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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
353/856

349階 ギリス・ザジ

キッテが人を呼びギリスを連れて来るよう伝えた後、しばらく待っていると背後の重厚な扉が荒々しく開け放たれる


「おう!用事って何だ?オ・・・殿」


「てめえは礼節ってもんを知らねえのか?」


「んなもん産まれた時に忘れて来ちまったよ・・・ん?」


短い髪をツンツンに立てた目付きの鋭い男・・・ギリスはドスドスと床を鳴らしながら中に入って来て私達を見て足を止めた・・・いや私達ではなく・・・


「お、おお・・・デケェ・・・」


何が!?


すぐ隣からピキッと音がする


その音の正体はすぐに分かったけどまだ耐えてくれているみたい・・・でもこれ以上何かあれば・・・


「なあ女!俺様の女にならねえか?俺様の女になれば何でも自由になる!そして俺様はお前のそのデケェ・・・」


あ、ダメだ


あの乾いた音は彼が身体から溢れ出ようとしている殺気を必死に抑えている音・・・これ以上は破裂し溢れ出て少なくともこの男は殺されてしまう・・・最悪この部屋全員・・・ううん・・・この国すら・・・


「どなたか存じ上げませんが私は隣に居りますロウニール・ローグ・ハーベス辺境伯様のモノです。貴方様の女になる事などありえません」


きっぱり断ると溢れ出そうになっていた殺気は幾分収まった


ふぅ・・・危ない危ない・・・


「ロ・・・辺境伯?」


この国の人は名前覚えるの苦手か!


「はい。私はこの方に・・・」


「なら問題ないな。おいロー・・・辺境伯。俺様にこの女を譲れ」


あーもー!てか国王陛下達も頭抱えてないで止めなさいよ!


「・・・どちら様で?」


ロウは必死に堪えながら声を絞り出す・・・偉い!


「護天が1人ギリス・ザジだ。分かったら『ザジ様是非この女を貰って下さい』と言・・・っと!」


躱した!?


ロウがキレてしまう前に気を失ってもらおうと思ったけど私の蹴りを放つがギリス・ザジは後ろに下がり躱した・・・え?ギリス・()()


「ますます気に入ったぜ。だが甘ぇ!」


反撃してくるギリスは何故か両手をワキワキさせて私の胸に・・・この人は本当に!


その卑猥な動きをする手をしゃがんで躱すと床に手をつき顎を狙いすまし蹴り上げる・・・が、それも寸でのところで躱しニヤリと笑うと私の足首を掴んだ


「癖の悪い足だ・・・少し躾が足りねえみたいだっ!?」


もう片方の足で私の足を掴んだ手を蹴り足から手を放させると床を突き放し飛び上がると彼から距離をとる


互いに本気じゃないけど拳を交えて分かった・・・この人・・・強い


「もうお止め下さい!」


「止めるなキッテ!続けろ・・・決着がつくまでな」


続けろですって?どうなっているのよこの国は・・・それにこの男・・・ギリス・ザジってこの王様の血縁者・・・多分息子よね?続けて戦えって事はつまり・・・自分の子供が死んでも構わないってこと?


遠慮が要らないって事は把握した


それと心の底から沸き立つ怒りが王にではなくギリスに向かう



この国もギリスも・・・ワグナも・・・気に入らない



「うはっ・・・こりゃあふざけている場合じゃねえな・・・」


「私のご主人様の護衛をしたくば少なくとも私より強くなくては話になりませんよ?」


「なら問題ねえじゃねえか・・・つまんねえからこうしようぜ?俺様が万が一負けたら全財産をやるよ・・・だが俺様が勝ったら・・・抱かせろ」


・・・どっかで聞いたセリフね・・・あっ!


「ラズン王国国王」


ふらりと立ち上がるロウ・・・しまったギリスに集中していて彼の事を見ていなかった・・・


「殿と呼べと言ったろ?・・・むっ!」


抑えていた殺気が放たれる


部屋中に充満した殺気は息をするのも辛くなるほど・・・


「これはどういう事ですか?護衛をつけると言って呼んだのがこのような使えない輩とは・・・」


「なに?」


「おい!使えないってのは俺様の事かこの兵六玉が!」


ギリスの標的は私からロウヘ・・・そうならないように頑張っていたのに・・・もう!


意識がロウに向いている・・・その状況を利用し通り過ぎるギリスに向かって拳を突き出した


拳は顎に当たり激しく脳を揺らすとギリスは気を失いその場に倒れ込む


「失礼致しました・・・つい」


「『つい』だと?・・・くっくっくっ・・・はーっはっはっは!確かに使えねえな・・・その使用人がいれば護衛も要らねえな・・・勝手にしろ。ただし問題を起こしたら国の外に追い出してやる」


「はい・・・ではそのように」


ロウは立ち上がり頭を下げると私を見て微笑む


余裕ぶっちゃって・・・もし私がギリスを気絶させなかったらどうなった事やら・・・


私達はすぐに部屋を出るとそのまま城を出た──────





「殿・・・よろしいので?」


「仕方ねえだろ・・・不意をつかれたとはいえギリスは負けた・・・この上で誰かを護衛につけるとしたら俺しかいねえぞ?」


「護天の上には天の守のみ・・・殿の言う通りですね・・・ですが・・・」


「言うな。それにコイツもこれで終わりってタマじゃねえ・・・ギリス!!」


「・・・・・・・・・あ?・・・ああ?俺様は一体・・・」


「てめえは負けた・・・恥ずかしくて自死するつもりならこの部屋じゃなく自分の部屋でやりな」


「負けた?・・・俺様が?・・・」


「呆けてねえでさっさと去れ・・・部屋が負け犬臭くなっちまう」


「・・・負け犬・・・」



「・・・ようやく行ったか・・・スンスン・・・あー、負け犬クセェ」


「よくご子息にそんな事を言えますね・・・すっかり肩を落として・・・お可哀想に」


「よく言うぜ・・・他にも護天はいたのにギリスを選んだ理由はなんだ?」


「・・・理由はふたつ・・・女好きと執着です」


「あー、やっぱりそんなところか・・・強さで選ばれねえところが情けねえ話だな」


「結果は少々・・・いえ、かなり違いましたがあの使用人を自分のモノにしようとするのは目に見えてました。拒まれても執拗に迫っていた事でしょう。護衛についた時もずっと・・・」


「その内ローローが音を上げて国を出て行くってか?我が息子ながらくだらねえ策に使われたもんだ・・・だが情けねえ事に負けちまった、と」


「はい。ですがギリス殿は女好きと双璧をなすほどの執着心の強さがあります」


「おい・・・それは褒めているのか貶しているのか?」


「女好きも執着も使い手によって強力な武器になります。なので今回は褒め言葉と受け取って下さい。ご子息が女好きで執着心が強いからこそこの国は救われるのです」


「負けたままでいるはずもねえからな・・・あの女に執着しローローを追う・・・んで結果追い出す事になる・・・か。まあシナリオとしては上出来だがそんなに上手くいくか?」


「ご子息が再度負けると?」


「・・・それはねえな。あの女も強い・・・が、次はねえと分かっているギリスは手段を選ばねえだろうから・・・まあ負けるこたぁねえだろう。だが・・・」


「ロウニール殿・・・ですか?」


「ああ。フーリシアの貴族ってのはあれだけ濃厚な殺気を放てるのか?強さ的には対して感じられなかったがあの殺気は本物だぜ?」


「さあ・・・私も貴族というものは金にまみれ堕落した者を指す言葉だと思っていましたが・・・認識を改める必要があるかもしくはロウニール殿が特別か・・・」


「アイツが特別であって欲しいものだ・・・じゃなきゃ俺の代で天をこの手に抱く事は出来ん」


「・・・魔王去りし後に疲弊した人類が起こすは大戦・・・永らく続いた平和は予兆と共に過去のもの・・・天の守ワグナ・ザジがおわすこの時に魔王復活の予兆があるのは吉兆か凶兆か・・・」


「吉に決まっているだろう?・・・勇者が魔王を討伐したあかつきには次の主役に躍り出るのは俺達だ。思う存分暴れてやるさ」


「その為にも・・・」


「ああ・・・ここで聖者を失う訳にはいかねえ・・・今までの準備が全て水の泡になっちまうからな。国の未来を背負わすには荷が重い気もするが・・・まっ何とかするだろう。キッテ、ギリスに全ての権限を与えろ」


「・・・全て・・・殿って意外と甘いですよね・・・」


「あん?何か言ったか?」


「いえ!それではこれより影、守護天、護天の権限を護天ギリス・ザジに与えます!目的はフーリシア王国辺境伯ロウニール・ローグ・ハーベスの国外追放・・・期間は事が成るまで!・・・それでよろしいですね?」


「ついでにあの巨乳を寝取るまで・・・も追加しておけ」


「しません!皆のやる気を削ぐような事を命令してどうするのですか」


「どうかな?次期天の守の側室・・・いや本妻の誕生の瞬間かも知れねえぜ?」


「知りません!」


「チッ・・・つまらんな・・・まあいい。しかしこの件はもしかしたら試練の洞窟よりよっぽど困難かも知れないな・・・見事達成してみせろ・・・ギリス!──────」






ワグナの元を去ったギリスが向かった場所は城内にある自室・・・まだ気絶から覚めたばかりでフラフラとしながら壁伝いに歩き部屋に入ると中にはギリスを待つ人が1人


「ギリス様お帰りなさいませ・・・?まさかお怪我を?」


「・・・セロか・・・」


顔を上げると薄手の着物を着た女性、セロが心配そうに顔を覗き込んでいた


その表情に苛立ち歯を食いしばる


「ギリス様一体・・・」


「去れ・・・今はそういう気分じゃねえ」


「え?」


「聞こえなかったか!この部屋から出て行けと言っているんだ!」


「は、はい!」


ギリスの迫力に恐怖しセロは慌てて部屋を出た


それを横目で見送った後、ギリスは足を引きずるように歩き敷いてある布団へと倒れ込む


「・・・あの女・・・それにあの男も・・・気に入らねえ・・・」


「気に入らなければどうされますか?」


「誰だ!」


ギリスが顔を上げ振り向くとそこには全身黒ずくめの服を身にまとい目以外の部分以外を全て覆った頭巾をかぶる人物が立っていた


「・・・影・・・か。なんだ?オヤジに俺様の暗殺でも依頼されたか?」


「逆です」


「逆?」


「これより我ら影と守護天それと護天全てギリス様の支配下となります。その事をお伝えに参りました」


「支配下・・・だと?なるほど・・・そういう事か」


「御命令を」


ギリスはその意味を理解し起き上がると真っ直ぐ影と名乗る者を見つめ口を歪める


「胸を出せ」


「・・・は?」


「2度言わせんな・・・お前の胸が見たい」


「・・・」


影は一瞬戸惑ったが服をはだけさせ胸を出す


その胸をまじまじと見つめたギリスはため息をつき手を振った


「もういい・・・どうしてこの国の女は・・・」


「あ、あの・・・」


「何でもねえ・・・城内に・・・いや、もう居ねえかも知れねえな・・・この城に来ていた2人組・・・フーリシアのなんちゃらって男と女だ・・・その2人の位置を逐一俺様に報告しろ。それと動ける守護天を集め俺様の元に・・・ちなみに護天は今何処にいるか把握しているか?」


「リュウダ様はケッペリに・・・ワット様とシャシ様は城に居ります。残りの方は極秘任務中ですので・・・」


「そうか・・・まあ3人も居場所が分かっていれば問題ねえな・・・ワットとシャシに俺様の部屋に来いと伝えろ」


「はっ!」


影が命令を実行すべくその場から消えるように居なくなるとギリスは天を仰ぎ笑い出す


「くっくっくっ・・・追い込むのが上手ぇじゃねえかオヤジ・・・やってやるよ・・・この国の戦力を総動員させてたった1人の女を寝取ってやる──────」

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