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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
354/856

350階 忍忍

視線を感じる・・・それもひとつやふたつではない・・・至る所から感じる視線・・・全て破壊してやろうか?イタッ


「その邪悪なお顔を引っ込めて下さいませご主人様」


叩かれた後頭部を押さえながら振り向くと澄まし顔のサラに言われてしまった・・・邪悪な顔ってそんな悪そうな顔してたのか?僕は


「これでどう・・・かな?」


「ふふっ・・・いつもの愛しいご主人様です」


愛しい・・・ああ、この場で押し倒してしまいたい・・・ハッ!そんな事したらあの野郎と・・・あの野郎人の彼女の胸を揉もうとしやがって・・・闘いの最中だったから我慢したけど次会ったらタダじゃオケッ


「ご主人様?」


「分かった分かった・・・何も叩かなくても・・・」


また叩かれた後頭部を押さえ涙目で訴えるがサラはツンとそっぽを向く


僕達は今城下町を出てケッペリに向かって歩いていた


もちろん目的はゼガーに会う為だ・・・名目上は


ワグナには僕たちがまだゼガーの居場所を知らない事になっている・・・ましてや会った事もない事に・・・だから道中にある街に寄りながらゼガーを探す振りをして徐々にケッペリに近付くって算段だ


「ご主人様は忍耐を覚えないといけませんね・・・それと私をもっと信用して下さい」


「うっ・・・そりゃあ勝つのは分かっていたけどあの野郎はサラの胸を・・・」


「・・・残念ながら勝てるかどうかは微妙なところでした」


「へ?」


「対峙したら分かります・・・あの者はあの時力を半分も出してません・・・もっともそれは私もですが」


「そうなの?・・・護天って言ったけ?・・・ギルドがないから当然ランクもない・・・もしかしたら護天ってSランク相当だったり?」


「かもしれません。おそらく国王様の前だったので殺し合いをする訳にもいかず手加減していたのでしょう。それか私をただのメイドと高を括っていたかもしれませんが・・・」


まあサラを侮っていた可能性は十分あるな・・・何せ闘いの最中に胸を触ろうとするくらいだ・・・だ、ダメだ・・・また頭を叩かれる・・・考えないようにしよう


にしても護天がSランク相当の実力者だったとしたら厄介だな・・・王様の前で無様に気絶させられたとなったら怒り狂って報復しに来る可能性が高い・・・城下町を出た後から感じているこの視線も王様の手の者かと思っていたけどもしかしたらギリスの部下かも・・・


「ゲートを使わずゆっくり観光でもしながらケッペリに向かおうと思ってたけど無理そうだね・・・まああの様子から勝手は出来ないのは分かっていたけど・・・」


「まるで逃避行ですね。それほど知られたくないとなればゼガー様の仰っていた事は嘘ではないという事になります・・・魔族の存在は分かりませんが・・・」


急激に増えた魔人・・・その対処に追われている時にゼガーの母国の僕達がやって来た・・・この状況でゼガーを失えばラズン王国は更に混乱しそれにより魔力が濃くなり魔人が増える・・・そしてラズン王国の王様はフーリシア王国が派遣した聖者ゼガーをこのタイミングで連れ戻す事を知っている・・・か


「自分の国ながら嫌になるね・・・ゼガーもいっそうこの国の人間になっちゃえばいいのに・・・」


「そうですね・・・ですがもしかしたらそうせざるを得ないのかも知れません」


「と言うと?」


「聖者聖女を『毒』として扱うならばいざと言う時に発動出来ねば意味がありません。ご主人様の仰る通り聖者聖女様本人が国を捨て今居る国に仕えるやも知れませんし無理矢理脅されるやも知れません。なのでフーリシア王国はその為の対策を練っており他国も聖者聖女様も従わざるを得ない・・・」


そう言われてみればそうだな・・・フーリシア王国は何かしらの対策を練るはず・・・じゃないといざと言う時に発動しなければ意味はない・・・でもどうやって?


「・・・あまり考えたくはありませんが・・・聖者聖女様が毒として機能するにはその国から居なくなる事です。当然それはフーリシア王国に帰国するものだと思いましたが・・・」


居なくなる・・・か。・・・まさか


「居なくなる・・・存在しなくなる・・・死?」


「その可能性もあります。どのようにしてかは定かではありませんが遠く離れた地から特定の人物を殺める事が出来るのなら・・・聖者聖女様達は気が気ではないでしょうね・・・国の意向ひとつで命を奪われる・・・それがいつかも分からずに過ごす日々など想像も出来ません」


セシーヌからはそんな話は聞いてないが他の国の聖者聖女は必死にフーリシア王国の聖者聖女になろうとしている・・・セシーヌの暗殺を企む程に・・・その理由が自分や親・・・それに子供の為ならやり方は間違っているが納得は出来る・・・安心して暮らす為に・・・何が何でもフーリシア王国に戻ろうと・・・


「やばい・・・フーリシア王国がどんどん嫌いになっていく・・・」


「仮定の話ですが・・・もしそうなら私は許せません・・・人の命をなんだと思って・・・」


怒りに震えるサラ・・・でも僕も実際は人の事を言えない立場だ。これまでマナを稼ぐ為に魔物を道具のように扱ってきた・・・自分で創ったとはいえ冒険者に討伐させる為の道具・・・聖者聖女を毒として扱うフーリシア王国と何ら変わりない


「ご主人様?」


「・・・あ、いや何でもない。先を急ごう・・・宿屋ならさすがに監視の目から逃れるはずだしね」


今更考えても仕方ないし僕はフーリシア王国とは違う・・・はず・・・うん、多分・・・





しばらく景色を眺めながら街を目指し歩き続ける


複数の視線は相変わらず・・・それも慣れれば不快さも薄れていく


街と街の間の風景はどこの国も変わらない。平原が広がっていたり森があったり川が流れていたり・・・そして野盗が出たり・・・


「金と女を置いて行け・・・そしたら命だけは助けてやる」


サラはどこでもモテモテだな・・・たまには僕を求めてもらいたいものだ


街道沿いにある林がちょうど身を隠すのに適していて野盗達は身を潜め獲物を品定めして出て来て襲撃しているようだ。僕達の前に出て来たのは4人だが林の中から感じる気配はその倍以上・・・必要に応じて加勢するつもりなのかな?


「私達よりも商人を襲ったらどうだ?それとも私がそんなに金持ちに見えたか?」


「ぶっちゃけ金はどうでもいい・・・そこの女さえ手に入ればな」


「なるほど・・・それなら仕方ない」


まるで悪者ホイホイだな・・・サラは


大陸中を旅してサラに寄ってくる者を全て始末すれば世界はかなり平和になるのではないだろうか・・・そんな事を考えながら僕が一歩下がると同時にサラが一歩前に出る


「申し訳ありません・・・自分の不始末は自分で処理致します」


「謝る事はないよ・・・これが不始末と言うのならサラは一生外に出れなくなる」


僕も犯罪を誘発するくらい美男子だったら・・・やめよう・・・虚しくなってきた


「御指名のようですがその人数で足りますか?私は呼んでいただいても一向に構いませんが・・・」


「へへっ安心しろ・・・その時になりゃ全員参加するさ・・・俺達は最初にやる権利を買っただけだ」


どう勘違いしたらそっちの解釈になるんだ?もしかしてサラが4人じゃ足りないくらい淫乱に見えたとか?


「・・・ご主人様・・・どう致しますか?」


「ラズン王国の事はラズン王国に任せよう・・・殺さない程度に・・・両手足を粉々にするくらいで」


「それほぼ殺せと言っているようなものかと・・・ですが畏まりました」


サラは返事をすると真っ先に先頭の話していた男ではなく後ろでニヤニヤしていた男の背後に回り込み蹴りを放つ。首がもげたのではないかと思うくらい傾きその場に倒れると一瞬の出来事にポカーンと口を開けて呆けているもう1人の男の股間に一撃・・・あれは痛い


「て、てめえ!」


攻撃を仕掛けられると思いもしなかったのか野盗達はようやく我に返り刀を抜くが後の祭り・・・サラは飛び上がると2人の男に向けて同時に蹴りを放ち2人同時に倒してしまう


スカートを押さえながら着地したサラはスカートに着いた土誇りを叩き取り除くと残りの野盗が潜む林に視線を向けた


「出て来なければ見逃しますが・・・出て来るのであれば覚悟を決めて下さい。これ以上は手加減するつもりはありませんので」


一瞬で4人の意識を刈り取ったサラの『手加減するつもりはない』という宣言は聞く者達にとっては死刑宣告と同じ意味を持つ・・・これで出て来るようなら・・・


「ケッ・・・少しすばしっこいからって調子に乗りやがって・・・」


出て来ちゃったよ・・・ゾロゾロと10人・・・コイツらよく今まで生きてこれたな・・・生存本能壊れてるのか?


「忠告はしました。死んでも文句は言わないで下・・・」


「どけどけどけぇ!!」


背後から突然叫びながら走って来る男・・・汗だくで着物をはだけさせ走る姿は色んな意味で危険な感じがする・・・


「な、なんだ!?」


野盗も動揺している事からコイツらの仲間じゃない・・・けど僕達の味方でもないし・・・味方にしたくもないし・・・


「ハア・・・ハア・・・ハア・・・ちょっとタンマ・・・」


あまりに異様な男に僕達と野盗達が固まり男を見ていると辿り着いた男は息を切らせ膝に手をつき息を整える。そして息が整ったと思ったら顔を上げ僕達と野盗を交互に見た


「天下の往来で喧嘩とあっちゃ見過ごす訳にはいかねえな!喧嘩両成敗・・・先ずはお前さん達からだ!」


そう言って突然拳を突き出すとその拳の先から突風が吹き僕達を通り過ぎてサラが倒した4人の男を吹き飛ばす


気絶していた4人はその衝撃で目を覚ましたらしく叫びながら遠い彼方へ・・・てか今コイツ・・・()()()って言った?


「さーてお次はどっちだい?仲良く全員吹き飛ばしてやろうか?それとも個別に飛んど行くか?俺っちの風遁の術なら何でも御座れだとっとと選び」


「風遁の術?・・・今の魔法の事か?」


思わず聞かずにはいられずに尋ねると男はキッと僕を睨めつけ首をグルリと回すと再び僕を睨む・・・え?今の動きは一体何の意味が・・・


「てやんでぇ魔法なんてまやかしと一緒にすんじゃねえ!こちとら生粋の忍ぶ者と書いて忍者の出・・・あんな御伽噺のしがれた爺と同じにされちゃぁたまったもんじゃねえって話しよ!」


魔法をまやかしって・・・しかも魔法使いを全員爺さんと思っているってどんな偏見だよ


でも一番気になるのは忍ぶ者と書いて忍者って言ってたな・・・忍者がどんなものか知らないけどとりあえず・・・忍べよ──────

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