様と宰相は僕を冷たい視線で見下ろし謁見の間から出て行ってしまった


僕は弁解の機会を与えられず反逆者として投獄されることに・・・


マナも魔力も封じられ、リガルデル王国が迫り魔物が王都を囲む中で──────

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