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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
389/856

385階 謁見

サイエスの街を出て真っ直ぐに王都を目指した


もうこれでもかってくらいのスピードで


途中何度か魔物を見かけて立ち止まりかけたが今は魔物よりも女王が先と判断してそのまま通り過ぎた。3つの国を渡り歩いたがこの国が1番魔物の数が多いような気がする・・・時間的なものなのかそれとも場所的なものなのか・・・もしくは・・・魔力の濃度か・・・


今のこの国の状況がアネッサの言う通りなら魔力の濃度はかなり高いはず・・・と言うか王都に近付くにつれてそれは肌身で感じていた


んで、今僕はその元凶の前で跪いている


魔力が濃くなるのは負の感情が溢れている証拠・・・不平不満、怒りや悲しみ・・・そういった感情を多くの人から生み出させているのはこの人・・・



『氷呪の女王』フレシア・セレン・シャリファ



水晶を使ったのか透明の椅子に足を組んで座りこちらを見下ろしている。謁見の間に入った時に少しだけ見たけど切れ長の目に筋の通った高い鼻と薄い唇・・・全体的に整った顔立ちをしている


可愛いと言うより綺麗と言われる事が圧倒的に多いだろうな


サラと同タイプの美人さんだ


ただ・・・サラから感じるような温かさは感じられない。凍てつくような視線は相手を威嚇し閉ざされた口は開けば罵倒でも飛んでくるような・・・そんな雰囲気を醸し出していた


謁見の間には他の国でも何度か入った事がある


奥中央に玉座がありそこに王が座り、その左右に重臣らしき人物と護衛が立つ。そして壁際には有事の時に何時でも動けるように兵士が武器を手に持ちズラリと並ぶ・・・今回もそんな光景を予想していたが全く違った


サラは別室に案内され僕だけが謁見の間に入るとガランとした室内に女王1人が肘掛にもたれながら僕を見つめているだけ・・・見回しても気配を探っても間違いなく女王1人だけ・・・そんな中で僕は無言で部屋の中央まで進み今に至る


「・・・面を上げよ」


「ハッ」


顔を覗いていたのがバレてないか心配しながら顔を上げて真っ直ぐに彼女を見つめる


「そなたがフーリシア王国のロウニール・ローグ・ハーベス卿か・・・爵位は辺境伯・・・だったな?」


「はい。今回は・・・」


「下らぬ挨拶や世辞など要らぬ。要点だけを簡潔に話すがいい」


ぐっ・・・そりゃあこういう場での挨拶とか苦手だからそう言われるのは非常に助かるけどわざわざ止める必要もないだろうに


「・・・では早速・・・昨今我が国ではダンジョンから魔物が出て来るという現象が多発しております。その件で他国も同様なのか調査が必要と判断し私が派遣された次第です」


「それは真か?」


・・・疑っている?そういやアネッサが女王は嘘が嫌いと言っていたな


今の話は嘘ではない


各国の情勢を調べるってのは目的のひとつだから


ただフーリシア王国の思惑は別にある可能性が高いってだけ


「はい。ご許可頂ければこの国の冒険者ギルドに話を聞いたり国を見て回り外に出ている魔物の数を把握したいと思います。それが終わればすぐに次の国へと行くつもりです」


「それしきのことで許可など必要はない。勝手に調べるといい。それと国を出る時の挨拶も要らん」


「・・・ありがとうございます。ちなみに女王陛下は何か魔物の事でお聞きしていることなどありますでしょうか?」


「ない。仔細は宰相であるハゼンに任せておるからな」


「そうですか・・・しかしこの城は見事な作りですね。城を取り囲む堀が・・・」


「もうよいか?そなたと雑談に興じるつもりはない・・・他に用がないのならそなたのするべきことをするがよい」


「・・・ハッ。お時間を頂きありがとうございました」


ハッキリと言われてしまったら取り付く島もない。元の女王がどんな人だったか未だに不明だがこれはかなり骨が折れそうだ──────




メイド姿の私は謁見の間には通されず別室に案内されそこでロウを待つこととなった


護衛ならまだしもメイドは本来こういった扱いなのかもしれない・・・どんな貴族のメイドとて一国の王に謁見するなどありえない話・・・これまでが特殊だったのだろう


待遇はメイドに対してと考えると悪くない。部屋も応接間に置いてあるような豪華なソファーにテーブル。そして目の前には茶菓子と温かいお茶が置かれている。逆に身分不相応な対応で居心地が悪いくらいだ


それにしても・・・ロウを待っている間1人ポツンと座っているだけで済むと思ったのだが部屋の中にはもう1人私以外に存在している


部屋の隅で何故かモジモジとこちらに話し掛けたそうにしているその存在はお茶と菓子を運んでくれたこの城の侍女であろう人物・・・話しかけるならかけてくれればいっそう楽なのに・・・ふむ・・・


「私のような一介のメイドに過分な対応ありがとうございます」


話しかけられないのならこちらから話しかければいい・・・お礼を言うとともに会釈をして微笑むと侍女は私より深く頭を下げた


「と、とんでもございません!・・・お気に召しませんでしたか?」


出されたものに手を付けない私を見て彼女は言うと私はゆっくりと首を振る


「このような時に手を付けていいものかどうか分かりませんでしたので・・・」


実際どうなのだろう?主である貴族と共に来て別室で待っている時に飲食をする・・・これが失礼に値すると言われたらそれまでだし手を付けない方が失礼とも言えるのかも・・・


「あっ、そうでしたか・・・私もその辺はあまり詳しくなくて・・・そうだ!お召し上がりになった後、すぐに片付けてしまえば貴族様にバレないのでは?」


「そうですね・・・ではせっかくなので頂こうかしら」


そう言ってお菓子に手を伸ばすと彼女は鼻息荒くウンウンと頷いた


出したものを食べてもらいたかっただけなのか・・・そう思ってお茶を口元に運んだ時、彼女は一歩前に出て私を見つめながら口を開いた


「あのっ・・・失礼を承知でお聞きします!今回はどのような用件で来られたのでしょうか?」


意を決しての発言だったのか目を閉じ震えながら私に尋ねる彼女。特に失礼ではないと思うのだけど・・・


「主はフーリシア王国からの依頼で各国の状況を見て回っております。最近魔物がダンジョンブレイクとは関係なくダンジョンの外に出ている事が散見されますのでそのせいかと・・・。女王陛下との謁見はたんにご挨拶とお聞きしております」


「そう・・・ですか・・・」


明らかにガッカリした様子の彼女に疑問が浮かぶ。彼女は一体何を期待していたのだろう?


「何か?」


「い、いえ!・・・・・・・・・あのっ・・・・・・他国の貴族様にこんなお願いをするのは間違っているのは百も承知なのですが・・・陛下を・・・フレシア様を救って頂けませんか?」


・・・この子・・・


「救うとはどういう事ですか?」


事情は知っているけど知らないフリ・・・この子ももしかしたらアネッサと同じく・・・


「フレシア様と結婚して下さい!」


うん、お茶を飲んだタイミングでよくもぶっ込んでくれたわね・・・お陰で盛大にお茶を吹いちゃったじゃない──────




「・・・この国は女性同士でも結婚するの?」


「違うわよ。彼女・・・侍女エバ・ノークスはあなたと女王様が何とか結婚出来ないかって言ってるの」


「僕と女王が?・・・なんでまた」


「彼女には彼女なりの理由があるのよ・・・まあ概ねアネッサさんと同じ理由だけどね」


ロウが女王との謁見を終えて私の元へ訪れ、その足で城を出て街の宿屋を借りてエバに聞いた内容を話すと彼は黙って耳を傾ける


エバの話はこうだ


侍女として城に仕えた頃の女王は誰にでも気さくに話しかけ笑顔の絶えない女性だったのだと。それがあの事件をきっかけに人が変わったように冷たくそして何に対しても厳しくなり同僚の侍女達も辞めたり罰を受けたりしているらしい


「それと結婚はどう繋がってるの?」


「彼女は女王様にまた愛する人が出来れば元に戻るって考えているらしいのよね・・・でもこの国の人達はあまり女王様に良い印象を持ってないから他国のあなたならって思って・・・」


「おいおい」


「でも理にかなってると思うわ。あなたなら他国と言えど貴族の上位だし政略結婚的な意味も含めて十分にありえる話・・・仮にあなたと女王様が結ばれれば国同士の仲も深まるしね」


「・・・サラはどう思う?」


「私?私は・・・絶対に嫌。そんな話死んでも阻止するわ」


「ですよね・・・安心した」


当たり前よ冗談じゃない


けどエバにとってはロウが頼みの綱なのはアネッサと同じなんだろうな・・・それだけこの国の人達からは嫌われている・・・


「エバって僕が迎えに行った時に一緒にいた子?」


「ええそうよ」


「そうか・・・」


「なに?」


「いや・・・それより女王にも味方はいたんだな。てっきり孤立しているかと思ってたけど」


「そうね。けど侍女が味方したところでって感じだけど・・・相手は宰相や将軍でしょ?声なんて届くはずもないわ」


どうにかしたい事があってもどうにも出来ない事もある・・・侍女であるエバが女王を助けようと必死で足掻いても徒労に終わるのは目に見えている・・・それでも彼女は必死になって女王を助けようと・・・


「・・・そうだね。現実的に無理がある・・・けど」


「けど?」


「1人味方がいるってことは他にも味方がいるかもしれない・・・そのエバって子ならその味方を知っているかも・・・」


「そうね・・・そうよね。けどエバと話をしようにも城にはそうそう入れないんじゃない?今回は挨拶って事で入れたけど理由がないとなかなか・・・」


「忍び込む・・・ってのもダメか・・・ゲートで城の中を探すってのもアリだけど扉が閉まってたりすると移動出来なくなるしなぁ・・・あまり室内には向いてないんだよね」


覚えている場所以外は見た場所に移動するゲート・・・逆に言えば見えていない場所には移動出来ないから扉が閉まってたら開くまで待たないといけなくなる。広い城内でエバを探すのは・・・ちょっと難しいかもね


「変装して・・・ってのも誰に?って話だよな。人の出入りが頻繁にあるような城だったら紛れて入り込む事も出来たかも知れないけど城自体が人を拒むような作りだし・・・」


そう・・・これには驚いた


街から少し外れた場所にあり、ぐるっと城を囲むように堀がある。更に高い壁に囲まれており唯一入る事の出来る場所には橋がかけられているがその橋は跳ね橋となっており出入りがない時は上げられている為に侵入はほぼ不可能に近い


「やっぱりゲートでこっそり侵入してエバを地道に探すしかないか・・・」


「ごめんね・・・誰か他に味方がいないか聞いておけば・・・」


もっと詳しく話を聞くべきだった・・・だってあまりにも話が衝撃的過ぎて聞くだけで精一杯だったし・・・


「いや聞いても簡単には話してくれないと思う・・・ほら、ほとんど反女王派だしバレたら何されるか分からないしね。信用されるまでは言わないはず・・・とりあえず当初の予定通り協力者に会って話をしてみるか・・・」


「協力者・・・そうね。アネッサさんの言ってた必ず訪ねて欲しいと言ってた協力者・・・この街にある冒険者ギルドのギルド長にして総ギルド長・・・マグス様の元へ──────」

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