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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
402/856

398階 礼拝堂

「・・・化け物か・・・」


「正に鬼神の如く・・・ですね」


ラドリックの呟きにシャスが答える


ギリスとロウニール・・・そして援護射撃のように放たれる矢は他の者を寄せ付けないほど過激になっていた


「お前は何を悠長な・・・奴が何者か知らぬがお前も加わり仮面の男にトドメを刺して来い!それにバウムもなぜボーッとしている!」


「『アースドラゴン』が通用しなかったのです。それ以上の魔法はあの者を巻き込んでしまう可能性があります」


「巻き込めばいいだろう!何処の馬の骨とも知らぬ奴が死んだところでこっちの腹は痛くも痒くもないわ!」


「・・・あの者がラズン王国の嫡子だったとしても・・・ですか?」


「なに?」


「嫡子の名はギリス・・・あの者と同じ名前です。それにラズン王国の国王は代々背が高いと聞いております」


「背が高いって・・・あれは度を超えているだろう・・・それにあの肌の色・・・あれは・・・」


「分かりません・・・ですが私の知るラドリック様の想像しているモノは言葉を失い暴れるだけと認識しております」


「・・・ならあれがラズン王国の嫡子だったとしてどうして仮面の男を?」


「それこそ分かりません・・・私はてっきり・・・」


仮面の男についてある程度予想していたがラズン王国と関わりがあるとしたらその予想は外れている事になる


その思いがシャスの一歩を重くしていた


「・・・どいつもこいつも・・・シャス!命令だ・・・奴を殺せ」


「奴とは・・・」


「決まっているだろ!我々の行く手を阻む仮面の男だ!分かったらさっさと行け!!」


「ハッ!」


シャスは命令を受け歩き出す。その重い足を一歩一歩踏み出して


そして・・・


「『氷盾包囲』」


シャスが呟くとギリスと戦っていた仮面の男ことロウニールの周りが氷の盾で囲われる


「ああん?・・・矢といい盾といい・・・どうして俺様の邪魔をする!!」


「先に邪魔したのはそちらでしょう?こちらの用事はすぐ終わります・・・その後はご自由にどうぞ」


「なに!?お、おい!待てコラ!」


シャスはそう言い残すと氷の盾をすり抜けて囲いの中へ・・・そして対峙する・・・仮面の男と


「なんだ?・・・休憩時間でもくれるのか?」


「減らず口を・・・そんなに休憩が欲しいならくれてやろう・・・ただし会話をしている時間のみだ」


「会話?」


「貴様は何者だ」


「正義の味方」


「・・・貴様のやっている事が正義だと?」


「そうだ。お前は違うのか?」


「なに?」


「お前のやっている事は自分の正義に基づいているのか?女王の騎士」


「・・・盲目的に付き従うのならば貴様と同じ立場であっただろう。だが陛下に正義はない・・・この結果は私が自分の正義に従った結果だ」


「なるほど・・・まあそうだろうな・・・お前が正しいよ」


「ならばなぜ貴様は女王陛下を護る!万の軍勢を前にして・・・なぜ立ちはだかる!」


「言ったろ?それが俺の正義だからだ」


「どこに正義がある!民を執拗に苦しめる王にその資格はない!」


「そうだな・・・本当最低だよオタクの女王は・・・税を重くしたり逆らう者は捕らえたり街から追い出したり・・・更には人を呪い殺す?はっ、魔王すら裸足で逃げ出しそうな内容だよな」


「・・・貴様は何者だ・・・なぜそんな陛下を護るんだ・・・何が貴様の正義なのだ・・・」


「・・・ある人が言葉を借りれば視点の違い・・・かな?」


「視点の・・・違い?」


「民目線で考えれば何て女王だって思うだろうな。お前からの視点でもそうなのだろう・・・じゃあ女王からの視点は?」


「民を苦しめ味方を呪い殺す・・・恋人や両親までも・・・お前得意だろ?言えよ『なぜ』ってな」


「・・・なぜかは分からぬ・・・だが事実・・・」


「事実なんだ?民が苦しんでるから?女王の周りで人が死んでるから?てめえは万能の神か何かか?事実を見て真実を知る事が出来るって言うならそうなんだろうな」


「・・・真実だと?」


「ったく・・・いいか?人気なのいところで殺人があったとしよう。現場に駆けつけたお前が見たものは死んで倒れた者と血塗られた剣を持つ者だ。目の前の事実を並べれば犯人は?」


「・・・剣を持つ者だ」


「だよな?正解・・・じゃあどうする?」


「もちろん捕まえる」


「で?」


「『で?』とは?」


「・・・この国には快楽殺人者で溢れかえってるのか?理由があんだろ?」


「・・・理由がどうあれ殺人は罪だ」


「なるほど・・・じゃあ剣を持つ者の言い分が『突然自らを刺した人がいた。助ける為に剣を引き抜いた時に兵士達が駆けつけた』だったら?」


「・・・」


「お前が剣を持つ者だったら?冷静に『手が出るから剣は抜かない』とか仏頂面で言うのか?俺でも慌ててたら剣を抜いちゃうかもな・・・救う為に」


「・・・女王陛下がその剣を持つ者と言いたいのか?」


「さあな。人から言われてはいそうですかって言える問題でもないだろ?視点を変えて考えてみろよ・・・お前が女王の立場だったらなぜそんな事をするかを」


「考えたに決まっている・・・何度も何度も・・・何度も何度も考えた!陛下にも何度もお願いした・・・民は苦しんでいると伝えた・・・それでも陛下は変わらなかった・・・これ以上どうすれば良かったのだ!」


「分からない聞いてももらえない、なら殺しましょってか?殺人鬼かお前は」


「なら苦しんでいる民を放っておけと言うのか!」


「いや?」


「なっ!・・・貴様何が言いたい!」


「お前はお前の正義を貫き通せ・・・俺は俺の正義を貫き通す。お前は事実を元に剣を持つ者を罰し俺は真実を元に剣を持つ者を護る・・・それだけだ」


「くっ・・・話せ・・・貴様の知る真実とやらを!」


「やだね・・・知る権利がある者は真実に辿り着いた者か俺を心底信じてくれる者だけだ・・・お前らにその権利はない」


「・・・ならば戦うほか道はない・・・か」


「当たり前だ。人を好き放題殴っておいてタダで信じるを知れるほど世の中甘くない・・・護って見せろよこの国を・・・お前はお前の正義の元に・・・な」


「・・・最後にひとつだけいいか?」


「聞くのは自由だ」


「私が倒す事になる貴様の名は?」


「ロウニール・ローグ・ハーベス・・・ただのフーレシア王国の辺境伯だ」


「さて、たっぷり休憩も取れたし外にいるワガママ王子も限界だろう・・・さっさと続きをやろう・・・死ぬなよ女王の騎士」


「・・・望むところだ!『氷盾壊々』!」


会話は終わり戦闘は突如として再開された


2人を囲む無数の氷の盾から氷の塊が突き出しロウニール向けて射出される


「それしかないのか・・・『アースウォール』!」


「たかが土壁如きで無数の氷の槍を防げると思うか!」


ロウニールの出した壁を貫いて終わり・・・そう確信したシャスだったが氷の槍は壁に阻まれ次々と砕け散る


「なっ!?」


「俺のは特別製だ・・・貫きたいならもっと信念の籠った槍を出せ・・・次は俺の番だ──────」




「フレシア・・・なぜ上に?」


「奴が気になっているのは自分の思い通りの結末になるかどうかであろう?ならば下の状況がよく見える場所にいるはず・・・それは妾の部屋かもしくは・・・妾の部屋の上に位置する礼拝堂・・・」


彼女がそう言って重厚な扉を開けると彼女の予想通りそこに人がいた


「この礼拝堂の存在を知る者は実は少ない。使われる事が少なくなったからな・・・知る者と言えば献身的な信者か聖女か・・・掃除の為にここに入る侍女くらいのもの・・・そうであろう?侍女エバ」


「・・・じょ、女王陛下・・・なぜこちらに・・・っ!?」


フレシアを見て驚くエバは私を見て更に驚く・・・それもそのはず私は床に伏せているはずだからな・・・本来なら


「ここにいるサラより聞いたぞ?なんでも妾の味方をしていてくれたらしいではないか・・・孤立していると思っていたが味方はおったのだな」


「と、当然で御座います!女王陛下を敵視するなど・・・」


「ならばなぜ病にかからぬ?」


「え?」


「妾の味方なのだろう?彼のメイドであるサラまで唆し妾の味方になるよう言う程に献身的な。サラはそのお陰か知らぬが見事病にかかったぞ?」


「わ、私は別に・・・」


「二つに一つだ・・・そなたが嘘つきか病にかからぬ理由があるか・・・前者であれば殺すほどではないから先に謝っておこう・・・すまんな」


フレシアは言うと手のひらをエバに向けた


すると氷の槍が手のひらより撃ち出されエバに向けて飛んで行く・・・侍女のエバなら防ぐ事など出来やしない・・・けど・・・


「・・・酷いじゃない・・・せっかく味方してあげてたのに・・・」


「頼んだ覚えはない・・・いつだ・・・一体どうやって・・・」


エバ・・・やっぱり貴女は・・・


「好事魔多しって言葉知ってる?色々順調だった女王陛下・・・恋も周りの人間にも恵まれて・・・浮かれて隙だらけだったわよ?何を祈ってたか知らないけど毎日のようにここにお祈りに来ていたわね・・・その隙にちょっとしたプレゼントをしたの・・・願いが叶うようにね」


「妾の願いが何なのか知らぬのにようも言えたものだ」


「どうせ国が平和になりますようにとかでしょ?だから叶えてあげたの・・・いや、もうすぐ叶うの間違いかな?人間は強大な敵に挑む際に一致団結するでしょ?見てよ窓の外を・・・強大な敵である貴女を殺そうと虫が湧くように人間が集まっている・・・街から兵士じゃない人間まで来てるわよ?ひと目貴女の最期を見ようと、ね。そして最高のエンディングを迎えるの・・・貴女は死に新たな支配者が誕生する・・・その者の名は・・・」


「ベルゼブブ・・・か?」


「・・・どうしてその名を・・・」


「どうして妾をさっさと殺して妾になり代わろうとしなかった?」


「・・・私だって出来る事と出来ない事があるのよ・・・貴女の魂は奪えない・・・けど貴女を失脚させ新たに王となった者なら容易に奪える・・・ただそれだけよ」


悪びれもなく・・・しかしどうしてだ?なぜフレシアは無理で次の王なら奪える?魂とは・・・なんだ?


「・・・その為にダカンを・・・母上を父上を・・・皆を・・・」


「殺したのは貴女・・・私は手伝ったに過ぎないわ」


「なにを!」


「なかなかしぶとくてイライラしたわ・・・味方する者がいなくなれば自決でも何でもしてくれると思ったのに・・・まあでもそれもおしまい・・・いずれ貴女ガシャ守って来た者が城に雪崩込み貴女は呆気なく殺される・・・どんな無惨な死が待っているかしらね・・・想像するだけでゾクゾクするわ」


「跳ね橋が下り十二分に時間は経った・・・それにしては来ないな」


「・・・何者かは知らないが時期に限界は来る・・・」


「そうかしら?貴女の予想は最近外れまくってるんじゃない?例えば私がここにいるって事とか」


「・・・サラ・・・なぜ平気でいられる・・・媒体を通して確実に・・・」


「魔力を送り込んだ?そうね・・・激しい痛みをありがとう・・・でももう貴女の魔力なんてこれっぽっちも残ってないわよ?」


「・・・っ!まさか同族の誰かが・・・いやしかし・・・」


「誰だっていいでしょ?それより陰でコソコソと・・・やる事が陰湿なのよハエの女王様?」


「っ!貴様!!」


もうエバの面影もない醜悪な顔・・・本当信じて損したわ・・・油断しないつもりだったのに・・・


「文句があるならかかって来なさい・・・受けた痛みを数倍にして返してあげるわ──────」

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