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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
384/856

380階 魔王国

夜の楽しみが出来た事によりルンルン気分でシャリファ王国を旅していた


移動手段はもちろんゲート


もう隠すつもりはないけどさすがにいきなり人が消えたり現れたりしたらパニックになりかねない。なのでとりあえず人気のない所・・・適当な木の上に登って見える範囲を移動する


それを繰り返すとあっという間にシャリファ王国に入ってから初めての街に辿り着いた


「さて、サラはマントを羽織った方がいいかもね」


「出来れば道中から羽織りたいのですが」


「それは無理・・・けど他の人がいる場合は良しとする」


「・・・畏まりました()()()()


ふ、睨んでも無駄さ


サラがメイドを続けたいと言っているのだ・・・ならばこちらはメイドらしく接する義務がある。そう考えるようになってから邪悪な思考がふつふつと湧いてきた


ただ本気で嫌がっている場合はやめておく・・・まあその時は素に戻るから分かるし大丈夫だろう


街の近くの木陰にゲートを開くと僕とサラは歩いて街へ


「・・・サイエスの街へよつこそ・・・フーリシア王国辺境伯様・・・」


国境の関所ほど聞かれなかったけどジロジロと疑いの目で見られた


他国の貴族が護衛もなしで移動手段が徒歩だったら誰でも怪しむよな・・・かと言って馬車で移動してたら時間がかかり過ぎるし慣れていくしかないか・・・



街に入ると国境近くの街のせいか商人の馬車が多く見られた


人も多く賑わっており建物は整然と並んでいる。地面は舗装され土が全く見えない・・・ラズン王国と近い割には全く違う光景に圧倒され息を飲んだ


「なんか・・・フーリシアの王都にいるみたい・・・いや、それよりも・・・」


「見てくださいご主人様」


サラが指さす方向を見るとどうやら家を建築中みたいだった。別に普通なら何でもない風景なのだがそこで働いているのは大工ではなくローブを着た魔法使い風の人達


魔法使いが建築資材を土魔法を使って出したりするのは見た事あるけどあくまでも資材を作っているだけだった。それを大工が積んだり固めたりはめ込んだりして建物を作ったりしていた


けど彼らの周りに大工の姿は見えない


それもそのはず魔法を駆使して彼らだけで家を建てて閉まっているのだから・・・


「1人だとマナが足りなくなるけどあれだけの人数が集まれば大工は要らないって訳か」


「6人居ますね。ある程度の技量を持った土魔法使いを集める事などフーリシア王国ではとても・・・」


難しいだろうね


形と頑丈さを兼ね備えた石を作るにはそれなりの技量が必要だ・・・魔物を倒せばいいとだけ考えている魔法使いには難しい芸当だろう


技術とマナ量があってこそ出来る大工魔法使い・・・けどフーリシア王国ならそれだけの技術とマナ量があれば冒険者の方が稼げるからなる人は殆どいないだろうな


「魔王国か・・・もしかしたらこの街の建物や舗装された道路・・・それに街灯やら壁やら全て・・・魔法で作った?」



確かシャリファ王国が魔王国と言われる前・・・この地は気候のせいか食物が育ちにくいと言われていたらしい。なので食料が確保出来ず餓死する人が出るほどだったとか・・・そんな不毛な地をどうにかしようとシャリファ王国の当時の王様は各地より優秀な魔法使いを集めた。どうして魔法使いなのかは分かってないらしいけど集めた魔法使い達はこの地に留まり結婚しやがて子が出来てその子もまた魔法使いに・・・そうやって脈々と受け継がれ今の魔王国シャリファが誕生したとか


「凄いですね・・・使い方によっては魔法はここまで人の役に立てる・・・いつか戦う必要がなくなったら私も何かに役立てるような力の使い方をしたいものです」


戦う必要がなくなったら・・・か


そんな日が来るのだろうか


魔王を倒しても魔族が現れ魔族を倒しても今度は・・・


チラッとサラの横顔を見る


戦っている顔も好きだけど笑顔の方がもっと好きだ


Sランク冒険者となったサラに安息の日々が訪れるとしたらその力が必要じゃなくなった時だろう。となると僕がやるべき事は・・・


「・・・私の顔に何か付いてますか?」


「僕とサラの子はどんな子なんだろうって思って・・・出来れば全部サラに似て欲しいけどね」


「あら?奇遇ですね・・・私もご主人様に似て欲しいと思ってますよ?」


「・・・それは・・・勘弁して欲しいな──────」




街を歩いて宿を見つけると部屋を借りてからまた出掛ける


デート・・・と言いたいところだけど実際は調査だ


関所からこの街に来るまでは魔物の姿は見なかったけど馬車によっては護衛を何人も連れているのを見掛けた


野盗対策にしては物々しい雰囲気・・・関所でも言われたけどやはり魔物がかなり外に出ているのかも知れないな


それを調べるのに一番適している場所と言えばやっぱり冒険者ギルドだ


探し歩いているとすぐに見つける事が出来たので早速中へ入る。冒険者としてではなく貴族として入るのは初めてかもしれない


扉を開けて中に入ると何気なくこちらを向いた冒険者達の顔が怪訝な表情に変わる・・・気持ちは分からないでもない。僕だって場違いな人・・・しかも関わると面倒な事になりそうな人が自分の仕事場に来られたら嫌だしね


注目を集める中ギルドで僕達が向かった先は・・・掲示板だ


別に組合に入ろうとか依頼を受けようとしている訳じゃない。フーリシア王国では魔物が外に出る前は組合の募集や共有情報が張り出されているだけだったけど魔物が外に出始めた今、掲示板に張り出されている内容がどう変わったのか気になったからだ


掲示板の前に行き張り出されているものを眺めると・・・やはり以前とは違う


内容を見ると国が違うからという訳では無さそうだ



『探索依頼』『魔物討伐依頼』『護衛依頼』『階層の魔物掃討依頼』・・・階層の魔物掃討?


「あ、あのぉ・・・何か御用でしょうか・・・」


掲示板を見ているといつの間にかギルド職員らしき女性が背後から近付いており僕達に話しかけて来た


冒険者以外が掲示板を見ていて邪魔だったのかな?・・・いや、そうか・・・


「依頼をしたくてな・・・相場がいくらか見ていた」


「さ、左様でございますか。掛かる費用でしたら依頼内容によってこちらから算出致しますのでもしよろしければこちらへどうぞ」


ギルド職員はホッとした表情を浮かべるとギルドの2階の応接間のような部屋に案内してくれた


「こちらでおかけになってお待ち下さい。すぐに準備して参ります」


ギルド職員の女性はそう言うと頭を下げどこかへと行ってしまう。残された僕はとりあえず備え付けのソファーに座りサラはすぐの後ろに立って彼女を待つ事に


「ご主人様?」


「ああ、前にフーリシア王国の王都の冒険者ギルドに入った時を思い出してね・・・貴族や商人は冒険者ギルドに依頼して冒険者を雇うらしい・・・ただ話を聞くより雇い主として話を聞いた方が色々と聞けると思ってね」


「なるほど・・・それでどのような依頼を?」


「そりゃあもちろん・・・護衛だ──────」




ギルド職員が資料を抱えて戻って来ると僕は依頼の内容を彼女に伝えた


「護衛・・・依頼ですか。そうしますと規模と行先によって金額が変わります。それで行先はどちらになるでしょうか」


「すまんがまだこの国に来たばかりでな・・・地理に疎くて出来ればこの国の地図があると助かるのだが・・・」


「この国に来たばかり?・・・失礼ですが御身分の証明になるようなものはお持ちでしょうか?」


あれ?もしかして他国の貴族は依頼出来ないとかルールがあるのかな?金さえあれば依頼出来ると思ってたのに・・・余計な事を言わなきゃ良かった


貴族になった時に渡されたギルドカードならぬ貴族カード・・・まあ正式には貴族カードとは言わないみたいだが機能としてはギルドカードと変わらない


身分を証明するもの・・・発行元は当然冒険者ギルドではなく国だ


偽造出来ないよう色々と細工が施してあるみたいだけどどんな細工かは不明・・・今度サキに頼んで見てもらうか・・・


「フーリシア王国・・・っ!しょ、少々お待ち下さいませ!」


そう言うとまた部屋を出て行ってしまった


「しまった・・・やはり黙ってた方が良かったかな?」


「適当な理由を言って出ますか?」


「・・・面倒になったらそうしよう。そうならない事を祈るが・・・」


フーリシア王国から連絡はとっくにシャリファ王国に届いているはず。ラズン王国ではしつこく付きまとわれたからな・・・この国も同じようならサラの言うように理由を付けて逃げよう


「失礼します」


戻って来たギルド職員の彼女はどうやら誰かを連れて来たらしい


「私ではご対応が難しい為ギルド長をお連れしました」


「失礼するよ・・・おやまあ随分と若い貴族様だね」


ギルド長と紹介されて入って来たのは初老の女性・・・入った早々座る僕をジロジロと見て品定めときたもんだ


「優秀なんだねえ」


「優秀だなんてそんな・・・ただ地位を受け継いだだけですよ」


「嘘はいけないねぇ・・・特にこの国では、ね」


鋭い眼光で僕を射抜く


どうして嘘だと分かった?・・・いや、それよりも・・・


「嘘がダメなのは万国共通だと思ってましたが?」


「まあそうだろうね。だから言っただろう?『特にこの国では』とね・・・座ってもいいかい?」


「・・・どうぞ」


体格は小柄だが他国の貴族を前にしても物怖じしない態度といい鋭い眼光といい・・・さすが冒険者を相手にしているだけあるな


ギルド長はここに案内してくれたギルド職員を下がらせると僕の前に座り名を名乗る


「この街の冒険者ギルド長・・・アネッサ・ホーキンスだよ。アンタは・・・フーリシア王国のローグ辺境伯だね?で、何しに来たんだい?」


「護衛を雇いたい・・・次の街まででも構わないがなにぶん地理に疎くて・・・」


「次の街ならカリアだね。でも・・・護衛ねえ・・・アンタらに必要かねぇ?」


そう言いながら見ているのは僕ではなく後ろに立っているサラだった。実力を見抜けるのか?いや、もしかして・・・


「私達の事を知っている?」


「そりゃあねえ。ここはサイエス・・・シャリファ王国の玄関口・・・入って来る情報は多岐に渡る。当然各国の情報・・・特に面白い情報は瞬く間に拡がりアタシの耳に入って来る訳さ。平民から貴族へ・・・しかも伯爵から僅かな期間で辺境伯へ。その傍にはいつも最近Sランクに上がった美人さんが付いている・・・とかね」


国を渡り歩く商人達に聞いたか・・・まあ別に隠すほどのことではないし別に構わないけどね。それよりも情報はかなり正確なようだ・・・傍には美人さんが付いている・・・いい響きだ


「それで・・・何を企んでいるんだい?事と次第によっては力を貸さない事もないよ」


「事と次第?」


「こちらの頼みを聞いてくれたら・・・ね──────」

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