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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
一部
38/856

35階 冒険者生活

冒険者生活一日目


オープンテストの時以来のダンジョン探索だ。仮面とマントで魔物は僕をダンジョンマスターとは認識しない・・・つまり普通の冒険者に対応するように攻撃してくる。一瞬の気の緩みが命取り・・・1階とはいえ緊張するなぁ・・・


《ハア・・・マナを使ってもマイナス・・・けど魔物がただ倒されるだけでもマイナス・・・何もいい事なんてないのに・・・》


「言うな・・・この経験がいずれ何かの役に立つ」


まあダンジョン作りに役立つかどうかは分からないけど・・・非公式冒険者ローグの活躍はここから始まる・・・今に見てろダンジョン!俺が攻略してやる!


《自分のダンジョンで何やってんだか・・・しかも夜遅くに・・・》


「う、うるさい!仕方ないだろ?門番の仕事もあるしダンジョンでやる事もある・・・全部終わってからじゃないと出来ないのだから・・・」


兵士を辞めようかとも考えたけど結局続ける事にした


門番をしていたからラックと再会出来たってのが大きいが、ダンジョンだけだと息が詰まりそうだからってのもある


ただその分睡眠時間が・・・また立ったまま寝てヘクト爺さんに怒られそうだな


「じゃあ早速・・・スラミ行くか!」


「はい」


パーティーは僕とスラミの2人パーティー


一応前衛アタッカー2人の構成だが場合によっては僕が後衛になったりヒーラーになったりする予定だ。全適性があるにも関わらずそれを活かし切れてないしな・・・前にサラさんが毒になってた時も回復出来なかったし・・・


魔法や魔技はイメージが大事って学校で習った


習ってる時はマナを使わなかったからピンと来なかったけど、今なら分かるような気がする


それとダンコに教わった事・・・攻撃魔法は変化だったよな・・・それを意識しつつイメージすれば・・・


「ウォーターボール!」


手をかざし魔法を唱えるとイメージ通りの水の玉が手の平から発射され壁に激突し消えていく。威力は分からないけどなかなかスムーズに出せた


《・・・何やってんのよ・・・》


「いや、ほら・・・魔法はラウル達に使ったっきり使ってなかったからさ・・・スラミに使うのはなんか気が引けるし・・・」


スラミと組手する時に魔法を使って万が一ってのも怖いしな


にしても・・・


少し歩いているとスライムが出た・・・そのスライムをスラミが殴る・・・この絵面・・・どうにかならないかな・・・


「スラミ・・・前みたいに人型になれない?」


「はい」


おお・・・相変わらず見事なお胸・・・じゃなくて人型だ。ていうか・・・前より人間に近いような・・・いや、普通に体はスライムだけど・・・こうなんか・・・


《エロウ》


「エロと名前を繋げるな!別にそういう意味で見てた訳じゃ・・・」


まあスラミもダンジョンが拡がって成長したからかな?



こうして人型スライムとなったスラミと共に冒険者として1階を攻略・・・僕の出番なんてほとんどなかったけど冒険者生活を少しは経験出来たような気がする


でもこれは毎日はキツイな・・・余裕がある時だけにしようっと




冒険者生活二日目


この前から1週間空けて挑んだ二日目


今日は前回の続きである2階に挑む


「スラミ!下がってろ・・・ファイヤーボール!」


コボルトに対して完璧なファイヤーボールを放つと悲鳴をあげて絶命した・・・何となく自分が冒険者という意識が固まってきたのか自分の作った魔物ではなく、行く手を阻む魔物って思えるようになってきた


《ああ・・・せっかく創った魔物が・・・溜めたマナが・・・無駄に消費されていく・・・》


「無駄言うな・・・にしても完璧なファイヤーボールだったな・・・これが学校の時に出せてれば・・・」


今更だが悔やまれる・・・そうすればモテモテだったかも知れないのに・・・ペギーちゃんに


《完璧?何を以て完璧なの?》


「え?・・・そりゃあお手本通りというか・・・」


《・・・》


「なに?僕変なこと言った?」


《いえ・・・そっか・・・魔法は魔物と同じなのね》


「ん?魔物と同じ?」


《ほら・・・魔物は現存するものをイメージして創るでしょ?魔法も同じっぽかったから》


「んー、よく分からないけど・・・」


《例えば今の『ファイヤーボール』・・・アナタは『ファイヤーボール』はこれって思ってるから完璧って言ったんでしょ?》


「そうだけど・・・」


《それってイメージはしやすいかも知れないけど・・・不便よね》


「ふ、不便!?」


《今のやり方だとイメージはしやすいかも知れないけど固定概念が強過ぎてそれ以上のものを作れないって感じ・・・魔物はそれでいいのだけどせっかくイメージ通りに出来るのだから好きにやってみれば?》


「好きにって・・・どんな感じに?」


《それこそ『好きに』よ》


好きにと言われても・・・


初級の火魔法はファイヤーボールにファイヤーウォール、それに広範囲のファイヤーストーム・・・ファイヤーストームは少しマナ量が多いけど火が得意な魔法使いならこの三つはかならず使えると言っていい


その三つ以外に火を使ったマナ量の少ない魔法がイメージ出来れば・・・


おあつらえ向きにゴブリンがジリジリと僕達に向かって来ていた


僕はスラミの前に出て手をかざすとイメージする


火・・・例えば口から炎を吐く魔物のように手から炎を出せれば・・・


「喰らえ!火炎放射!!」


何となく思いつきで名前を叫ぶとイメージ通りに手のひらから炎が噴き出しゴブリンを包み込む


炎に焼かれのたうち回るゴブリンだったが、やがて力尽きたのかその動きを止めた


「おお・・・威力は分からないけど結構使えるかも・・・ファイヤーストームよりマナ量が少ないのに広範囲にも使えそうだし・・・」


飛びかかって来ようとする魔物の牽制にも使えそうだ。イメージ・・・か・・・


《注意する点はひとつ・・・魔物や物を作る時と同じでしっかりとしたイメージがないと失敗するわ。だから咄嗟の時はイメージしやすいものを選ぶ事ね》


「・・・ねえ・・・もしかして魔物もオリジナル的な・・・」


《無理よ》


「なんで?」


《魔物は物と言っても自立して動く物よ?アナタに創造出来る?見た目じゃなくて中身が》


「・・・無理。え?でも今までの魔物はどうやって・・・」


《私が補完してるに決まってるでしょ?》


「それって僕が創る意味・・・」


《ないわね。でも創る魔物を決めてるのはロウだし、マナを出してるのも・・・まあ、ロウになるかな?》


なんだか釈然としないな・・・結局ダンコがいなきゃ何も出来ないような・・・


《もし自分だけで創りたいなら中身を教えようか?10年くらい頑張って覚えればゴブリンとかコボルトくらいなら創れるかもよ?》


「・・・やめとく・・・」


まあダンコがいれば覚える必要ないなら問題ない・・・うん




冒険者生活三日目


今日は3階だ。2階を攻略してから1週間・・・門番をしながら考えたオリジナル魔法を試す時が来た!


《暇なのね・・・辞めちゃえば?門番》


「黙らっしゃい!・・・さて、3階の魔物は、と」


3階は実に豊富な魔物が出て来る


2階に引き続きゴブリンとコボルトを筆頭にスケルトン、アースサーペント、ホーンアルミラージの計5種類


他が2~3種類なのに対して3階が5種類なのは理由がある


それは最初にダンジョンを作った時に3階が最下層だった為に気合いを入れて広く作り過ぎたからだ


今となっては意味もなく広い階層になってしまった為にせめて魔物の種類を、と5種類の魔物を配置する事にした


しばらく魔物を倒しながら進むと現れたのは冒険者としては初めて遭遇するスケルトン。棍棒と盾を装備した骨の魔物だ


「スラミ君・・・少し下がってなさい」


「はい」


《何よ・・・スラミ君って・・・》


呆れるダンコを無視して1週間考えた魔法の内の一つを披露する・・・その名も・・・


「いでよ!氷の剣!」


剣の生成は道具作りでお手の物・・・それと魔法を組み合わせて作り出した魔法の剣だ


「さあ、行くぞ!スケルトン!」


氷の剣を手に持ちスケルトンとの距離を詰める


棍棒を華麗に躱して背後に回り込み、スケルトンの頭部に氷の剣の一撃を・・・って!?


「・・・」


《・・・》


氷の剣が・・・スケルトンの頭部に負けた・・・


氷の剣はパキッと簡単に折れて、僕の手元には柄の部分だけが残る


「スケルトンの頭部って・・・硬い?」


《ただの薄っぺらい氷の塊よりは、ね》


「むっ・・・考えた時は鋭く何でも斬れる剣が出来るはずだったの・・・ボッ!?」


か、完全に油断した・・・いつの間にこちらを向いていたスケルトンが棍棒を振って来て肩に当てられてしまう


鈍い音が頭の中に響く


ヤバイ・・・追撃が・・・来る!


「このっ!・・・え?」


追撃に備え構えるもスケルトンの背後に立ったスラミが腕を伸ばしそのままスケルトンの頭に振り下ろした


スケルトンは呆気なく崩れ去る・・・あれ?なんでスラミはスケルトンを攻撃したんだ?


《荒れてるわねぇ》


「荒れてる?」


《アナタが攻撃されて怒ったんでしょ?》


「怒るって・・・そうか・・・そうなんだ・・・」


なんだか少し嬉しいな・・・スライムだから感情とかないと思ってたけど・・・眷族だからかな?・・・イッ、イタイ・・・


興奮状態から覚めたからなのかスケルトンにやられた肩が急に痛み出す


当てられた箇所を手で押さえ、回復魔法を唱えた


「・・・ヒール」


マナが流れて来るのが分かる・・・暖かく心地よいマナ・・・すると痛みは引いていき動かせるようになった


「スラミ・・・ありがとな」


「はい」


「にしても・・・なんで簡単に折れちゃったんだ?」


《イメージ通りじゃないの?だって氷で作った剣なんてそんなもんでしょ?》


「何でも斬れる剣をイメージしたんだけど・・・」


《あのねえ・・・イメージで斬れ味なんてそう簡単に出せる訳ないでしょ?》


「・・・簡単にって事は作れなくもない?」


《まあ出来なくもない・・・かな?けど時間とマナの量がかなりかかるし繊細な技術が必要だからと戦闘中にはちょっと無理かもね》


「やり方は?」


《やり方は簡単よ。斬れるように鋭くイメージして作った後にマナを流し込むの。けど一気に流し込むと耐久度によっては壊れちゃうからゆっくりとね。マナを流せば流すほど斬れ味と耐久度は上がる・・・まっ、作った物によっては限界値が変わる・・・氷なんてそんなに多く流せるものではないわね》


ふむ・・・物は試しだ、やってみるか



氷の剣を作り・・・マナをゆっくりと流し・・・適度なところで・・・おりゃ!


近くの壁を斬り付ける


するとさっきはスケルトンの頭にすら負けたのに、それよりも硬いはずのダンジョンの壁に傷が入る


「え?」


《ああ!壁に傷が!!補修もマナが必要だというのになんということを!!》


「ご、ごめん・・・で、どうだった?今の速度なら戦闘中でも使えなくはないと思ったけど・・・」


襲いかかって来ている魔物には不向きだけどこちらから仕掛ける場合なら・・・


《・・・ハッキリ言うわね・・・》


「う、うん」


《・・・悔しいけど使えるわ。まあ魔物を前にした時どうなるか分からないけど・・・初めてやった割には上出来・・・いえ・・・才能・・・あるかもね》


「え?・・・才能?」


《ハア・・・そうよ。薄々気付いてたけど・・・アナタは戦いに関しての才能がある──────》

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