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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
374/856

370階 ギリスの天は・・・

ラナーを連れて必死に逃げるヤットとそれを追うリュウダ


何気に躱すのだけは上手いヤットだがそれも時間の問題だ・・・すぐに追い込まれラナーは・・・いや下手したらヤットまでやられてしまう


くっ・・・後で説明すればいいか・・・今は2人を助けるのを優先して・・・


「何をするつもりだ?」


風牙龍扇を握り締めいざ行動に移ろうとした矢先に背後から声が・・・


振り返るとワグナが私を見下ろし拳を突き出した


「ちょっ・・・いきなり何をするのですか!」


「さっきから妙だ・・・お前さん達何を企んでいる?」


「・・・」


「もしそれが・・・少しでもギリスの鬼化に関わっているとしたら・・・俺ぁ絶対許さねえ・・・戦争だ・・・たとえ離れていようとフーリシアをぶっ潰してやる!」


「勘違いしないで下さい・・・ギリスの魔・・・鬼化とは全く無関係です・・・私達は・・・」


「無関係だぁ?それは俺が決める事だ・・・全部吐け・・・そしたら俺が判断してやる!吐かねえなら無理矢理にでも吐かせてやるよ!」


「・・・手負いのあなたに出来るかしら?」


「こんなもん怪我のうちに入らねえよ・・・ギリスの天になる女だ・・・殺さねえ程度に壊してやる──────」




三箇所で始まった戦いは激化を極めた


鬼化したギリスと戦うシークス


ラナーを追うリュウダから逃げるヤット


そして怒りに任せ拳を振るうワグナと相対するサラ


どの局面もフーリシア陣営は劣勢を強いられていた


シークスはギリスの懐に入り込みダメージは与えられるものの鬼の回復力を超える事は出来ずに徐々に疲弊していき、ヤットはリュウダの変幻自在の槍術に次第に削られ始める。サラは圧倒的な力の前に屈する寸前まで追い込まれていた


「どうした?そんなものか?えすらんくってのは」


「・・・私も自分が情けなくなるわ・・・手負いのジジイにダメージひとつ与えられないなんて・・・」


「ジジイたぁ言ってくれるな。俺はまだ40だぜ?」


「・・・ギリスはいつの子よ?」


「15だ」


「マセガキだったのね・・・ちょっと待って・・・ギリスって私と同い年?」


「知らねえよ、んなこたぁ」


「・・・親子揃って老け顔・・・同情するわ」


「軽口叩けるようならまだまだ壊せそうだな・・・右の次は左か?足か?キレイに折ってやる・・・治りは早いから安心しろ」


「・・・それはどうも」


動く度に右腕に激痛が走る


ワグナの一撃はサラの右腕を砕いていた


それでも容赦なく続く攻撃に次第に視界は霞み始め意識が朦朧としてくる


このままでは負ける・・・そう思った瞬間、ワグナの元に1人の男が駆け付けた


「殿!今すぐリュウダ様に攻撃を止めるよう言って下さい!」


「・・・あん?・・・アツウか。鬼はどうした?」


「今はそれどころでは・・・実はとある情報を得まして・・・大きい声では言えませんのでお耳をおぉ!?」


アツウと呼ばれた男がワグナに耳打ちをしようとした時、何故かワグナは近付くアツウに拳を突き出す


「・・・何の真似です?殿」


間一髪で躱したアツウが睨みつけるとワグナは無言で距離を詰め再び拳を突き出した


「受け止めるか・・・誰だお前」


「・・・アツウです」


「下手な芝居はやめて正体を晒せ・・・何者だ?」


「・・・なんで分かった?」


「勘だ」


「おいおい・・・その勘が外れてたらどうするつもりだよ」


「外れてたとしても問題ねえ・・・俺はアツウにローローを探せと命じた・・・ここにいるって事は命令違反だからな・・・命令違反には鉄拳制裁が世の常だろ?」


「融通の効かない嫌な国だな・・・」


「褒めても何も出ねえぞ?」


「褒めてねえよ・・・釣り人といいお前といい・・・どうしてすんなり言うことを聞いてくれないかな・・・面倒くさい」


「釣り人?よく分からねえがてめえの正体は分かった・・・何を企んでやがる・・・ローロー」


「だからローローじゃなくて・・・ロウニールだって言ってんだろ?バカ殿──────」




変身を解いて仮面を外した


守護天のアツウって奴に化ければ騙せると思ったけど忍者達だけだったな・・・騙せたのは


「変装名人だったか・・・てめえじゃなかったらワットの後釜にしてやりてえところだな」


「そりゃどうも・・・ところでひとついいか?」


「あん?・・・って!」


こりゃあ便利だ


魔力で足を作り出し蹴りを放つ


シークスと戦う鬼の技を見よう見まねで試してみたが意外と上手くいき王様の右腕を折る事に成功・・・威力スピード申し分なし・・・この技は『魔蹴り』と名付けよう


「てっめえ・・・何しやがる!」


「人の彼女に手を出したんだ・・・それ相応の報いだろ?少し待ってろ・・・治してやるから」


「・・・あん?」


猛る王様を無視してサラの元へ


脂汗をかきながら押さえる右腕にそっと手を触れヒールを唱えた


「・・・ありがとう・・・ロウ」


「遅くなった・・・状況はあまり芳しくないみたいだね」


「うん・・・ギリスが魔人に・・・」


「あれギリスなの!?なんでまた・・・」


「細かい事は後で話すわ。今は国王様を・・・それにシークスとヤットを」


「だね」


見るとシークスとヤットもギリギリな状態だ


ギリスの事は気になるけど今はそれよりも優先させるべき事がある


「おい・・・腕を出せ。治してやる」


「・・・てめえで折っといてなんなんだ・・・てめえは何者だ?」


「ただのお節介焼きだ・・・いいから腕を出せ・・・他にも怪我しているところは治したやる。それとついでにこの国もな」


「あん?」


さっさと次の国に行っとけばここまで巻き込まれる事はなかったのに・・・まあいいか



「・・・腕が・・・胸の傷も・・・まさかてめえ・・・聖者か?」


「違う違う・・・あ、ちょっと待ってくれ」


王様の治療を終えて話をする前に2人を助けないと・・・距離があってもこのくらいならいけるか?


「えっと・・・『魔拳』?」


何となく名前を付けた魔力の拳を使いシークスと戦う鬼・・・ギリスとヤットを襲うリュウダを殴り飛ばす


ギリスは拳を食らい膝をつき、リュウダは軽く吹っ飛んで行った・・・うーん、便利


「てめえ!」


「まあ待て・・・あっちこっちで暴れられたら気になって話も出来ないだろ?」


「このっ・・・」


「いいから耳を貸せ・・・このままだとフーリシア王国に聖者を連れ戻さないといけない羽目になる・・・それにこの街は疎かこの国が滅ぶかもしれないぞ?──────」




手っ取り早く事実だけを王様に耳打ちする


すると王様は眉をひそめ僕を睨んだ


「・・・なぜてめえに()()が分かるんだ?」


「知り合いに専門家がいてね・・・どうする?僕はどっちでも構わないぞ?」


「どっちってのは?」


「滅びたいか滅びたいくないか、だ」


「んなもん一択じゃねえか・・・ったく・・・とんだ疫病神だなお前は」


「ちょっと待て・・・そもそも僕が来なかったらもっと最悪な事態になってたんだぞ?それを・・・」


「違ぇな・・・これが最悪な結果だ疫病神」


「福の神だ言い直せ王様」


「殿だエセ福の神」


このっ・・・って、ここで王様と言い争ってても仕方ない・・・今はこの場をどうするか考えないと・・・にしてもシークスの奴あの鬼相手によく粘ってるな。身長は倍以上・・・もちろん体重も。それに加えて無尽蔵の魔力に多彩な技・・・シークス1人じゃ厳しいと思うけど・・・またあれから強くなったのか?


「お兄さん何者?」


これからどうするか考えながらシークスを見ているといきなり声を掛けられる


振り向くとラナー・・・そしてヘロヘロになったヤットがいた


隣でむせるくらいの殺気を放つオッサンに何とか堪えてくれと心の中で祈りラナーに向き直る


「何者だと思う?」


「そういうノリはあんまり好きじゃないかなー?早く答えないとお友達がペシャンコになっちゃうよ?」


「互角に戦ってるように見えるが?」


「でしょ?場を盛り上げる為に調整してるの・・・凄いでしょ?」


鬼をコントロール出来るか・・・それはなかなか・・・ふむ・・・


「別にアイツはペシャンコにしても構わないが「おいロウニールてめえ!」その前にひとつ聞きたい」


ヤットがうるさいが無視だ無視


「こっちの質問に答えたら何でも教えてあげるよ」


「それは嬉しいね・・・僕はフーリシア王国辺境伯ロウニール・ローグ・ハーベス・・・エモーンズ出身で・・・」


「あ、そういうのいいから。私が聞きたいのはなぜ魔力が使えるか、よ」


無言でシークスを指差すがラナーは首を振った


「あれは無理矢理マナで魔力を押さえ込んでいるだけ・・・お兄さんは完全に魔力自体を操っていた・・・人間に出来るはずないのに・・・かと言って鬼にも見えないしましてや同族でもない・・・ってな訳でお兄さんが何者か気になって気になって」


ああ、そうか・・・流石に二戦目はキツイと思って楽をし過ぎた・・・意外と粘るんだもんなぁ・・・釣り人


現在絶賛貧血中・・・実を言うと立っているのも辛かったりする


さてどうする?・・・サキュバスの核を飲み込んだ魔族人間ですとでも答えるべきか・・・色々説明が面倒そうだぞ・・・ん?いや待てよ・・・


「話すと長くなるがいいか?」


「いや、良くないなー」


そう言ってラナーが指をパチンと鳴らすと遠くの方でシークスが空を舞った


「手っ取り早く私の鬼と戦ってくれない?その魔力を使って」


「・・・僕の質問には答える気はないってことか?」


「そんな事ないわよー・・・鬼を倒してみせてくれれば何でも答えてあげる。ただし殺さないでね・・・私のお気に入りだから」


無茶を言う・・・この状態で鬼相手に手加減して戦えと?


けどこれで時間稼ぎは出来る・・・僕が耐えられればの話だけど


「ロウ!」


「大丈夫・・・何とかする」


サラに心配かけまいと笑顔で答えるが更に心配させてしまったみたいだ。どうやら顔色がかなり悪いみたい


シークスは・・・ヤットが駆け付け起こしていたが生きてはいるようだな


「頑張ってねー!生き残れたらご褒美もあ・げ・る」


「そりゃあ楽しみだ・・・期待しておくよ」


あのくらいの強さなら何とか耐えられる・・・多分・・・きっと・・・ん?


「・・・ロ・・・」


ラナーの要望通り鬼となったギリスと戦うべく近付くと様子が少しおかしい・・・今まで獣のような雄叫びしかあげてなかったのに・・・


「ロ・・・へん」


誰が変だ誰が


「ロ・・・へん・・・きょう・・・はくぅぅぅぅ!!」


は?今辺境伯と言ったか?まさか鬼が?


「おいギリス!ギリスなのか!?」


王様が叫ぶとギリスはそちらを向きニヤリと笑った


「おや・・・じ・・・証明・・・する・・・俺様の・・・強さを!!」


「ギリス・・・まさかお前の『天』は・・・ローロー!?」


・・・え?マジで!?──────

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