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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
363/856

359階 英雄サラ

昨日の夜の話だと彼はケッペリの街の組織をひとつ潰してしまったらしい。これで縄張り争いがなくなるだろうから魔力を濃くしたい魔族は何かしらの行動に移るだろう


少し不安なのが魔族の実力が未知数という点だ


魔王に勝つほどの彼が魔族に後れを取るとは思えないがこの街にいると言われているパズズという魔族は小賢しいタイプの魔族・・・人間を魔人化させて何を企むのか・・・


「こちらです」


扉の奥からあの黒装束の声がする


あの小生意気な話し方と打って変わって畏まった感じ・・・上役・・・白馬の王子が来たって事ね


「ロウ・・・来たわ」


〘待機しておく〙


ジャナに話し掛けるとすぐに返事が返ってきた


それだけで拘束されたこの状況下でも安心して対応出来る・・・いや寧ろ私の方が安全とさえ思えた


追い込まれているのは彼らの方・・・そう思うと心に余裕が生まれる


扉が開かれ現れた男・・・予想通り過ぎて笑みが零れるのを必死に堪えた


「待たせたな」


ここで『お待ちしておりました』とでも言えば面食らうだろうけど冗談でも言えないな


「・・・」


あくまでも私は数日拘束されたメイド・・・弱りきり男に解放を懇願する立場を演じなければ引き出せない


「随分とまあ刺激的な格好だ。何日ここに居る?2日か?さぞかし辛かったろうな・・・早く替えたいんじゃないか?汚れたものを」


「・・・下衆の勘繰りはやめて下さい。メイドとして訓練は受けてます・・・あと数日は耐えられますよ?」


どんな訓練だか・・・実際彼が来てくれなかったら危なかった


実際彼なら粗相してしまったとしても特に気にしないだろう。それで私を嫌う事はまずない。けど私がイヤなのだ・・・彼の前では完璧でありたい・・・その想いが汚れる事を嫌い綺麗でありたいと強く願うようになった


彼がする事に本気で怒った事はない。彼に対してだが


置いて行かれた時も強引にされた時も・・・怒っているのは別の理由・・・自分の不甲斐なさと綺麗な状態を見て欲しいという願望・・・不甲斐なさに腹を立てまだ綺麗にしていない事を恥ずかしがっているだけだ


それを言うと彼は何をするか分からないから言えないが・・・言ったらもしかしたら『してる所を見せて』と言いかねない・・・意外と変態なんだ・・・彼は


それに対して怒る事はない・・・ただ恥ずかしさから怒ったフリをするだけ


そうしないといずれあられもない姿を見られそうで・・・


「それは残念だな・・・心が折れているかと思いきや・・・いや強がりか・・・」


おっと、忘れてた・・・そう言えば居たな・・・


「強がりなど・・・それより後悔しますよ?ご主人様はフーリシア王国の大貴族・・・そのメイドである私にこのような仕打ちをしたと本国に知れ渡れば・・・」


「知られなければいい。ロ・・・辺境伯とやらは国から遠く離れた土地で野垂れ死ぬ・・・たかだかロ・・・辺境伯程度を捜す為に大陸中を歩き回ると思うか?戻って来なけりゃ死んだと判断して記憶からもすぐに消しちまうさ」


「ご主人様を・・・殺す気ですか?」


「初めは追い出そうとしていたみたいだがな・・・俺様に全権が渡った時点で奴の死は確定だ。そしてお前は俺様の女になる」


事情が変わったと言うのはそう言う事か


初めは私を拉致して脅すなり何なりして国から追い出そうとしていた。全権という事は目の前の男が国王から命令されたって事か・・・マズイな・・・


「私をすぐに解放して下さい。そうすれば間に合います」


「間に合う?トイレにか?命乞いするならもっとマシな言い方があるだろ?いや態度か」


「・・・態度?」


「そのご主人様を助けたければ態度で示せって言ってんだ・・・分かるだろ?」


コイツ・・・人の話を聞いているのか?


私は『私を解放しろ』と言ったのに何故か彼の命乞いをしていると思っている・・・いつ彼の命が脅かされたのか・・・勘違いも甚だしいな


「仰っている意味が分かりません。私は・・・っ!?」


男は何を思ったか着物の帯の下をはだけさせそそり立つ醜悪なモノを見せつけた・・・目が腐りそうだ・・・


「舐めろ・・・舐めて懇願するんだ・・・『私をどうか犯して下さい』と。そしたらご主人様とやらの命は助かりお前は一生贅沢な暮らしが出来る・・・次代の天の守の子を産める!」


・・・理解出来ない・・・この男とは一生分かり合える気がしないな


ハア・・・まさか他国の運命を背負う事になるとは・・・


「おいさっさとしろ!それとも頭押さえてしゃぶらせてやろうか!」


呼吸を止める


もしアレの臭いでも嗅いでしまえばどんなにお風呂に入ろうと鼻の奥を洗い流そうと臭いが取れなくなってしまいそうだから


「てめえ・・・まだ自分の立場が分かってハグッゥ!!」


男が近付いて来た瞬間、後ろ手で縛られていた縄を解き拳を突き上げる


なるべく触らないようにしたが・・・この拳を切り落としたい気分だ


「おまっ・・・なん・・・で・・・」


立ち上がると股間を押えながらのたうち回る男を見下ろし懐からジャナを出す


「2、3箇所噛んどいて・・・あ、なるべく汚くない箇所にしてね・・・そんな箇所があればだけど」


そう言って放つとジャナはスルスルと男に近付き首元と腕・・・そして足に噛み付いた


これで暫くは起き上がれないはず


その間にここを脱出する準備をしないと・・・


自由になった拳にマナを込め繋いである鎖を叩き切る


「うぅ!・・・うっ!・・・」


「股間の痛みが続いているのですか?それとも痺れが効いてきましたか?・・・まあどちらにせよ暫くは身動き取れないと思います。さて・・・そんな憐れな貴方様に教えて差し上げます」


足枷は・・・無理矢理はちょっと厳しそうね・・・後で彼に切ってもわないと


「むぅ!」


「まず勘違いを正してあげましょう。貴方様は『ご主人様を助けたければ』などと言っておりましたがそれは全く見当違いな言葉です。ご主人様の生死は左右されることなく結果に対して起こる事は国が滅びるか否かだけです。もし貴方様がこの場で私を蹂躙していたら・・・この国ラズン王国は滅びの一途を辿っていた事でしょう。何故かは知らなくても良い事・・・知る時は滅びの時と知りなさい。なのでここで私が蹂躙されなかった事は国にとっては僥倖・・・つまり私は救国の英雄と呼ばれてもおかしくはないのです」


「???」


「それとひとつ助言を・・・貴方様は私の体内に侵入し快楽を得ようとしていましたがそんなものは一時のもの・・・記憶と共に次第に薄れ消えてしまう儚き快楽。もし本当に相手を望むなら心と体両方を抱きなさい・・・そうすれば2人は交わり溶け合い本当の意味でひとつになれるでしょう。私とご主人様のように」


「ぐぅ!・・・くっ!」


「全ての殿方がその意味を知ればどんなに良いか・・・まあ今の貴方様では到底理解出来ないでしょうね・・・相手を快楽の道具としか見ていない貴方様では、ね」


既に体は動かなくなっており視線だけを私に向けて何かを訴える。何を言ってもこの男には響かない・・・何も理解しないと諦めて私は扉へと向かった


そして・・・


「なっ!?どうして・・・」


扉を開けると壁に寄りかかっていた黒装束が私を見て狼狽する。一応は中の音が聞こえないよう気を遣っていたのか反対側の壁に寄りかかっていたので気付くのが遅れたみたいだ


中で何が行われていたか・・・知る由もないだろう


「食事を運んでくれてありがとうございます・・・感謝を込めて蹴らせてもらいますね」


「え?・・・キュン!」


変な声で鳴く・・・蹴り一撃で気絶するくらい弱いのにあれだけよく威張れたわね。それにしても・・・


「ちょっと感謝を込め過ぎたかな?・・・まっいっか──────」




さてと・・・サラは脱出出来たみたいだしサキと合流したからもう大丈夫だろう・・・あっ、ゲートを使って何処へ・・・あーなるほど・・・お風呂ね


サラにとっては何より優先する事だしエモーンズに居た方が安全だし別にいっか。こっちはこっちで大詰めだしな


脱出記念エッチは後に取っておいて今はこっちに集中しよう


僕はずっと光っぱなしの石にマナを流し込んだ


「何の用だ?」


〘あ・・・すいやせん!その・・・兄さんに会いたいって人が・・・〙


「会いたい?・・・ああ、伝手か」


〘え、ええ・・・来てもらえやすか?〙


「分かった・・・すぐに向かう」


意外とあっさり釣れたな・・・なんだかあの釣り人には悪い気がするけど・・・まあ行動力の差って事で


釣り人が何者か未だにはっきりとはしないけどやろうとしていた事はこれなんだろうな・・・『種』である瓶をばら撒き鬼を増やしている奴を突き止める・・・その為に釣り人に扮して・・・てかなぜ釣り人?


・・・そこはまあいいか・・・とにかくさっさと魔族を倒して次の国に行かないと・・・次の国はサクサク終わればいいけどな・・・




ダーザン一家の拠点に訪れた僕はすぐさま中に通された


案内された奥の部屋には3人・・・エイムにゼナス・・・そしてローブを着た正体不明の人物。頭からすっぽり覆っていて顔が見えないが・・・小さいな・・・子供?


「エイム・・・下がってろ」


「構わないよ・・・そろそろエイム君にも聞いてもらおう」


声が高いな・・・しかも聞いた事があるようなないような・・・てか子供と言うより・・・


「誰だ?お前は」


分からなければ聞けばいい・・・焦るゼナスとエイムをよそにローブ野郎は僕の問い掛けに対してクスッと笑い応える


「酷いなーもう忘れたの?あれだけ愛し合った仲なのに・・・」


・・・は?あれだけ愛し合ったって・・・僕が愛し合った事があるのはサラだけ・・・後にも先にもサラだけだ


誰かと勘違いしている?・・・いや、そんな感じでもなさそうだ


後はこの顔で会った事があるとしたら・・・まさか・・・


「まだ思い出せない?仕方ないなー・・・顔を見せればさすがに思い出すよね?」


そう言うと()()は深く被ったローブをズラし顔を晒した


なんとまあ・・・偶然か?それとも・・・


「愛し合ったと言うよりどちらかと言うと襲われそうになった・・・もちろん俺の方がな・・・そうだろ?ラナー──────」

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