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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
376/856

372階 パズズ

「め、面妖な・・・」「まさか本当にこのような奇っ怪なものが存在するとは・・・」「・・・気持ち悪い・・・」「報せねば・・・アツウ殿に見つけたと・・・」


1人の影があるものを見つけると他の影達も集まり一様に驚愕の表情を浮かべる


そんな中、1人の影が渡された通信道具で連絡を取ろうとするとその手にそっと手を添えて止める者がいた


「な、何奴!?」


「気にしないにゃ・・・気にしないで。これの処理を頼まれた者だから安心してにゃ・・・して。それとここからすぐ逃げた方がいいわよ?死にたくなければね」


「???」


怪しげな言動のその女性は大事な部分のみを隠した扇情的な服装をし影達の視線を独占しながらある大木の前に立つ


「・・・相変わらずグロいわね・・・パズズ」


女性が大木を見上げて目にしたものは木に張り付いている巨大なイナゴ


2mはある巨躯も木の葉や枝に紛れて注視しなければ分からないほど景色に溶け込んでいた


「・・・」


「相変わらず憶病ね・・・隠れてコソコソと・・・本当数を増やすしか脳がないんだから・・・」


「サキュバス!お前のような引きこもりに言われたくないわ!」


もはややり過ごすのは無理と判断したパズズは木から離れ羽根を広げて振り返る


まさに巨大なイナゴ・・・見るものが見たら気絶しそうなその見た目にサキュバスと呼ばれた女性・・・サキは顔を顰め影達は嫌悪感を露わにし後退る


「ハア・・・振り向かないで欲しかったわ・・・背中の方がまだ見れるのに」


「黙れ売女が!魔王が死してすぐに他の者の庇護下になるとは・・・しかもそれが人間とは魔族の風上にもおけぬ!」


羽根を羽ばたかせ6本足をギチギチと動かしながら激高する様に影達は更にもう一歩下がりサキは眉間に皺を寄せた


「その事ある毎に足を動かすのやめてくれない?話す気も失せるんだけど」


「ふん!貴様と話す気など毛頭ないわ!サキュバスはサキュバスらしくダンジョンの奥底に引きこもってればいいものを・・・」


突然パズズが金切り声を上げる


サキは咄嗟に耳を塞ぐが背後にいた影達はまともにその声を聞き膝をつく


「・・・だから言ったじゃない・・・死にたくなければ逃げろって」


サキは知っていた


パズズはただ単に耳障りな奇声を上げた訳ではなく別の目的があるという事を


「我の為に下僕となるものを連れて来てくれたのだろう?ありがたく頂戴する」


パズズがそう言うと影達はゆるりと立ち上がりサキに近付く


耳から血が垂れ落ち目は充血し僅かに見える肌は黒ずんでいた


「・・・ハア・・・」


深くため息をつき腕を横に振るといつの間にかその手には大きな鎌が握られていた


「急造の魔人4体でどうにかなると?」


鎌を振り回し近付く影達に一閃・・・すると影達の首が順番にポトリポトリと地面に落ちる


「思ってないさ」


「っ!」


すぐ背後から声が聞こえる


すると振り向く暇もなくパズズはサキの背中に張り付いた


「・・・キモッ!くっつかないでグッ!」


サキが背中から剥がそうと鎌を逆に構えたその時、パズズは尻の先から先の尖った管を出してサキの背中に突き刺した


「同じ魔族と言えど直接注ぎ込まれたら防ぎようがあるまい」


「・・・何・・・を・・・」


「我の能力は知っているだろう?『支配』・・・貴様は今から我に支配されるのだ・・・安心しろ、たまには人間を抱かせてやろう」


「・・・ヒトを・・・」


「うん?なんだ?」


「ヒトを淫魔みたいに言うな!!」


刃を逆に持った鎌を振り上げパズズの頭に突き刺す。するとパズズはこの世のものとは思えない叫び声を上げてサキの背中から離れ飛び上がる


「ぐぅぅ・・・貴様・・・複製品のくせして我の頭に刃を突き立てるとは・・・」


「うるさい黙れ・・・あー気持ち悪い・・・背中でカナカナうるさいのよ!」


「気持ち・・・おのれ・・・」


パズズは触覚をサキに向けるとそこから魔力を放出した


その魔力を浴びるとサキの体内に注ぎ込まれたパズズの魔力が反応し体ばかりか脳まで支配する・・・はずだった


「なぁに?別にアナタの薄汚い魔力なんて要らないわよ?」


「・・・バカな・・・たとえ同族であろうと直接魔力を注ぎ込めば操れぬはずが・・・」


「ハア・・・忘れたの?魔獣は魔従・・・従う事によって本来の力を発揮出来るように魔族は魔属・・・属する事によって力を発揮する事を」


「魔王亡き今貴様とて同じであろうが!」


「話を聞いてなかったの?私は彼・・・ロウの手下よ?」


「ハッ!人間に属したとでも言うのか?そんなバカな・・・」


「いいえ本当よ。ちなみに私の名前はサキ・・・あと数分だけど覚えといてね」


「・・・有り得ぬ有り得ぬ有り得ぬ!魔族が人間に属するなど・・・有り得ぬだろうが!!」


「ただの人間ならね。いつも魔王の言う事も聞かずにコソコソと戦力を整え反旗を翻そうとしているから知らないのよ・・・世間知らずもいいとこ。魔王亡き今?どうして魔王が死んだか知らないクセに・・・」


サキは鎌を構えると一歩ずつパズズに近付く


「どうして・・・だと?そんなもの人間の勇者とやらに・・・」


「ああ・・・だからこれといって危機感を感じてないのね。どうせ死なないと思って・・・」


「・・・何が言いたい・・・」


「魔王は・・・勇者・・・ではない者の手によって殺されたのよ」


「そんなはずは・・・そんなはずない!魔王が勇者以外に殺されるなど・・・」


「別に信じらないのならそれでいいわ。死んで後悔しなさい・・・あ、死んだら後悔も出来ないか・・・」


「ま、待て!そ、そうだ!我と協力しないか?我と組めば人間を支配し新たな魔王として君臨する事も・・・」


サキの言っている事を信じた訳ではない。だがもし万が一と考えると途端にこれまで感じた事のない恐怖が湧き出て来た


不死であればこそ・・・意識せずとも無茶をしていたのは根底に不死だからという気持ちがあったから・・・だからこそパズズは魔王に逆らい続けていた・・・ラズン王国があるこの地で


「・・・新たな魔王・・・ね。少し前ならもしかしたら興味が湧いたかも・・・でも今は・・・アナタへの怒りでそんな事はどうでもいいと思えるわ」


「い、怒りだと?我が何をした?・・・いや、先程は些か言い過ぎたかも知れん・・・それに魔人を差し向けたのも・・・だがそんなものは取るに足らない・・・」


「死にそうだった」


「・・・なに?」


「アナタがくだらない事をしているが為に・・・人間に刺され死にそうだった・・・」


「い、意味が分からぬ・・・サキュバス・・・いや、サキが人間に刺されて死にそうだったのか?」


「違う・・・これはただの八つ当たり・・・本当なら刺した人間に復讐したいところだけど・・・アナタがいなければ起きなかった・・・と考える事にしたの」


「や、八つ当たり!?ちょ、ちょっと待て!いくらなんでもそれは・・・」


「死になさい・・・私の腹の虫を抑える為に・・・」


「くっ!人間ごときの眷族である貴様なんぞに殺られてたまるか!」


羽根を羽ばたかせすぐにその場から飛び立つパズズ・・・だが・・・


「人間ごとき・・・ね。そう言えばまだ言ってなかったわね・・・魔王を殺したのが・・・私の主であるロウニールにゃ」


「にゃ?・・・なっ!?」


語尾に気を取られ振り返るとそこにサキがいた


飛んで行けば逃げられると思っていたが失念していた・・・サキュバスにはゲートがある事を


「ま、待て待て!仲間になる!我もその人間の眷族に・・・」


「ご主人様は言ってたにゃ・・・『お前は要らない』って・・・にゃ!」


空中で鎌を振り上げパズズに向けて振り下ろす


パズズは断末魔をあげることすらなく真っ二つとなり地面に落ちていった


サキは落下しながら猫の姿になると空中で一度回転して地面に着地し、動かず無惨な姿を晒す二つになったもと同族を見て長い尻尾を揺らした


「処分完了にゃ・・・ご主人様──────」




サキの報告を聞くまでもなく結果は知っていた


突然何も喋らなくなったラナーが今度は気を失い倒れそうになるのを支え、顔を見ると険がとれ穏やかな表情になっていた


どうやらパズズが死に支配が解けたようだ・・・しかしパズズってよく考えると怖い敵だよな・・・魔人化させなくても人間を自由に操れるなんて恐ろし過ぎる。見た目とか全然変わらないからぜったい騙されるよな・・・


「魔族の始末は終わったぞ」


「・・・ご苦労」


ん?なんか王様のその返事を聞くとまるで僕が王様の命令で動いていたような気持ちになる・・・邪魔しただけのクセに偉そうに・・・


「魔族が?・・・俺様は・・・どうなるんだ?」


ギリスが自らの体を見て心配そうに呟く。まさかパズズが死ねば元に戻れるとでも思っていたのか?


「知らんよ・・・ハクリみたいに鬼のまま過ごすしかないんじゃない?」


「ハクリ・・・いや何言ってやがる!ハクリは鬼化しそうになったがキョウへの想いが・・・ハクリにとっての天がそこにあったから鬼にならずに・・・」


「ってお前が読んだ絵本には書かれてたってか?」


「・・・含みのある言い方だな」


「そうか?そう聞こえただけだろ?」


「・・・親父」


「なんだ?」


「そういやまだ途中だったの忘れてたぜ・・・止めんなよ」


「・・・好きにしろ・・・鬼になったら介錯してやらぁ」


突然始まった親子の会話・・・なかなかに物騒な内容に聞こえるが・・・


「イテテテ・・・誰だよいきなり突き飛ばしたりしやがったのは・・・」


このタイミングでリュウダ復活・・・するとサラが突然リュウダの前に立ちはだかる


「ご主人様・・・実はかねてよりこの少々わんぱくな少年に躾とやらを叩き込もうと思っておりました。ご許可をお願いします」


「あ?わんぱく少年だ?」


ん?せっかくパズズを倒したのにこちらもまた不穏な空気が流れているぞ?



勝負の続きをしようと僕の前で拳を鳴らすギリス


リュウダに躾とやらを意気込むサラ


もはや冗談で済まされるような雰囲気ではなかった



「あー・・・サラ程々にな・・・」


「畏まりました・・・粉々に」


ほどほどだってば!


ったく・・・時間が経って少しは回復してきたけどこっちはさっきまで立っているのがやっとの状態だったんだぞ?


・・・まあ仕方ない・・・しこりを残して終わるよりはスッキリして終わった方がいいか・・・


「仕方ないからかかって来いギリス・・・少し遊んでやる──────」

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