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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
396/856

392階 足止め

移動中のラドリックを見つけるのは簡単だった


関所から王都へ最短距離で行こうとすると通る道は限られているからだ


どれくらい進んでいるかおおよその見当をつけてゲートで移動し続けると馬に乗る5人組を発見した


さて・・・はたして彼らがラドリック一行なのか・・・聞きても素直に答えてくれるとは限らないし・・・うーん・・・



「どうどう!止まれ!・・・何奴だ!」


念の為に仮面を被り彼らの前に立ち塞がると手綱を引いて止まると剣を抜き僕に向けた


「えっと・・・物取り?」


「疑問形で返すな!貴様俺が誰だか分かっての狼藉か!」


うん、もう確定だね


名乗らずとも偉そうな感じでバレバレだ・・・偉そうなだけなら貴族って可能性もあるけど・・・


先頭の男の筋肉質な太い腕、僕に向ける長剣、マントの下に見え隠れする軽鎧・・・そもそも貴族なら馬車で移動するだろうしコイツはラドリックのはずだ


一応名乗らせる為にちょっと仕掛けるか


「リガルデル王国は楽しかったか?」


「っ!・・・貴様何者だ・・・」


「ラドリック様!お下がりください・・・ここは私達が」


周囲を警戒していた4人がラドリックの前に出る


多分僕が何も持っていなかったからさほど警戒していなかったのだろう・・・しかしリガルデル王国という名前を出した時点で僕に対する警戒は跳ね上がる


魔王国と呼ばれているクセに・・・無手だからと言って無警戒過ぎやしないか?


「派手に驚け!アーステンタクル!」


地面に触れマナを流すとラドリック達の足元から土の触手が躍り出て馬上の人間・・・ではなく馬の脚に絡みつく


嘶きと共に馬達が立ち上がりラドリック達を振り落とすとそのままどこぞへと逃げ去って行く


「ぐぅ!・・・あ、待て!止まるのだ!!」


落馬して腰を打ち付けたラドリックは逃げる馬を見て慌てて馬を止めようとするが恐慌状態の馬が言う事を聞く訳もなくあっという間に五頭の馬は遥か彼方へと行ってしまった


「おのれ・・・よくも・・・」


「ちょっとイタズラのつもりが馬逃げちゃったね・・・ごめん」


「???・・・イタズラだあ?ごめんで済むか貴様ぁ!!」


おぉ・・・一応大将軍って肩書きを持つだけある・・・凄い迫力だ


戦う気は全くないので後退りそのまま逃げ始めると背後で『追え追え!』と怒鳴り散らしている


僕はすぐに近くの林道に入り暗歩で木の上へ


あとを追って林に入って来た大将軍の護衛騎士と思われる人達は僕の姿を見失いキョロキョロするばかり・・・この一瞬で木の上にいるとは思わず林の中を分かれて探し始めた


僕を探すのはすぐに諦めるだろうけどここから歩いて次の街に行かなきゃならないし1日か2日分は時間稼ぎとなっただろう


林の外で仁王立ちして騎士達を待つラドリックを見た後、僕はゲートを開き王都へと戻った──────





一方その頃サイエスでは・・・


「ウォーレンさん!受付嬢に飯を奢り続けて一週間・・・ようやくアイツらの行き先を聞き出す事が出来ました!」


ジンタが店に駆け込むと1人食事をしていたウォーレンが顔を上げる


「・・・何の話だ?」


「えぇ!?ウォーレンさんが調べろって言うから・・・」


「冗談だよ冗談・・・で?あの貴族とメイドは一体どこに行ったんだ?」


「それがですね・・・驚かんで下さいよ?実はアイツら・・・王都に向かい女王に会いに行ったらしいっす」


「・・・女王様に?」


「ええ・・・何か各国を回って?王様達に会ってる見たいっすね」


「そうか・・・確かフーリシアの辺境伯とか言ってたもんな・・・遊びじゃなくて仕事でこの国に来てやがったのか・・・」


「どうします?やめときます?」


「なんでだよ・・・面白ぇじゃねえか・・・女王様の前であの貴族に赤っ恥かかせてやる」


「いや男の方じゃなくて女の方を・・・え?」


「・・・なんだてめえ?」


ウォーレンとジンタが話しているところに店にいた客の1人が無言で近付く


ウォーレンが睨みを利かせるとその客は勝手にウォーレンの座っているテーブルにつき肘を乗せて身を乗り出した


「今の話・・・詳しく聞かせてくれ──────」





宿の部屋に戻るとまだ時間があった為に外に出た


サラから来る夜の連絡はまちまちだが大体日が落ちた夕食後くらいの時間になる


その時間には必ず1人になっていないとダメだけどそれまでの時間は基本女王の調査を行っていた。少しでもサラの助けになるように


本当は僕が頼まれたのにいつの間にかサラに任せっきりに・・・せめて何か力になれればと思っているけどなかなかそう上手くはいかないな


聞く人聞く人女王の悪口ばかり・・・元に戻す為に必要な情報など悪口の中にあるはずもなくただ僕の中の女王の評価が下がっていくばかりだ


どこかヒントになるようなコトを言ってくる人は・・・


「あっ!貴族じゃねえか!」


おおう全くヒントを持ってない奴らに遭遇してしまった


「貴族と呼ばないで下さい。ロウニールです」


「別に良いじゃねえか・・・それよりあの巨乳メイドのサラはどうした?もしかしてエロい事強要して振られブッ」


「オホホホホ!申し訳ありませんロウニール様!コイツちょっと頭おかしい子なんで」


「エッエロい事!?」


「・・・」


ハア・・・白昼堂々何を叫んでいるんだか・・・サラがいたらボコボコにされているぞ?


「・・・とりあえずお店にでも入りませんか?奢りますよ?」


僕が誘うとガシャ達4人は喜んで頷いた


あまり女王にいい感情持ってなかったようだけど一応話だけでも聞いてみるか・・・ガシャの今の発言で注目を集めてしまっているから早くこの場を去りたいって言うのが本音だが・・・




「はあぁ?自分のメイドを城で働かせてるだぁ?」


サラがどうしたかしつこく聞くので答えたら口に入れた物を撒き散らしながらガシャが叫ぶ


「それはちょっと・・・どうなんですかね?」


「ああ・・・可憐な花が萎れていくのが見える・・・やはり僕という水を差すべきだったか・・・」


「・・・毒を差してどうする・・・」


「誰が毒だ誰が!」


ハンドの的確なツッコミに怒るテリー・・・最近ほとんどサラと2人っきりだったからこういう雰囲気は久しぶりだな


「で?メイドに見捨てられた哀れな貴族様は街で何してたんだ?」


「見捨てられてませんて・・・彼女は勉強熱心なので私の為に侍女の仕事を学びに行ったのです。私は彼女が帰って来るまでこの街で待っているのですがやる事がなく街を散策していただけです」


「・・・そうよね・・・そう思いたくもなりますよね」


「記憶は美化されるもの・・・去り際の花はさぞ美しかったでしょうね・・・そして儚かったはず・・・」


「諦めが肝心・・・もしこの街を去る時は何かの縁だ・・・護衛を引き受けてやったらどうだ?ガシャ」


「金さえ貰えりゃ護衛でもなんでも受けてやる・・・まあなんだ・・・値引いてやらねえ事もねえ」


あれ?僕同情されてる?


「女性は彼女一人じゃないですよ?魅力的な女性なら他にも・・・」


誘惑されてる!?


「お花畑に行くといい・・・ただし摘むのはダメだ愛でるのみ・・・そうすればいずれ花は開花し受粉してくれることだろう」


なんだろう・・・凄いムカつくぞ?


「この街の娼館はあまり期待しない方がいい。行くなら王都から離れた所が吉だ」


行かないし!・・・コイツら人をなんだと思っているんだ・・・一応曲がりなりにも辺境伯だぞ?貴族が娼館に行くなんて・・・ん?行くのか?



それなら何故か親身になって僕の世話をしようとするガシャ達・・・初めの印象とはガラリと変わり結構いい奴らだと思いながら話を聞いていた


「・・・しかし俺達も人の心配している場合じゃないかもな・・・」


「・・・と言うと?」


「最近色々な事が起きまくってるからな・・・Sランク共は王都を離れるし魔物はダンジョンの外を我が物顔で歩きやがるし国は・・・」


「ガシャ!」


「別にいいだろ?貴族さんもそれくらい分かるさ・・・この国がとっくに終わっている事なんてな」


「国が終わっているなんて穏やかではないですね・・・この国の王であられる女王様が心改めればまだ平気なのでは?」


「女王が心改める?はっ、どんな奇跡だよそれ。ここ数年悪くなるばかりで人も離れていっちまってる・・・歯止めが効かない状態で改心するたぁ思えないね」


女王に近い者は全て病に倒れたんだっけ・・・となると今城に残っているのは近くない者・・・ただ近いと近くないって実際どんな基準なんだろ・・・距離・・・ではないよな?親しさって事か?・・・いや、病の事は一旦置いておこう。数年出てないらしいしもう出ないかも知れないし・・・


「そう言えば王都にいたSランク冒険者の方はなぜ王都から出て行ってしまったのですか?」


もしかしたら病の事を危惧して王都から離れたとか?Sランク冒険者なら上との繋がりもあるし色々聞いている可能性もある


「さあな。ふらりとどっか行っちまったよ。おかげでこっちはいい迷惑だ・・・本来ならこの前の調査も『雷弓』が行けばすんなり終わったのによぉ」


「『雷弓』・・・ケティナ・・・そんなに凄いお方なので?」


「凄いなんてものじゃないです!後衛アタッカーにも関わらずソロ冒険者!ダンジョンで不利と言われている弓を片手に上級魔物をバッタバッタと倒す様は適性がない人も弓を手に持つレベル!」


「そういやフランも一時期弓を持ってたな・・・1mも飛ばなかったけど」


「うるさい!・・・ゴホン、とにかくケティナ様は後衛アタッカーの・・・ううん、全女子の憧れの的・・・ああ、お姉様・・・抱かれたい・・・」


ゲッ・・・フランは目をトロンとさせて天井を見上げた・・・『抱かれたい』はヤバいだろ


「あー、こりゃダメだ。完全に自分の世界に行っちまってるな。とにかくまあ凄いのは俺も同感だ・・・国の犬・・・いや、宰相の犬にならなきゃ俺も尊敬していたかもな」


「宰相の犬・・・ですか?」


「噂だよ・・・魔物が出始めた時期とSランクの2人が消えた時期が被ってる。そのせいで残った冒険者はてんてこ舞いだ」


「それがどうしてSランク冒険者が宰相の犬と噂されるのですか?」


「・・・今のこの国で何か起こったら誰に批判が集まると思う?」


「・・・女王・・・」


「そういう事だ。今なら非難されるのは何をしても女王だ。食い物もない、金もない、んでもって魔物の脅威に晒される・・・そんな中で政権交代が起こり新たな王が誕生し、食い物も金も回って来て命の安全も保証されたら?」


「簡単に支持は集められる・・・か」


「そういう事。宰相達にとって女王に非難が集まれば集まるほどやりやすくなるってわけさ」


噂と言ったが本当に宰相の犬なのかもしれないな


ガシャの言う通り王が変わった途端に戻って来るかも・・・傍から見ればSランク冒険者は女王が嫌になって王都を離れ、女王が退いたから戻って来たと映るだろう



しかしもしそれが本当なら・・・いけ好かないな




ガシャ達との食事を終えた僕は宿に戻りサラからの連絡を待つ


その間に今後どう動こうか考えていた


Sランク冒険者の2人・・・この2人ならもしかしたら何かしらの情報を持っているかもしれない


それともラドリックの足止めに精を出すか・・・長丁場になるかもしれないし・・・ラドリックが到着する前に動き出したら僕が潰すか・・・女王を救ってくれとは言われたが国の中枢機関を破壊しないでくれとは頼まれてないしな・・・いっそうのこと反女王派のトップと思われる宰相を攫うか・・・




なんて事を考えている間に・・・王都は朝を迎えた



サラからの連絡がないままに──────

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