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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
395/856

391階 異変

潜入一日目


侍女長の計らい?により私はエバと共に動き、彼女から城での侍女としての仕事を教わった


その時に彼女と同じ考えの人がいるか聞いたが・・・どうやらいないらしい。つまり彼女は異端扱いされ孤立状態を余儀なくされていたのだ


女王派は少ないとは聞いていたがまさか侍女の中で1人とか・・・これは他に探すのはかなり難しいかな。もし心の中では女王派でも表に出せばエバのように孤立してしまう・・・下手すればイジメや辞めさせられる可能性すらある


女王派探しはやめて私が何とかするしかないか・・・その為にはもっと情報が必要だ


幸いエバと組む事が出来、彼女に話を聞く時間はかなりあった


どうやらエバの母親も城で侍女をしていたようでその母親から今の女王の小さい頃の話など聞いていたらしい


水属性・・・というより氷属性の魔法が得意だという女王・・・歴代の女王も魔法を得意としていたが彼女は別格だったのだとか


宮廷魔術師にすら引けを取らないレベルの魔法使いであり女王に魔法を教える事が出来る者は当時の宮廷魔術師くらいなものだった


そうして宮廷魔術師候補である人達に混じり魔法を教わる女王・・・そこで同じく宮廷魔術師に魔法を教わる宮廷魔術師候補の一人ダカンと出会う


最初はライバル・・・そして互いの力を認め合い惹かれ合う・・・いつしか自然と2人は恋仲と発展した


それを引き裂いたのは王であった親ではなく病・・・ダカンは生前『宮廷魔術師となり認められる』と言っていたらしいがそれは達成することなくこの世を去ってしまう


認められると言うのはもちろん女王との結婚だ・・・つまりダカンの目標でもあり女王の目標でもあったのかもしれない


望みが絶たれた女王を襲う悲劇はアネッサに聞いた通りまだ続く


王であった両親が倒れ近い者が次々と・・・やがて誰もいなくなり孤立した女王は変わってしまう


「エバさんはどうすれば女王様が以前のようになられると思いますか?」


「え?やっぱり恋人ですかねぇ・・・サラさんのご主人様の反応はどうでしたか?」


「・・・それ以外の方法でお願いします」


「ダメ・・・でしたか?」


「ええ」


そもそも聞いてないし聞く必要もない


女王を戻したいって気持ちはあるけどそれとこれとは別・・・女王が望んでもあげないし



結局その日は仕事をしながらエバと話すだけで終わった


肝心の女王には会えていない・・・まあ会ったとしても話し掛けられはしないだろうけど・・・




潜入二日目


仕事の担当区域は一日で変わる


前日に掃除した場所とはまったく違う場所を掃除する事により前日に掃除した人がどれだけ綺麗にしているのか確認するのも仕事の内らしい


掃除が行き届いてなければ報告し改善させるのが目的なのだとか・・・昨日の私が掃除した場所は大丈夫だろうか・・・少し心配になる




潜入三日目


侍女の食事はその日の決められた時間に食べなくてはならない


それも他の侍女と時間をずらしている為日によってはかなり遅い昼食だったり早い・・・それこそさっき朝食食べたばっかりなのにって時間で食べないといけない時もある


なんでも『城内では常に侍女が仕事をしている』という状況にしたいかららしいのだが・・・食事くらい自由にさせて欲しいものだ




潜入四日目


まだ食事の配膳という女王に会うチャンスは訪れていない。女王の部屋の掃除は経験豊富な侍女しか任されないらしいので食事の配膳が最も女王に近付けるチャンスなのだが・・・エバもあまり順番を気にした事がないのでいつ回ってくるか分からないらしい


気長に待つしかないのか・・・しかし美観の猶予はあまりない・・・回って来たのが一ヶ月後とかだったら手遅れだ・・・何とか他に接触出来る方法を探すしかないのか・・・




潜入五日目


いつ来るかと思っていたらいきなり配膳の日がやって来た


女王に会うと言うより見るのも初めてだ


最初ということもあり侍女長には口酸っぱく言われた・・・『決して女王陛下に粗相しないように』と


それはもちろん当たり前なのだが話し掛けたり見るのもダメらしい・・・一切口を開かず女王を見ずにただ食事を運ぶだけに徹しろとの事だ



次にいつ会えるか分からないのだ・・・なので侍女長には悪いが守る気はない



女王が食堂に来るタイミングに合わせて料理が出来るのでそれを受け取り素早く届けるのが仕事・・・なので調理場で待機し料理が出来るまでしばらく待つ


配膳は2人ではなく出す料理によって人数が変わる


今回は6人・・・飲み物、前菜、スープ、副食、主食、デザートの順番で運ぶ


私は飲み物を運ぶ役目となった・・・と言うかしてもらった


なぜなら飲み物だけは何度も食堂に行く事になる可能性があるからだ


基本的に配膳の時以外はここで待機し料理が出来たタイミングで運んでいく


ただ飲み物だけは呼び鈴が鳴らされると入れに行かなくてはならない為に常に呼び鈴の音に注意を払わなくてはならないのであまり誰もやりたがらないらしい。面倒だからとかではなく何度も女王の近くに行くのが嫌だから


改めて女王が嫌われているのを実感しながら私は彼女が食堂に来るのを待つ


そして・・・


「女王陛下が来られました。皆さん準備をお願いします」


執事の一言で緊張が走る


調理場の隣にある食堂に女王がいる・・・それだけで侍女達の顔が強ばりを見せた


エバが私の緊張を解す為に笑顔を見せる・・・どうやら私も他の侍女と同じように緊張していたようだ


食事前と食事中は水で食後はコーヒーだったよね?・・・大きく深呼吸すると水差しを持ちいざ食堂へ


執事に調理場と食堂を隔てるドアを開けてもらうと奥に座る女王の姿が見えた


あまり直視しないよう斜め下を見ながら近付いて行き、近くに来た時に視線を上げて女王を見る



キレイ・・・それが第一印象だった


艶のある長い髪に整った顔立ち・・・虚ろな瞳が少し表情に陰を落とすがそれを補って余りあるほど整っている。もし彼女が笑いかけたら女の私ですらドキッとしてしまうかも・・・それだけ彼女は魅力的だった


ふと彼女がこちらを見た事でようやく足を止めてしまっていた事に気付いた。どうやら見蕩れてしまい立ち止まってしまっていたようだ


慌てて歩き出すと彼女の横に立ちグラスに水差しを傾け水を注ぐ


簡単な動作なのに手が震える


そして何故か寒気が・・・まるで女王から冷気が出ているような・・・


「・・・新人?」


「へ?・・・は、はい!少し前に・・・」


突然話し掛けられ動揺すると彼女はわたしに微笑みかけ・・・


「そう・・・水汲みも出来ないようなら要らないわ」


「え?・・・っ!」


彼女は半分くらい水を注いだグラスを手に取るといきなりその中身を私にぶちまける


一瞬何が起こったか分からず呆けていると彼女は空になったグラスを置いて視線を逸らした


「何をしているの?立ち去りなさい」


「は、はい!」


私は何が起こったのか分からないまま頭を下げるとそのまま食堂をあとにした


私が戻ると侍女達は何事もなかったように出来た料理を順に運び始める・・・聞けばこれは新人に対する通過儀礼のようなものらしい・・・エバも最初にやられたのだとか


いきなり出鼻をくじかれほとんどの侍女が女王を嫌いになる・・・けど私は違った


一瞬・・・ほんの一瞬だけど私に水を掛けた後の女王の顔が・・・どこか寂しげだった


彼女は好きで水を掛けたのではない・・・何かやらされているような・・・もしくはやらざるを得ない事情がある・・・そんな印象を受けた




〘よし、滅ぼそう〙


「何でよ人の話聞いてた?」


侍女部屋は2人部屋の為に人気のない場所を探してロウと連絡を取り今日あった出来事を話す


毎日の日課になっているが今日の出来事を話すとこれだ


〘水を賭けられたんだろ?滅ぼすべきだ〙


「沸点低過ぎ・・・そんな事してたら大陸中の国がなくなるわよ?」


〘いやでも・・・てか何でわざと嫌われるような事するんだろう?〙


「さあ?・・・て言うかそんなに贅沢している感じでもないし思ったよりも質素な生活している印象なのよね・・・」


〘という事は本当に国に金がないから税を上げてる?でもそれなら民に納得するような説明すればいいのに・・・〙


「ええ、だから思ったの・・・民にも水を掛けているんじゃないのかって」


〘??・・・水を?〙


「うん・・・わざと嫌われるよう仕向けているんじゃないかって・・・」


〘何の為に?〙


「それが分かれば苦労しないわよ・・・けど多分・・・何かがあると思う」


彼女の行動には何か理由がある・・・それさえ分かればもしかしたら・・・


〘そっか・・・でももう間に合わないかも〙


「え?」


〘リガルデル王国に行っていたラドリックが戻って来た。一週間くらいで王都に戻るそうだからタイムリミットはその前までになる・・・おそらく戻ってすぐ行動を起こすだろうからね〙


「予定より・・・早い?」


〘うん。リガルデル王国との交渉がどうなったかまでは知らないけどラドリックも自信があるから行ったのだろうし・・・交渉は成立したと考えて間違いないだろうな。となるとラドリックが戻ったら・・・いや、成立した事を通信道具か何かで知らせていたら既に行動に移してもおかしくはないかも・・・〙


「ダメ!」


〘・・・サラ?〙


「ごめん・・・けど女王を殺させちゃダメだと思う・・・何となくだけど・・・阻止しなきゃ・・・」


〘けど民が疲弊しているのは確かだ。あれから街で色々聞いたけど女王の評判は地に落ちている・・・このまま圧政が続けば軍が立ち上がらなくとも民が暴動を起こすかも知れない〙


くっ・・・時間が無さ過ぎる。ただでさえ会う機会すら少ないのに・・・こうなれば強引にでも・・・ッツ!


〘サラ?どうしたの?〙


「・・・なんでもないわ。それよりあなたの方で何とかラドリックの到着を遅らせられない?」


〘やろうと思えば出来ると思うけど・・・〙


「ならお願い・・・私は何とか女王にもう一度接触してみる」


〘サラ・・・無茶は・・・〙


「分かってる・・・けどどうしても女王を助けたいの」


〘・・・足止めしても通信でリガルデル王国が加入しない事を報告されたら強行する奴がいるかもしれない・・・もう手遅れかも知れない・・・それでも・・・〙


「ええ。それでも、よ」


〘分かった・・・ラドリックの足止めは任せて。何なら永久に戻れないようにしてもいい〙


「それはやめて・・・とりあえずしばらく足止めお願い」


〘・・・気を付けて・・・〙


「うん、ありがとう」


多分ロウは私を引き上げさせたいと思っているはず・・・なのに・・・



連絡を取り終え部屋へと戻る


強行すると言っても暴れる訳にはいかないしやるとしたら配膳の時に話し掛けるくらいか・・・それでも食堂なら他に邪魔は・・・


「あっおかえりなさい・・・サラさん?」


おかしい・・・突然身体の中で何かが弾けるような痛みが・・・


部屋のドアを開けると同室のエバが心配そうに私を覗き込む。私は心配かけまいと首を振った


「大丈夫・・・何も・・・グッ!」


「ちょっ!サラさん!?」


痛みを感じる間隔が段々短くなって来た


痛みも増し立っていられなくなり壁に手をかける


まるで身体の中を抉られているような痛み・・・まさかこれって・・・


「サラさん!サラさん!?」


ダメだ・・・意識が遠のく・・・ロウに・・・知らせないと・・・ロウ──────

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