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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
352/856

348階 謁見

城下町は簡単に見つける事が出来た


ケッペリから一本道だったって事もあるが何よりその見た目・・・街の一番奥に高い建物がありその建物がフーリシア王国ともアーキド王国ともまた違った城の形をしていたからだ


いくつもの家が重なったような建物・・・あれが恐らく王城なのだろう・・・まだ遠目で見ただけだけど高さはもちろん迫力が違う。荘厳な雰囲気が漂っていると言うか・・・とにかく王が居るとしたらあの場所だと直感で感じた


僕とサラは着物から普段通りの格好に戻り城下町の入口へ


今回サキはお留守番だ・・・さすがに王様の前に猫は連れて行けないしね


「これは・・・ラズンへようこそ。フーリシア王国辺境伯ロウニール・ローグ・ハーベス様。来られた際は城に案内するよう言われています。どうぞこちらへ」


「・・・ああ」


ここまで来て逃げる必要もない・・・僕達は門番の後について行き用意されていた馬車に乗り込む


馬車の小窓から街の風景を眺める


街並みはこれまで行ったふたつの街とさほど変わらない・・・強いて言えば人が多いくらいか


程なくして城の前に到着し僕達は馬車を降りて城の中へ


重厚な扉がくさりで引っ張られ左右に開くと少し薄手の着物を着た男性が頭を下げて僕達を迎える


「ラズン王国へようこそ。天の守がお待ちです」


そう言って先を行き建物の中に入ると草履を脱いだ


どうやら城の中は土足禁止のようだ・・・僕達もそれに倣い靴を脱ぎ中に入る


この城はここからが大変だった・・・中は基本的に木造りで床は歩く度にミシミシと音を立てる。そして急な階段がいくつもあり移動しては階段移動しては階段を繰り返しようやく最上階に到達すると扉が開かれ奥に肘掛に肘を乗せ手の甲に顎を乗せてこちらを見つめる大男が座っていた


大男の隣は綺麗な女性が立っていて部屋にはその2人だけ・・・大男が殿で女性は奥さん?


「よく来たな!フーリシアの!まあ中に入れ」


「・・・失礼します」


この国の作法がよく分からない・・・とりあえず言われるがまま中に入ると謁見の間と同じように広い部屋の中心くらいで足を止めると大男は怪訝な表情を浮かべた


「もっと近くに来ないと話が出来ねえだろ?」


「・・・はい」


言われて再び歩き出し普通に声が届くくらいで足を止めると大男は僕の事を上から下から眺め品定め・・・僕はなるべくその視線を気にしないようにして膝をつくと頭を下げ名乗りをあげる


「フーリシア王国より来ましたロウニール・ローグ・ハーベスと申します」


「おう!・・・隣は?」


「私の使用人であるサラ・セームンです。腕が立ち私の護衛も兼ねておりますが外させますか?」


「いや構わねえ・・・遠路はるばるよく来たな。書状には各国を見て回ると書かれていたがなぜこの国を初めに選んだ?」


二ヶ国目なんだけど・・・フーリシア王国からの報せと日数を考えると最初に来たと思われても仕方ないか・・・


「・・・特にこれといった理由はありません。たまたまこの国が最初だっただけでして・・・」


「そうか。なかなか見所のある奴かと思ったがその程度か」


どういう意味だよ・・・適当にヨイショしておいた方が良かったかな?


「まあいい。で?何しに来た?まさか観光って訳じゃあるまい」


「・・・我が国で起きている問題が他国でも起きているのかを確認する為に来ました」


「問題?フーリシアで何が起きている」


「ダンジョンブレイクが起きていないにも関わらず魔物がダンジョンの外に・・・それと同時期に魔族の存在も確認しております。もし我が国だけではなくこの大陸中で起きているのならばそれは魔王復活の予兆・・・然るべき準備を要する事になるかと・・・」


「???」


え?分かりやすく丁寧にそれらしい事を並べたのに大男には伝わらなかったみたいだ・・・見えないはずの?が大男の頭の上に見えた気がした


「殿・・・使者殿は『自国で百鬼夜行でもないのに散歩する妖怪が存在し鬼も確認した』と仰っております。それが『魔王復活の前兆』だとも」


「ああ、そういう事か。突然意味の分からねえ単語を並べるから何事かと思ったぜ」


ああ・・・魔物は妖怪って呼んでるしダンジョンブレイクは百鬼夜行?・・・色々面倒臭いな・・・勝手に脳内変換してくれよ・・・


「それだったらウチは問題ないぜ?洞窟も人里離れた場所以外は壊しちまってるしな」


洞窟・・・ダンジョンの事だな。それはゼガーも言っていた。けど・・・


「魔人・・・鬼はどうですか?魔蝕はダン・・・洞窟の有無に関係なく起きます。鬼と化した人が巷で暴れているとかそういった類の話は・・・」


「ない」


「・・・そうですか・・・」


即答かよ・・・取り付く島もないな


「ご挨拶が遅れました。私は護天が1人キッテ・エイスンと申します。私の方から補足させて頂きますと使者殿の御国の方である聖者ゼガー様に尽力して頂いており平穏無事な毎日を保てております。お帰りの際は深く感謝していたとお伝え下さい」


「・・・聖者ゼガー様・・・そう言えば国を訪れた時に是非その国の聖者聖女に挨拶をと言われていたのを失念していました。確かこの街の教会に居られるのですよね?後ほどご挨拶にお伺い致します」


なんて事は言われてないが・・・これでどう出る?王様


「・・・ゼガーは()らん」


「え?・・・居ないとは?」


僕が尋ねるとキッテが一瞬大男を睨みつけるとこちらを見て無理矢理笑顔を作る


「それはですね・・・現在各地を転々とされておりまして・・・つまり出張治療をしているとの事です」


「そうなのですね。では今どの街に?」


「それはこちらでも把握しておりません。治療が必要な人が多い街では滞在する日にちも長くなるでしょうし少なければ短くなるかと・・・なので今現在はどちらにいらっしゃるやら・・・」


白々しい・・・ケッペリに居る事はしっかり把握しているはずだ。ゼガーを護衛していたのはエミリのように個人的に聖女であるセシーヌを護ろうとしている者ではなくどちらかと言うとランスのような国から派遣された者なのだろう。だからゼガーは筆談に切り替え僕達に魔人化の事を伝えた


ラズン王国は僕とゼガーが会うのを恐れている・・・それは魔人化が通常より多く起きている証拠にもなる・・・


さて・・・それを踏まえてどうするかだ


正直ラズン王国を助ける義理はない。知り合いも・・・強いて言えばゼガー、釣り人、少年くらいか・・・その3人も率先して助けたいかと言われると微妙だ


それならゼガーの願いを叶えてあげた方が良いのでは?


ゼガーはフーリシア王国に帰りたいと願っている


それを叶えるには僕が何もせずにフーリシア王国に帰り魔人化する人が増えている事を報告すればいい。そうすれば王様は『毒』を発動するはずだ・・・よりラズン王国を陥れる為に


個人の願いか国の平穏か・・・前者を選べばどうなるか分かっているだけに普通なら後者を選ぶべきだろう。だけど・・・


「おい!聞いてんのか?何処に居るか分からねえんだ・・・会うのは諦めて次の国に行ったらどうだ?」


「・・・そうですね。しばらく観光がてらこの国を見て回った後聖者ゼガー様に会えなかったらそうしたいと思います」


「・・・あ?」


「お話を聞く限り安全そうですし折角なのでラズン王国を堪能しようかと思いまして。公務扱いなので費用も国持ちですし・・・」


「・・・ハア・・・他国の要人にうろちょろされたら迷惑なんだよ!もしお前さんに何かあったらフーリシアに顔向けが出来ねえだろ?」


「安全・・・なんですよね?」


「何も怖いのは妖怪や鬼だけじゃねえぜ?人だって十分・・・」


「なら尚更ゼガー様を探さなくてはなりませんね。そんな危険な状況に聖者様を晒す訳にはいきませんので」


「ぐっ・・・このっ・・・」


「言葉のアヤですよ。実際はこの国ほど安全な国はないでしょう。ただ安全とは言え天変地異までは予測出来ませんので何かよからぬ事が起きロウニール様に万が一があってはと殿は懸念されているのです・・・ゼガー様の安全は国が責任を持って保証致しますのでお気になさらず次の国へとお進み下さい」


「・・・まるで私を追い出したいみたいに言うのですね?」


「そんな事は・・・」


「ある!」


「殿!殿は黙ってて下さい!」


「いーや、黙らん。そもそもコイツ・・・ローローだったか?は礼儀がなってない。痛くない腹とは言え探られれば不快に思う事が分かってない・・・それと俺がどんな男なのかもな」


「・・・ラズン国王陛下はどんな方なのですか?」


「ラズン国王陛下ぁ?しゃらくせぇ言い方すんなや・・・俺は天の守ワグナ・ザジ・・・()()()男だよ」


彼はただ気だるそうに座り名を名乗っただけ・・・それなのに彼から耐えなければ飛ばされそうなくらいの突風が吹いて来たように感じた・・・これが天の守ワグナ・ザジ


「・・・なるほど・・・そういう方ですか・・・」


道理も何も無い・・・全て力でねじ伏せる・・・壁があれば破壊し邪魔する者が居れば薙ぎ倒す・・・そう宣言しているみたいだった


「分かったか?なら引け・・・後戻りが出来なくなる前にな」


「残念ですが拒絶すればするほど興味が湧いてしまう性格でして・・・それほどまでに拒絶するには何かしらあるのではと邪推してしまうのです」


「てめぇ・・・俺とことを構える気か?」


「そんな気は毛頭ありませんよ・・・ただやるべき事がありそれを阻むものがあったとしても引き返したり迂回するほど器用じゃないだけです」


「・・・いい根性してんじゃねえか・・・部下に欲しいくらいだぜ」


「私は天の守様のような上司は要りませんがね」


「・・・」


「・・・」


空気がひりつくような沈黙・・・頬にチリチリと鋭い痛みを感じ触れたら血が滲んでいるのではと思うほどだ・・・殺気も含まぬ威圧だけでこれほどとは・・・底が知れないな


「と、殿・・・」


「・・・分かっている・・・ローロー」


「ロウニールです」


「長ぇ・・・ロウ・・・天の守様なんて堅苦しい呼び方するな。殿と呼べ」


「では・・・何でしょうか殿様」


「『殿』だ・・・勝手に俺の国を見て来い」


「殿!」


「いいんだキッテ・・・ただしロウよ護衛は付けさせてもらう」


なるほど・・・監視付きならいいって事か・・・


「分かりました。その提案を断る理由はありません」


「キッテ、今城内に居る護天は?」


「・・・ギリス殿だけです」


「アイツか・・・チッ、背に腹はかえられぬか。ギリスを呼べ」


「・・・本気ですか?」


「呼べ」


キッテの嫌そうな顔がすごい気になる・・・僕達の護衛となる護天ギリスか・・・果たしてどんな奴なのやら──────

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