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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
380/856

376階 出会い

ゼナに対してやり過ぎとサラに怒られながらケッペリの街を歩く


街はかなり復興が進んでいる様子・・・あの時はパズズを探すのに必死でよく見てなかったけど鬼が暴れた爪痕はかなり深刻だったはずなのによく1週間でここまで立て直したもんだ


所々に壊れた家屋などが存在するが店は再開を大声でアピールし道行く人は笑顔を絶やさず歩いていた


「シークス達・・・もしかして復興の手伝いをしているとか・・・」


「それはないでしょ・・・あのシークスだよ?」


「そうよね・・・あの服装ならどこにいても目立ちそうなのに誰も知らないみたい・・・もうこの街から出て行っちゃったのかな?」


「もしくは着物に着替えたとか?」


「そうなると見つけるのかなり難しそうね・・・」


「うん・・・特徴が『小柄な細目の男』と『バカっぽい男』の2人組って言っても誰も首を傾げるだけだしね」


「それ・・・2人に聞かれたら激怒しそうよね・・・特にシークス・・・」


気にしてるからなぁ・・・特に細目・・・けど仕方ない。他に特徴ないもの


「ねえ・・・着物に着替えたかもって言ってたけどそもそもシークス達ってお金持ってたのかな?」


「・・・どうだろう・・・てか持ってたとしても1週間も暮らせる程には持ってなかったかもね」


「フーリシア王国では普通の格好でもこの国では目立つから着物を買って日々の生活費を・・・となるとすぐにお金は無くなるよね?となると・・・」


「仕事を探す・・・か。けど冒険者ギルドはないから・・・」


「用心棒!」


僕とサラが同時に言うと周りからジロジロ見られてしまった。ただでさえ今の格好は目立つのに・・・まあいいか


用心棒となれば行先はひとつ・・・この街を裏で牛耳っているダーザン一家の拠点に行く羽目になるだろう


エモーンズでは商会に直接雇われていたけどここではダーザン一家を通さないと用心棒にはなれない・・・シークスの実力なら必ず雇ってもらっているはずだ



「・・・あれ?」


僕達はダーザン一家の拠点に向かい辿り着いたが・・・誰も居ない


と言うか復興が進んでいる割にはダーザン一家の建物だけそのまま・・・いやこれは鬼に壊されたのではないのかも・・・なぜなら隣の建物は壊されておらずダーザン一家の建物だけボロボロになっていたからだ


鬼が特定の場所だけ狙うなんてあるはずもない・・・理性を失い暴れ回るようなやつがそんな事するはずないからな


となるとこれは・・・人為的?


「ロウ・・・人が・・・」


ボロボロの建物の前で呆然としていると中から人が出て来た


それは僕の知っている人・・・


「エイム!」


「っ!・・・誰だ?・・・まだやり足りないのか?お前らは・・・」


「誰だってお前・・・あ、そうか」


シャリファ王国ではあまり変身しないでおこう・・・誰とどの変身で会ったか分からなくなる


「おい何を・・・ヒィ!」


ゲートを開いて仮面を取り出しローハーに変身するとエイムは腰を抜かしてしまった


「そんなに驚くなよ・・・これで分かったろ?」


「に、兄さん・・・さっきの若造は?」


「若造言うな・・・あれが本当の俺だ」


「あれが兄さんの本当の・・・」


「で、何があったんだ?」


「あ、ああ・・・実は──────」




・・・見事なまでの転落人生だな


結論から言えばダーザン一家は解散・・・エイムが一家の頭領となって数日・・・いや数時間の出来事で


ギリスに頭領ゼナスを殺され新頭領となったエイム・・・だが街は封鎖され鬼が各地で暴れ出した


鬼のほとんどは守護天が退治して魔族は僕が・・・けどその後が悲惨だったらしい


「・・・鬼化する酒をばら蒔いてたのがダーザン一家だってバレてな・・・そこから散々だったよ・・・街のもんからは白い目で見られ石を投げられ時には殴られ・・・抵抗しようもんなら袋叩きさ・・・んで1人また1人と辞めていき最後にゃ俺1人になっちまったって訳だ・・・まあ自業自得っちゃあそうなんだけどよぉ・・・」


ゼナスが知っててばら蒔いたのか騙されてばら蒔いたのかは知る由もない・・・けど街の人達からしてみれば報いを受けて当然と思うのだろう・・・ある意味魔族の手先となり街を陥れようとしていたのだから


「そうか・・・邪魔したな」


「兄さん!そりゃあねえよ・・・なあ?俺はどうすればいい?この街じゃもう・・・けど他の街で下っ端からなんてとても・・・」


立ち去ろうとする僕を止めて縋り付く


頭領の息子であり若頭?だっけか・・・そんな立場にいた人間だ・・・下っ端からってのは確かに厳しいだろうな


「・・・そう言えばこの一週間で誰か訪ねて来なかったか?俺のような服装の奴とか小柄で細目の奴とか・・・」


「?・・・いやそんな奴は・・・」


「ふむ・・・・・・・・・仕事を斡旋してやろうか?少し遠いがその気になれば簡単に偉くなれるぞ?」


「ほ、本当か!?頼む・・・兄さんだけが頼りなんだ!」


「なら紙とペンを持って来い・・・紹介状を書いてやる」


「ああ!ちょっと待っててくれ!」


エイムはパッと顔を明るくして急いでボロボロになった建物の中へ・・・注文通り紙とペンを持って来たのでその場で紹介文を書いて渡した


「で?遠いってどこの街なんだ?」


「・・・その紙をアダムって人に渡せ・・・案内してくれるから」


「?・・・アダムさんな・・・で?どこなんだ?」


「お前の後ろだよ」


エイムの背後にエモーンズの屋敷に繋いだゲートを開きトンと彼を押した


「なっ!?・・・うあああぁぁ・・・」


エイムはゲートに吸い込まれるように消えて行きすぐにゲートを閉じてしまう


「・・・どこに紹介したの?簡単に偉くなれるって本当?」


「本当だよ・・・強ければ、ね──────」




突然見知らぬ場所に飛ばされたエイム


彼は突然の来訪に怯えるメイド達に鼻の下を伸ばしアダムは誰かと尋ねる


すると執事のアダムが名乗り出て来たのでロウニールから預かった手紙を渡すとその手紙に目を通したアダムはエイムをある場所へと案内した


メイド達を見て浮かれるエイム・・・今いる場所がどこだか分からないが紹介してくれたロウニールを信じ心弾ませながらアダムに着いていく


見慣れぬ街、見慣れぬ人々を眺めながら歩いているとアダムは『ここです』と建物の中へと案内した


そして・・・


「・・・面倒を押し付けやがって・・・」


想像と違う・・・エイムはてっきり屋敷にいたメイド達のような女性に囲まれてアハハウフフな仕事場をイメージしていたが案内されたのは真逆・・・無骨な男達がひしめく仕事場だった


しかも上司らしき人物はロウニールの手紙を読むとあからさまに嫌そうな顔をした後でエイムを睨みつける


「辺境伯の頼みだ・・・受けるしかあるまい。まずは見習いから・・・」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


「・・・たんだ?」


「俺は兄さんから簡単に出世出来るって聞いて・・・その辺の事書いてねえ?」


「お前の兄など知らん」


「いや、本当の兄さんじゃなくて・・・その手紙を書いた人だ・・・その人に言われて・・・」


「・・・あの野郎・・・私兵とは言え騎士をなんだと・・・」


「え?もしかして違うのか?」


「・・・そうだな・・・出来なくはない。いいだろう・・・貴様が簡単に出世出来るかどうか試してやろう」


私兵騎士団でも王国騎士団でも出世が早い者がいる。それは実力者・・・ディーンが異例の早さで騎士団団長になったのは実力があったからだ


なのでロウニールの言う『簡単に出世出来る』と言うのは嘘ではない。ただ前提に『実力があれば』だが・・・


この後エイムは私兵騎士団団長のケインにボコボコにされて見習いからスタートする事になる。騙した?ロウニールを恨みながら──────




エイムを送り出した後2人の捜索を再開した


闇雲に探すのではなく2人が居そうなもとい働きそうな場所・・・歓楽街を中心的に


その時にすっかり元に戻ったラナーを見掛けたがあえて話しかけなかった・・・操られていた記憶があるのかないのか定かでは無いけど触れない方がいいと判断したからだ・・・決してサラが一緒にいるからではない


んで結局2人は見つからず捜索は終了・・・最後にゼガーに国を出る事を告げに行くと何故か護衛の女性に睨まれたがその理由は最後まで分からなかった


短いようで長かったラズン王国の滞在も終わり明日くらいにはシャリファ王国に着くだろう


ゆっくり出来なかったけど魚の味と着物の着心地だけは良かった・・・今度来た時はゆっくりしたいもんだ・・・またソバも食べたいしね──────




ロウニールが爽やかな笑顔でラズン王国を去る宣言をした時から遡ること1週間前・・・置いてけぼりをくらったシークスとヤットはケッペリの街を出る決意を固め歩いていた


「なんだよあの味のほとんどしない紐みたいな食いもんとえらい濃い汁は!・・・この国の奴らは味覚がおかしいのかんそれとも俺らが余所者だから騙された?・・・どう思う?シークス」


「知らないよ。ボクはどっかのバカのせいで有り金が無くなり食うに困っているこの状況をどうするか頭がいっぱいだからね・・・」


「うっ・・・だってよぉ・・・憧れの忍者の聖地だぜ?しかも安売りしてたからつい・・・」


「・・・ハア・・・もういい・・・怒る気力もないよ。ロウニール達には置いていかれるしバカは後先考えず買い物しまくるし冒険者ギルドはないし食べ物は味が薄かったり飲み物は濃かったり・・・・・・・・・ヤット、殴っていい?」


「なんでぇ!?俺も被害者だろ!?」


「その被害者ヅラもムカつく・・・やっぱり殴る」


シークスが拳を握りヤットに近付くと不意に背後から肩を掴まれた


「・・・誰?」


「少年~暴力はいかんぞ?暴力は」


「あ?」


「ひょ~怖い怖い・・・少年とそこの青年は異国のものかな?目上の人には敬意を払うのは万国共通だと思ったが・・・違うのか?」


「突然背後から人の肩を掴むヤツに払う敬意なんて必要ないと思うけどね・・・離せ・・・そして質問に答えろよ」


「おっと、悪かったな。まあそう目くじら立てなさんなって・・・で?質問って何だっけ?」


「・・・もういい・・・許してやるからとっとと行け」


「つれないなぁ少年。緊急招集があったからはるばる来てみたら街がえらいことになってんだけど理由知ってる?」


「・・・ボクはとっとと行けと言ったんだが?」


「知らないか~・・・それかとぼけているだけなのか・・・」


「っ!」


とぼけた無精髭の男・・・シークスは突然話しかけて来た男にただそんな印象を持っていた


しかし突然シークスの本能が『この男は危険』と警鐘を鳴らし体が自然に飛び退いた


「・・・君・・・誰?」


「あれ?もういいんじゃなかったの?」


「誰だと聞いているんだ!」


依然のほほんとしている男に対してシークスは警戒を強める。どんな強者を前にしても戦える自信があった・・・それが脆くも崩れそうになり必死で抵抗する・・・本能は『この男から逃げろ』とセリフを変え警鐘を鳴らし続けていた


「ふふん、聞いて驚け~。俺の名はコゲツ・ラジ・・・護天が1人コゲツ・ラジであり『拳豪』とも呼ばれている超有名人だ・・・知ってる?」


「・・・へえ?その超有名な健康のコゲツがボクに何の用だ?」

「健康じゃなくて拳豪・・・街中で喧嘩しそうになってたのを止めただけだよ?でもまあ・・・緊急招集があって異国の者が暴れているとしたらやるしかないでしょ?・・・職質」


「しょくしつ?」


「ああ、面倒だが一応国から金貰ってるからな・・・洗いざらい喋ってもらおうか・・・細目の少年」


「・・・上等だ・・・聞きたきゃ吐かせてみろよボサボサ頭!」



『ダンジョンキラー』シークス・ヤグナーと『拳豪』コゲツ・ラジの出会いは何をもたらすのか・・・この時は誰も知る由もなかった──────

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