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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
413/856

409階 爺さん

ファミリシア王国の王様との会談は・・・何事もなくすんなり終わってしまった


だって何も聞いてないのにペラペラ話してくれるし至り尽くせりの接待してくれるし何より見た目がいい人そうだし・・・最後には手土産まで・・・これまでの王様が異常だったのか?


友達になろうとか喧嘩腰だったりとか反乱起こされたりとか・・・ファミリシア王国の王様みたいな人ばかりだったら良かったのに・・・


王都に居た聖者も特に不満はなさそうだった・・・教会も立派なものを建ててもらってたし笑顔で治療する姿は正に聖者・・・話を聞いても恨み言のひとつもなかった


となるともう残りはリガルデル王国のみ・・・早く帰ってみんなとゆっくりサラとしっぽり・・・


「や、やめて下さい!」


「そう言うなよ。ちょっと酌してくれりゃいいだけだからさ」


僕は今王都から出てスーザンという街で食事中だ


この国は農王国と言われているだけあって食材が豊富・・・色んな料理を楽しめる。魚は西に行かないとないらしいから残念だけど野菜は新鮮でこれもまた・・・美味


「やめてー!誰かー!」


「ウヘヘッ!この街で俺らに逆らうヤツなんていやしねえよ!さっさと座れ!」


一度西に行ってみるか・・・そうすれば魚料理にもありつける・・・しかしリガルデル王国は東・・・せっかくファミリシア王国は速攻で終わったのに寄り道していては意味はない・・・何よりサラに無性に会いたい


「お主は出ぬのか?」


店が混んでいたので相席となった向かいの爺さんが何やら呟いた


出ぬ?どこに?


ああ、そういう事か。我慢は良くないぞ爺さん


「お先にどうぞ」


「ふむ・・・最近の若い者は・・・仕方ないのう」


なんだ?仕方ないってどういう事?譲ったのにえらい言われようだな・・・てか別に僕はもよおしてないけど


爺さんは立ち上がるとトイレ・・・じゃなくて他の客が座るテーブルの方へ・・・コラコラ爺さんそこはトイレじゃないぞ?


「やめんか騒がしい」


「なんだコラジジイ!」


なんだ?騒いでいた客に文句を言いに言ったのか?


わざわざご苦労なこって・・・周りの客も爺さんの行動にドン引きして・・・ん?


爺さんが文句を言いに行ったテーブルには3人の屈強そうな見た目の男が3人、そしてその傍には今にも泣きそうな女性が1人・・・女性は男の1人に腕も掴まれている


女性はこの店の店員?だとすると男達が店員に絡みそれを勇気ある爺さんが助けに行った・・・そんな感じ?


「爺さんそのまま回れ右だ。枯れ木を折る趣味はねえ・・・水をやる趣味もな」


「ほう枯れ木となる・・・ワシが枯れ木ならお主らはただの屑だのう」


一番偉そうな男がせっかく逃がしてくれそうだったのに爺さんはあえて男達を怒らせる


女性を掴んでいた男がその手を離し青筋立てて立ち上がると爺さんを見下ろした


「ジジイ・・・最期の花道を飾りたいのは分かったが世の中そんなに上手くねえ・・・もう一度だけチャンスやる・・・帰ってババアの垂れ乳でも吸ってろ」


意外と優しい?頑張ればもう一度くらいチャンスくれそうだな


「やれやれ・・・言葉の汚さは天下一品じゃな。ワシの若い頃は・・・」


ぬわっ!もうノーチャンスだった!


余裕をもって見てたらいきなり男が拳を振り上げる


そんな拳を爺さんに当てたら怪我どころじゃ済まないぞ!?


すぐに立ち上がり駆けつけようとしたが間に合わず拳は爺さん向けて振り下ろされた


ゲートを・・・と思ったがそんな間もなく拳は爺さんに・・・


「え?」


いつの間にか爺さんは逆さに・・・そして爺さんの踵が男のこめかみに突き刺さっていた


白目を向き仰向けに倒れその拍子にテーブルが傾き乗っていた料理が全て床に落ちた


「おい!・・・・・・爺さんてめぇ・・・」


なんだ?何が起きた?・・・もしかして・・・


爺さん頭を殴られる、軽い爺さんクルクル回る、運良く回った時に踵がこめかみにヒットし男死亡・・・んなバカな


料理を台無しにされた怒りか仲間が殺られた怒りか残りの2人が立ち上がり爺さんを取り囲む


「俺達が『ダブルフィスト』の者って知っててやりやがったのか?」


ダブルフィスト?・・・両の拳?・・・あ、僕もだ


「お主らが『ダブルフィフィ』だか『バブルフィスト』だか知らぬが騒ぐなと注意しただけじゃ・・・まだやるか?」


「このっ!」


「・・・やめておけ・・・これ以上はアニキの領分だ」


「でも!」


「この爺さんは『ダブルフィスト』の名をバカにした・・・分かるだろ?」


なるほど・・・素敵なネーミングをバカにされたらそりゃ怒る


「くっ・・・逃げるなよジジイ・・・」


そう言って2人は倒れている男・・・おっ、生きてる・・・を担ぐとそそくさと店を出て行った。ここで『無銭飲食だ!』と叫んだら目をつけられそうだからやめておこう


とりあえずいつの間にか起きていた騒動も一段落したみたいだし食事に戻ろう・・・追加注文はさすがに難しそうだよな・・・また折を見て来るとするか


「いい身分じゃのう・・・年寄りが骨を折っておる間に飯を食らうか」


「分かります?こう見えても辺境伯なんです」


「・・・お主ちぃとワシをバカにしておりゃせんか?」


「いえいえバカにするほど知らないので流しているだけです」


「・・・ぬっ!?お主・・・」


「まだ何か?」


「それはワシが頼んだ料理ではないか?」


「・・・」


あ、本当だ・・・テーブルが一緒だし紛らわしいところに置いてあったからつい・・・


「そうかそうか・・・そういうつもりであったか・・・」


「・・・お金・・・払います・・・」


「人の物を盗っておいて『払います』じゃと?・・・その根性叩き直してやるわ!──────」




一体どうすりゃ良かったんだよ・・・そりゃあ僕が間違えて食べてしまったのは悪いけど・・・払うって言う他に何か返す方法あるか?食べた物出せとか?


ご立腹の爺さんに表に出ろと言われて店で食事代・・・爺さんの分まで全部・・・払った後で2人揃って店を出た


爺さんは出る間際店員と思われる女性に何か耳打ちしていたが何を言ったのかは聞こえなかった・・・まさか助けたお礼を強請ったとか?そうだとしたら侮れないな・・・この爺さん


店を出てしばらく歩く爺さん・・・ぶっちゃけゲートで逃げる事も可能だ・・・お金も払った事だし逃げても文句はないはず・・・けど爺さんの背中からは逃げるなオーラが出ており渋々ついて行く


そして


「ふむ・・・この辺でいいじゃろう」


爺さんが立ち止まり呟いた


そこは騒がしい商店街から少し外れた空き地。特に何もなさそうだが・・・


「あのぉ・・・」


「何を企んでおる?」


「へ?」


爺さんは振り返り目を細める


何を企むって??


「まだしらを切る気か・・・他の者は誤魔化せてもワシは誤魔化せぬぞ?」


???


「一体何のこ・・・っと!?」


2mくらい離れていたのに突然間合いを詰められた


そして掌底が腹にめり込む・・・こんのジジイ!


「いきなり何を・・・がっ!」


今度は蹴り・・・鋭い蹴りが側頭部にヒットし意識が刈り取られそうになる・・・何とか膝をつかず耐えるが爺さんは手を後ろで組んだまま僕を見下ろし更に膝で顎を打ち抜いた


あ・・・これヤバい・・・意識が・・・


「まだ正体を見せぬか魔族め・・・上手く人間に化けたようだが無駄な事・・・目的を言わぬのならこのままここでトドメを刺してやろう」


魔族!?


「ちょ・・・待った・・・私は人間・・・」


「どの口がほざくか・・・」


くそっ・・・殺気がこもってないからか速すぎて見えないからか躱す事が出来ない・・・



強い



魔王やディーン・・・レオンやキース、サラとはまた違った強さ


「ほう・・・まだしがみつくか魔族よ」


「だから・・・魔族じゃないって言ってるだろ!」


と言いつつ魔力を放出


仕方ないじゃないか・・・マナだけじゃ到底敵わない


「ようやく本性を・・・むう・・・お主何者だ?」


こんのジジイ・・・本気でボケてるのでは?


魔力を纏った僕を見るや否や顎に手を当て顔をしかめる


「魔族にしては魔力の扱いが稚拙・・・だが魔族である事は・・・いや魔人のなり損ない?・・・うむ・・・」


独り言をブツブツ言い始め本格的に危ない人だと後退りしていると怪しい集団がこちらに向かって歩いて来ているのに気付いた


先頭は厳つい男・・・2番目にどこかで見た事ある顔が・・・ああ、さっきの店で・・・って事は先頭の男が『ダブルフィスト』?


確かに『ダブルフィスト』だ・・・両腕の先に拳が付いている・・・まあ全員付いているが


店にいた男は『ダブルフィスト』に爺さんを指差し耳打ちする。おそらく『アイツです』とか言ってるのだろう。『ダブルフィスト』はそれを聞き爺さんを激しい剣幕で睨みつけると歩を早め背後に立ちその拳を振り上げる


爺さん気付いてない?未だに顎に手を当て何か考えている素振り・・・このままじゃ・・・


「死ねジジイ!!」


チッ!さすがにいきなり暴力を振るって来た爺さんでも目の前でべちゃんこにされたら寝覚めが悪い・・・僕は『ダブルフィスト』の頭の横ら辺にゲートを開くと振り下ろす拳が爺さんに届く前に思いっ切り拳を突き出した


「ブッペ!!」


『ダブルフィスト』の顔面に拳が当たると想像以上に吹っ飛んだ


忘れてた・・・魔力を纏ったままだった・・・


死んではなさそうだけど仰向けに倒れてピクピクと虫の息・・・取り巻きの連中が駆け寄り生存を確認すると何故か爺さんに殺気を放つ


多分一瞬の出来事で僕がゲートを使ったのは見えなかったのだろう・・・爺さんが何かした・・・そう思っているに違いない


「小僧・・・手を貸せ」


迫り来る男達・・・数は6人


爺さんならなんてことない数字だろう・・・だが爺さんは男達を見ず僕を見て呟いた


本来なら男達の標的は僕になるはず・・・それは爺さんも分かっていて『手を貸せ』か・・・


「高いですよ?」


「ぬかせ。任せるぞ4人を」


んにゃろ・・・自分は2人だけしか相手しないつもりか・・・


やってやるよ・・・それで爺さんが何を企んでいるのか知らないけど・・・街の掃除に協力してやる──────

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