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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
365/856

361階 カチコミ

「グ、グリス殿!・・・なっ、何を・・・がっ!」


扉を開け出て来たグリスに駆け寄る黒装束の女性、影は突然巨大な拳で殴られ壁に背を打つ


そしてズルズルと体を滑らせ地面に沈みかけた時、目の前に来たグリスは影の腹を踏みつける


「確かお前が女の世話をしていたんだよなぁ?お前か・・・お前が裏切ったのか!」


「ぐっ・・・グリス殿・・・私は・・・ああ!」


「『私は』なんだ?さっさと吐け!口から内蔵が飛び出る前にな!・・・チッ!」


影を踏む足に体重をかけ更に力を注ごうとしたその時、グリスは何かに気付きすぐさま飛び退く


「ワット~・・・尋問中だ!邪魔すんじゃねえ!」


「てやんでぃ!俺っちの部下に何してやがる!やりたきゃてめえの女でやりな!」


「うっせぇバカヤロー!コイツが裏切った可能性があるからこうして俺様直々に尋問してんだろうが!ちったぁ話を聞け!」


「・・・マジで?」


「女を拘束していた縄に切れ目があった。誰かがわざと刃物で切らないとそうはならないような綺麗な切れ目がな。となると拘束した時か飯を運んだ時に入れた事になる・・・拘束した時は他の目があるが飯はこの影が1人で運んでいたと聞いているからもしやったとしたら・・・」


「お、お待ください・・・私はそのような事は・・・」


「黙れ!お前以外に誰がいるってんだ!・・・何が目的だ?金か?フーリシアに魂を売ったか?」


「ち、違・・・」


「そうやって口を噤むといい・・・それでこそ尋問のやりがいがあるってもんだ」


グリスが指を鳴らしながら影に近付こうとするとワットが彼の肩に手をかけそれを阻む


「・・・あ?」


「アイツの尋問は俺っちがやる・・・てめえはやり過ぎだ」


「離せ・・・命令だワット」


「・・・後生だグリス・・・頼む・・・」


「頼むと言いながら思いっきり掴みやがって・・・昼までに吐かせろ。吐かなかったら続きは俺様がやる」


「・・・そこをなんとか夜まで」


「粘るな・・・もういいやはり俺様が・・・ん?」


グリスがワットの手を払い除け影の元へ行こうとすると何者かが間に入ってグリスの歩みを止めさせた


「何しているかと思ったら・・・女の子いじめている時間なんてあるの?」


「シャシ・・・邪魔だどけ」


「いいけど・・・そんな事している暇なんてないと思うけどなぁ」


「・・・何か言いたい事があればはっきり言いやがれ」


「殿が来る」


「あん?」


「アンタが気絶している間に事態は大きく動いているのよ。ったくプライドだけはやたらと高いからそのまま寝かせてあげてたのに恩を仇で返しちゃって・・・この影はずっと扉の前でアンタが起きるまで待ってたってのに・・・」


「おい待て・・・その前になんて言った?」


「・・・城にフーリシアの辺境伯が現れて『鬼化の件は解決してやるからケッペリから撤退しろ』って言ってきたらしいよ?それに憤慨した殿が今ケッペリに向かってるって連絡が入ったの・・・殿の事だから2日くらいで来るでしょうね」


「・・・親父が・・・ここに?・・・だとしたら・・・」


全権を委ねられているとは言えあくまで委ね()()()()()だ。ワグナの気が変わればすぐに剥奪されてしまう


護天の1人であるシャシからの報告で判断するとワグナがここに向かっている理由は怒り・・・となれば自ら解決しようと権利を剥奪される可能性が高かった


「どうするの?貴重な時間を尋問に費やす?それとも・・・」


「・・・フーリシアのは城下町に居るのか?」


「転移が使えるから何とも言えないね。はっきり言って見つけて捕まえるのは難しいと思うよ?戦って殺すよりね」


「見つけても転移で逃げられて終いか・・・かと言ってアレが向かって来るとは思えない・・・となると最善は・・・報告されてもいいように憂いを取り除くしかねえか」


「憂い?」


「鬼化の事よワット。鬼化が収まってしまえば件の辺境伯はラズン王国は平和だったと報告せざるを得ない・・・となれば聖者様をフーリシアに戻す理由もなくなるでしょ?」


「・・・それはどうかな?」


「なに?他にも懸念材料があると?」


「いや?言っている意味が分からんからどうかな?と思ってな」


「ワット・・・アンタは黙ってなさい!──────」




屋敷でサラとまったりしているとエイムから連絡が入った。どうやら緊急事態らしい・・・せっかくの穏やかな時間が台無しだ


「・・・ロウ?」


「ちょっと問題が発生したらしい・・・すぐ戻るからサラはここに居てくれ」


「ダーザン一家?」


「うん・・・何が起きてるか不明だけどかなり焦っているみたいだったな・・・」


なんだか嫌な予感がする・・・もうテリトー一家はいないし脅威になるとしたらギリス達だけ・・・釣り人はかなり慎重に行動していたみたいだから仲間と思われるギリス達も下手な事はしないと思ってたけど・・・



ローハーの姿になり街へ行くとすぐにダーザン一家の拠点に向かう


そこで見たのは拠点の建物を囲む者達・・・この国の兵士は制服を着てないから一般人と見分けがつかない・・・だけど殺気立ってる様子から兵士・・・なんだろうな


「くっ、どけ・・・兄さん!」


建物を囲む兵士達をかき分けエイムが僕の元へ来た


「何があった?」


「分からねえ・・・突然押し寄せて来て頭領を出せって・・・今中で頭が対応してっけど・・・」


嫌な予感が的中したな・・・鬼化が急増した原因は既に突き止めているはず・・・それでもダーザン一家を調べなかったのは黒幕がいてそいつに逃げられないよう慎重に行動していたから・・・なのに何故急に・・・



「だから知らねえって言ってんだろ!出て行け!」



建物の中から外にまで聞こえる大きな声・・・この声は確か・・・


「やべぇ頭の声だ・・・すまねぇ兄さんちょっとついて来てくれるか?」


「・・・帰っていいか?」


「・・・兄さん・・・」


「冗談だ。けど敵わないと思ったら引くからな・・・命懸けで守るほど恩も義理もないからな」


「・・・ああ、俺もここで死ぬつもりはねえ・・・」


もし中にいるのが釣り人やギリスだったらこの状態じゃ相手するのは難しい・・・鬼を一撃で倒す釣り人とサラにやられたとはいえ渡り合える程のギリス・・・魔力を使えない状態だととても・・・


厳密に言うと魔力が使えない訳ではない。魔力を使ってしまうと僕が魔族判定されてしまうから使いたくても使えないんだ。普通魔力が使えるのは鬼か魔族だから・・・僕の事を知っている人ならともかく知らない人の前で使えば魔族と疑われる


マナだけで戦ったら負けるのは目に見えていた


戦いになりそうだったら逃げる・・・そしてさっさと帰ってサラとまったりと過ごすんだ!



特に止められる事もなく建物の中に入り頭領がいる奥の部屋に訪れると中には4人の男女がいた


ゼナスにギリス・・・それにコイツは・・・忍ばない忍者と初見の女性の4人だ


座る頭領ゼナスを囲むように3人が立ち見下ろしている・・・まだ手は出されてないみたいでゼナスに怪我は見られないがそれも時間の問題だろう・・・ギリスが拳を握り今にもその拳を突き出そうと殺気立っていた


「ギリス・・・お客さんよ?」


「あん?・・・なんだてめえらは」


()()()・・・か


あの女性もギリスと同等・・・つまり護天ってやつか?


てことはあの忍ばない忍者も護天?確かに魔法の腕前は高そうだったが頭は弱そうだったぞ?護天に頭は必要ないってか?


「エイム!誰も入れるなと・・・」


「うるせえよ親父・・・こんなところで終わってたまっか・・・せっかくここまで来たっていうのによぉ」


死ぬ気はないって言ってたのに死ぬ気か?コイツらがその気になれば瞬殺されるぞ?


まだゼナスが殺されていないのは情報を引き出せてないからだろう。強くなる酒の正体が分かればゼナスどころかダーザン一家は全滅・・・どうする・・・帰るか・・・


「親父?・・・そうか息子か・・・なら知ってるかも知れねえな・・・おい!答えろ!この瓶の中身はなんだ!」


「あ?知らねえよそんなもブッ!」


イキる相手を間違えたな・・・にしても容赦ない・・・喋っている最中のエイムの顔面に思いっきり拳をめり込ませやがった


エイムは壁まですっ飛んで行き背中を強く打ち付けると気絶こそしなかったけどしばらく動けそうにないくらいのダメージを受けたようだ


「貴様ァ・・・よくも!」


「てめえがさっさと吐かねえからだ。・・・仕方ねえこれから順に聞いていって知らなかったらぶっ飛ばす・・・何人目で終わるか見ものだな」


全員知らなかったら全員ぶっ飛ばす気かよ・・・ん?となると僕も?


「俺が知らねえって言ってんのに下のもんが知ってる訳ねえだろうが!このスットコドッコイ!」


「なら全員死ねや」


うわぁ・・・これじゃあどっちが正義でどっちが悪か分からないな


そりゃあ当然ダーザン一家が悪なんだけどさ・・・鬼化すると分かっててあの酒を提供している時点で



でも何だか・・・ムカつくな・・・



「さて・・・次はてめえだ」


「?」


「振り向いても誰もいやしねえよ!てめえだてめえ・・・瓶の中身を知ってっか?」


「・・・知っている」


「ローハー!おめぇ!」


「黙ってろ!・・・いい子だローハーとやら・・・で?中身は何だ?」


「俺の小便だ」


「・・・あ?」


「強い俺の小便を飲めば強くなれる・・・そう信じた奴がいてな・・・今や瓶に小便する毎日だ。気になるなら飲んでみろ・・・強くなれるかも知れないぞ?」


「・・・」


「おいアンタ!マジで殺されるよ!ギリスもマジになるな・・・潰しに来た訳じゃないだろ?」


女性の言葉は既に耳に入ってないご様子・・・ギリスの目は僕を捉え決して離しはしなかった


「死んだぞてめえ」


「まだ生きてるぞてめえ」


ブチッと血管の切れる音が聞こえたような気がした


まだ奴の間合いに入っていない・・・そう思っていたがそれは間違いだった


右の拳にマナを溜めるとギリスはその位置から拳を突き出した。するとマナで作られた巨大な拳が放たれ僕に向かって飛んで来る


「ガハッ!」


咄嗟に腕をクロスさせ受け止めるが威力に押され吹っ飛ばされた


飛ばされた先の壁に背中をしこたま打ち付け無様にも先程飛ばされたエイムの横で両手をつく


「何だ?偉そうな事を言ってた割にはクソ弱ぇじゃねえか。俺様はこんな奴に侮られてたって訳か?情けねぇ」


「本当よ・・・ギリスが舐められるって事は私達も舐められるってことなんだからしっかりしてよね」


「つまらんな・・・口だけの輩か」


好き放題言いやがって・・・くそっ・・・背中を打ったせいか息が出来ない・・・


「まあいい・・・約束通りてめえは殺す・・・素直に吐いてりゃいいものを・・・」


あれ?本気で大ピンチ?息が出来ず身動きも取れない僕にギリスは近付き足を上げた・・・これ多分頭を踏み潰すつもりだよね?


顔を上げる事も出来ない変身を解いて仮面を取る時間もない・・・ギリスの足の影が光を遮る・・・このまま足を振り下ろされたら・・・


「待ちなさい!この悪党め!」


ドアが荒々しく開け放たれ女性の声が響いた


くぐもっていたがこの声は・・・


僕は何とか伏したままだった顔を動かし視線を声のした方向に向けると固まってしまう



視線の先には仮面で顔を隠した下着姿の変態さんが立っていた──────

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