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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
364/856

360階 天の守再び

あの店で働いていて僕を相手していた彼女、ラナーが魔族?


もしかしたら僕が魔族を探している事に気付いて誘った?でもそんな素振りは一切なかったけど・・・


チラリと見るとゼナスは特に反応を見せずエイムは驚いて口をパクパクさせている。あの店はダーザン一家の縄張りだったからラナーの顔は見た事あるのかもしれない。そのラナーが伝手だったなんて夢にも思わなかったのだろう


「人聞きが悪いなーあの店で乱暴に・・・」


「店をぶっ壊した・・・だろ?」


「そうだっけ?」


クスクスと笑うラナーはあの時と同じ・・・しかしあの時の子が魔族だったとは・・・いや、ラナーも魔族の手先なだけかもしれないか


「それで?俺をここに呼んだのは?」


「計画を台無しにしてくれたお兄さんに提案があってね・・・お兄さん・・・助っ人じゃなくて本格的に仲間にならない?」


「その計画とやらを台無しにしたのに罰を与えるのではなく勧誘とは・・・何を考えている?」


「優秀な人材は多ければ多いに越したことはないからねー。大陸の支配者になるには、ね」


「・・・その頃にはお婆ちゃんか?」


「時間は掛かるけど成し遂げる事は出来る・・・そう思ってくれているんだ?」


「何だってやる気になれば出来るさ・・・時間と労力に差があるだけでね」


「ふふっ・・・面白いねお兄さん・・・けどそのふたつ・・・時間と労力をかけずに大陸を支配出来るとしたら?」


「家に帰って寝るよ・・・夢でなら見れそうだからな」


「現実に見れるよ・・・私にかかればね」


「それを可能にするのが強くなる酒・・・ってこと?」


「なーんだ覚えてたの?・・・そう・・・それさえあれば夢は現実になる」


その現実はこの世のものとは思えないくらいの地獄絵図だけどな


『種』を使って鬼を増やしこの国は疎か大陸を支配しようとするとは・・・まだ魔力が濃くないからそういう攻め方なのかそれともそれだけしか出来ないのか・・・さてどうしてくれようか・・・このまま討伐しちゃってもいいけど何か引っ掛かる・・・


「それでどうする?支配される側になるかする側になるか・・・この場で決めてね」


「・・・そんなの決まっている・・・される側を選ぶ奴なんて居ないだろ?」


「それもそうだねー・・・じゃあ決まりって事でいい?」


「ああ・・・仲間になるよラナー──────」




「それでダーザン一家の一員になったって訳ね」


「うん・・・ラナーが魔族って確信が持てればその場でって思ったけど・・・」


ダーザン一家の拠点である建物から出た僕はサラ達の待つ屋敷にすぐ移動した


その時ケッペリを少し歩いたら至る所に怪しい気配・・・多分僕とサラを探している奴らだろうな・・・屋根をピュンピュン飛び回ってウザかった


城下町から出た時について来た監視していた者達ガスケッペリに到着したのだろう


魔族率いるダーザン一家と僕達を狙うギリス達・・・水面下とはいえ街は混沌としていた


「・・・もしかしてそのラナーって子が気に入ったから倒せなかったとか?」


「違う違う・・・彼女は言っていた・・・『あの酒は好きではない』って。自分で普通言う?そんなこと」


「油断させる為かもよ?」


「そうかな?でも彼女は僕の正体に気付いてないっぽいんだよね」


「・・・さっきから()()()()って・・・」


「え?・・・ははーん、さてはサラ・・・嫉妬してますな?」


「する訳ないでしょ?馬鹿なこと言ってないでさっさと魔族を倒して次の国に行くわよ!それとも本気でラズン王国と戦争する気?」


怒ってらっしゃる


でもそうなんだよな・・・ギリス達に接触してしまえば戦闘になる・・・そうなれば最悪戦争に発展だ・・・僕達はゲートで逃げれるけど奴らがそのまま黙っているはずもない・・・遠く離れているとはいえ攻めてくる可能性は十分にある


このまま奴らの思惑通りに国を去れば問題ないけどそうすると魔族は鬼を増やしラズン王国をめちゃくちゃに・・・そしてラナーの言うように大陸中に鬼が溢れる事態に発展しかねない


どうするか・・・あ、そうか・・・


なんだ簡単な事だ・・・僕達が魔族の野望を阻止してギリス達は・・・ギリス達を止められる人に頼めばいいんだ


「ごめんサラちょっと行って来る!」


「へ?行くってどこに?」


「城下町・・・王様のところ」


「は?ちょっとロウ!待っ──────」





「そんなに気になるなら報告を聞けば良いのでは?」


「うっせぇ!全権委ねたって事は全部任せたって事だ・・・口出しは当然のこと知る権利もねえ!」


「知る権利はあるでしょうよ」


キッテは部屋の中を所狭しとウロウロするワグナに呆れため息をつく


その時・・・


「殿!」


「うん?・・・なんだこりゃ」


部屋の中央の空間が切り裂かれその中から人が出て来た


その出て来た者を見てキッテは警戒を強めワグナは首を傾げる


「・・・ローローじゃねえか」


「誰ですかそれは・・・ロウニール・ローグ・ハーベスです」


「誰ぞ出合え!侵入者ぞ!」


キッテが叫ぶと扉が開き刀や槍を持った兵士が次々と部屋になだれ込む


そしてあっという間にロウニールを囲むと武器を構えた


「国王様・・・じゃなくて殿?にお願いがあります」


「豪胆だな。この状況で平然と喋るか面白ぇ・・・散れ・・・顔が見たい」


ワグナが手を振ると兵士達は左右に分かれロウニールとワグナは再び顔を合わせた


「いい顔だ・・・で?願いとはなんだ?」


「ケッペリに滞在している者達を引き上げさせて下さい」


「あん?・・・なんて言った?」


「ですからケッペリにいる・・・っ!」


「なぁ・・・俺の事舐めてんのか?」


「・・・」


「てかてめえ何でここに居るんだ?ケッペリに向かったんじゃ・・・それにどうやってこの部屋に入りやがった?突然出て来やがって・・・」


「え?聞いてないんですか?私の『ゲート』の事を」


「『げーと』だぁ?知らねえなぁ」


「殿・・・だから報告を聞くべきだと・・・彼・・・フーリシア王国辺境伯ロウニール・ローグ・ハーベス殿は転移が出来るようです。つけていた者が道端で消えたと報告したと思ったら次の瞬間にはケッペリで目撃したと・・・消えたのはラウンノに程近い場所です・・・どんなに急いでも2日は掛かる距離・・・転移が出来るのであれば説明がつきます」


「フン・・・その転移とやらでこの部屋に入って来やがったのか・・・・・・・・・おい・・・コイツヤバくね?」


「はい・・・すぐに抹殺するべき相手です」


「・・・本人の前で物騒なこと言わないで下さい。ゲートを物騒な事に使うつもりはありませんよ・・・今のところはですが」


「脅しのつもりか?ギリスに任せているから手を出さねえでいてやるがそれがなかったらぶっ殺しているところだ。さっさとケッペリでギリスに殺されて来い」


「・・・つまりそれは私の願いを断る・・・そういう事ですか?」


「分かりきった事聞くんじゃねえよ。全権をギリスに委ねてる。引くか否かも全てな。今更俺が出て引けなんて死んでも言うかよ」


「・・・ギリス殿は殿の息子・・・ですよね?」


「そうだ・・・それが何の関係がある?」


「自分の子が死んでもいいと?」


「誰が誰を殺るって?まだまだ未熟だがギリスはあれでも護天の1人だ・・・その護天を誰が・・・」


「親バカか?アレが僕に勝てると本気で思ってるのか?」


周りを囲んでいた兵士達が仰け反りキッテの額からは汗が滲む。平然としているように見えたワグナの体内では血が激しく波打っていた



目の前のロウニールをここに居る全員が脅威に感じていた



「・・・てめえ・・・」


「ロウニールだ。もう一度言う・・・僕が魔族を討伐してやるからギリス達を呼び戻せ・・・さもなくば息子との再会は叶わぬと思え」


「う、うおおおおお!!」


ロウニールに対する恐怖で身動きが取れずにいた兵士の中、勇敢な者が1人槍を握り締め足を一歩踏み出した


しかしロウニールはそれを横目で見ると一言だけ口にする


「{跪け}」


その言葉に合わせて踏み出した兵士だけではなく他の兵士達、そしてキッテまでもがロウニールの前に跪いた


「・・・他国の王を跪かせる訳にはいかないからな・・・除いてやったんだ・・・感謝しろよ?」


「・・・」


唯一跪いていないワグナが睨みつけるがロウニールはそのまま振り返りゲートを開いて部屋を去ってしまった


兵士達とキッテはロウニールが去った後すぐに言霊が解け立ち上がるが後の祭り・・・悔しがる兵士達の中ワグナが大声で笑った


「・・・面白ぇじゃねえか・・・キッテここは任せる」


「は?・・・まさか・・・」


「俺もケッペリに向かう・・・俺を・・・ギリスを・・・この国を舐めた事を後悔させてやる──────」





「えっと・・・ダメでした」


「何が!?」


「いや、王様に言ってギリス達を引っ込めてもらおうと思ったら何故か喧嘩に発展しそうになっちゃって・・・」


屋敷に戻ってすぐにサラに報告すると彼女は頭を抱えた後首を振った


「あのね・・・分かるでしょ普通・・・あの国王様がどんな人物か。あの人が素直に聞くと思ったの?」


「・・・いや・・・改めて考えるとそうだよね・・・」


今考えると人の意見なんて素直に聞くタイプじゃないし無謀だった・・・そう言えば行く時にサラが止めようとしていたような・・・相談してから行動するべきだった・・・


「まあ過ぎたことを言っても仕方ないけど・・・どんな感じの反応だった?」


「えっと・・・無言で睨んでた・・・かな?」


「え?あの国王様が?」


「うん・・・いやそれがさ兵士達に囲まれちゃってね。んでその中の1人が僕を突き刺そうとするもんだから思わず言霊を使って跪かせたのだけど・・・まあついでって訳じゃないけどその部屋にいる全員をね・・・あっ、もちろん王様以外だよ?さすがに僕もそこまでバカじゃない」


「・・・国王様以外の人を跪かせた?・・・国王様の前で?」


「もしかして・・・まずかった?」


ありゃ・・・サラの様子が本気の時の反応だ・・・でも王様は除外したし大丈夫なんじゃ・・・


「ねえロウ・・・私があなた以外の人に無理矢理跪かせられたらどう思う?」


サラが?そんなの決まってる


「そいつを殺す」


「・・・即答ね・・・分かってるじゃない」


あ・・・そういう事か・・・


「い、今から謝ったら許してくれるかな?」


「んな訳ないでしょ?ギリス達に見つからないで魔族を討伐するしかないわ」


「・・・そっか・・・だよな・・・」


親バカとかギリスに再会出来ないとか散々煽ってしまったけど・・・それは言わないでおこう・・・うん──────

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