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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
418/856

414階 スリーナイツ

ディーン様は不確定な話にも関わらず協力を約束してくれた


ただ・・・


『タイミング悪く国から魔物への対処を任されてね・・・情報収集につぎ込める人数は限られてしまっているんだよ』


という事らしい


第一第二騎士団はいつ起こるか分からない戦争の準備に精を出し厄介事は全て第三騎士団に押し付ける。王都と城を護る王国騎士団は・・・はっきりとは言わなかったけど使えないらしい・・・ディーン様も大変だな


「コーヒーをお持ちしましたサラ様」


王都にあるロウの屋敷で今後どう動くか悩んでいると執事であるサーテンが私の目の前にカップを置きコーヒーを注ぐ


「あ、サーテンさんすみません」


「サーテンとお呼びください。Sランク冒険者である事もさることながらサラ様はご主人様の奥方になられる方。さん付けなので呼ばれてはご主人様に叱られてしまいます」


「奥・・・ま、まだなっていませんし・・・そりゃあ将来的には・・・でも・・・」


「乳母を雇う準備は整っております。いつでもお気軽にポンとお産み下さい」


「サーテンさん!」


いきなり何を言い出すかと思えば・・・あー顔が熱い


サーテンは頭を下げ部屋を出て行った


しかし彼の残した爪痕は大きい・・・『タートル』の事などすっかり忘れてしまい頭の中をある事が支配する


ロウとの子・・・それはもちろん私も望むことだが・・・まだ時期尚早というか自信が無いというか・・・


たまに無断で注がれるが一応基本は外に・・・けど本音は・・・いやダメだ!せめて『タートル』の件が解決してから・・・


「ねえサラ」


「うひゃう!・・・・・・・・・ファーネ・・・勝手に部屋に入るなとあれほど・・・」


「ちょ、何そんなに怒ってるのよ!散々ノックしたけど返事しないからでしょ!・・・さては何かよからぬ事を妄想して・・・」


「ち、違うわよ!・・・で、何の用?」


別によからぬ事では決してない・・・決して


「これからどうするのか聞きたかったのよ。『タートル』の名は表立って出せないし団長は魔物対策で手一杯っぽかったし・・・王都観光もいいけどもう飽きたし」


「観光って・・・ちゃんと私は探してたわ『タートル』のメンバーは何人か知ってるし王都に潜んでないかどうか確認する為に歩き回ってたんでしょ?それを貴女がここに寄りたいとかアレを食べたいとか・・・」


「何言ってるのよ。アンタがそのデカ乳を揺らしながら歩けば注目されるに決まっているでしょ?だから探していると悟られないように観光しているフリしてたのよ分かる?」


・・・ムカつく・・・けど確かに注目されていたような気もする。王都に冒険者が少ないっていうのもあるかもしれないけどジロジロ見られてたしそうなると私が見つける前に警戒されて身を潜めてしまうかも・・・


「だからと言って・・・ハア・・・もういいわ。とりあえずディーン様に頼まれた事から片付けましょ・・・そうすれば第三騎士団からもっと人員を割けるって話だし」


「魔物退治だっけ?王都周りにはダンジョンはないけど周辺の街にあるダンジョンから出て来た魔物が王都近くまで来てる・・・その対処に第三騎士団が選ばれたから今は動けない・・・そこで対魔物のスペシャリストがサッサと解決してくれれば団長達も『タートル』に集中出来るって訳ね」


「そういうこと。サッサと解決出来るかは分からないけどこのまま闇雲に探すよりはいいはずよ。私達2人で探すよりずっとね」


一緒に来たはずのサキはどっか行っちゃうしファーネはいまいち真剣さに欠けるし・・・『タートル』が動いているか確証はないから頼るのは気が引けたけど仕方ない・・・よね?


「ハア・・・師匠達がいればもっと他に方法があったかもしれないのに・・・」


「ソニアさん達?確か家族旅行だっけ?」


「うんそう・・・最近は遠征もないから久々にシシリアちゃんを連れて旅行だって・・・気楽なもんよねー」


「まあ魔王討伐で大変だったし少しくらいは・・・」


「・・・そう言えばアンタも辺境伯様と各国を回っていたのよね?」


「あれは・・・一応重要な任務と言うか・・・」


「美味しいものいっぱい食べた?」


「・・・そりゃあまあ・・・役得と言うか・・・」


「旅先でエッチも・・・」


「・・・ノーコメントで」


「ハア・・・やってらんないわ・・・美味しいもの食べて彼氏も食べて・・・アンタがやることやっている時に私はむさ苦しい男共の調教・・・じゃなくて訓練とか・・・不公平にも程がある!」


「・・・」


ここは下手に何かを言うと藪蛇になりそう・・・コーヒーでも飲んでやり過ごすしか方法はな・・・


「そろそろ出来るんじゃない?赤ちゃん」


「ブー!・・・あ、ごめん」


思わず飲んでいたコーヒーをファーネに噴射してしまった・・・だっていきなり赤ちゃんとか言うもんだから・・・


「・・・服」


「え?」


「弁償しなさい服を。という事で魔物退治の前に服を買いに行くわよ・・・拒否権はないから」


ストレスを買い物で発散しようとしているな・・・別にいいけど・・・


「買い物終わったらすぐに冒険者ギルドに行くからね」


「・・・下着までビッショリなんだけど・・・」


「下着も買えばいいじゃない・・・何なら装備も全て新調してあげるわ」


「さっすが辺境伯夫人!太っ腹!」


「自腹よ自腹・・・ハア・・・今日は冒険者ギルドに行くのは無理そうね・・・」




その日は予想通り買い物だけで終わり夜はみんなでお風呂に・・・そこでも子供の話題に


適当に受け流しているとファーネがある事ないこと言うもんだから私を除いてみんなは大盛り上がりだった


・・・




次の日、昨日買ったばかりの服や装備でめかしこんだファーネと共に冒険者ギルドへ


ダンジョンが周辺になく仕事の依頼がほとんど商人の護衛の為に過疎化していた王都冒険者ギルド・・・しかし蓋を開けてみたら予想外の人の多さに驚いた


「各地から冒険者を集めたのね・・・まっ、だからか寄せ集め感半端ないけど」


口は災いの元とはよく言ったもんだ


ファーネのその呟きを聞いた1人の大柄な冒険者が振り向きこちらに近寄って来る


「姉ちゃん何か言ったか?」


「あら耳はいいのね・・・顔は悪いのに」


「このっ!」


「人は図星を突かれると怒るって本当ね。寄せ集めで顔が悪いって自覚があって何よりだわ」


「~~~!その面二度と見えねえようにしてやる!!」


入って数秒で喧嘩を始めるのはどうなんだ?助ける気もないし助ける必要もないけどあまり目立ちたくないのだが・・・


「やめたまえ!」


ギルドに備え付けのテーブルに座る冒険者の中からファーネに今にも殴り掛かろうとしている冒険者を止める声が・・・他の冒険者達が注目する中声を上げた人物が立ち上がるとこちらに向かって歩いて来た


「彼女の言っている事は正しい・・・我々は寄せ集めで君は不細工・・・だろ?」


「ぐっ!」


王都では気を遣ってはいけないという法律でもあるのだろうか・・・サラサラとした長髪をなびかせながら颯爽と現れた男はファーネと冒険者の間に立つとサラッと酷いことを言い放つ


それに対して怒ると思った冒険者はグッと我慢しファーネと何故か私を睨みつけると自分の座っていたテーブルへと戻って行ってしまった


「あちらで少しお話しませんか?」


男は自分の座っていたテーブルを指し笑顔で言うが顔は笑っているにも関わらず有無も言わさぬ雰囲気を醸し出していて少し鼻につく


けどファーネが私に振り返りウインクするので仕方なく男に誘われるがまま同席する事になった


冒険者ギルドに入る前・・・ファーネは『何があっても止めないでね』と言うから何をするのかと思いきや・・・まさかこうやって助けられ誘われるのが狙いだった?あまり関わりたくないけど仕方ない・・・とりあえずこの場はファーネに任せよう



席に案内されると男の仲間と思わしき2人の男が座っていた


軽薄そうな魔法使いの男と筋肉隆々の大柄な男・・・背中に剣を背負っているから剣士だろうか


止めに入った男の名はフレイズと名乗り、魔法使いはワーズ、大柄な男はドーズと名乗った


剣士2人に魔法使い1人のパーティー・・・しかも全員Aランクなんだとか・・・そりゃああの冒険者も逆らわない訳だ


王都の北側にある街ジャーズから来たらしく街では『スリーナイツ』と呼ばれていたらしい


聞いた事がないと正直に答えたらしょんぼりしていたがそれほど有名なのだろうか・・・まあ私が他の冒険者に興味がなかったからかもしれないな


「君達はどこから?」


「私達はエ・・・」


「王都出身なんですー。最近周辺に魔物が現れて怖いなーと思って・・・少しでも力になれたらと冒険者になりに来たところだったんですー」


オイ


「そうか。これも何かの縁だ・・・もし良かったら手伝おうか?」


「い・・・」


「ありがとうございますー。右も左も分からないのでよろしくお願いしますー」


断ろうとしたのに・・・一体何を考えているんだ?・・・とりあえず喋り方を何とかしろと言いたい・・・気持ち悪い


「なら冒険者登録してきたまえ。私達はここで待っていよう」


「はいー。ありがとうございますー」


立ち上がり受付に向かうファーネの後を追って私も立ち上がろうとテーブルに手をついた。するとフレイズが私の手首を掴み・・・


「必ず守るから安心して」


と訳の分からない言葉を吐き出した


「・・・どうも・・・」


背筋がゾワッとして吐き気を催したが何とか耐えて返事をすると早歩きでファーネの元へ


「何を企んでいるのよ」


「助けてもらい実力者の懐に入り込めた・・・これで冒険者達から話が聞きやすくなったでしょ?」


「話?」


「亀さんのよ・・・近寄り難い雰囲気を出していると相手は警戒して喋ってくれないでしょ?でもか弱い美女を演じれば男なんてコロッと騙されてペラペラ聞いてもいないことを喋ってくれるもの・・・アンタもちゃんと弱いフリしてよね」


亀・・・『タートル』の隠語だ


確かにファーネの言う通りSランク冒険者と名乗れば警戒して喋ってくれないかも・・・話し方はイラッとくるがそこまで考えていたのか・・・少し見直した


あまり気は進まないが『タートル』の事を調べる為だ・・・少しばかり我慢するか──────




「ここ・・・よね?」


「ああ、ここだ」


「ワーイ!」


「ちょ、シシリア!走ったら・・・ほらこけた」


「言ってないで助けてやれよ・・・」


「大丈夫よ強い子だから・・・それより調べた通りみたいね。どうするの?」


「・・・どうするも何も・・・どうしようもねえだろ?」


「まあね。本当・・・どうしようもないわよね・・・」


キースとソニアが見つめる先には廃墟と化した村があった


人の温もりを失った村・・・それを見てキースは拳を握り締める


「チッ・・・レオンの野郎・・・ぜってえに許さねえ──────」

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