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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
40/856

37階 ダンジョンと村の変化

「やっぱりやりやがった・・・大丈夫かね?あの村長で」


「散々街になる街になるって言ってたのはギルド長では?それがなった途端に『やりやがった』はどうかと・・・」


エモーンズ村は街になる


村長がそう宣言し村・・・いや、街は大騒ぎ


いずれはなるだろうと思っていたけど突然だから騒ぎになるのも仕方ないだろう


「これから大変だぞ?宣言してから1年・・・金が足りなければ国から取り上げられちまう・・・何もかも、な」


それが国の条件


村の人口の上限は1000人と決められており街は桁違いの10万人・・・領地の問題もあるから10万人に達する事はないだろうからほぼ上限なしになると言っていいだろう


では全ての村が街と名乗ればいい・・・という訳にはいかない


その理由は・・・管理能力


人口が増えれば増えるほど問われる能力・・・人口が増えれば栄える可能性は高くなるがその分犯罪発生率も上がる。それに食料不足や水不足などの問題も出て来る。更には街の外の事も考えないといけなくなり、例えば他の街との交易をスムーズに行う為に道を整備したり、安全の確保をしたりとやる事は盛り沢山だ


それらを行うには管理能力と資金が必要になる


そこでどこもかしこも村から街へと簡単にはなれないように国はある条件を出した


村から街になった場合、宣言から1年後に国に100万ゴールドを納める、というものだ


「お金はあるのでしょうか?これから出費もかさむというのに・・・」


「ない、だろうな。ギルドは国営だしいくら儲かっても街には金が入らねえ・・・かと言って冒険者が街に落とす金なんてたかが知れてる・・・ダンジョンが出来る前の村の状態で大金を稼げるかって言ったらそうでもないだろうしな」


「となると税率を上げるほかないのでは・・・国はなぜそのような大金を納めるよう条件を付けてるのでしょう・・・」


「建前は管理能力を確認する為・・・本音は欲しいのさ・・・金の成る木が、な」


1年で100万ゴールド納められなければ領主失格とみなされ街の運営は国がする事になる。そうなれば既存の店など軒並み潰れてしまうだろう・・・国と懇意にしている商会が街を牛耳るからだ


「なぜ村長はこのタイミングで・・・払えなければ苦しむのは本人だけではなく村人も・・・」


「その村人の為を思って・・・だろうな。噂程度には聞いてるかも知れねえがこの村に厄介な奴らが来る・・・それが見切り発車させた理由だろうよ」


「騎士団・・・ですか?治安維持の為では?」


「さあな・・・ただダンジョンがあるとはいえ村に騎士団の連中はやり過ぎだろ?だとすると何か裏があるって考えるのが普通だ。例えば武力で権力を握っちまおうと企んでる・・・とかな」


「それはあまりにも・・・」


「考え過ぎか?ただ村長より騎士団員の方が地位は上だ。騎士団が来れば村長は逆らえず言うことを聞くしかない・・・が、領主となれば別・・・明確には決められてないが街の領主と騎士団員は同格扱いだからな」


なるほど・・・それで村長は焦り強引に・・・いや、強引かどうかは分からないか・・・もしかしたら貯えがあるのかもしれないし


「それにしても100万ゴールドはかなりの大金ですね・・・個人で貯めるとしたらそれこそ途方もない時間が掛かりそうです」


「ダンジョン入場料が100ゴールド・・・お前さんが後30年毎日ダンジョンに入ればギルドには100万くらい貯まってる事になるな・・・チャレンジしてみるか?」


「・・・それは30年結婚するなという事ですか?」


「に、睨むなよ。冗談だ」


「・・・それで?今日は何の用で?まさか雑談に付き合うだけ・・・ではないですよね?」


「まだカミさんと子供を呼べてないから寂しいんだよ」


「・・・1階でケン達を待たせてるのでもう行きます」


この・・・最後はノロケか!


私なんてあれから1回もローグ様に会えてないと言うのに・・・いっそ他の冒険者みたいに窮地に陥ってみるか・・・話を聞くとほとんどが死にかけている時に突然出て来るみたいだし・・・


「10階が出現したぞ」


考え事をしながらドアノブを触った瞬間に後ろからフリップはそう呟いた


10階?私が振り返るとフリップはニヤリと笑う


「今朝方ゲート部屋に現れた・・・出来れば調査して欲しい」


「もしかしてそれが私を呼んだ理由ですか?」


「そうだ。まあ、気乗りしなけりゃ別にいい・・・挑むのは自己責任だからな・・・ただ10階となると・・・」


「ボス部屋・・・ケン達と話して行くかどうか決めます」


「そうしてくれ・・・それと──────」








「10階!・・・いいッスね!行きましょう!」


「訓練所で習得した魔法を試す時ね」


「10階毎にいると言われてるボスが待ち構えてる可能性があるのですね・・・少し不安です」


「え?た、叩かないよな?な?」


「ボスはあくまで様子見でいいと思う。だいたいボス部屋の手前が安全地帯になっていて魔物も入って来ない・・・そこからどんなボスか様子見つつ行けるなら行く、帰るなら帰る・・・その辺の判断はリーダーであるケンが決めればいい」


「・・・今更ながら俺がリーダーっておかしくないッスか?」


「私はリーダーになる気はないぞ?」


そういえばもうかれこれ半年以上パーティーを組んでいるな・・・最長記録更新中だ・・・それでもいつか、と考えてしまうのは悪いクセか・・・ケン達がそんな事をするはずもないのに・・・そして私はそんなケン達に・・・


「じょ、冗談ッスよ・・・じゃあ早速行きましょう!ボスが待つ10階に!」




ギルドで受付を済ませるとゲート部屋から一気に9階へ


もう既に9階は何度も来ていたのであっさりと10階に降りる運びとなった


これまでの階層と少し雰囲気が違う・・・そう肌で感じてるのは私だけではないみたいだな


「・・・なんか・・・寒くないか?」


「気のせい・・・じゃないみたいね。深いから?」


「ここまで急激に変わらないのでは?・・・警戒して進んだ方が良さそうですね」


「今日はこの辺にして明日にしようぜ・・・俺の勘が先に進むなって言ってるぜ?」


まあスカットの一旦戻るというのも手だがな・・・もう10階のゲートは使えるから万全な体制で挑める・・・けど・・・


「行くぞ!・・・ボスは目の前だ!スカット『先行透視』を!」


「うへぇ・・・マジかよ・・・」


提案を却下されたスカットが魔技『先行透視』を使ってフロアの探査を開始した


私は私で風を送り探ると・・・やはりあるな・・・ボス部屋が


「・・・途中に少し分かれ道はあるけどほぼほぼ一本道だ。魔物は・・・腐った奴と熊と・・・ハチ?」


「グールにビックベアにボイズンビーだな。上の階とは違い使い回しではなく新しい魔物・・・まあケン達なら何とかなる相手だ」


「うっし!とりあえずボス部屋まで一直線に行くぞ!サラ姐さんは見てて下さい!」


「分かった・・・一応各魔物の特徴だけ伝えておく。グールは痛みを感じないから傷付けても怯んだりしない。その点に注意すれば特に問題はないだろう。ビックベアはデカいだけだ・・・少し殴られると痛いが、な。ポイズンビーはその名の通り毒を持つハチ・・・尻尾の毒針に気を付けろ・・・以上だ」


「はい!!」


全員が顔を引締め10階に挑む


最初は今までとの雰囲気に戸惑い動きは硬かったが、徐々にいつものペースに戻ると問題なく進み、とうとうボス部屋前の安全地帯に辿り着く


「・・・ハア・・・ハア・・・デカいだけって・・・サラ姐さん冗談キツいッス」


「あのハチ何なのよ・・・魔法躱しまくって・・・」


「もうグールは嫌です・・・あの感じ・・・ううっ・・・」


「か、帰ろう・・・うん、帰ろう!」


「あんなのはデカいだけだ。それと下に降りると躱すどころか魔法を跳ね返す魔物もいるぞ?グールは・・・まあ見た目が、な」


安全地帯に入ると全員すぐにへたり込む


下に降りれば降りるほどマナの消費は多くなるし体力も削られる。緊張感も増してるし限界に近いか


「さて・・・どうする?ボスに挑むなら休憩してからでもいいが戻るならすぐに戻った方がいいぞ?このダンジョンは魔物の沸くスピードが異様に早い・・・休んでいるとまた同じように魔物が居る可能性が高い」


稼ぐにはいいダンジョンだが・・・余裕のない階層で長居するのは自殺行為になる


沸くスピードを考えるとすぐにでも決断した方がいいのだが、果たして・・・


「・・・」


多分7階の時に経験した対リザードマンの事を思い出しているのだろう


ボスは道中な出て来た魔物より強い・・・一旦引くのも手だが・・・


一定の冒険者はボスに挑まない


それはボス部屋は特殊で中に入るとそのボスを倒すまで扉が閉じてしまうからだ


つまり勝利か死か・・・逃げるという選択肢は奪われてしまう


もし簡易ゲートがあれば逃げれるかも知れないがあれから一度も出ていない・・・他の冒険者が見つけたという情報も聞いてるから運がなかったのだろう


命を懸ける冒険者でも命は惜しい


わざわざ危険と分かっているのに立ち向かうには勇気がいる・・・それも自分の命だけではなくパーティーメンバーの命も関わっているなら尚更だ


「ケン・・・私はアンタに任せるわ」


「マナは温存出来ましたし・・・私も任せます」


「・・・えっと・・・あー・・・うん」


「・・・サラ姐さん・・・ボス部屋は閉まったら最後・・・討伐するまで出られないって本当ッスか?」


「私は試した事ないがそう聞いた。ダンジョンによって違うかも知れないしなんとも言えないが・・・そう思ってた方がいいぞ?」


「・・・」


行くか引くか・・・これがもしかしたらこのパーティーの分岐点になるかもな


「サラ姐さん・・・中の魔物は何か分かります?」


「・・・スカットは?」


「その・・・なんか弾かれちまって・・・」


「だ、そうだ。私は分かると思うが・・・どうする?まあ、部屋の扉を開けたからといって入らないといけない決まりはないからな・・・自分の目で見てみたらどうだ?」


技量が上がればスカットも見れるようになるだろうが今は無理みたいだな。私はもう確認済み・・・だが、ここで私が言うのもなんだか違うしな


「・・・開けて見てみるッス!・・・もし手に負えなさそうなら・・・引きます」


「それがいいかもな」


扉を開けてもボスである魔物はボス部屋から出ては来ない。が、開けて魔物を見てから引いてしまうとそれ以降ボスに挑めなくなってしまうパーティーが後を絶たないらしい


一度引いてしまうと『いつなら行けるのか』と迷いが生じ、結局いつまで経っても行けなくなる・・・だが無理して命を落とすなら・・・そっちの方が断然いい


「スカット・・・そっちを頼む」


「いきなり出て来て襲って来ないよな?」


「ない・・・と思う」


「マジか・・・やだな・・・」


そう言いながら2人で扉を開くと部屋は見渡すほど広く、中央にその魔物は居た


「・・・トロール・・・」


身の丈3mを超す魔物・・・トロール


手には棍棒を持ち部屋の中央で私達を今か今かと待ち続けていた


「ト、トロールって中級じゃ!?」


「だな・・・でもリザードマンよりは低かったはず・・・」


「なかなか・・・強そうね・・・」


「見た目がちょっと・・・」


「トロールは中級の下位・・・まあサイクロプスの下位互換といったところか・・・確かにリザードマンよりも下だ」


私が倒したサイクロプスよりは弱い・・・けど油断すれば例え上位のランクの者でもやられるほどには強い。ケン達なら・・・ギリギリだな


「・・・」


目を閉じ悩むケン


私に意見を求めないのは流石だな。まあ聞かれたところで答えるつもりはないが・・・


「・・・行こう!行って次に進むんだ!」


「うん!」「はい!」「いや、11階はまだ・・・」


「行くぞぉ!」


若干1名腰が引けてるが、ケンが勢いよく部屋に飛び込むと残りの3人も続く。私も扉が閉まる前に部屋の中に入り改めて見渡してみた


円形状の部屋・・・まるで闘技場のような部屋の中央に佇むトロール


私達が部屋に入ったのを確認するとゆっくりとその巨体を揺らしこちらに向かって来る


「・・・サラ姐さん・・・見てて下さい・・・俺達の戦いを!」


「ああ、見せてもらおう」


端から私に頼るつもりはないらしい・・・危なくなったら少し手を貸すつもりだけど・・・


「俺が切り込む!相手の動きに合わせてマホとスカットは攻撃してくれ!行くぞ!!」


ケン達のボス戦が始まった──────

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