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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
366/856

362階 下着仮面

「え・・・えぇ・・・」


おぉ・・・あの傲慢なギリスが引いている。助けてもらった僕ですら若干引き引き気味だ


髪型お団子、顔は仮面、下着姿なので誰でも分かる出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいる素晴らしいスタイル・・・あ、首元に昨日つけたキスマークが・・・まあそれがなくても確信していた。彼女は・・・サラだ


なぜ下着姿に・・・いや、今はそれよりもサラのあられもない姿をコイツらに見られているという事実が許せない


その原因は僕だ・・・僕が弱いからこうなっている


「う、うおおおおお!!」


「ぬおおおおお!!」


な、なんだ!?僕が気合いを入れて立ち上がろうとした時、同時に忍ばない忍者が叫んだ


「その格好!忍びを目指す者と見た!歓迎するぞ!」


絶対違う


仮面以外忍んでないだろ!なんだアイツは!


「ギリス殿!」


「・・・な、なんだこんな時に!」


サ・・・仮面美女の背後から息を切らして入って来た黒装束の奴は僕達を無視してギリスの元へ


そして何かを耳打ちするとギリスは歯軋りをし僕と仮面美女を睨みつける


「・・・撤退するぞ」


「え!?」


「なっ・・・アレだけでも持ち帰っていいか?」


「撤退だ!」



ギリスの鶴の一声で3人と外で建物を囲んでいた者達は去って行った


一体何が起きたか分からないけどとりあえず・・・


「くっ・・・俺も一旦退散させてもらう・・・」


何とか1人で立ち上がりふらつきながら出口を目指して歩いていると急に足の力が抜けて倒れそうに・・・だが倒れることはなかった・・・仮面美女がスっと手を出し僕を支えてくれたからだ


「・・・どうも美しいお嬢さん」


「・・・」


僕のせいで恥ずかしい格好をみんなの前で晒させてしまった。どうやって僕の窮地を知ったのか分からないけど彼女は服を着る時間も惜しんで僕の元に来てくれたんだ・・・情けない・・・


一緒に部屋を出ると誰も見てない隙にゲートからマントを取り出し仮面美女に渡した


彼女は黙って受け取ると体をすっぽり隠すようにマントを羽織り僕と共に建物を出た


建物の周りを囲んでいた人達はもういない。いるのは見覚えのある人達のみ・・・って事は本当に撤退したのか・・・


「ご、ご苦労さまです!」


そう言いながらダーザン一家の連中の視線は仮面美女に向いていた。マントが邪魔だと言わんばかりの形相・・・飢えすぎだろお前ら


「エイムが怪我をしている。中に入って介抱してやれ」


「え?・・・あ、はい!」


ダーザン一家の連中は僕に言われた通り建物の中に入っていった・・・名残惜しそうに何度も振り返りながら・・・


「・・・ふぅ・・・サラ・・・なんで下着姿で?」


「・・・説明は後・・・早く屋敷へ」


「そ、そうだね・・・」


監視の目は今のところ僕達に向いていない。なので人気のない場所まで移動するとゲートを開き屋敷へと戻った──────




「いきなり撤退なんてアンタらしくないじゃない・・・伝令は何て?」


「・・・リュウダが怒り狂っているらしい・・・『作戦を台無しにしやがって』だとよ」


「作戦?・・・ああ、そう言えばリュウダって鬼化関係の指令を受けて私達より先にケッペリに入ってたんだっけ・・・それを台無しにって事はダーザン一家関連で動いてたってこと?」


「さあな・・・ここに来てから会ってもねえし・・・ワット、お前聞いてるか?」


「知らん」


「だよな・・・お前に聞いた俺が馬鹿だった。とにかくリュウダの野郎が騒いでるらしい・・・アイツを怒らすと面倒だ」


「だよね・・・ワガママなのは護天随一・・・傲慢さはアンタに負けるけどね」


「うるせえ」


「けどそれでもアンタなら強引に押し進めるかと思ったけど・・・まさかリュウダにビビった?」


「ぬかせ・・・少し気になる事があってな・・・」


「気になる事?」


「・・・あの身体・・・いや、なんでもねえ。あのまま全員ぶっ飛ばしても何も出なかったと判断した・・・奴らは単なる使いっ走りだ・・・恐らくな。その辺はリュウダに聞けば分かるかもしれねえ・・・それを聞く為の一時撤退だ」


「ふーん・・・にしてもなんだったのかしらね・・・あの変態仮面は」


「素晴らしい肉体だったな!隠密に向いている!」


「どこがよ!目立ちまくるわ!・・・まっ、あっさり終わると思ったけど色々楽しめそう・・・けどあと一日と少しで終わりってことを忘れてないわよね?」


「分かってる・・・次で終わりにしてやるさ──────」




「・・・なるほど・・・サキとダンコに・・・」


「ええ。心配だったからサキに頼んでゲートを開いてもらって見てたの・・・でも建物の中までは追えなかったから直接中に入ろうと準備していたらダンコから『ロウが危ない』って連絡が入ったってサキが・・・」


「でもどうして下着姿で?」


「・・・髪のセットを終えた辺りで危ないって聞いて・・・顔は仮面で隠せばいいけどメイド服だとバレバレだから着替えようと・・・で、焦って勢いよく脱いだ時に『ロウが危ない』って聞いて動揺して・・・」


「私は止めたにゃ。でも『早く!』って言われてつい・・・にゃ」


屋敷に戻って話を聞くとなるほど・・・


「今更だけど仮面で変身すれば良かったのでは?サラートになればついでに服も変わったはずだし・・・」


「だから動揺してたんだって・・・そりゃあ普段ならそうしてたけど早く行かなきゃってなったら冷静に変身出来ると思う?頭の中真っ白で『とりあえず行く』としか考えられなくて・・・かろうじて『正体がバレたらマズイ』ってことだけは頭にあったから・・・」


仮面をつければバレない。メイド服でなければバレない・・・そう考えるだけで精一杯だったわけか・・・なんか嬉しいような申し訳ないような・・・


「ごめん・・・また同じような事をしてしまった・・・」


「ううん・・・今回は仕方ないと思う・・・緊急事態だったし私が捕まっている時にダーザン一家と接触していたから急に私を連れて行ってもおかしな話だしね・・・けど・・・」


「け、けど?」


「油断し過ぎ」


あう


「あなたは強いけど不死身って訳じゃない・・・油断したり不意を突かれたりすれば死んでしまう事だってあるの・・・つい最近不意を突かれて捕まった私が言うのもなんだけどね」


・・・いや、あの時も僕のせいだ


僕が1人で突っ走ったから・・・咄嗟に行動するとろくな事がない・・・急いでいる時こそ冷静にならないと・・・


「気を付けるよ・・・けど奴らも何を考えているんだか・・・せっかく魔族を表に引きずり出せそうだったのにこれじゃあ元の木阿弥だ」


釣り人の感じでは僕みたいに鬼化の原因となっているであろう酒を扱っているダーザン一家に取り入り真相・・・魔族が誰かを突き止め始末する予定だったはず


それを邪魔したのは僕だけどそれまで慎重だったのにいきなり大胆な行動に出たのはなんでだ?失敗したからやぶれかぶれにでもなったのか?


「そもそも釣り人ってギリスの仲間なの?実は違うんじゃ・・・」


「いや、ギリス達がケッペリに来てまだ日が浅い。なのに瓶を持っていたしそれが何なのか分かってたのは釣り人が調べていたからだろう」


釣り人以外にも調べてた勢力があるかもしれないが・・・まあ可能性は低いだろうな


「にしてもやってくれた・・・これで魔族が逃げたらどう責任取るつもりだよ」


「多分それは大丈夫にゃ。基本魔族は人間を侮っているからこれくらいで逃げたりはしないにゃ。それよりもダーザン一家とかいう連中が手を引いた方が面倒な事になるにゃ」


「面倒な事?」


「パズズが逃げない理由は土台があの街に出来ているからにゃ。『種』を撒く土台・・・人間を使い魔人を増やし魔力の濃度を上げて自らの力を増やす土台・・・けど協力者であるダーザン一家が手を引いたらその土台がなくなりあの街に拘る理由が無くなるにゃ。そうなればパズズはまた闇に潜み同じ事を繰り返す・・・そうなれば見つけるのは至難の業にゃ」


それはマズイな。鬼化が多発した所が魔族の潜む所になるのだろうけどすぐに動くとは限らない・・・もしかしたらしばらく動かないで様子を見るかも・・・あのバカ殿に魔族は僕が狩ると言った手前狩らずに他の国に行く訳にはいかないし・・・


こうなるとダーザン一家の拠点で会った時に始末しておけば良かったか・・・けど・・・



分からない・・・彼女は本当に魔族パズズなのか?──────




ロウニール達が屋敷に戻った頃、ギリス達は護天の1人リュウダが使っていた拠点にて今後について話し合いが行われていた


当然その話し合いの議題は如何にして鬼化の元凶・・・黒幕を引きずり出し討伐するかだ


神出鬼没のロウニールを追うのは難しいと判断し鬼化の元凶の討伐にシフトしたがギリス達に残された時間は残り少ない。なぜなら一国の王であるワグナがケッペリに単身向かっている情報があるからだ


長い時間を掛けてリュウダが鬼化の原因はダーザン一家が扱っている酒にあると調べ、ダーザン一家に潜入しようとするも失敗・・・だがリュウダの正体はバレておらず別のアプローチを行おうとしていた最中でギリスが暴走・・・ダーザン一家に乗り込み直接問い質すという愚行に出て何も成果が得られず手詰まり状態・・・そんな中、ギリスが出した答えは・・・



「街を封鎖する」


「・・・はあ?封鎖って・・・何考えているのよ!」


「それしかねえだろ?このままだと警戒した黒幕がトンズラしちまうかもしれねえ・・・いや、既に・・・だが何もしねえで闇雲に動いても埒が明かねえ。この街に残っている事に賭けて街の出入りを禁じる。そして追い詰めていくんだよ・・・あの瓶の中身を作ってるヤツをな」


「大胆だな・・・リュウダに怒られたのが相当効いたか?」


「うるせえワット!」


「でもそれで何の成果も得られなかったら・・・責任は全部アンタにのしかかってくるよ?最悪降格処分だってありえる」


「だろうな・・・けど何もしねえでダラダラ時間が過ぎるのを待つなんて性に合わねえ・・・一か八かの大勝負・・・親父の前に首をふたつ並べるか俺様の首を差し出すか・・・ふたつにひとつだ」


「殿の前に首ふたつ?ひとつは黒幕だとしてもうひとつは?」


「決まってんだろ?ロー何とか辺境伯の首だ──────」

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