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ダンジョン都市へようこそ  作者: しう
二部
337/856

333階 巨大な何か

すぐに勝負に移ると思いきや誓約書にサインをさせられた


誓約書の内容は・・・要は死んでも文句は言わない。国は関係ないって内容だ。これが火種となって戦争になるの嫌だから当然サインはしておいた


「これで貴様が死んでも問題ねえ・・・女は俺が貰っておいてやるから安心しな」


「やめろやめろ・・・そういう事を言われると殺したくなる」


「・・・貴様は絶対殺す・・・」


なぜ煽った方がキレるのか・・・煽られ耐性無さ過ぎだろ


「双方サインは出揃った・・・これで勝っても負けても文句なし・・・さあローグ卿よ・・・その剣の価値を示せ!」


王様の掛け声と共にエイマールが突っ込んで来る


うーん、殺る気満々だなこれは


剣にマナを纏い体にも・・・操作と強化?いや・・・


「死ね!!」


操作と強度だ


器用に剣にマナを纏わせマナで体の強度を上げている


騎士っぽいちゃ騎士っぽいけど・・・それがどうしたって感じだな


強化を使い自らの身体能力を高めて攻撃して来るならまだしも、打たれてもないのに強度を上げてどうするんだ?


剣速はそれなりってところ・・・躱そうと思えばいくらでも躱せるし、剣技も特に変わったものではなくシンプルに振って来るだけなので容易く躱せる


余裕を持って躱しているが何を勘違いしたのかそれを攻め手がないと思ったらしく休まず次々と剣を繰り出す


「攻めあぐねているとでも?残念攻めてないだけだ」


剣にマナを流し隙だらけの胴を薙ぐ


斬られたエイマールは苦悶の表情を浮かべて斬られた部分を手で押さえるが・・・


「?・・・ハッどうせそんなもんだろうと思ったよ!」


斬られてないと分かるとすぐに表情を変え笑みをこぼしながらまた剣を振る


僕もそれに合わせて何度かエイマールを斬っていると・・・


「待て!」


王様からお止めの声が掛かった・・・もう少し早く気付くと思ったけど意外にかかったな・・・


「陛下!なぜ止めるのです!もう少しで・・・」


「その口を塞げエイマール!・・・・・・・・・ローグ卿・・・その剣はなんだ?」


「この剣は戒めです」


「・・・戒め?」


「簡単に人の命を奪う事が出来る剣・・・使い手が意思を持って振ればそれに応えてくれる・・・けど本当は人の命はそんな軽々しく奪っていいものじゃない・・・けど私は・・・まだまだ未熟なので剣の力を借りようと思い作りました」


「?・・・言っている意味が分からんな・・・」


「簡単ですよ・・・この剣はマナを流すと()()()()()()剣なのです。たとえ赤子だろうと斬ろうとしても斬れません」


「はあ?嘘をつくな!実際・・・」


「斬られてない奴が喚くな・・・斬ろうと思えばいつでも斬れるお前如きはな」


あ・・・頭から煙が出て来た


「へ、陛下・・・こやつを殺すお許しを・・・」


「待てと言っているだろう・・・つまり卿は人を殺さないようにその剣を作った、と?それに何の意味がある?何の価値があると言うのだ?」


「?・・・国王陛下の価値は1万ゴールド以下ですか?」


「なに?」


「この剣ならば陛下は斬られずに済みます。つまりこの剣に陛下は救われるのです・・・それでもこの剣に1万ゴールドの価値しかないと言いますか?」


「小童がぁ!!」


「・・・色々な呼び方で私を呼ぶあの人も1ゴールドの価値ぐらいはあるのでは?さっきもし普通の剣を使っていれば彼は息絶えていたでしょう・・・つまり今の時点でこの剣の価値は1万1ゴールドにはなったはず」


「い、1ゴールドだとぉぉぉ!!」


「プッ・・・ハッハッハッハッハ・・・確かにその通りだな・・・だが我を値踏みするな・・・そこは取り消せ」


やっぱり怖いな・・・この人


「・・・失礼しました。それでどう致しますか?この勝負・・・」


「本人が納得していないようだ・・・他の剣なら殺せた事を示さねばなるまい?」


こらこら


「かと言って我もエイマールの死を望む事は無い・・・殺さずその武威を示せ」


「・・・畏まりました」


だから殺さないのが難しいって言ってるのにまったく・・・まあエイマールはやる気だし・・・さっさと終わらせるか・・・




「・・・ふむ・・・フーリシア国王め・・・とんでもない者を寄越したものだ」


前のめりに倒れて気絶するエイマールを見て王様は呟いた。人を『とんでもない者』扱いはやめてくれるかな?


結局剣を使ってしまうと殺してしまうので襲いかかって来たエイマールの懐に入りお腹に一発ズドンと・・・強度を上げていたからもう少しマナを込めようかと思ったけどやらなくて良かった・・・下手したら貫通してたな・・・腹


「それで・・・価値は示せたでしょうか?」


「・・・認めよう・・・その剣は1万ゴールド以上の価値があった・・・ただし限定的だがな」


確かに『僕が使うと』って言う限定だけど・・・負けず嫌いな王様だこと


「・・・ふむ・・・その武威この国で活かすつもりはないか?我が国なら侯爵・・・いや、公爵として迎えるぞ?」


「ありがたいお誘いですが残して来た者もおりますので」


「即答か・・・そういう場合は考える素振りくらいするものだぞ?礼儀としてな」


「なるほど・・・以後気をつけます」


「ふふっ・・・まさか今日という日に二度も見誤るとはな・・・」


「二度・・・ですか?」


「一度目は剣・・・二度目は貴公だ」


「私?」


「初めは貴公と話す時寝そべっていたであろう?それには理由があるのだ。我はモノの価値を見抜く力がある・・・貴公の国の聖者聖女と同じような力が」


真実の眼・・・それに近い力?


「何千何万人に1人と言われている特殊な力・・・我の力はモノの価値が分かる力なのだがそれは物だけではなく者にも発揮する・・・価値が高くあればそれだけ強さを持っていたり賢くあったりするのだが・・・」


「私は低かった・・・と」


「うむ・・・正直そこの壁際にいる兵士達に紛れれば見失う程だ・・・」


・・・兵士達の価値が非常に高い・・・って事はなさそうだ。価値が低いか・・・どう算出しているのやら・・・


「それと寝そべっていた理由はどう結び付くのですか?」


「我の対応は価値に紐付く・・・なるべく対等に話す為に必要な手段だよ。段差で言うと分かりやすいかな?我より一段価値の低い者は一段下へ・・・二段低い者は二段下へ・・・そうしてようやく対等に話が出来る」


「・・・つまり価値の低い者は高い者を見上げて当然・・・そうすることによってようやく対等って訳ですか。寝そべって話をしていたのも私と対等に話す為に・・・」


「そうなるな。私が寝そべる事で貴公のところまで下りてやったのだ・・・あの対応は感謝してもらいたいくらいだ」


「・・・けど陛下は見誤った」


「ふむ・・・だからこうして起きて話している」


確かにさっきから普通に座って話している。それでも王様までは段差もありコチラは立っているのに対して向こうは座っている・・・まだそれだけの価値の差があるって事か


身分の差ではなく価値の差か・・・商王国らしいと言えば商王国らしいけど・・・


「お言葉ですが人の価値は秤れないかと」


「・・・やめておけ・・・我にモノの価値を語るには貴公はものを知らなさ過ぎる」


「そうでしょうか?・・・いや、そうなのでしょうね。しかし知らない事は多くても合っているか間違っているかくらいは分かっているつもりです。そして陛下は間違っておられる」


「・・・また我を寝そべらせる気か?」


「寝そべってもらって結構・・・ただこれだけはお伝えしておきます・・・陛下が人を物のように価値を決め金額を出したとしてもその通りにはならないでしょう。例えば私の隣にいるサラ・・・彼女の価値を陛下が算出し私に提示したところで私は売る気は全くありません。たとえ10倍・・・100倍出されたところで同じ事です。それは陛下と私の価値の違いがあるから・・・陛下が1億ゴールドと算出したとしても私にとっては無意味なもの・・・いくら積まれても売る気はありませんし人によって価値が変わるのに決める必要はありますか?」


「ふむ・・・それは違うぞ?我の目『鑑定の眼』はそういった感情を抜きにしてモノの価値を見極められる目・・・思い入れなどの付加価値など考えて商売するなど有り得ん」


「だから見誤ったのでは?剣にしても私にしても・・・モノの本質を見抜けていないから」


「・・・貴公・・・もしかして我に喧嘩を売っているつもりか?」


「お望みとあらば」


「・・・思い入れがあるなら対価を出されたとしても売らなければいいだけ・・・何も強制的に売れとは言っておらん。ただ公平な目で見て我が価値を算出しているだけなのだからそこまで目くじら立てずともいいのでは?」


「・・・人の女を馬車一台分や二台分と評して嘲笑い未使用だの使い古しなど物扱いしておいて・・・タダで許してもらえると思っているのか?このタコスケが」


「・・・なに?」


「ロ、ロウ!」


「てっきり国の存亡を掛けた壮大な度胸試しと思いきや・・・謝罪の言葉もなくカチカチカチカチといけしゃあしゃあと・・・その一言が国を滅亡に至らしめるくらい想像できないなら国王なんざ辞めちまっ!・・・イタイ・・・」


「申し訳ございません!何でスイッチが入ってしまったのか・・・主人が大変御無礼を!」


後頭部に痛みを感じて振り返るとサラが必死になって頭を下げていた


だって喧嘩売ってんのか?とか目くじら立てなくてもとか言うから・・・喧嘩売って来てるのはアッチだしサラの事を言われて怒るなって言う方が無理だろ・・・


「・・・怒りに我を忘れたか・・・商売人には向いてないな」


「そりゃあ本職が冒険者なんでね・・・得意分野で良ければ披露しますよ?この王宮くらいなら散歩ついでに全滅させる事も可能だし」


「本気で言っているのか?」


「本気も本気・・・試してみるか?御自慢の目で見てみろよ・・・出来るかどうか・・・出来ないと判断したのならその目は節穴だ」


壁際にいた兵士達が構える


100人はいるだろうか・・・サラを守りながらでも魔剣を出して瞬殺すれば全く問題ない


後は大臣を切り刻み王様を・・・



ゴン



また後頭部に鈍い痛みが・・・


「なに人様の国で・・・しかも国王陛下の前で殺気立っているんだが・・・」


「だって・・・」


「『だって』じゃない!どうすんのよコレ!?」


言われて改めて周りを見ると震える兵士達の姿が・・・まだ何もしていないのにどうして・・・


「ったく・・・殺気をそれだけ放てば怖がるのは当然でしょ?あなたが今何に見えてると思う?おそらくこの天井に届きそうなくらい巨大な何か、よ」


巨大な何か・・・人によっては化け物に見えたかもしれないし獣に見えたかもしれない・・・


ダメだ・・・沸点が低過ぎる・・・しかも何でどのタイミングでキレるのか自分でもよく分からん・・・


それにしても・・・僕の本職は冒険者なのだろうか?自分が言った言葉だが疑問だ──────

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