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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
422/856

418階 忘れ物

師匠と別れてリガルデル王国を目指す中、僕は師匠から学んだ事を実践していた


師匠に教わったのはマナの使い方・・・だけど僕はそれを魔力で実践している


「・・・少し飛び過ぎたかな?」


多分だけど師匠の師匠である魔族はマナを使えないはず・・・となると師匠に教えたマナの使い方は本当は魔力の使い方なのではないだろうかと考えた


マナと魔力の違いはマナは色々出来るもので魔力は威力は高いけど単純なことしか出来ないと思い込んでたけど考えてみればゲートだったり言霊だったりと魔力は色々と出来た


って事で早速試してみた


人の気配がないのを確認し屈んで目を閉じた。イメージするのはこれまでのように魔力で足の力を増幅するのではなく魔力を縮めて伸ばす感じ・・・グッと縮めて・・・思いっ切り・・・伸ばす


すると軽く飛んだつもりなのにとんでもない高さまで飛び上がってしまい現在下降中・・・さて、どうしたもんか・・・


「このままの勢いで落ちたら・・・死ぬよな?」


〘当たり前でしょ?てかなんで冷静なのよ〙


「いやぁ、普通自分で飛び上がって死ぬ奴いないだろ?だからこれって間抜けを通り越して凄いのでは?とか思ったりして・・・」


〘アナタに自殺願望があるとは知らなかったわ。ちなみに間抜けは通り越さずにただの間抜けだと思うけど・・・で、このまま死ぬの?私はイヤよ〙


「・・・だよな。僕もそう思い始めてきた・・・」


ゲートは・・・意味ないよな。勢いそのままだし・・・となると・・・ヤバイ詰んだかも


〘ハア・・・風魔法で勢いを止めれば?得意じゃなくても吹かせるくらい出来るでしょ?〙


おお!なるほど・・・イメージは下から吹き上げる強風・・・ん?待てよ・・・魔力でも同じように出来るなら更に強い魔法が出来るでは?


「よし・・・吹き荒れろ!」


〘ちょ!アホなの!?〙


生きるか死ぬかの間際にそんな事を考えてしまったのが運の尽き・・・興味本位で放った魔力の魔法はとんでもない勢いで吹き荒れ僕の体を更に上空まで打ち上げた


「・・・思ってたのと違う・・・」


〘何を想像してたのか知らないけどアホなのは確かなようね。落ち始めて勢いがつく前にさっさとゲートを使いなさい・・・次はないわよ〙


「・・・はい・・・」


言われた通り打ち上げられた体が落ちる前に地面近くに繋げたゲートを開く


そのまま体をゲートに滑り込ませると浮遊感を感じたまま地面に着地しバランスを崩して倒れてしまった


「・・・無事生還・・・まだまだコントロール出来そうにないな・・・魔力」


仰向けになり背中で大地を感じながら空を見上げて呟いた。マナだったらもう少しまともに操れたと思うけど魔力は力の加減が難しい


〘当然よ。マナが飼い慣らされた馬に乗ると同じなら魔力は野生の暴れ馬に乗るようなもの・・・魔族でも細かい操作はしないくらいだし〙


「となると師匠に教えた魔族が特殊だったってこと?」


〘そうね・・・基本的には能力を使う魔族がほとんど・・・人間相手に魔力を操って戦うよりも能力を使った方が手っ取り早いしね〙


「ふーん、そっか・・・考えてみれば魔族とほとんど戦った事なかったな・・・パズズはサキが・・・ベルゼブブはサラと女王が倒したし・・・まともに戦ったのってサキとくらい?」


〘あれは戦いというか・・・調教?〙


「おい」


〘冗談はさておき分かっていると思うけどサキもあの時本気で戦った訳じゃないわ。つまりアナタは魔族と戦った経験はゼロ・・・人の真似が得意なアナタもさすがに戦った事も無い相手の真似は出来なかったって訳ね〙


「戦ったからといって真似出来るか分からないけど・・・まあでも実際に見たら違うかもな・・・今より上手く操れるかも・・・」


と言ってもその為に魔族と戦いたいかと聞かれれば答えはノーだ。師匠の師匠のような魔族とは出来れば戦いたくないかな・・・


《ロウ・・・》


「サラ!?・・・って通信か」


サラは基本的に通信道具を使うとしてもマナを流して光らせるだけでいきなり話し掛けたりしない。もし話し掛けるとしたら相手の状況が分かっている時か余程緊急の時・・・


今にも消え入りそうな声だった・・・何かあったに違いないと嫌な予感がしながらも懐から通信道具を取り出しマナを流す


「サラ・・・何かあった?」


《ごめん・・・私をある場所に連れて行って欲しいの・・・》


「ある場所?」


《・・・うん・・・・・・・・・アジートの街に・・・私を連れて行って──────》




すぐに王都に向かい屋敷でサラと合流する


随分と思い詰めた表情・・・共に来ていたファーネを見るが彼女は視線を落とし首を振ったのみで何も語らなかった


「・・・何があった?」


「・・・分からない・・・分かっているのはアジートの街にケンがいるって事だけ・・・」


それだけ?正直想像していた最悪な出来事とは違って安堵してしまう


けど・・・彼女はケン()ではなくケンと言った・・・その事に気付きまた悪い予感が働く


「ケ・・・いや、行こう。アジートなら行ったことがあるからすぐに行ける」


ここでこれ以上聞くべきではないと言葉を飲み込み彼女が頷いたのを確認するとアジートに繋がるゲートを開いた


「私は残るわ。約束もあるし」


「ああ、頼む・・・サキは?」


「分からない・・・王都に着いたらどこかに行っちゃって・・・」


「・・・分かった。サーテン、ファーネを頼む」


「はい畏まりました。行ってらっしゃいませ」


頭を下げるサーテンとメイド達を背に僕とサラはアジートへと向かった──────



彼女が向かうは冒険者ギルド


その道すがら彼女が得た情報をあらかた聞いた



王都の屋敷に冒険者ギルドの総ギルド長であるセデスから連絡が来た。セデス本人ではなくエモーンズの冒険者ギルド長であるフリップが僕とサラどちらかと連絡を取りたいと言ってきていたらしい


サラは王都の冒険者ギルドに向かいフリップと話す・・・その時に『アジートの街でケンがダンジョンで怪我をした』と聞いた


その時に他のみんなはと聞いたがフリップの口からは語られることはなかった


知らないのかもしれないし知っていて言わないのかもしれない・・・それでいても立ってもいられず彼女は僕に連絡をした


つまり彼女も僕と同じで何も分からない状態だ


そしておそらく彼女もまた僕と同じ事を想像しているだろう


口には出さないが・・・きっと・・・



「ロウニール・ローグ・ハーベスとサラ・セームンだ。ここに冒険者ケンがいると聞いたが・・・」


「は、はい!2階となります!ただいまご案内を・・・」


僕が名乗ると受付の子は立ち上がり頭を下げて僕達をケンの元まで案内しようとカウンターから出ようとした・・・が


「業務を続けよ、辺境伯閣下とサラ殿は私が案内しよう」


「ギルド長!」


2階から降りて来たのは白髪の老人・・・どうやらアジートの冒険者ギルドのギルド長らしい


「お初目にかかります。ギルド長をしておりますグラント・ナドル・マーナクと申します。この度は・・・」


「挨拶は後ほど・・・先にこのギルドにて治療中のケンに会わせてくれないか?」


「はい。ではこちらです」


そう言ってグラントは僕達を2階へと案内した


そして2階のある部屋の前で立ち止まるとこちらを振り向く


「この部屋でございます。ダンジョンで発見し既に治療済みなのですが・・・」


「ですが?」


「食事を一切せず目が虚ろで心ここに在らずな状態でして・・・まともにお話が出来るかどうか・・・」


「構わない・・・私達だけで入っても?」


「はい」


グラントは横にズレると道を譲ってくれた


サラを見ると口を真一文字に結び目を細めケンが居るであろう部屋のドアを無言で見つめている。僕は一度大きく息を吐くとドアノブに手をかけドアを推し開く



「・・・ケン?」


ベッドの上で上半身だけを起こし壁を見つめるケン・・・入って来た僕達に全く気付かず、ずっと前だけを見ていた


声をかけても反応は無い・・・耳に声が届いてないのか・・・それとも・・・


ケンから目を離し部屋の中を見回す


ベッドの他には特に何もないシンプルな部屋・・・その中でベッドの脇にポツンと置かれている物があった


僕が作ってケンに渡した剣と・・・マホに渡した杖・・・


「ケン!」


サラが突然叫ぶ


するとケンは一旦上を見てその後ゆっくりとこちらに顔を向けた


「・・・サ・・・ラ・・・姐さん?・・・」


「ケン!何があった!?一体ダンジョンで・・・何が・・・」


彼女はケンが反応したと分かると彼に近付き肩を掴む


その時に足元にあった杖が足に当たり音を立てて倒れるとケンは何故か顎を上げた


「ケン?」


「なんで・・・姐さんが・・・」


「ダンジョンで怪我をしたと聞いたからだ・・・怪我はどうなんだ?痛む所は?」


「すみません・・・心配かけて・・・もう・・・大丈夫ッス・・・」


食事をしていないと言っていたが水も飲んでいないのか掠れた声で答えるケン・・・サラを見ているようで見ていない虚ろな目はそのまま・・・そして顔は何故か顎を上げたまま天井付近に向けられていた


「・・・何があった?どうして・・・」


「へへっ、ちょっと・・・ドジっちまって・・・宝箱を開けたら・・・底が抜けて2人と離れ離れに・・・あ、でも簡易ゲート持っているんで今頃エモーンズから・・・こっちに向かってるはずッス」


「2人?」


「ええ・・・スカットとヒーラ・・・スカットがドジ踏んで・・・まあでも宝箱を開けるように言ったのは俺で・・・旅の資金を稼ごうと焦って・・・それで・・・」


トラップに引っ掛かり4人は離れ離れに・・・スカットとヒーラは底が抜けたということは下の階に?で、ケンとマホは・・・


「扉が閉まりそうに・・・蟲が・・・ああそうだ・・・早く行かないと・・・待ってるんだ・・・ずっと・・・早く行かないと・・・開かない・・・扉が・・・開かない・・・」


「ケン!しっかりしろ!・・・何があった?」


「『何があった』?・・・何もない・・・ない・・・何も・・・早く行かないと・・・スカットとヒーラと合流して・・・行かないと・・・」


「・・・・・・・・・ケン・・・マホはどうした?」


「・・・違う・・・そんなはずない・・・だって・・・」


「ケン!なんでここにマホの杖がある!」


「は?何言ってんッスか姐さん・・・()()()()()()()()()・・・だって・・・」


「ケン!」


「サラ、一旦出よう・・・ケン、僕の声が聞こえるか?」


「・・・ロウニール?久しぶり・・・元気にしてたか?」


「ああ・・・腹減ってないか?美味い飯持ってくるからちょっと待っててくれ」


「飯?・・・ああ、少し・・・腹が減ったかな・・・」


サラの肩に手を乗せると彼女は振り返った


「一旦部屋を出よう・・・な?」


「・・・うん・・・ケン、また来る」


そう言い残し部屋を出たサラは閉まったドアに背中を預け天井を見上げた


何があったのか大体想像がつく・・・ケンが言っている事が全て本当ならマホはもう・・・


「・・・スカットとヒーラは?フリップからは何も聞いてないし簡易ゲートを使ったのなら・・・」


ケンは離れ離れになった2人が簡易ゲートを持っていると言っていた。それが本当ならまだ望みはある


もしヒーラが持っているとすれば恐らく収納ゲートに・・・


指輪を作った時に収納先を作ったのも僕だ・・・もしかしたらヒーラ達の行方が分かるヒントがあるかもと収納先を思い出しながらゲートを開くと・・・




ヒーラのものと思わしき腕が()()()()()()・・・その手には簡易ゲートが握られて──────

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