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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
408/856

404階 ファミリシア王国へ

―いざ農王国ファミリシアへ!・・・と思ったけど予定変更し僕達はゲートを使いエモーンズへと戻って来た


理由はシャリファ王国にいる時ほとんど戻って来れなかった為だ・・・さすがに最高責任者が長くいないとみんなも困っているはず・・・


「よおお前達!久しぶりに帰って来た・・・ぞ・・・」


「ナージさん!ムルタナから大工の増員依頼が来てますがどう致しますか?」


「送ってやれ。その代わり土魔法を得意としている魔法使いをギルドに依頼してこの街の大工の元へ送るんだ。人手不足で文句を言われるのはこちらだからな」


「ちょっと!予算も少しは考えてよ!依頼する日数によっては費用もバカにならないんだからね!」


「予算が足りないならクリット商会に融資を頼めばいい」


「いやよ!あのバカが商会の護衛を連れて行って放置している事をまたグチグチ言われるのが関の山・・・あ、お帰りロウニール」


会話を聞く限り旗色が悪いと感じてそっとドアを閉めようとしていたらジェファーに見つかってしまった


ジェファーに続いてセイムとナージがこちらに振り返る


「これは閣下お帰りなさいませ」


「辺境伯閣下お帰りなさい」


とだけ言ってまた話に戻る


どうやらお呼びでないようだ・・・僕はそのままドアを閉じサラと共に自分の部屋へと戻った


「随分と白熱していたわね」


「うん・・・僕を抜きにしてね」


「別にいいじゃない・・・それだけ3人が優秀って事でしょ?頼られたかったの?」


「そういう訳じゃ・・・」


僕がいなくて困っているだろうから助けてやるぜ・・・なんて思ってた訳ではない・・・断じて


「それで?エモーンズに立ち寄った理由は?まさか久しぶりに帰りたかった・・・とかじゃないわよね?」


「ちゃんと理由があるよ。まあここは立ち寄るくらいで本来の目的は王都だ」


「王都?フーリシア王国の?」


「うん。王都に行ったら別行動をしたいと思ってる」


「え?」


「ある事を頼みたい・・・それを頼めるのはサラだけなんだ──────」




その後ファーネを加えた3人で王都に向かいそこで別れた


僕は単身1人でファミリシア王国へ


そしてサラ達はある組織の動向を探る


その組織とは・・・『タートル』


「行く先々でトラブルに巻き込まれるのが魔力の影響とはね」


〘確実じゃないけどね。これまでにない状況だけど似ている状況は過去にいくつもあるわ〙


これまでにない状況・・・それは魔王が勇者以外に倒された事を指している


いつも通りの流れなら魔王が復活すると啓示を受けた勇者が各地で仲間を集めながら魔族や魔物を倒し成長し魔王を討つ・・・絵本としては安心して読める内容だ


でも今の状況はあべこべだ。その為に何が起きるか予想つかない状況になっている。その中でダンコの言う『似ている状況』と言うのが『魔族の台頭』


ラズン王国のパズズにシャリファ王国のベルゼブブ・・・恐らく他の国でも密かに動いているかもしれない


で、本来なら魔族に苦しめられている人達を颯爽と現れた勇者が救う・・・はずだった


けど少なくとも二つの国で起きた問題は僕達が解決してしまった為に勇者の出番はなし・・・まあこれは別に問題ではない


問題は悪循環だ


魔族が現れる、人々が恐怖する、大気中の魔力が濃くなる、魔族が強くなったり魔物が溢れる、そして・・・人間にも・・・


大気中の魔力が濃くなると魔族や魔物は力を増幅させる。それは知っていた・・・魔力を使える僕も恩恵を受けている1人だから


けど魔力の使えない人間にも影響があるとは知らなかった・・・その影響が悪意の増幅


魔が差したとでも言うのだろうか。普段はやらないような事をしてしまうと言うか・・・例えば喧嘩をしたとしよう。普段は殴り合いで終わるはずの喧嘩が殺し合いに発展してしまうような・・・そんな事が起こり始める


憎しみは憎悪に変わり、怒りは憤怒に変わる・・・シャリファ王国での出来事も大気中の魔力のせいだとダンコは言う


戦争がなかった平和な日々は終わり各地で戦争が勃発・・・そんな日が近い将来来るかもしれないと言うのだろ


だけど僕が真っ先に浮かんだのは戦争よりも一人の男の顔だ


レオン・ジャクス


魔王復活の際にはエモーンズで魔獣相手に人々を救ってくれた・・・けど彼はフーリシア王国の中で最大の勢力を持つ闇組合『タートル』のボス


地下に潜っていた『タートル』が行動を開始しようとする兆しはあった・・・それが魔王復活により有耶無耶になったが諦めた訳ではないだろう


となると大気中の魔力が濃くなった今・・・行動を開始する可能性は高い


何をしようとしているのか分からないけど起きてしまってからじゃ遅い・・・何とか事前に止めないと・・・


〘でも意外ね・・・サラに任せるなんて〙


「そう?地位も実力もあるサラ以外に適任者はいないと思うけど・・・」


色々調べるにはある程度の地位は必要だ。もちろん実力も・・・それに信頼のおける人物と言ったら真っ先にサラが上がった


〘適任だとしてもアナタがサラにやらせるのが意外って言ってるのよ。心配じゃないの?〙


「心配じゃないって言えば嘘になるけど・・・別に()を相手にする話じゃないしね」


〘へぇ・・・サラがあの人間達に何をされたかもう忘れたの?〙


「されてはない・・・されそうになっただけだ」


〘同じ事よ。たまたまアナタが助けたけど助けられなければサラはこの世にはいなかったかも・・・それでもアナタはあの人間の味方だと言うの?〙


「味方じゃない。敵じゃないだけだ・・・今はね」


確かにサラやケン達をあいつらは・・・でもそれは事実であって真実ではない


シャリファ王国でシャスに『事実と真実』について語ってたけど僕だって同じだ・・・レオン達の真実に目を背け事実のみで悪者と判断した


まあサラ達にした事は何があっても許されることではないけど・・・それでもレオン達がなぜ闇組合を組織して国に対して何をしようとしているのか・・・知るべきだと思った


だから僕は・・・サラに頼んで彼らの事を調べてもらう事にした


現在彼らは何をしているのか・・・そしてなぜ『タートル』となったのか・・・


「まっ、無茶はしないように言っておいたし僕もファミリシア王国とリガルデル王国を訪問したら合流するし・・・ファーネもいるしね」


〘あら?1人忘れてない?〙


「1匹な」


サキも用事を済ませたら合流する事になっている


万が一もないと思うけど・・・早目に終わらせて僕も合流しよう・・・レオン達が動き出す前に



僕は王都からゲートで移動を繰り返しファミリシア王国へ向かう


今度こそトラブルに巻き込まれないよう願いながら──────




ロウニールの領地内の村ケセナに4人の男女が辿り着く


門番に身分証を見せずに入村を許可された4人は一旦別れて各々が帰る場所へと歩み始めた


その4人の中の1人・・・ケンは古びた木造の家の前で立ち止まり一度見上げるとそのままドアを開け中に入る


「・・・ただいま」


「あら?お帰り・・・あんたエモーンズに行ったんじゃなかったのかい?」


台所に立っていた女性が振り返るとケンの姿を見て一瞬驚いた表情を見せ声をかける


「別にエモーンズで一生暮らすとは言ってないだろ?親父は?」


「まあそうだけどね。お父さんは畑仕事に出ているよ・・・何か用事かい?」


「いや・・・特に用事はないよ。しばらく村に居るから会おうと思えば会えるしね」


「?・・・しばらく村に居るなら今日の夜に会えるだろう?」


「数日居るつもりだけど宿屋に泊まるよ。ほら、スカット達とパーティー組んでるだろ?アイツらも家じゃなくて宿に泊まるって言ってたし」


ケンは荷物を下ろすとテーブルに座りうつ伏した


久しぶりの実家・・・懐かしい匂いが心地よく全身でその匂いを浴びる


「もったいないねえ・・・宿代だってバカにならないだろう?」


「それなりに稼いでるから心配すんなって・・・畑仕事の何倍もね」


「・・・そうかい。でもその話はお父さんの前でするんじゃないよ?お父さんだって本当は・・・」


「分かってるって。幼なじみが集まってそれぞれ将来冒険者として活躍するよう子供に分かりやすい名前を付けた・・・自分の子供達に夢を託すように・・・だろ?」


「まあね・・・あの頃は若かったって言うか・・・」


「照れるな照れるな気持ち悪い」


「誰に気持ち悪いって言ってんだい!!」


ケンは胸倉を掴まれ張り手を食らった瞬間に悟った・・・近接アタッカーの血は母から引き継いだものだと


「か、加減を・・・」


「あんた言っていい事と悪い事があるのがまだ分からないのかい!お父さんに言いつけるよ!」


いっそ言いつけてくれた方が大丈夫なような気がしてならないケンだったが口答えせずあえて頷く


「そ、それよりレミは?」


「レミ?・・・ふん!あんな子ウチの子じゃないよ!」


「えぇ・・・」


「冗談だよ。最近この領土を治める事になった貴族様がいるだろ?」


「そっちこそ言っていい事と・・・いや、なんでもない。それで?」


「その貴族様がこの村とムルタナ村を街にしないかって言ってきたらしくてね・・・んでムルタナは街になる事になったけどこの村は多数決で村のままでって事になってね・・・レミは『なんでよ村長達のハゲー!!』って言って村を出て行っちまってね」


「村長ってハゲてたっけ?」


「フッサフサだよ」


「だったよな・・・まあそれはいいとしてどこに行ったんだ?」


「エモーンズかムルタナだろうけど許可証がなくても入れるムルタナの方が可能性は高いと思うよ」


「ああ、確か向こうに知り合いがいたんだっけ?ならムルタナだろうな・・・エモーンズは許可証ないと入れないだろうし」


「ちょっと見て来ておくれよ」


「やだよなんで・・・待った待った!そうスグ叩こうとすんなって!・・・気が向いたら行くよ」


「ハア・・・可愛い妹が1人寂しく暮らしてるかも知れないのに冷たい兄だね」


「探しに行かない親に言われたくなブッ」


「何か言ったかい?」


「・・・言ってる途中で強制終了させられたよ・・・」


ケンが再び叩かれた頬を摩りながら睨みつけるが母は気にした様子もなく家事に戻る


「ご飯は?」


「・・・あるならもらうよ」


「あるわけないだろう!いつ帰って来るかも分からない放蕩息子の為にいつもご飯を余計に作るほどウチは裕福じゃないんだよ!食べるなら作るからはっきりおし!」


「食べる・・・食べさせて頂きます!」


「初めからそう言えば・・・どうしてこうウチの子達は本当に・・・」


ブツブツ言いながらも嬉しそうに料理の支度をする母を眺め改めて家に帰って来たと実感するケンだった──────

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