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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
379/856

375階 釣り人ゼムとアツウ

屋敷に戻ってからちょうど1週間・・・説得し続けてようやくゲートを使う許可が下りたけど条件として『体調が万全であること』と言われ屋敷に缶詰状態だった


その間は屋敷でのんびりと・・・時折ナージやセイムそれにジェファーさんが部屋を訪ねて来て雑談や街の方針などを語る程度・・・辺境伯としての仕事も一切させてくれなかった


もちろんエッチな事も・・・


シークスとヤットについてはサキに頼んで探しに行ってもらったが結局見つからなかった。まあサキが『興味無いから顔とか覚えてないにゃ』と言ってたから期待してはなかったが・・・ケッペリに居てくれてたら探せそうだけどもし他の街にでも行ってしまってたら見つけるのはかなり難しいだろうな


とりあえず復帰したからにはケッペリだけでも必死に探したフリをしておかないとな・・・呼んだ手前は


「・・・本当に本当に大丈夫?セシーヌ様が最低1週間と言っただけで実はまだフラついているとか・・・」


「だ、大丈夫だって!ほらこのとおり!」


と、動き回って元気アピール


本当は次の日には全快っぽかったけどそれをサラに言いに行ったら『ダメ』と一言で片付けられてしまった


セシーヌが言った最低1週間は許可が下りないと悟った僕はせっせこせっせこダンジョン外で何が出来るか色々試していた


ダンコやサキがダンジョン内でしか創造出来ないと言っていたがそれはマナも使ったものの話だ。魔力100%のものならばダンジョン外でもつくる事が出来る・・・けど物は魔力100%にするとかなり禍々しい物が出来、魔物は魔力100%だと魔獣になってしまう・・・あまり使い道がないのでしばらくはゲートだけにしておこうと早々に諦めた


まあ物はともかく魔獣は使い道ありそうだけど・・・魔獣はほとんど見た事ないし魔獣を従えていたら人から魔族と勘違いされそうだし・・・うん、やっぱりやめておこう



「さて・・・目的はシークスとヤットの搜索・・・探していなければ・・・諦めよう」


「それより本当に大丈夫なの?ちゃんと覚えてる?しばらく行ってないから景色とか忘れてない?」


メイド服のサラが僕を下から覗き込み心配そうな顔で尋ねてくる


「大丈夫大丈夫・・・記憶力だけはあるから」


て言うかあまり不安にさせないで欲しい・・・大丈夫・・・だよな?


少し不安になったので一番印象深い場所を頭の中でイメージしてゲートを開いた


ここなら絶対大丈夫なはず・・・少しドキドキしながらゲートを潜り抜けると心地よい潮風が鼻腔をくすぐる


ああやっぱりいい・・・この匂い


「なんでよりにもよってここなのよ・・・あれ?」


ケッペリと言えば港だろ・・・と、返そうとしたがサラが何かに気付き見ていたので僕はそっちが気になり視線を向けた


「げっ・・・あれは・・・」


どうやら向こうも僕達に気付いたようで釣った魚を入れるバケツを持つ為の棒を持って何やら殺気を放ちながらこちらに向かって来ていた


そう・・・彼の名は釣り人!


「・・・なんで怒っているのかしら?」


「ははっ・・・さあ?」


ぶっ飛ばした時はアツウの顔だったし・・・バレてないよな?


「おいそこの!ロウ・・・で間違いないか!」


いやせめて名前くらい覚えろ


「だったら?」


「色々話を聞いた結果、アツウに化けたのは貴様と判断した!よくもあの時ブホッ!」


「あらごめんなさい・・・ご主人様は病み上がりでしてあまり不躾に殺気を放たれると具合がまた悪くなってしまいそうなので」


見事な上段蹴りが決まり吹っ飛ぶ釣り人・・・死んでないよな?


「ぐっ・・・貴様!邪魔をするな!」


「誰に怒鳴ってんだ誰に」


起き上がりサラに向けて怒鳴る釣り人に怒りが込み上げる・・・その瞬間体が勝手に動いて釣り人の頭を鷲掴みにすると地面に押し当てる


「ぐっ・・・このっ・・・」


「黙れ・・・このまま頭を潰すぞ?」


体が軽いっていいなぁ・・・力もスムーズに入るし・・・これなら簡単に頭を潰せそうだ


「なっ!?お、おおい!何やってんだ!!」


そこに現れたのは・・・本物のアツウだった


「あれ?貴方は・・・あの・・・うちのゼムが何かやらかしました?」


「アツウ!コイツだ、コイツがお前に化けて俺を・・・ガフッ!」


黙れ釣り人・・・お前に喋る権利はない


更に地面に押し込み本気で潰してやろうかと思ったがアツウとサラに止められた


その後仕方なく話し合いをする事に・・・立ち話もなんだからと前に食事したテーブルを拝借して4人で宅を囲む。そっぽを向く釣り人ことゼムにイライラするがここは我慢我慢


「あの・・・ロウニール辺境伯殿ですよね?フーリシアの・・・」


「そうだ」


「えっと・・・色々話は聞いております。で、なぜこのような事に・・・」


「・・・そこの釣り人・・・ゼムとやらがいきなり私に殺気を放ち近付いて来た。それを窘めた私のメイドに今度は怒鳴り散らしたので頭を潰そうとした・・・それだけだ」


「頭を潰そうとって・・・そんなバカな・・・」


「フーリシアの窘めるっていうのは蹴りを頭に放り込む事を言うのか・・・それは初耳だ」


「ああ、言い間違えた・・・窘めるじゃなくて躾の悪いアホを調教しようとして、だった」


「貴様ぁ!!」


「ゼム!よせ!・・・ハア・・・事情は分かりました。ですが少々やり過ぎでは?」


「そうか?フーリシア王国なら極刑でも文句は言えないぞ?」


「確かにそうかもしれませんがここはラズン王国です。それに話に聞くとどうやら私に化けて色々とやって下さったみたいで・・・怒りをぶつけられても仕方ないのでは?」


「本気で言ってるのか?」


「ええ・・・私も守護天の1人・・・同僚が殺られそうになってたのにはいそうですかと納得するほど丸くはないのですよ」


「なるほど・・・じゃあ判断はそっちの頭に委ねよう」


「あたま?」


「ゲート・・・聞こえますか?」


小さくゲートを開いて声を掛ける・・・いつものあの部屋にいればいいのだけど・・・


「・・・これは・・・ローローか?」


「殿!?」


「あん?・・・その声は・・・アツウか?なんだ・・・どうなってんだ?」


「おたくのアツウとゼナに絡まれましてね・・・ゼナがいきなり殺気を放って近付いて来たのでサラが蹴りを食らわしたら暴言を吐いたので頭を潰そうとしたらアツウに止められて今度はそのアツウに喧嘩を売られている状態です」


「???・・・おい意味が分かんねえぞ?」


「殿!コイツがケッペリの大騒動の時にアツウに化けて俺を・・・」


「そういやローローはアツウに変装してやがったな・・・で、ゼナはその時にアツウに変装したローローにやられた、と」


「はい!それでやり返してやろうと・・・」


「あーすまん・・・お前らには話が通ってなかったか・・・ローローはその時アツウに変装しこの国を救おうとしてたんだわ」


「・・・え?」


「ケッペリの騒動は裏で魔族が動いててな・・・つまり鬼化が増えたのは魔族のせいで多くの人が鬼化しちまった・・・それを止めようとローローはアツウに変装して魔族の行方を追ってたって訳だ」


「・・・って事は・・・」


「お前がそれを邪魔しようとしたからのした・・・ってのが真相だろうな・・・現にローローのお陰で国は救われギリスも・・・カミキリマルをやったがそれでも返しきれねえ恩を受けちまったって訳だ。ちなみにローローは俺より強えぞ?って事で黙って死んどけ・・・以上だ」


「なっ!・・・殿!?」


「グダグダうるせえな!てめえの喧嘩だろ?てめえが売った喧嘩だ・・・てめえでしりを拭け!てか復興はどうなってんだ?遊んでんじゃねえぞボケが!」


「あ、いや・・・」


「なんだまだ復興は終わってなかったのか・・・ゼナって奴が呑気に釣りしているからてっきり・・・」


僕が告げ口するとゼナは一気に顔を青ざめさせる・・・ふふふ・・・いい気味だ


「釣り・・・だあ?おいコラゼナ・・・俺はキッテから復興が終わったっていう報告なんざ受けてねえぞ?それなのにお前・・・」


「ち、違うのです!師匠から1日1回は釣りをするようにと言われてまして・・・」


「リュウダか・・・リュウダが悪いんだな?分かった・・・おい誰か!リュウダを呼んで来い!」


「ちちち、違います殿!師匠は全く・・・」


「うるせえ!そっちはそっちでケジメをつけろ!こっちはこっちでケジメをつけさせる!ローロー!好きにしろ・・・てかお前さんシャリファに行ったんじゃなかったのか?」


「・・・色々ありまして」


「そうか・・・まぁいい。そいつらは煮ても焼いても構わねえ・・・好きにしろ。ああ、それとカミキリマルは大事にしろよ?」


「分かりました・・・それでは」


ゲートを閉じるとアツウとゼナは可哀想なほどガタガタと震えていた。ゼナの方なんかはえげつないほどに・・・


「あー・・・互いに誤解があって生じた事だ・・・別にこれ以上何かするつもりは・・・」


「絶対殺される・・・師匠に・・・殺される!」


「終わった・・・私の出世コースが・・・度重なる失敗のせいで・・・完全に終わった・・・」


2人の様子を見て怒りも鎮まったが2人はそれどころじゃないみたいだった


僕も誤解を生むような事をしてたし逆に不憫に思えてきた・・・うーん・・・


「ゲート・・・あー、殿?」


「なんだ!まだ何かあんのか?」


「とりあえずリュウダには何もしないで下さい。もしするなら私の背中を抉った罰って事で」


「・・・なんだ?泣きつかれたのか?」


「いや、私も黙って動いていたので・・・彼らは自分の仕事を全うしようとしていただけなのに今更ながら気付きまして」


「そうか・・・そう言ってくれると助かる」


「それとアツウには色々迷惑をかけたので労ってやって下さい。ゲートを使って巻いたと思ったのに私のいるケッペリまで辿り着くなんてかなり優秀な人物なんですね」


「・・・そうだろ?俺も常々そう思っていた。まあお前さんのげーとはかなり特殊だからな・・・逃げられても仕方ない・・・さてリュウダが来たからもうこれで終いにするぞ」


「はい。ではいずれ・・・」


もう会いたくないけど・・・多分会う事になるだろうな・・・何となく


「あ・・・あ・・・ありがとうございます!この恩は一生忘れません!」


そんなに怖いのか・・・リュウダって


「くっ・・・感謝してもしきれません・・・ありがとうございますロウニール殿!」


そんなに出世したいのかアツウ・・・まあこの国で名前をまともに言えるお前は多分出世すると思うぞ?


さて、一悶着あったけど・・・さっさとシークスとヤットを見つけて行きますか・・・シャリファ王国へ──────

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