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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
378/856

374階 ゲート

「・・・ここは・・・」


目が覚めてムクリと起き上がり眠気まなこを擦りながら今いる場所を確認する


見慣れた景色だがどこか懐かしく安心する・・・どうやらここはエモーンズの屋敷らしい


「んん・・・ロウ・・・起きた?」


「サラ・・・ラズン王国の王様と会って・・・それから記憶がないのだけど・・・」


記憶の最後にあるのはラズン王国の城・・・そこから多分ゲートを使ってここに帰って来たのだろうけど記憶が飛んでしまっていた


サラが言うにはここに着いた途端に突然ぶっ倒れてしまったらしい


「まさか倒れるなんて・・・ん?」


布団の中の膝の辺りでモゾモゾと何かが動いたと思ったらニョキっと顔だけ出した黒猫サキが呆れ顔を僕に向けた


「当然にゃ。とっくに限界だったはず・・・途中で倒れなかったのは気を張っていたからで気が緩んだ瞬間に倒れたって訳にゃ」


そう言えば途中までフラフラしてたけど最後の方は特に気にならなかったな・・・もしかしたら途中で限界超えて気持ちだけで動いてたのかも・・・それならサキの言うように倒れるのも納得だ


「まあラズン王国でやる事はもうないししばらくゆっくりしてからシャリファ王国に向かってもいいかもね」


「そうね・・・それがいいかも。私もしばらくゆっくりしたいわ・・・昨日はお風呂も入ってないし・・・」


見るとサラは昨日の武道着のままだった・・・多分僕が倒れて心配してそのまま隣で看病してくれていたのだろう・・・


「とりあえずその手に持っている刀を閉まったら?」


言われて初めて気付いた


昨日王様に貰ったカミキリマル・・・この物騒な刀を持ったまま寝ていたらしい


「だね・・・そうだサキ、この刀を見てくれないか?」


「なんにゃ?・・・へえ・・・これはまた・・・」


僕が刀を少し抜いて見せるとサキは興味深げにマジマジと刀身を見つめた


「・・・ここまで魔力を放つとは・・・一体何体の魔物や魔族を切り刻んだのやら・・・」


「魔物や魔族を?・・・切りまくると武器に魔力が宿るのか?」


「魔物や魔族の血も魔力・・・それが染み付いて武器に同化している状態にゃ。ただ少し血が付いただけではこうはならないからかなりの数・・・それこそ1000・・・10000・・・そんなレベルにゃ」


「・・・なるほど・・・」


「しかも作ろうとして作れる物でもないにゃ。例えばロウが魔物の血を武器にドバドバかけてと同じようにはならない・・・いがみ合い争った結果に倒された魔物や魔族の恨みたっぷりな血が大量に必要って感じにゃ」


「・・・魔物は分かるけど魔族も?そんなに沢山魔族っている?」


「そんなに魔族の数はいないけどある種族は沢山いるにゃ」


「へえ・・・その魔族ってのは?」


「・・・目の前にいるにゃ」


「サキュバス?・・・そうか・・・ダンジョンの数だけサキュバスはいる・・・ラズン王国はダンジョンがほとんどないらしいからもしかしたらこの刀で全部・・・」


それなら納得だ・・・ほとんどのダンジョンをこの刀で攻略しダンジョンコアであるサキュバスも・・・


「となるとこの刀はサキにとって因縁のある刀って事か・・・」


「ん?そうでもないにゃ」


「え?だって同族を殺しまくった刀だぞ?」


「どこのサキュバスが殺されたからって別になんとも思わないにゃ」


「そ、そうなんだ・・・」


意外とドライ・・・いや、意外でもないか・・・関わりなんてほとんどないだろうし


「ていうか早く閉まった方がいいにゃ。ロウは平気だとしてもサラにはちょっとキツイにゃ」


「え?」


言われてサラを見ると難しい顔をして刀を見ていた


そっか・・・魔力が影響して・・・


「ごめん!気付かなくて」


すぐに鞘に納めるとサラの顔は穏やかになる・・・大気中に含まれている魔力の濃度より遥かに濃い魔力は近くにいるだけで悪影響を及ぼすみたいだ・・・全然平気だから気付かなった


「ううん、大丈夫・・・でも私は持つ事すら出来ないかな・・・」


サラですら持つ事も出来ない?・・・そっか・・・僕は魔力に耐性があるし鬼の血を引く王様達も・・・となるとこの刀を持つには魔力を通して扱えるかそれなりの耐性がないと無理ってことか


「何が宝刀だよ・・・呪われた刀じゃないか」


「まあ威力は高いと思うにゃ。何せ魔力を帯びているのだから・・・魔物や魔族・・・それに人間にも効果覿面にゃ」


そりゃあ魔力を帯びてればそうだよな・・・けど使える人が限られている時点でどうなんだろう・・・僕の知っている限りで使えるとしたら魔力を使えるシー・・・あっ!


「サラ・・・どうしよう・・・シークスとヤット放ったらかしにしてた・・・」


「あっ!・・・私もすっかり・・・」


「急いで迎えに行かな・・・ぐっ・・・」


立ち上がろうとした時、急に部屋が傾いた・・・いや、部屋ではなく僕が倒れた?


「ロウ!」


「・・・大丈夫・・・こんなもの・・・」


「そんな状態じゃゲートは無理にゃ・・・前に話したリスク・・・忘れた訳じゃないにゃ?」


ゲートのリスクか・・・けどさすがに置いてけぼりは・・・


「え?ゲートってリスクがあるの?」


「そりゃああるにゃ。しかもかなり致命的なリスクにゃ」


「・・・ロウ?」


なぜ黙っていたというお怒りの視線が背中に突き刺さる


「いやまあ・・・大丈夫かなって・・・」


「話して・・・そのリスクを。もし危険なようなら今後使用は禁止にするから」


いや・・・まあ・・・うん・・・そうなるよね・・・


「・・・ゲートってどうやって離れた場所に繋げられるか分かる?」


「・・・さっぱり」


「だよね・・・僕も聞くまでさっぱり分からなかった。説明するにはサキとダンコ・・・つまりサキュバスの能力について話さないといけない・・・サラに話しても大丈夫か?」


「サラならいいにゃ」


「・・・なら話すよ・・・サキュバスの能力とゲートの仕組みを──────」




サキュバス・・・ダンジョンコアである彼女達の能力は『そうぞう』だ。魔物を創ったり道具を作ったりダンジョンを作ったり出来る便利な能力


けど何をつくるにしてもいるものがある・・・それが想像力・・・頭の中でイメージしてつくり出すので必要不可欠な能力でありそれがないと上手くつくる事が出来ない


例えば僕が想像し創造した武器が曲がったり歪なのはそのせいなんだ


けど想像力がなくても代用が効く・・・それが記憶力


はっきりと覚えていれば頭の中でイメージしてつくり出せるって訳だ


僕は記憶力はいいけど想像力はからっきし・・・なので見た事あるものは簡単につくり出せるけど見た事のないものをつくり出すのは苦手だ


じゃあゲートはどういう仕組みか・・・それはそうぞうするんだ・・・見た事のある景色と今いる場所が繋がっている・・・とね


それが形となり現れるのがゲート


想像し創造する・・・サキュバスの能力をフル活用って感じだな


「・・・なるほど・・・だから行ったことのある場所に・・・じゃあリスクは?」


「・・・ゲートはかなり強力な能力なんだ・・・頭の中で想像した場面・・・そこと現在の位置を繋げるのは生半可な力ではない。遠く離れていても・・・その想像した場所が移動してたとしても繋げてしまうのがゲート・・・けど問題はゲートの先が果たして想像した通りの場所なのかって事だ」


「え?・・・違うの?」


「いや、違わない・・・けど覚えていたと思ってたけど曖昧な部分があったり繋げている最中に不安になったりするとゲートの繋げた先は想像した場所とは違う場所かもしれないってこと」


「・・・でも違ったら戻って来れば・・・」


「その間違った先に魔力があればね」


「・・・え?」


「この大陸ならどこに行っても魔力はある・・・けど他の大陸は?この世界がどこまで広いか知らないけどこの大陸だけが世界って訳じゃない。つまり間違って行った先が魔力の全くない未知の世界の可能性もあるんだ」


「未知の・・・世界・・・」


「そうなるともう戻っては来れないだろうね。体内にある魔力じゃたかが知れてる・・・その魔力じゃ到底戻る程の魔力は得られない。僕は人間だから魔力がなくても死なないけど魔族なら時間が経てば衰弱死してしまうらしいよ?」


「・・・」


「目に見えている場所にゲートを開くのは問題ない・・・もしかしたら違うかも・・・なんて思う訳がないからね。でも記憶が曖昧で繋げた時にふと思い違いかも・・・なんて考えてしまうとゲートは行き先を失い全く知らない土地に繋げてしまう・・・っていうリスクがあるんだ」


「それってかなり致命的なんじゃ・・・」


「まあ僕は記憶力はいいから大丈夫だと思っているけど、もしゲートを繋げている最中に邪魔が入って気が散って変な場所を想像したりしたら・・・アウトだろうね」


「・・・使用禁止!」


「待って待って・・・確かにリスクはでかいけどそれを補って余りある程の力・・・さすがに使わないのは・・・」


勿体ない!・・・けど強く言えない・・・なぜならサラの背後にいもしない巨大なだいじゃが見えるから!


「別にそう大したリスクじゃないにゃ・・・人間いる所に魔力あり・・・常識にゃ」


「その人間が居ない所に飛ばされたらどうするの?」


「そんな場所があるかにゃ?気が付けば子作り子作りわっしょいわっしょいしている人間が?」


「ちょ・・・どういう意味よそれ」


「大地には限りがあるけど人間の数には限りはないにゃ・・・潰しても潰しても無限に現れるが如きにゃ・・・魔族や魔物が居なかったら今頃大陸は人間関係だらけにゃ」


そうなのか?・・・結婚して子供を1人産むと人口は1人減るよな・・・2人でトントン・・・まあでも子沢山も結構いるし確かに増えるかも・・・僕も子供が2人産まれたからと言ってわっしょいわっしょいしないなんて考えられないし・・・


「人間は数が多くなれば新たな土地を探すにゃ・・・それがたとえ海の向こうでもにゃ。なのでこの世界にどれだけの数の人間がいるか知らないけど色んな土地に蔓延っているのは間違いないにゃ」


蔓延るって・・・えらい言われようだな


「けど分からないでしょ?」


「ダンジョンで『徘徊するもの』に出会すよりかなり確率は低いにゃ」


「『徘徊するもの』か・・・28階のビッグアームは厄介だったな・・・そう言えばその辺もロウが決めてたのだな」


「うん・・・まあ逃げてくれればっていう感じで・・・緊張感を持たせる為にね」


「それと出会すよりは低い・・・か・・・けど・・・」


安全を考えれば・・・まあ使わないに越したことはないよな


「まあほら・・・別にゲートはすぐ閉じる訳じゃないし違ったら戻れば済む話だから・・・」


実はそうでもないんだけどね・・・空中に投げ出されたり海の中だったりする可能性もあるのだとか・・・


「・・・そうね・・・それもそうよね・・・」


納得しかねているって感じだな・・・ここは追い打ちをかけてもらうしかない


サキをチラリと見ると僕の意図に気付いたのかコクンと頷いた


「まああれにゃ・・・体調が万全なら間違いは起きないはずにゃ。今の状態だと繋いでいる途中でフラついて空の上や海の中・・・なんてところに間違って繋いじゃうこともあるかもしれないけど・・・」


「空の上?・・・海の中?」


うおい!それ言っちゃダメなやつだろ!


「・・・空の上からすぐに戻って来る?海の中から?」


「あーえっと・・・頑張って飛ぶ感じ?海の中も息を止めれば何とか・・・」


「禁止!ゲートは使用禁止!」


再び大蛇がその姿を現し舌をチロチロさせて威嚇した


こりゃあ説得に時間がかかりそうだ・・・すまんシークス、ヤット──────

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