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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
398/856

394階 もう1人の王

〘膝をカクカクさせるのやめてくれない?気が散るわ〙


「わざとやってる訳じゃない・・・てか別にそっちが揺れたりはしないだろ?」


〘揺れはしないけど気が散るのよ・・・膝の揺れと精神の揺れが連動しているのか知らないけどね〙


ダンコに言われて僕は膝の上に手を置いて強引に揺れを止めた


異変に気付いた騎士達があの部屋に突入した来たのは女王からあの言葉を聞いた後だった


気配を感じたので間一髪でゲートを使い逃げる事は出来たのだが・・・


「ダカン・・・何考えてんだ・・・最後の最後であんな事言うなんて・・・」


〘『大嫌い』・・・なかなか言える言葉じゃないわね〙


「だな・・・嘘でも言えないよそんな言葉」


結局女王から聞き出せたのはそれだけだ・・・恋人に最後に言われた言葉・・・それのせいで女王は変わってしまった・・・のか?・・・いや今はそんな事はどうでもいい・・・あの病を治す方法を探し出さないと・・・


「なあダンコ・・・魔族の仕業だとしたらサラに何をを・・・」


〘さあ・・・いや、多分アイツなら・・・〙


「アイツ?」


〘魔族の中に人間を外的ではなく内部から攻撃して死に至らしめる魔族がいる・・・そいつの手段ならサラがなってもおかしくないかも・・・〙


「内部を?一体どうやって・・・」


〘サラやセシーヌ、それにペギーにシーリス・・・彼女達のマナ量が急激に増えた理由は説明したわよね?〙


「うん・・・眷族化しているからでしょ?」


〘そう・・・従うのではなく慕うという形で彼女達は眷族化した・・・アナタと彼女達は見えない繋がりが出来たの。慕う気持ちが強ければ強いほど強固になる繋がりをね〙


「それとどういう関係があるんだ?」


〘・・・その繋がりを利用して攻撃するのよ〙


「え?」


〘媒体を利用してその媒体と繋がりを持つ者を攻撃する・・・そうやって影から人間を混乱に陥れる魔族・・・そいつの名はベルゼブブ・・・蝿の王と呼ばれている魔族よ──────〙




ベルゼブブ・・・蝿の王か・・・てかまた虫かよ・・・


ベルゼブブは媒体となる人間を選定しその者と同調した者を内部から攻撃する。攻撃方法は単純で媒体と同調した者の中に魔力を送り込む為の繋がりを作る。魔力を送り込まれた人間の体内ではマナとその魔力の衝突が起こるらしい・・・それが痛みとなり人によってはショックで即死する可能性もあるのだとか・・・魔力なら核でマナに変換出来るのではと思ったが大気中にある魔力と違い魔族の発した魔力は核では変換出来ないのだと


まんまそのままの症状だ・・・つまり女王は魔族とは分からないまでも媒体にされた事に気付きわざと同調されないような態度を取っていた?・・・それなら辻褄が合う・・・って事は女王を元に戻す必要はないって事か・・・彼女は変わったんじゃない・・・変わらざるを得なかっただけだから・・・


「てかダンコ・・・最初から分かってたんじゃないのか?ベルゼブブの仕業だって」


〘話が全て本当ならベルゼブブと確証が持てたかもね。でも人間は都合のいい嘘をつくじゃない?話を聞いても信用は出来ないわ。それに他の魔族の事は知ってるけど力に関してはあまり詳しくないし・・・サラを診てそうかもって思った程度よ〙


「じゃあ話が全て本当だったと仮定したらベルゼブブってすぐ分かった・・・そういう事だよな?」


〘ええ〙


マジか・・・いやでも思い込みで動くと痛い目見るかもしれないし・・・


「じゃあ改めてベルゼブブの攻撃ならサラは今のところ大丈夫・・・なんだよな?」


〘大丈夫よ。ただし抵抗出来るマナがなければ魔力の攻撃に晒されて死に至るかもしれない・・・まっ、アナタの影響でマナ量は多いし他の人よりは余裕があるはずよ〙


とは言っても不安だ・・・どうにかして早く解決しないと・・・でもどうやって?


「ベルゼブブ・・・そいつを倒せばサラは治る?」


〘多分・・・ね。送られてくる魔力の供給源を断てば戻るはずよ〙


なら最優先はベルゼブブを見つける事か・・・パズズの時はサキに見つけてもらったしまた・・・


〘言っとくけどパズズみたいに見つけられるとは思わない事ね。媒体を通じて魔力を送るなら姿を晒さなくても出来るから〙


「じゃあどうやって探せと?」


〘方法はないわ〙


ふぅ・・・落ち着け・・・方法がない?・・・


ならいっそうこの国の人間まとめて・・・


〘ロウ?アナタ魔王にでもなる気?〙


「・・・え?」


〘また怒りに支配されそうになってたわよ?私が『サラは大丈夫』って言うまで怒りに支配されてしまってたのを忘れたの?〙


そうだった・・・エバに案内されて部屋に入った時・・・下手したら看病してくれてた人達をこの手で・・・


「大丈夫・・・もう大丈夫だ・・・」


沸き起こる憎悪が抑え切れない・・・それでも無理矢理何とか平静を保つ


ベルゼブブを倒せば解決する・・・その望みがなければ狂ってしまいそうだ


目を閉じサラを思い浮かべ心の中で何度も呟く


きっと大丈夫・・・きっと大丈夫・・・何とかしてみせる・・・何があっても助ける・・・絶対に・・・助ける・・・


「ふぅ・・・ベルゼブブがいるとしたら女王の近く?」


〘そうね・・・ただ力の範囲までは知らないわ・・・城の中なのか城周辺なのか街まで及ぶのか・・・街まで及ぶのなら逆を言えば街からも城の中に干渉出来る・・・範囲が広ければ広いほど見つけるのは困難ね〙


「ダンコの予想でも構わない・・・ベルゼブブの力の範囲はどれくらいだと思う?」


〘力を発揮するには正体を現す必要があるの。つまり人間に化けてたりすれば範囲は狭まる・・・人間に化けてれば城の中に居ると思うわ〙


「人間に化けてなければ街からでも可能かもって訳か。蝿なんてそこら中にいるし化けてない可能性の方が高いかもな」


〘ちなみにサイズは人間と同じかそれ以上よ〙


「間違いなく化けてるな、うん」


サイズを先に言えよ・・・それにしても巨大な蝿か・・・実際に見たらちょっと引くな


てかそうなると城内に人間に化けた魔族がいるって事か・・・いやたまたまサラがいる時に来た可能性も・・・虱潰しに探そうにも城に気軽に行ける状況ではない・・・となると僕の代わりに探してもらうしかないか


聖女達はサラで手一杯だろうしエバはもし魔族を見つけてしまった場合に殺されてしまう可能性がある・・・となると頼れるのはただ1人・・・城の中を自由に動けて宮廷魔術師候補に並ぶ実力があったとされる女王・・・彼女なら・・・


「もう一度女王に会いに行くか・・・」


〘警戒されているんじゃない?賊が忍び込んだ後でしょ?〙


「賊言うな・・・彼女は人を近付けないさ・・・これ以上呪いにかけたくないって気持ちが見て取れたからね──────」




城内に潜む魔族を探せ・・・か。簡単に言ってくれる


何を必死になっているのだか・・・たかだか使用人1人の死で何を・・・


人の死など何度も見て来た


その度に思いを馳せる・・・この者は私をどう思っていたのかと


生前は親しくしていた者も結局は嘘偽りで塗り固められていたのではないか・・・そう考えると自然と死に行く者を遠ざけるようになった


『あんなに親しくしていたのに冷たい人だ』


誰かが言った言葉が耳に入る


そう思われても仕方のないこと・・・けれど私は怖かった・・・またあの言葉を言われるのではと考えると・・・


呪いは私を蝕み続ける・・・誰もが嘘つきに思えてしまう


あれだけの気持ちを受け止めてくれていたあの男がそうなのだ・・・きっと誰しもがそうだと思い込んでしまう


もう誰も信じない・・・もう誰とも関わらない


もう二度と・・・心を開かない


魔族を見つける?いっその事私が魔族であれば良かった・・・そうすれば私が死ねば全てが終わる・・・そう全てが・・・



「失礼します!陛下・・・ラドリック様から近日中に大規模な訓練をしたいと要望がありその許可をいただきに参りました」


「シャスか・・・そのラドリックはどこにいる?」


「・・・それは・・・」


とうとうその時が来たか


彼奴ならもう少し早く動くと思ったが・・・やはり懸念しているのはリガルデル王国・・・そこに赴き交渉は成った・・・という訳か


「まあよい奴も多忙なのだろう。近日中とはいつだ?」


「・・・3日後を予定しております」


「ふむ・・・魔物が外を闊歩している昨今怠けた兵士を鍛え直すには必要だな・・・許可する」


「ハッ!・・・」


「どうした?他に用があるのか?」


「・・・いえ・・・」


シャスは甘いな・・・この期に及んで躊躇うか・・・


「妾も見届けてやりたいが兵の訓練など露ほどにも興味無い・・・当日はこの部屋の窓からでも覗いていると伝えてくれ」


「・・・陛下・・・」


「なんだ?」


「本当に・・・よろしいのですか?」


「なんだ?兵の訓練は必要ないと思っているのか?」


「違います!・・・その・・・実は」


「分かっておる。この部屋で見ておるから素晴らしい成果を挙げよ・・・この国の未来がかかっておるからな」


「っ!・・・陛下・・・」


王に仕える者として・・・国を守る者として・・・どちらを取るか迷っているな


答えはとうに出ているようだが忠誠心が邪魔をするか・・・


「そうだ・・・罪人でも並べてみたらどうだ?訓練と言えど的があった方が身は入りやすかろう?罪人など作ろうと思えばいくらでも作れる・・・そうであろう?シャス」


「・・・いえ・・・必要ありません」


「そうか・・・残念だ。見ている方もそっちの方が楽しめそうだったのだがな・・・つまらない訓練になりそうだ」


「・・・失礼します」


ようやく決心が着いたか?甘い男だ・・・その判断の遅さが民を苦しめていると言うのに・・・


反目していたハゼンとラドリックがようやく結託したのだ・・・この機会を逃せばあと数年は苦しむことになったであろう


3日後か・・・一応は探ってみるが私と目も合わせない者達だ・・・その中から見つけるのは困難であろうな


恨むなら私を恨め・・・全ての恨みを一身に受けて逝こうぞ


そしてこの国は生まれ変わる・・・呪われた私が逝く事により生まれ変わるのだ


惜しむらくは・・・いや、考えまい


許せとは言わぬ


私と共に逝ってくれ──────

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