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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
345/856

341階 ラズン王国

料理長モッツの作った料理は確かに美味しかった・・・けど量が・・・量が多過ぎる。しかも残すと滅茶苦茶怒られる・・・普段から少食のセイムは食べきれずに怒られ泣きながら食べていたのは印象的だった


明日からまた僕とサラは次の国であるラズン王国を目指す為に屋敷を空ける事になる・・・次に戻って来るのはいつになるか・・・帰って来るその日までに立派に肥えろよセイム!


「・・・量を減らすようにあなたから言えばいいのでは?」


「言ったさ・・・言ったけど『料理人は相手の適量を見極める・・・素人は黙っておけ』と言われてしまった」


「適量・・・食後に運動しないと絶対太りそうな量なんだけど・・・」


「食後の運動?・・・それなら手伝うよ」


「・・・何を考えているか分かる私も嫌だわ・・・」


気持ち良く汗を流せる運動と言ったらアレしかない・・・食後の運動にピッタリだ


「・・・じゃあお願いしようかしら」


「え?」


「最近移動ばっかりでしてなかったからね・・・手合わせ」


期待していた分、一気に奈落に落とされた気分だ・・・手合わせって・・・


「てっきり意思の疎通が取れたと思ったのに・・・」


「取れていたわよ?でも手合わせの方が効率的でしょ?強くもなれるし」


「いやそれはどうかと・・・夜の手合わせの方は仲が良くなれるし・・・」


「何が『夜の手合わせ』よ・・・ハア・・・とにかく行くんでしょ?最初はどこに?」


「最初はアーキド王国の関所に・・・一応出たって事を記録しないとね・・・そこからリガルデル王国を抜けてラズン王国に・・・ってさっきの話の続きは?」


「おしまい!さっさと行くわよご主人様!」


「・・・はい・・・」


もう少し突き詰めて話したかったけど・・・まあ夜にとっておこう



次の目的地はラズン王国・・・武王国と呼ばれておりその名の通り武に重きを置いた武闘派王国らしい


国王も強さで決めるくらい徹底しているらしくそれだけ聞くと野蛮な国に思えるが実際はそうではないらしい


弱きを助け強きをくじくを地で行く国らしく弱いからといって蔑まれたりはしない・・・強い者がただただ敬われるだけだとか


けど絶対何かしらで揉めるような気がする・・・出来ればすんなりと終わらせたいけど・・・無理だろうな・・・



僕達はまず予定通りアーキド王国の関所に向かいそこからリガルデル王国へ


そして東の方角にあるラズン王国を時にはゲートを使い、時には歩きながら目指す


その歩いている途中で僕はダンコから聞いた事をサラにも話しておいた


「・・・魔族?地上で?」


「魔人化したのは船乗りだからダンジョンでって事はないと思う。となるともしダンコの言う通り魔人化の原因が『種』なら仕掛けられたのは地上でって事になるね」


「ダンジョンから魔物が出て来るのも低層階からなんでしょ?魔族が低層階にいるとは思えないけど・・・」


「それも別に決まってないらしいよ?ただ地上に近いから低層階の魔物が先に出て来ているだけで法則とかそういうものではないらしい・・・それに魔族が今まで出て来ない理由は単に魔王の復活待ちだったから・・・魔物と違って魔族はダンジョンコアに命令される立場でもないしね」


「つまり魔王が居ない今・・・どのダンジョンからも魔族が出て来てもおかしくない・・・と」


「そういう事になるね。ただ魔族の力イコール魔力の濃さみたいなところがあるから魔力がさほど濃い訳ではない今は魔族もそこまで力を発揮出来ない。だから警戒して出て来ない魔族の方が多いらしいよ」


「でもその『種』を植え付けた魔族は出て来た」


「可能性が高いってだけだけどね。聞けば魔人化した船乗りは若かったとか・・・普通の魔蝕なら症状が出てからも一年以上は魔人化しない可能性が高いらしい。先天的な傷なら既に症状は出ていただろうし後天的に傷が入っても期間に猶予がある・・・となると症状がなく一気に魔人化した状況からも『種』の可能性はかなり高い・・・で、なぜ魔力の薄い今出て来たのか・・・多分それも魔力の濃さによるものだとか」


「どういう事?」


「薄ければ濃くすればいい・・・人が突然魔人化すればそれによって負の感情は高まり魔力は濃くなる・・・魔力が薄い内は身を潜めて『種』を仕込み、人が魔人化に対して恐怖を抱き魔力が濃くなったら表舞台に姿を現す・・・そういった計画かもしれないんだってさ」


薄ければ濃くなるまで待つのではなく濃くしてやるって事なんだろうな


「その魔族もサキと同じサキュバス?」


「一緒にするにゃ!」


人の頭の上で寝ていたサキがその言葉に反応してムクリと起き上がりサラに文句を言う。どうやら魔族にも色々といるみたいだな


「そんな姑息な真似をする魔族は決まっているにゃ・・・それに『種』を使うのも・・・『パズズ』・・・アイツらの仕業にゃ──────」





サキの言う『パズズ』も気にはなるけど魔族の仕業かどうかすら憶測の域を出ない。今はそれよりもラズン王国に行く事に集中することにした


再びゲートを使い見える範囲を一気に進んでいく。時折高い位置からより遠くに飛ぶと夜にはラズン王国の関所に着いてしまった。道無き道を最短ルートで行っているから近く感じるが普通の道を使えば半月はかかるだろう・・・やはりゲートは便利だな


関所を通りラズン王国へ・・・アーキド王国みたいに関所と繋がった街はなくただひたすら真っ直ぐな道が続いていた


夜ということもあり人気のない場所を探して印をつけると一旦屋敷に戻りモッツの料理に舌鼓を打ち風呂に入り就寝・・・起きて朝食を食べるとまたラズン王国へと向かった


昨日印を付けた場所から大通りに戻ると見慣れない格好の人達が多く歩いていた。シャツとズボンではなく布を重ね合わせ腰紐ではだけないように結んだ服・・・靴は草を編んだものを履いていた


「初めて見る服・・・こっちの流行りなのかな?」


「どちらかと言うと武道着に似ているわね」


そう言われてみればそうかも・・・でもその服を着ていないからと言って目立つ訳でもなさそうだ。僕のような格好もそこそこいる・・・けどまあ僕の服は貴族仕様で生地が高い物を使っているしメイド連れなのも手伝って好奇な目に晒されている気がする


少し歩くと街に辿り着きそこでも少し驚かされた


家の造りが全然違うし雰囲気が独特だ。家は木を組み立てたようなものばかりで屋根だけ特殊な板を貼り合わせている。道は石畳ではなく土のままだ。高い建物は物見用の塔だけでほとんどが1階しかない建物が並ぶ


エモーンズが村の時と同じような感じだが人の多さからそこそこ栄えている街に見える・・・この雰囲気がこの国のスタンダードなのだろうか?


「髪型が独特ね・・・女性は頭の上で結って纏めているし男性は短くしているかボサボサのまま・・・剣奴時代のロウみたい」


「失礼な・・・今はちゃんとセットして1つに束ねているぞ?」


「そのセットは誰がしているのかしらね?」


「・・・サラさんです・・・」


一応貴族らしくちゃんと髪はセットしているけど自分では上手く出来ずにサラにやってもらっている。僕もこの国の人みたいに短くした方がいいのかな?そうすれば朝のセットも楽そうだ


興味深く歩いて見ているとこの国は木を多用する傾向にあるみたいだな。家もそうだけど木で出来た橋やおそらく夜になったら灯りが灯る柱も木で出来ている。魔法使いが少ないのだろうか・・・土属性の魔法使いなら土で形を作りそれを石化すれば簡単に出来てしまうのに・・・


「この国は剣士が多いようね。腰に剣をぶら下げている人をよく見るわ。でも剣にしては細いような・・・」


「本当だ・・・剣の半分くらい?あの太さならすぐに折れてしまいそうだけど・・・」


確かにサラの言う通り腰に剣をぶら下げている人は多い気がする。でもそれも男性だけだ・・・女性は今まで見る限り剣をぶら下げている人はいない


男性が剣士になる割合が高くて女性は魔法使い?


もちろん何も持っていない人も多くいるが魔法使いの杖とかタンカーの盾とか持っている人は見かけないな


一通り見て回った後で今夜は屋敷に戻らずこの街で宿を取る事にした


ちょっとこの街の雰囲気を味わいたいって気持ちと食事が気になったからだ


宿屋を見つけて入ると部屋をひとつ借りる・・・そして渡されたのは木の札・・・そこには渡された時に言われた部屋番号が書いてあった


この札は何に使うんだ?部屋番号が書いてある下側が奇妙な形をしているが・・・


訳も分からず指定された部屋に行くとドアが開かない。鍵が掛かっているがカギなど渡されていないし鍵穴もない・・・一体どういう事だと悩んでいると隣の人が出て来て内側に刺してある木札を抜いて外側に差し込みドアを閉め木札を抜いて宿屋から出て行った


「ロウ!これってカギなんじゃない?こうやって刺して・・・」


サラが見よう見まねで木札をドアについている隙間に差し込むと見事ドアが開いた・・・ようやく中に入れたが閉めたと思ったドアは自然に開いてしまう。これでは夜の営みが出来ないではないか!


「あっ・・・そういう事ね」


サラはそう言うと外側に差し込んであった木札を抜き内側にある隙間に差し込むとドアを閉め木札を抜く


するとドアはしっかりとカギが掛かった状態となった・・・うーん色々面倒だな


「この木札の形がそれぞれ部屋によって違うのね・・・これを差し込むと・・・ふーん面白い」


面白いと言うか面倒なだけだと思うけど・・・まあ閉められたからよしとしよう


中に入るとさっき道行く人が履いていたような草を編んだ床が一面に広がる


ベッドもない・・・机もないし椅子もない・・・まさかここで寝っ転がって寝ろと?


「ねえロウ!見て!この扉を開けたら布団が入ってる・・・これを敷いて寝ろって事かな?」


「そうみたいだね・・・良かったこのまま寝るもんかと・・・他には何か入ってない?」


「ザラザラ音がする不思議なマクラと敷布団と掛け布団だけね・・・後は何もないわ」


ふむ・・・まあ宿屋だから寝るだけだし問題ないか・・・


「あっ!見てこれ!」


そう言ってサラが広げて見せたのはこの街の住民が着ているものと似ている服だった


その服が何着かあり恐らく丈でどれを着るか決めるらしい


「どうやって着るんだろ・・・こうやって袖に手を通して重ねて・・・結ぶ?」


サラはメイド服の上から記憶を頼りに着てみた


「うん、大体そんな感じだったと思う」


「だよね」


メイド服の上からだからもっさりしているけどこれが裸の上からならかなり薄着になるのでは?僕的には嬉しいけど他の人に見られるのは嫌だな・・・


「これでも宿の備え付けっぽいから部屋着よね?後でお風呂入ったら着てみようかしら」


・・・何となくだが僕はこの国・・・ラズン王国が好きになってきた──────

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